この記事で分かること
- 増加の理由:AI関連技術の浸透に伴うスマートフォンやPCの需要回復です。特に受動部品が大きく伸び、エレクトロニクス市場全体の構造的な成長を反映しています。
- 関税の影響が小さかった理由:スマートフォンやPC、主要な半導体など、電子部品の主要な消費製品が関税の適用から除外されたため、需要の大きな落ち込みが回避されたからです。
- 今後の見通し:AIサーバーやエッジAIの急速な普及を主因に、今後も強い成長が見込まれます。EVやADASの進化も牽引役となり、中期的に堅調な拡大が予測されています。
2025年9月の電子部品出荷額10%増加
電子情報技術産業協会(JEITA)のデータによると、2025年9月の電子部品グローバル出荷額は、前年同月比で約10%(10.9%)の増加となり、前年比でプラスを記録しました。これは、電子部品業界の堅調な回復を示しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2733F0X21C25A1000000/
この出荷増加の背景には、スマートフォンやPC関連など特定の製品分野での需要回復や、電子部品実装機の需要増加などの兆しが見られたことが挙げられます。
また、アメリカによる関税措置は、電子部品業界にとって懸念材料の一つでしたが、報道ではその影響が「想定より軽微」または「限定的」であったと評価されています。
電子部品出荷額の増加理由は
電子部品出荷額が前年比で増加した主な理由は、特定の完成品市場での需要回復・拡大、特に受動部品の力強い伸び、およびAI関連の需要の拡大です。
電子情報技術産業協会(JEITA)の2025年9月の統計によると、グローバル出荷額が前年比110.9%と大きく伸びた要因は以下の通りです。
1. 受動部品の大幅な需要増加
- 受動部品(コンデンサー、抵抗器など)の出荷額が前年比116.7%と、品目別で最も高い伸びを示しました。
- これは、スマートフォン、PC、自動車(特にEVや先進運転支援システム)、産業機器など、多くの電子機器に共通して使われる基幹部品の需要が世界的に高まっていることを示しています。
2. 特定の完成品市場の回復と成長
- AI機能の搭載・拡充: AI(人工知能)技術の進化と、それに対応した新製品(特にAI機能を持つスマートフォンやPC)への買い替え需要が、電子部品の搭載量を増やし、需要を牽引しました。
- 半導体産業の堅調な伸び: 生成AI関連の需要が半導体市場の増勢を支えており、この半導体を搭載する電子機器全体での部品需要が増加しています。
3. 地域別の需要拡大
- アジア・その他(前年比115.6%)や米州(前年比114.3%)といった地域で、電子部品の出荷が顕著に増加しました。これは、主要な生産拠点や消費地での需要が活発化していることを示しています。
- 中国も前年比109.7%と堅調な伸びを見せ、アジア地域全体が成長の主要エンジンとなっています。
この増加は、一時的な反動ではなく、AI関連技術の浸透に伴うエレクトロニクス市場全体の構造的な成長に支えられている側面が大きいと考えられます。

電子部品出荷額増加の主な理由は、AI関連技術の浸透に伴うスマートフォンやPCの需要回復です。特に受動部品が大きく伸び、エレクトロニクス市場全体の構造的な成長を反映しています。
トランプ関税の影響が「軽微」となった理由は
トランプ関税の影響が電子部品出荷額に対して「軽微」または「限定的」であった主な理由は、特定の電子機器・部品に対する関税の除外措置が適用されたためです。
影響が軽微となった主な理由
- スマートフォン・PCなどの除外措置の適用
- トランプ政権(当時または将来の可能性)が課した関税の対象から、スマートフォン、ノートパソコン、メモリーチップ、半導体製造装置などの特定の電子機器や部品が除外されました。
- これらの製品は電子部品の主要な消費先であるため、除外措置により、最終製品の価格高騰や需要の急激な落ち込みが回避されました。
- 国民の消費への影響を抑える狙いがあったと見られています。
- 電子部品自体の適用除外
- ダイオードやトランジスタなど、一部の電子部品や半導体関連製品も、関税の対象外とされる品目リストに含まれました。
- サプライチェーンの対応 (間接的影響の緩和)
- 関税リスクを回避するため、企業が生産拠点や調達先を、米国を直接経由しない国や地域へ多角化・シフトさせるなどの対策を講じたことも、影響の局限化に繋がりました。
主要な電子機器やその構成部品が関税の直接的な影響を免れたことが、全体的な電子部品の出荷額に与えるマイナス影響を最小限に抑えた最大の要因です。
ただし、鉄鋼やアルミニウムといった原材料への関税を通じて、ねじや部品のコストが増加するなど、サプライチェーンの川上部分には間接的な影響が出ている点は留意が必要です。

