この記事で分かること
- 衣服や布団が睡眠に与える影響 :衣服の生地の素材や厚さ、吸湿性・放湿性、寝具の熱抵抗と保温性、耐圧分散性や温度などが睡眠の質に影響を及ぼしています。
- 快適な睡眠の条件:寝具内の温度を約33℃、湿度を約50%に保つのが良いとされています。
- 温度が睡眠に重要な理由:深部体温の適切な下降が良質な睡眠に不可欠であり、その下降をスムーズに行うためには、周囲の温度環境が非常に重要になります。
衣服や布団が睡眠に与える影響
早稲田大学などは、衣服や布団、姿勢の違いが睡眠に与える影響についての研究結果を発表しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG023ZM0S5A600C2000000/
研究結果から、衣服や布団、姿勢の違いが体感温度に与える影響があり、室温がセ氏約23度の場合、体感温度が8.5度ほど変わることが分かった。
どんな要素に睡眠の影響があるのか
衣服や布団、姿勢の違いが睡眠に与える影響についても、さまざまな研究が行われています。体感温度や皮膚温に影響を与えることが示されています。
衣服(寝衣)に関する研究
- 生地の素材や厚さ: パジャマとスウェットなど、寝衣の素材や厚さによって、寝床内の温度や湿度が変化し、睡眠の質に影響を与えることが報告されています。例えば、ある研究では、ジャージやスウェットで寝るよりも、パジャマに着替えた方が寝付くまでの時間が短くなり、途中で起きる回数が減るという結果が出ています。
- 吸湿性・放湿性: 寝衣の吸湿性や放湿性は、汗による不快感を軽減し、快適な睡眠環境を保つ上で重要です。麻などの吸湿性・発散性が高い素材は、特に夏場に涼しさを感じやすいとされています。
布団(寝具)に関する研究
- 熱抵抗と保温性: 布団の種類(羽毛布団、毛布、タオルケットなど)やかけ方によって、寝具の熱抵抗が異なり、これが体感温度に大きく影響します。早稲田大学の研究では、同じ着衣や掛布団を使用しても、寝姿勢や掛布団のかけ方で皮膚温が変化し、掛布団の種類やかけ方の調整によって、体感温度を最大8.5°Cも調整できることが示されています。これは、寝具の組み合わせが睡眠時の快適性を大きく左右する可能性を示唆しています。
- 体圧分散: 布団やマットレスは、睡眠中の体圧を分散し、身体への負担を軽減する役割も果たします。体圧が適切に分散されないと、血行が悪くなったり、寝返りの回数が増えたりして、睡眠の質が低下する可能性があります。
- 温度と湿度: 快適な睡眠には、寝具内の温度を約33℃、湿度を約50%に保つのが良いとされています。布団は、この寝床内環境を維持するために重要な役割を担っています。
姿勢に関する研究
- 寝返りの役割: 人は一晩に20〜30回程度の寝返りを打つと言われています。この寝返りには、同じ姿勢でいることによる血行不良や体温上昇を防ぎ、体温調節を行う重要な役割があります。また、日中に生じた身体の歪みや疲労をリセットする働きもあります。
- 姿勢と皮膚温: 早稲田大学の研究でも、睡眠時の姿勢(仰臥位、側臥位など)によって皮膚温が異なることが定量的に明らかにされています。これは、姿勢によって体と寝具の接触面積や空気の層の厚さが変わるためと考えられます。
- 体温調節への影響: 暑い時だけでなく、寒い時も、体を動かすことで血流を良くし、指先や足先まで循環を促すことで暖かさを保つことができます。
これらの研究は、衣服、布団、そして姿勢が単独で睡眠に影響を与えるだけでなく、それらが相互に作用し合い、複雑な形で睡眠の質に影響を与えていることを示唆しています。そのため、より質の高い睡眠を得るためには、これらの要素を個人の特性に合わせて最適化することが重要であると言えるでしょう

衣服、布団、そして姿勢が単独で睡眠に影響を与えるだけでなく、それらが相互に作用し合い、複雑な形で睡眠の質に影響を与えていることを示唆されています。
なぜ、睡眠に温度が重要なのか
睡眠における温度の重要性は、私たちの体温調節メカニズムと睡眠の密接な関係にあります。特に、体の奥深くの温度である深部体温が、スムーズな入眠と質の高い睡眠に大きく関わっています。
1. 深部体温の低下が眠気を誘う
私たちの体は、活動している日中は深部体温が高く保たれていますが、眠りにつく前になると、深部体温を意図的に下げるという仕組みがあります。
この深部体温の下降が、脳と体を休息モードに切り替え、眠気を誘発するトリガーとなるのです。
- 熱放散の促進: 深部体温を下げるために、体は手足などの末梢血管を拡張させ、そこから熱を体の外へ放散します。このため、眠くなる前には手足が温かくなるのを感じることがあります。赤ちゃんが眠りにつく前に手足がぽかぽかするのも、この現象によるものです。
- 脳の休息: 深部体温を下げる主な目的は、日中働き続けた脳を冷却し、その活動を落ち着かせて休息させるためです。脳が十分に休まることで、記憶の整理や定着、疲労回復などが効果的に行われます。
2. 環境温度が体温調節に影響
周囲の温度(室温や寝床内温度)は、この体温調節メカニズムに直接影響を与えます。
- 暑すぎる環境: 室温が高すぎたり、寝具が熱をこもりやすくしたりすると、皮膚からの熱放散が妨げられ、深部体温がうまく下がりません。これにより、寝つきが悪くなったり、夜中に目覚めやすくなったりと、睡眠の質が低下します。
- 寒すぎる環境: 逆に室温が低すぎると、手足が冷えすぎて血管が収縮し、熱放散が効率的に行われなくなります。これも深部体温の低下を妨げ、寝つきの悪さや睡眠の質の低下につながります。冷え性の人が不眠になりやすいのはこのためです。
3. 快適な寝床内環境の重要性
快適な睡眠には、寝床内環境(布団の中の温度と湿度)を適切に保つことが重要です。一般的に、寝床内温度は約33℃、湿度は約50%が理想とされています。
- 温度と湿度の相互作用: 温度が高すぎても低すぎても、また湿度が高すぎても低すぎても、体感の不快感が増し、睡眠の質が低下します。特に湿度が高いと、同じ温度でも暑く感じやすく、発汗による不快感で覚醒しやすくなります。
4. 体温リズムの維持
私たちの体温は、約24時間周期の概日リズムに従って変動しています。日中に高く、夜間に低くなるこのリズムは、体内時計によってコントロールされており、睡眠・覚醒リズムと深く連動しています。適切な温度環境は、この自然な体温リズムを乱すことなく維持し、スムーズな入眠と質の良い睡眠をサポートします。

深部体温の適切な下降が良質な睡眠に不可欠であり、その下降をスムーズに行うためには、周囲の温度環境が非常に重要になります。
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