FCV(燃料電池車)の動向 FCVと何か?普及を妨げている理由は何か?

この記事で分かること

・FCVと何か:FCVとは水素と酸素を反応させて電気を発生させる燃料電池を搭載した電動車のことです。環境にやさしく、水素充填の時間が短い、長い航続距離を持つなどの特長があります。

・なぜ普及していないのか:コスト、電気自動車との競争、水素の供給、政府による支援不足などによって、普及に苦戦しています。

・FCVが期待される領域はどこか:商用車、特にFCVトラックはFCVの特性を活かしやすいため、中国を中心に実証実験、普及が進んでいます。

FCV(燃料電池車)の動向

 大きな期待に反し、FCV(燃料電池車)に普及はあまり進んでいません。

中国はFCVでも主導権を握るのか、「現状苦しい」普及へ2つの打開策
 「10年前の予測より燃料電池車(FCV)の普及は進んでいない。現状は苦しい」――。こう危機感を語るのは日系自動車メーカーの技術者である。販売台数が大きく伸びず、足踏み状態が続くFCV。普及への糸口として、見えてきたのが「商用車向けFC(燃料電池)」と「中国」という2つのキーワードだ。

 自動車メーカー各社は水素社会実現のために、バリューチェーンの構築などに取り組んでいますが、FCVの販売台数が伸び悩んでいます。

燃料電池車:FCVとは何か

 燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)とは、水素と酸素を反応させて電気を発生させる「燃料電池」を搭載した電動車のことです。発生した電気でモーターを駆動し、車を走らせます。

燃料電池車の仕組み

  1. 水素供給:車両のタンクに貯蔵された水素を燃料電池に供給。
  2. 電気の発生:燃料電池で水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気を生成。
  3. 駆動:発生した電気を使ってモーターを動かし、車を走らせる。
  4. 排出物:化学反応の結果、水(H₂O)のみを排出。

燃料電池車の特徴

環境に優しい:CO₂を排出せず、走行時の環境負荷が少ない。
短時間での水素充填:バッテリーEVよりも短時間(約3~5分)で燃料補給可能。
長い航続距離:1回の水素補給で500~800km走行可能(車種による)。

⚠️ 課題

  • 水素ステーションが少ない(インフラ整備が必要)。
  • 車両価格が高い(技術開発が進めばコストダウンの可能性あり)。
  • 水素の製造・輸送コストが高い(再生可能エネルギーを活用した水素製造が鍵)。

代表的なFCVには、トヨタの「MIRAI(ミライ)」やホンダの「クラリティFUEL CELL」などがあります。

FCVとは水素と酸素を反応させて電気を発生させる「燃料電池」を搭載した電動車のことです。環境にやさしく、水素充填にかかる時間が短い、長い航続距離を持つなどの特長があります。

FCVはなぜ、苦戦しているのか

 FCV(燃料電池車)が苦戦している主な理由は、以下のいくつかの要因に起因しています。

1. 高コスト

 燃料電池車は、高価な燃料電池システムを搭載しているため、製造コストが非常に高いです。

 水素を貯蔵するための高圧タンクや、燃料電池自体の技術がまだ高コストであり、これが車両価格に反映されています。

 また、水素の製造・供給インフラも整っていないため、消費者が購入するインセンティブが少ないです。

2. インフラの不足

 水素ステーションが世界的に少なく、特に発展途上国や都市部外では充填ステーションの整備が遅れています。これにより、FCVは使用する場所やシチュエーションが限られてしまうため、普及が進みにくい状況にあります。

3. 競争力のある代替技術 

 バッテリーEV(電気自動車)は、充電インフラが急速に普及しており、技術も進化しています。バッテリー価格は急速に低下しており、充電時間や航続距離の改善が進んでいます。

 これに対して、FCVは充填インフラの整備や水素の供給コストが課題となっており、現段階ではバッテリーEVと比べて競争力に欠けています。

4. 水素の供給と製造コスト

 水素は再生可能エネルギーを使って製造することが最適ですが、その製造プロセスや輸送コストが非常に高いです。

 現在主流の化石燃料由来の水素(グレー水素)の使用は、環境負荷が高く、真の脱炭素社会に向けた進展には限界があります。この水素製造のコストが低下しない限り、FCVの普及は難しいとされています。

5. 消費者の関心と認知度

 一般消費者にとって、FCVの認知度はまだ低く、購入を決める際の障壁となります。また、バッテリーEVの選択肢が増え、補助金や税制優遇も充実しているため、FCVに対する需要は限定的です。