トランプ関税の影響が軽微だった主な理由は、スマートフォンやPC、主要な半導体など、電子部品の主要な消費製品が関税の適用から除外されたため、需要の大きな落ち込みが回避されたからです。
電子部品や半導体関連製品を関税から除去した理由は
電子部品や半導体関連製品を関税の対象から除外した主な理由は、米国の企業や消費者に与える悪影響を緩和することと、国内生産移転への猶予期間を与えることにありました。
1. 消費者への価格高騰の回避
- スマートフォンやパソコン(PC)など、日常的に広く普及している最終製品を関税の対象にすると、価格が大幅に上昇し、米国の消費者や有権者からの強い反発を招く恐れがありました。
- これらの製品には大量の電子部品や半導体が組み込まれているため、完成品やその主要部品を除外することで、影響を最小限に抑える狙いがありました 。
2. 米国企業のサプライチェーンへの配慮
- AppleやDellなどの米国のハイテク大手企業は、製品の多くを中国などで製造し、米国に輸入しています。
- 関税が適用されると、これらの企業は輸入コストが大幅に増加し、競争力が低下するだけでなく、サプライチェーンの維持が困難になる可能性があります。除外措置は、こうしたハイテク企業への重要な救済策となりました。
3. 米国内への生産移転の促進
- トランプ政権は、これらの企業が中国に依存している生産体制を、米国内へ移転するための時間を確保させる目的もあったと説明しています。
- 猶予期間を設けることで、企業に対し、長期的な視点での「脱中国依存」やサプライチェーンの強靭化を促す意図があったとされています。
特に半導体については、国家安全保障上の重要な戦略物資であるため、米国が自国の競争力を維持しつつ、過度な経済的な混乱を避けるために、直接的な関税適用を慎重に判断した側面があります。
この除外措置は、電子部品業界にとって一時的な救済となりましたが、米中間の地政学的リスクは依然として存在しており、企業は長期的なサプライチェーンの再構築を継続的に進める必要があります。

電子部品や半導体関連製品の除外理由は、米国の消費者や企業が購入するPCやスマートフォンなどの価格高騰を回避し、国内企業への悪影響を緩和するためです。
今後の見通しはどうか
電子部品市場は、中期的には強い成長が見込まれています。特にAI(人工知能)関連の需要が、市場全体を大きく牽引する最大の要因となるでしょう。
1. 成長を牽引する主な要因
- AI関連需要の爆発的な拡大
- AIサーバー・データセンター: 生成AI向けの高性能コンピューティング(HPC)やデータセンター向け半導体、高帯域メモリ(HBM)などの需要が急拡大し、それに付随する受動部品や基板、先端材料の需要も連動して増加します。
- エッジAI: スマートフォン、PC、産業機器などにAI機能(エッジAI)が搭載され、これが買い替え需要を喚起し、電子部品市場全体の底上げにつながります。
- 自動車分野の進化
- EV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)の普及に伴い、車載電子部品(センサー、パワー半導体、高性能コンデンサーなど)の搭載量が増加し、高付加価値化が進みます。
- 産業機器・IoTの高度化
- スマートファクトリー化や産業オートメーションの進展により、高信頼性・環境耐性に優れたセンサーや制御用半導体の需要が拡大します。
2. 半導体市場の予測(電子部品市場の先行指標)
電子部品の需要は半導体市場と強く連動しており、半導体市場は2024年以降、2026年にかけても拡大が継続すると予測されています。
- 世界半導体市場は、2025年も2桁成長が見込まれており、電子部品市場もこの勢いを反映して堅調に推移すると見られています。
3. リスク要因
- 地政学的リスクとサプライチェーンの再構築
- 米中間の技術覇権争いや関税政策の不透明感は続き、各国で進む半導体や電子部品の国産化・サプライチェーンの分断の動きは、企業にとってコスト増や複雑性増加のリスクとなります。
- 在庫調整の波
- 一部の製品分野では、前倒しでの在庫確保の反動などによる一時的な在庫調整が行われる可能性があり、需給のバランスが局所的に崩れるリスクがあります。
総じて、電子部品市場はAIという強力な成長ドライバーを得て、短期的な変動はありつつも、中期的に見れば力強い成長基調にあると評価されています。

電子部品市場は、AIサーバーやエッジAIの急速な普及を主因に、今後も強い成長が見込まれます。EVやADASの進化も牽引役となり、中期的に堅調な拡大が予測されています。

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