JX金属の特徴 半導体用スパッタリングターゲット材とは何か?高い純度を実現する方法は?

この記事で分かること

  • JX金属とは:半導体やスマートフォンに不可欠な先端素材で世界トップシェアを誇る企業です。特にスパッタリングターゲット材や圧延銅箔に強みを持っています。
  • スパッタリングターゲット材とは:半導体回路の形成では、真空中でイオンをぶつけて原子を弾き飛ばし、ウェーハ上にナノ膜を形成しています。JX金属は、この材料の純度を極限まで高める技術で世界をリードしています。
  • 高純度の実現方法:電気分解(電解精製)で99.99%まで純度を高め、金や銀を分離します。先端素材向けには、さらに特殊な薬品による抽出や、真空中で電子ビームを当てて不純物を蒸発させる高度なプロセスを重ね、不純物を10億分の1レベルまで排除しています。

JX金属

 非鉄金属業界の成長、拡大

 2025年の非鉄金属業界は、世界的な「脱炭素(グリーントランスフォーメーション:GX)」と「AIインフラの爆発的拡大」という2大トレンドを追い風に、多くの企業が好調な業績を維持、あるいは拡大させています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17COY0X11C25A0000000/

 今回は代表的な非金属業界の企業であるJX金属に関する記事となります。

JX金属とは

 JX金属は、世界最大級のエネルギー企業であるENEOSホールディングス傘下(※2025年上場準備中)の非鉄金属メーカーです。

住友金属鉱山や三菱マテリアルと並ぶ「非鉄大手3社」の一角ですが、特に**「先端素材(半導体・IT向け)」に極めて強い**という際立った特徴があります。


1. JX金属の3大強み

  • 半導体用スパッタリングターゲット材:世界シェア約60% 半導体の微細な配線を作るために不可欠な材料で、世界トップシェアを誇ります。
  • 圧延銅箔(あつえんどうはく):世界シェア約80% スマートフォンやタブレットを折り曲げ可能にする「フレキシブル基板」に使われる極薄の銅箔で、圧倒的なシェアを持っています。
  • 高純度化技術の極致 「99.9999999%(ナインナイン)」という、不純物を極限まで排除した超高純度銅を製造できる世界トップクラスの技術力が、AIチップなどの最先端半導体を支えています。

2. ビジネスモデルの転換

 かつては「資源開発(鉱山)」に重きを置いていましたが、現在は「先端素材」と「リサイクル」への集中投資に舵を切っています。

  • 脱・資源依存: リスクの大きい鉱山権益の一部を売却し、収益性の高い半導体材料事業へ経営資源を集中させています。
  • ハイブリッド製錬: 天然の鉱石と、E-Scrap(電子ゴミ)などのリサイクル原料を同時に効率よく製錬する独自の「グリーンハイブリッド製錬」を推進しています。

3. 他社とのポジション比較

  • 住友金属鉱山: 「資源・鉱山」に強み
  • 三菱マテリアル: 「加工(工具)・リサイクル」に強み
  • JX金属: 「先端素材(半導体材料)」に強み

半導体やスマートフォンに不可欠な先端素材で世界トップシェアを誇る企業です。特にスパッタリングターゲット材や圧延銅箔に強みを持ち、2025年からは資源依存を脱し、AI・IT社会を支える素材メーカーへの変革を加速させています。

半導体用スパッタリングターゲット材とは何か

 半導体用スパッタリングターゲット材とは、半導体チップの内部にある超微細な配線や膜を作るためのスタンプのインク」のような材料です。JX金属がこの分野で世界シェア60%を誇る、極めて重要な先端素材です。


1. 形状

 通常、数ミリ〜十数ミリの厚さを持った、直径30cm(12インチウェーハ用)程度の円盤状の金属の板です。見た目はただのきれいな金属板ですが、中身は不純物を極限まで排除した「超高純度」な塊です。

2. どのように使うのか(仕組み)

 「スパッタリング」という技術を使って、このターゲット材から原子を叩き出し、シリコンウェーハの上に薄い膜を形成します。

  1. 真空装置に入れる: ターゲット材とウェーハを向かい合わせに設置します。
  2. イオンをぶつける: アルゴンなどのイオンを、ターゲット材の表面に猛スピードで衝突させます。
  3. 原子が飛び出す: 衝撃でターゲット材の原子が弾き飛ばされます(これをスパッタ現象と呼びます)。
  4. 膜になる: 飛び出した原子がウェーハの表面に付着し、ナノレベル(100万分の1ミリ単位)の薄い膜が重なって回路が作られます。

3. なぜJX金属が強いのか

 半導体が微細化(高性能化)するほど、材料に少しでも不純物が混じると回路がショートしてしまいます。

  • 超高純度: JX金属は、不純物を「99.9999%(シックスナイン)」以下に抑える圧倒的な精製技術を持っています。
  • 均一な結晶: ターゲット材のどこを叩いても同じように原子が飛び出すよう、金属の「結晶の向き」までコントロールしています。

半導体回路の配線や膜を作るための「回路の素(もと)となる金属板」です。真空中でイオンをぶつけて原子を弾き飛ばし、ウェーハ上にナノ膜を形成します。JX金属は、この材料の純度を極限まで高める技術で世界をリードしています。

どのように高純度化するのか

 銅を高純度化するプロセスは、大きく分けて一般的な製品に使われる「4N(純度99.99%)」レベルまでの精製と、半導体などの先端素材に使われる「6N(99.9999%)〜9N(99.9999999%)」レベルまでの超高純度化の2段階があります。


1. 一般的な高純度化:電解精製(4Nレベル)

 鉱石から取り出した純度99%の銅(粗銅)を、電気の力で99.99%まで高める工程です。

  • 仕組み: 硫酸銅の溶液に、プラス極(粗銅)とマイナス極(純銅の薄い板)を入れ、電気を流します。
  • 分離: 銅だけがイオンとなって溶け出し、マイナス極に吸い寄せられて純粋な銅として付着します。
  • 不純物の行方: 金や銀などの貴金属は溶けずに底に沈み(陽極泥)、鉄やニッケルは液中に溶け残るため、銅だけをきれいに取り出せます。

2. 超高純度化:高度な精製技術(6N〜9Nレベル)

 半導体の配線材料(ターゲット材)などには、さらに数段階上の純度が求められます。ここでは以下の高度な技術が組み合わされます。

  • 溶媒抽出法 / イオン交換法: 薬品を使い、特定の不純物イオンだけを化学的に吸着・除去します。
  • 溶融塩電解(ようゆうえんでんかい): 水溶液ではなく、高温で溶かした塩(えん)の中で電気分解を行うことで、通常の水溶液中では除去しにくい不純物も分離します。
  • 真空溶解・電子ビーム溶解: 真空中で金属に電子ビームを当てて溶かします。金属中のガス成分(酸素や窒素)や、蒸発しやすい不純物を気体として追い出します。

電気分解(電解精製)で99.99%まで純度を高め、金や銀を分離します。先端素材向けには、さらに特殊な薬品による抽出や、真空中で電子ビームを当てて不純物を蒸発させる高度なプロセスを重ね、不純物を10億分の1レベルまで排除した「超高純度銅」を作り上げます。

2025年の業績はどうか

 2025年のJX金属(現・JX金属ダニエルズ)の業績は、親会社のENEOSホールディングスからの「上場準備」という大きな節目の中で、半導体・AI市場の活況を追い風に非常に好調な推移を見せています。


1. 先端素材事業が「AI特需」で過去最高水準

 最大の収益源である「半導体用スパッタリングターゲット材」が、AIサーバー向けの高性能チップ製造拡大により、極めて高い稼働率を維持しています。

  • 高付加価値化: 従来のスマホ向け以上に、高純度で微細な加工が必要なAIチップ向け製品の比率が高まったことで、利益率が向上しています。

2. 圧延銅箔の回復

 一時低迷していたスマートフォン市場の回復や、折りたたみ型デバイスの普及加速により、世界シェア約80%を誇る「圧延銅箔」の出荷量が回復し、業績を下支えしています。

3. 上場に向けた構造改革の結実

 2025年は、上場(IPO)を視野に入れた「稼ぐ力の強化」が具体的な数字として現れた年です。

  • カセロネス銅鉱山の売却完了: リスクの大きい鉱山事業から、収益の安定した先端素材・リサイクル事業へ資産をシフトしたことで、投資家から評価されやすい高収益体質へと転換しています。

4. グリーンハイブリッド製錬の寄与

 天然鉱石とリサイクル原料を効率よく混ぜて製錬する手法が安定稼働し、銅価格が高騰する中で「原料の安定確保」と「環境価値(低炭素銅)」の両立が、顧客からの選別受注につながり利益に貢献しています。


2025年の業績は、AI向け半導体材料の爆発的需要により極めて堅調です。不採算の資源事業を整理し、高付加価値な先端素材へ集中した「上場に向けた構造改革」が功を奏し、利益水準・成長性ともに高い評価を得ています。

リサイクル事業でのJX金属と三菱マテリアルの違いは

 リサイクル事業において、JX金属と三菱マテリアルは共に世界トップクラスですが、その「戦い方(得意分野)」「リサイクルの目的」に明確な違いがあります。

 三菱は「貴金属の回収量」、JXは「ハイテク素材への再利用」に最大の強みを持っています。


1. 三菱マテリアル:世界最大の「集荷・処理能力」

 三菱マテリアルは、世界中からE-Scrap(電子基板)を大量に集め、効率よく処理する「規模の経済」で勝負しています。

  • 特徴: 直島製錬所(香川県)などを拠点に、世界最大級の受入能力を誇ります。
  • 強み: 「金・銀・銅・パラジウム」などの貴金属を、いかに安く、大量に、確実に取り出すかというプロセスに特化しています。
  • ビジネスモデル: 世界中のリサイクル業者から基板を買い付け、そこから貴金属を取り出して売却する「都市鉱山の商社・製錬所」としての性格が強いです。

2. JX金属:先端素材への「クローズドループ」

 JX金属は、回収した金属をただ売るのではなく、自社の「先端素材(半導体材料など)の原料」として再び活用することに重きを置いています。

  • 特徴: 鉱石とリサイクル原料を同時に処理する「グリーンハイブリッド製錬」を推進。
  • 強み: 非常に純度の高いリサイクル技術を持ち、回収した銅を再び「半導体用の超高純度銅」や「極薄銅箔」に戻す能力があります。
  • ビジネスモデル: 自社製品のユーザー(IT・家電メーカー)から廃棄物を回収し、再び製品にして返す「循環型(クローズドループ)」の構築を目指しています。

3. 主な違いの比較表

項目三菱マテリアルJX金属
最大の武器圧倒的な処理量とネットワーク超高純度化と素材への再加工
主なターゲット金・銀・銅などの貴金属全般銅・レアメタル(コバルト等)
今後の焦点海外(欧米)での集荷・拠点拡大EV電池リサイクルの技術確立

三菱マテリアルは「量」の王者で、世界中から集めた廃棄基板から貴金属を効率よく抽出する能力に長けています。対してJX金属は「質」の王者で、回収した金属を自社の高付加価値な半導体材料に再び蘇らせる技術力に強みがあります。

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