6. 政府の支援不足

 多くの国では、バッテリーEVに対する支援が強化されているのに対して、FCVへの支援がまだ不十分な場合が多いです。

 中国や日本では、FCVに対する補助金や税制優遇措置があるものの、それでも水素ステーションの設置や技術開発に対する投資が十分ではなく、普及の足かせとなっています。

コスト、電気自動車との競争、水素の供給、政府による支援不足などによって、普及に苦戦しています。

FCVに力を入れている国はどこか

 以下のように中国はFCVの普及に力を入れており、販売台数は年々増加しています。

1. 実証実験と普及状況

 中国では、燃料電池自動車(FCV)の実証が積極的に進められており、2024年時点で約1万5000台のFCVが実証運行されています。​これらの車両は主に商用トラックやバスなどの大型車両で、水素ステーションも150カ所以上設置されています。

2. 国内企業の取り組み

  • 上汽紅岩(SAIC Hongyan):​2021年10月、内モンゴル自治区オルドス市で年間1万台規模の燃料電池重型トラックの生産を目指すプロジェクトを開始しました。

3. 外資系企業の参入

  • トヨタ自動車:​2024年8月、北京で燃料電池の研究開発および生産を行う新工場を稼働開始しました。​この工場では、燃料電池システムの研究から量産、販売、サービスまでを一貫して行う体制を整えています。
  • ホンダ:​2023年1月、東風汽車集団と共同で、ホンダの燃料電池システムを搭載した商用トラックの走行実証実験を湖北省で開始しました。​この実験では、実走行を通じて環境適合性や燃費性能、耐久性などを検証しています。
  • 現代自動車(Hyundai):​中国市場への参入を進めており、上海や北京などの大都市で水素プラットフォームを構築し、2030年までに2万7000台の燃料電池トラックを販売する計画を発表しています。 ​

4. 産業連携と研究開発

 2020年6月、トヨタ自動車は中国の主要自動車メーカーや技術企業と共同で、商用車用の燃料電池システムの研究開発会社「連合燃料電池システム研究開発(北京)有限公司」を設立しました。​この連携により、中国市場に適した燃料電池システムの開発と普及が進められています。

中国では政府の支援と国内外企業の積極的な取り組みにより、燃料電池トラックの開発と普及が加速しています。​今後も技術革新やインフラ整備が進むことで、さらなる市場拡大が期待されています。

中国が特に力を入れているFCVはどんな領域か

 中国では、商用車、特にFCVトラックに力を入れています。

1. CO₂排出削減と環境政策

中国は世界最大のCO₂排出国であり、特に物流・輸送部門は温室効果ガスの排出量が多い分野です。

  • 2030年までのカーボンピークアウト(CO₂排出量のピーク)
  • 2060年までのカーボンニュートラル(炭素中立)

この目標を達成するため、バッテリーEV(BEV)と並び、FCV(特にトラック・バスなどの商用車)が重視されています。

2. 長距離輸送に適している

燃料電池車(FCV)は、特に長距離輸送向けの大型トラックに適しています。

  • バッテリーEVより航続距離が長い(FCトラックは1回の水素充填で500~800km走行可能)
  • 充填時間が短い(水素補給は約5分、EVトラックの充電は数時間)
  • 積載量の影響が少ない(EVトラックはバッテリーが重いため積載量が減るが、FCトラックは軽量化可能)

中国は広大な国土を持ち、都市間輸送が重要なため、FCトラックの優位性が活かされます。

3. 商用車は政府支援を受けやすい

中国政府は乗用車よりも商用車向けに水素エネルギー政策を強化しています。

  • 水素ステーションの設置コストが高いため、限られたエリアで利用される商用車が適している
  • 政府の補助金や税制優遇が手厚い(2025年までに5万台のFCV導入計画)
  • 国家重点プロジェクトとして産業支援(地場企業や外資との連携による技術開発)

4. 国際競争力の強化

中国はEV市場で世界をリードしていますが、FCV市場では欧米や日本に対して遅れを取っていました。しかし、

  • 水素燃料電池技術の開発(BYD、上汽集団、吉利汽車などのメーカーが開発を強化)
  • 欧米・日本と競争できる輸送分野の確立(商用車なら市場参入のチャンスが大きい)

という戦略のもと、FCトラックを先に普及させることで、水素エネルギー市場の主導権を握ろうとしています。

中国は、環境政策の推進、長距離輸送に適している技術特性、政府支援の受けやすさ、国際競争力の向上などの理由からFCVトラックに力を入れています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました