三菱マテリアルの特徴 E-Scrapとは何か?リサイクルの方法は?

この記事で分かること

  • 三菱マテリアルとは:世界トップクラスの貴金属リサイクル技術と金属加工(超硬工具)に強みを持つ企業です。現在は環境負荷を抑えた「資源循環型」のビジネスモデルへの変革を強力に推進しています。
  • E-Scrapとは:スマホやPCの廃棄基板のことで、金や銅などの貴金属を高濃度に含む「都市鉱山」の資源です。天然鉱石より効率よく金属を回収できるのが特徴です。
  • E-Scrapのリサイクルの方法:まず高温の炉で基板を溶かし、燃え尽きる樹脂や不要なガラスを分離して「貴金属を含んだ銅の塊」を作ります。これを液体の中で電気分解し、銅を純化させつつ、底に沈んだカスから金や銀などの貴金属を精密に回収します。

非鉄金属業界:三菱マテリアル

2025年の非鉄金属業界は、世界的な「脱炭素(グリーントランスフォーメーション:GX)」と「AIインフラの爆発的拡大」という2大トレンドを追い風に、多くの企業が好調な業績を維持、あるいは拡大させています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17COY0X11C25A0000000/

 今回は、三菱マテリアルに関する記事となります。

三菱マテリアルはどんな企業か

 三菱マテリアルは、住友金属鉱山と並ぶ日本の非鉄金属大手ですが、その性格は大きく異なります。一言で言えば、「リサイクルと加工に強い、資源を自ら循環させる総合素材メーカー」です。


1. 三菱マテリアルの3大強み

  • 世界トップ級のリサイクル能力: 「E-Scrap」と呼ばれる家電・PC基板などの電子廃棄物から貴金属を回収する能力が世界最大級です。2026年以降、欧米での製錬所新設など「資源循環ビジネス」への変革を加速させています。
  • 強力な「加工」部門(超硬工具): 金属を削るための「超硬工具」で世界シェア上位です。自動車や航空機、半導体製造に不可欠なツールを自社で開発・生産しています。
  • 低リスクな収益構造: 自社鉱山を多く持つ住友金属鉱山に対し、三菱マテリアルは「権益は少なめ、製錬・加工能力は強め」という構成です。そのため、金属価格の激しい上下変動による影響を受けにくい安定感があります。

2. 住友金属鉱山との主な違い

項目三菱マテリアル住友金属鉱山
得意な金属銅、タングステン(リサイクル)ニッケル、金、銅
強みの源泉加工技術(工具)、リサイクル資源開発(鉱山)、電池材料
性格市況に左右されにくい「実需型」市況で大きく稼ぐ「資源型」
2026年の焦点資源循環ビジネスのグローバル展開EV電池リサイクルと新鉱山フル操業

3. 2025年度〜2026年の業績動向

 2025年度(2026年3月期)は、自動車向け需要の回復遅れや、製錬手数料(TC/RC)の低下という厳しい局面もありましたが、銅価格の上昇AIサーバー向け銅加工品の好調が下支えしています。

 2026年からは「資源循環ビジネスで未来を創る」という新中期経営計画をスタートさせ、質への転換を急いでいます。


三菱マテリアルは、世界トップクラスの貴金属リサイクル技術と金属加工(超硬工具)に強みを持つ企業です。住友金属鉱山と比較して「資源市況に左右されにくい安定性」が特徴で、現在は環境負荷を抑えた「資源循環型」のビジネスモデルへの変革を強力に推進しています。

E-Scrapとは何か

 E-Scrap(E-スクラップ)とは、「金・銀・銅などの貴重な金属を豊富に含む、電子機器の廃棄基板」のことです。「都市鉱山」の主役とも言える存在で、以下のような特徴があります。


1. どこから出るのか

 家庭やオフィスで使い終わったスマートフォン、パソコン、家電、サーバーなどを解体・破砕した際に出てくる「プリント基板」が主な原料です。

2. 何が含まれているのか

 普通の鉱山から採れる鉱石よりも、はるかに高い濃度で金属が含まれています。

  • 主要な回収金属: 金、銀、銅、パラジウム、白金(プラチナ)
  • 効率の良さ: 1トンの金鉱石から数グラムの金しか採れないのに対し、E-Scrap 1トンからはその数十倍〜数百倍の金が回収できる場合もあります。

3. 三菱マテリアルの強み

 三菱マテリアルはこのE-Scrapの処理能力で世界トップクラスです。

  • 独自の製錬技術: 基板に含まれるプラスチックを燃やした熱を再利用したり、不純物を効率よく取り除く高度な製錬炉(三菱連続製銅法など)を持っています。
  • 世界中から集荷: 日本国内だけでなく、北米や欧州など世界中からこの「お宝の山」を集めてリサイクルしています。

スマホやPCの廃棄基板のことで、金や銅などの貴金属を高濃度に含む「都市鉱山」の資源です。天然鉱石より効率よく金属を回収できるのが特徴で、三菱マテリアルはこの処理能力で世界最大級のシェアを誇ります。

どのように不純物を取り除くのか

 E-Scrap(電子基板)から不純物を取り除き、金や銅を取り出す工程は、主に「乾式製錬(溶かす)」「電解精製(電気で分ける)」を組み合わせて行われます。

 三菱マテリアルなどが得意とする、一般的な流れは以下の通りです。


1. 溶解:熱の力で「プラスチック」と「金属」を分ける

 まず、E-Scrapを巨大な製錬炉(溶鉱炉)に投入します。

  • プラスチックの除去: 基板の土台である樹脂などは高温で燃え尽きます。この時、プラスチック自身が「燃料」の代わりとなり、エネルギー効率を高めます。
  • 不純物の分離: 基板に含まれるガラス繊維や、鉄・アルミなどの一部は「スラグ」と呼ばれる石のようなカスになり、表面に浮き上がるので取り除かれます。

2. 濃縮:銅に「金・銀」を溶かし込む

 炉の底には、溶けた「粗銅(そどう)」が残ります。

  • ポイント: 金や銀、パラジウムなどの貴金属は銅に溶け込みやすい性質があるため、まずは「貴金属がたっぷり混ざった銅の塊」を作ります。

3. 電解精製:電気の力で「純銅」と「貴金属」に分ける

最後に、この銅の塊を硫酸のプールに入れ、電気を流します。

  • 純銅の回収: 銅だけが電気に引かれて反対側の板に付着し、純度99.99%の銅になります。
  • 貴金属の沈殿: 銅に溶け込んでいた金や銀などは、電気に反応せずプールの底に沈みます。これを「陽極泥(ようきょくでい)」と呼び、ここからさらに金や銀を個別に抽出します。

まず高温の炉で基板を溶かし、燃え尽きる樹脂や不要なガラスを分離して「貴金属を含んだ銅の塊」を作ります。これを液体の中で電気分解し、銅を純化させつつ、底に沈んだカスから金や銀などの貴金属を精密に回収します。

AIサーバー向け銅加工品とはどんなものか

 三菱マテリアルがAIサーバー向けに展開している銅加工品は、主に「電力効率の向上」「熱管理(放熱)」を支える高度な部品・材料です。

 AIサーバーは従来のサーバーよりも膨大な電力を消費し、激しい熱を発するため、導電性と放熱性に優れた銅加工品の重要性が急増しています。主な製品は以下の通りです。

1. バスバー(導電板)

 サーバーラックや電源ユニット内で大電流を流すための太い導電板です。

  • 特徴: AIサーバーの消費電力増大に伴い、効率よく安定して電力を供給するために、高純度で電気抵抗が極めて低い銅が使用されます。
  • 三菱マテリアルの強み: 複雑な形状への加工技術や、接続部の抵抗を抑える表面処理技術に長けています。

2. ヒートスプレッダ・放熱基板

 GPUやCPUなどの高性能チップから出る熱を素早く逃がすための部品です。

  • 特徴: 銅はアルミニウムなど他の金属に比べて熱伝導率が非常に高いため、熱を拡散させる「ヒートスプレッダ」の素材として最適です。
  • 製品例: チップと冷却装置(ヒートシンク)の間に配置される高精度な銅板などがあります。

3. 直接接合銅基板(DBC基板など)

 パワー半導体や高出力チップを搭載するための、絶縁体と銅を直接接合した基板です。

  • 特徴: 高い絶縁性を保ちながら、チップの熱を基板側へ効率よく逃がす構造になっています。AI学習用のアクセラレータなどの高負荷環境で威力を発揮します。

4. 銅合金材料(リードフレーム等)

 半導体パッケージの内部でチップを支え、外部端子とつなぐ役割を果たします。

  • 特徴: 強度を保ちつつ、AI処理の高速化に対応できるよう高い導電性を維持した独自の合金が供給されています。

AIの熱管理や大電力供給を支える高機能材料です。具体的には、大電流を流す「バスバー」や、CPU/GPUの熱を逃がす「ヒートスプレッダ」用の銅合金(MZC1等)を提供し、サーバーの安定稼働に貢献しています。

超硬工具とは何か

 超硬(ちょうこう)工具とは、「ダイヤモンドに次ぐ硬さ」を持つ超硬合金を刃先に使った、非常に強力な切削・加工用の道具のことです。

 三菱マテリアルはこの分野で国内トップシェアを誇っており、自動車や航空機の部品、スマートフォンの精密な金型などを削り出すために不可欠な存在です。


1. 超硬工具の特徴

 超硬工具は、単なる硬い金属ではなく、「コンクリート」のような構造をしています。

  • 材料: 非常に硬いタングステンの粉末(石の役割)を、粘りのあるコバルト(セメントの役割)で焼き固めたものです。
  • 硬度: 鉄やステンレスよりもはるかに硬く、高温になってもその硬さが変わりません。
  • 重さ: 鉄の約2倍の重さがあり、金(ゴールド)とほぼ同じくらいのずっしりとした重量感があります。

2. なぜAIや脱炭素で注目されるのか

 現代の製品は、より軽く、より丈夫にするために「非常に硬い材料」を使うようになっています。

  • 難削材の加工: 航空機のチタンやEVの軽量部品などは、普通の刃物ではすぐにボロボロになってしまいます。これらを高速・高精度で削るために、超硬工具が「産業の塩」として機能しています。
  • 精密な金型: AIチップを製造するための超微細な金型を作る際にも、1マイクロメートル以下の精度で削り続ける耐久性が求められます。

三菱マテリアルの「タングステン・リサイクル」

 超硬工具の主原料であるタングステンは、非常に希少なレアメタルです。三菱マテリアルは、古くなった超硬工具を回収し、再び新しい工具の原料に戻すリサイクル事業でも世界をリードしています。


超硬工具とは、タングステンを主成分とする超硬合金製の強力な刃物です。ダイヤモンドに次ぐ硬さと優れた耐熱性を持ち、自動車や航空機、半導体部品などの硬い素材を精密に削り出すために不可欠な、モノづくりの基盤となる道具です。

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