この記事で分かること
- 排除の理由:主に米中間の地政学的緊張による供給リスクの回避と、関税の変動に伴うコストや価格設定の不確実性を排除し、安定したサプライチェーンを確立するためです。
- 排除の難しい部品:、CATL製のLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーが最も重要です。その他、チップやシートカバー、金属ケーシングなど、広範なサプライチェーンで中国製部品が使用されています。
- LFPバッテリーの代替先:主に韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDI、そして日本のパナソニックが挙げられます。
テスラの中国製部品の排除
電気自動車(EV)大手テスラが、米国内での自動車生産において、中国製部品の使用を排除するようサプライヤーに求めていると、複数のメディアが報じています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fed1efac9cee7519627a982c831bbb7336338cfd
この動きは、米中の貿易摩擦や地政学的リスクを考慮し、テスラが中国への依存から脱却し、供給網を分離させようとする取り組みの一環として注目されています。
中国産の部品調達停止をする理由は何か
テスラが米国内生産で中国製部品の調達停止をサプライヤーに求めている背景には、主に以下の3つの重要な理由があると報じられています。
1. 地政学的リスクの軽減(デカップリング)
- 米中間の緊張: 米中間の貿易摩擦や地政学的緊張が高まっており、この対立がサプライチェーンに及ぼす影響を避ける狙いがあります。
- 「供給網の分離(デカップリング)」: テスラは、米国市場で販売する車両の生産を中国の政治的・経済的な影響から完全に切り離す、戦略的な動きを進めていると専門家は指摘しています。
2. 関税による不確実性の回避
- 関税の乱高下: 米国政府が中国製品に対して課す関税の水準が頻繁に変わり、予測が難しい状況が続いています。
- 価格戦略の障害: 関税が乱高下すると、テスラが一貫した車両価格戦略を策定することが困難になり、経営上の不確実性が高まります。中国製部品の排除は、この関税リスクをゼロにすることを目的としています。
- 以前、高関税により一部の部品輸入計画を停止した事例も報じられています。
3. サプライチェーンの脆弱性の教訓
- パンデミックの経験: 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生時、テスラは中国からの部品調達で深刻な支障をきたしました。
- 依存度低減の取り組み: この経験から、テスラは以前からシートカバーや金属ケーシングなどの部品について、中国の協力企業に対し、メキシコや東南アジアなど他地域での工場建設を促すなど、中国依存を減らす取り組みを進めてきました。
地政学的なリスクと関税によるコスト・価格の不確実性を排除し、安定した供給網を確保することが、テスラの今回の戦略の核心です。

テスラが中国製部品の調達停止を求める理由は、主に米中間の地政学的緊張による供給リスクの回避と、関税の変動に伴うコストや価格設定の不確実性を排除し、安定したサプライチェーンを確立するためです。
現状、どのような部品が中国製なのか
テスラがサプライヤーに中国製部品の調達停止を求めている件で、最も代替が困難で焦点となっている部品は、やはりEVの心臓部であるバッテリーです。
現在、中国製が多い主要な部品
- LFP(リン酸鉄リチウム)電池:
- これが現在、最大の難関とされています。
- 中国のCATL(寧徳時代)は、テスラにとってLFP電池の中核サプライヤーであり、価格競争力において非常に優位性があります。
- テスラは、特に中国製LFP電池を搭載した車両を米国でも販売していました。
- 報道によると、テスラが依存しているバッテリー部品の約60%近くが現在、中国企業によるものだとされています。
その他の一般的な自動車部品
LFPバッテリーが最も目立っていますが、一般的な自動車のサプライチェーンにおいて、中国はチップ(半導体)や様々な材料、金属ケーシング、シートカバーなど、広範な部品の主要な生産・輸出国です。テスラが「中国製部品の排除」を要求しているのは、これらの広範な部品も含めて、米国で生産される車両から中国依存を減らすためと考えられています。
テスラは、この依存を減らすため、テキサス工場での独自電池生産能力の拡大や、パナソニック、LGエナジーソリューションといった他の国や地域のサプライヤーとの連携強化を進めています。

テスラ車で中国製の割合が高いのは、CATL製のLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーが最も重要です。その他、チップやシートカバー、金属ケーシングなど、広範なサプライチェーンで中国製部品が使用されています。
LFP(リン酸鉄リチウム)電池の代替先候補はどこか
テスラが中国製LFP(リン酸鉄リチウム)電池の代替先として注目し、調達を強化している、または戦略的に連携を深めている主な候補は以下の通りです。
主要な代替先候補(中国以外)
- 韓国企業
- LGエナジーソリューション (LGES):
- テスラと大規模なLFP電池供給契約を締結したと報じられています。
- 特に北米地域での生産能力を増強しており、エネルギー貯蔵用途などでの供給が期待されています。
- サムスンSDI:
- LFPバッテリーの供給能力を持ち、テスラを含む主要な自動車メーカーへの供給拡大が注目されています。
- LGエナジーソリューション (LGES):
- 日本企業
- パナソニック:
- テスラは主にパナソニックのNCA/NCM(三元系)電池を使用していますが、日本製の電池供給量を増やす新規契約や連携を強化しています。
- パナソニックはLFP電池の技術開発も進めており、テスラの多角的な調達戦略の一翼を担う可能性があります。
- パナソニック:
テスラ自身の取り組み
テスラは外部からの調達だけでなく、自社での生産能力拡大も重要な代替戦略としています。
- テキサス工場での独自電池生産:
- テキサス州の工場で、2024年第2四半期頃から独自にバッテリーの生産能力を拡大・稼働開始する計画が進められています。
この動きは、米国のインフレ抑制法(IRA)の税制優遇を受けるためにも、部品の現地調達比率向上は不可欠であり、地政学的なリスク回避と法的な優遇措置の両方を狙った戦略と言えます。

LFP電池の代替先候補は、主に韓国のLGエナジーソリューションやサムスンSDI、そして日本のパナソニックが挙げられます。テスラは自社によるテキサス工場での電池生産も強化し、中国依存からの脱却を目指しています。
金属ケーシングとは何か
「金属ケーシング」は、主に以下の2つの役割を指しています。
1. EVバッテリーの「筐体(きょうたい)」
電気自動車(EV)において、バッテリーセルやバッテリーパック全体を保護する金属製の外装(ケース)を指します。
- 役割:
- 保護: 衝突時の衝撃から高電圧のバッテリーを保護します。
- 安全性: 内部の熱暴走や発火を防ぐための構造を持ちます。
- 軽量化: EVの航続距離に直結するため、アルミニウムなどの軽量素材が使われます。
- 文脈: テスラが中国製LFPバッテリーから脱却する際、そのバッテリーパックを構成するケーシング(筐体)も中国サプライヤーからの調達が多い部品の一つです。
2. EVモーターやトランスミッションの「外殻」
EVの駆動系(モーターやギアボックスなど)の主要な部品を収める金属製のハウジング(外枠)を指します。
- 役割:
- 構造: モーターや駆動部品を固定し、全体の強度を保ちます。
- 冷却: 内部で発生する熱を外部に逃がす冷却経路や構造を兼ねることもあります。
- 保護: 外部の水分や異物の侵入を防ぎます。

金属ケーシングは、EVのバッテリーパック全体やモーターなどの駆動部品を、外部の衝撃や環境から保護するために使用される金属製の外装(筐体)です。衝突時の安全性確保や、熱対策、軽量化に重要な役割を果たします。
金属ケーシングの代替先はどこか
テスラが中国製部品からの脱却を進める中で、金属ケーシングの代替先としては、特にアジア諸国や北米の現地生産が候補になると考えられます。
主な代替先候補と戦略
金属ケーシング(バッテリー筐体やモーターハウジング)のような大規模な製造部品の代替先には、以下の戦略が複合的に採用されると見られます。
1. メキシコおよび北米の現地生産
テスラが米国向けEVから中国製部品を排除する方針であること、また米国のインフレ抑制法(IRA)の税制優遇を受けるためには、北米内での部品調達が有利であることから、以下の動きが加速しています。
- サプライヤーの移転: 中国を含む既存のサプライヤーに対し、メキシコや米国での工場建設や生産移管を促しています。メキシコは地理的に近接しており、物流コストや関税リスクの低減に役立ちます。
2. アジアの他国への分散
地政学的リスクを分散させるため、中国と台湾以外のアジア諸国への調達先の多角化が進んでいます。
- 日本・韓国: テスラと強い協力関係にある日本のサプライヤーや、バッテリー分野で主導的な役割を果たす韓国のサプライヤーが、ケーシングなどの関連部品の供給を強化する可能性があります。
- 東南アジア: 人件費や運営コストが比較的安価な東南アジア諸国(例:タイ、ベトナム、インドネシアなど)も、製造拠点の移転先として検討されています。
金属ケーシングは、アルミニウムの鋳造・加工が重要な技術となるため、テスラは、これらの技術を持つ企業が北米やアジアの代替地に生産拠点を設けるよう誘導していると推測されます。

金属ケーシングの代替先は、北米での現地生産(特にメキシコや米国)が最有力です。また、日本・韓国のサプライヤーの活用や、東南アジア諸国への製造拠点分散も進められ、中国依存の低減が図られます。

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