フォードとCATLの提携 政治的リスクの中で提携した理由は?CATLのコスパの良さの理由?

この記事で分かること

  • CATLとの提携内容:CATLが持つ安価で耐久性の高いLFP電池の技術を導入することで、製造コストを大幅に削減し、テスラや中国メーカーに対抗する狙いがあります。
  • 政治的リスクの中で提携した理由:韓国勢(LG、SK On)やパナソニックなどとも提携していますが、「低価格EV向けのLFP電池」に関しては、他社に代替案がなかったため、CATLと提携しています。
  • CATLのコスパの良さ:安価な材料の活用や中間マージンを排除する垂直統合、 部品を減らすCTP技術や超高速の自動化ラインによる製造コストと部材費を削減などがコスパに優れる理由です。

フォードとCATLの提携

 フォードが世界最大手の車載電池メーカーである中国のCATL(寧徳時代新能源科技)との提携を決めています。

https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-12-24/T7R18QT9NJLU00

 米中対立という非常に難しい政治情勢の中で、フォードがEV(電気自動車)のコスト競争力を確保するための「背に腹は代えられない戦略」といえます。

フォードはなぜCATLと提携したのか

 フォードがCATLと提携した最大の理由は、「低価格なEVを速やかに市場へ投入し、中国メーカーとの競争に勝つため」です。具体的には、以下の4つの戦略的メリットが背景にあります。


1. 「安くて丈夫」なLFP技術の獲得

 現在のEVの普及を妨げている最大の要因は、車両価格の高さです。CATLは、LFP(リン酸鉄リチウム)電池という技術で世界をリードしています。

  • コスト削減: 高価な希少金属(コバルトやニッケル)を使用しないため、従来の電池(NCM)より大幅に安く製造できます。
  • 耐久性と安全性: NCM電池に比べて寿命が長く、発火リスクも低いため、実用的な大衆車に向いています。
  • 自社開発の限界: フォードのジム・ファーリーCEOは、「自分たちでこの技術を確立するには10年はかかる」と述べており、時間を買うためにCATLのノウハウを必要としました。

2. 米国の補助金(IRA)への「アクロバティック」な対応

 米国では、中国製バッテリーを搭載したEVは優遇税制(最大7,500ドルの補助金)から除外される厳しいルールがあります。

  • 巧妙なスキーム: フォードは、工場を100%自社所有し、CATLからは「技術ライセンス」のみを受ける形をとりました。
  • 「メイド・イン・USA」の獲得: これにより、中国の技術を使いつつも、「米国資本の工場で生産された米国製バッテリー」という扱いを目指し、補助金を受け取れるようにしたのです。

3. 急成長する「蓄電池ビジネス」への転換

 2025年後半の動向として、EV市場の減速を受け、フォードはCATLとの提携を定置用蓄電池(BESS)分野にも広げています。

  • データセンターや再生可能エネルギー向けの大型蓄電池需要は急増しており、ここでも安価なLFP電池が不可欠です。
  • EVが売れないリスクを、成長著しいエネルギー事業で補完する戦略をとっています。

4. 中国メーカーへの対抗

 BYDなどの中国メーカーが安価なEVで世界を席巻し始める中、フォードは「中国の技術を拒絶するのではなく、それを取り込んで自国の雇用を守る」という現実的な選択をしました。


比較項目NCM電池(従来型)LFP電池(CATL提携)
主な材料ニッケル・コバルト・マンガン鉄・リン
コスト高い低い
航続距離長い普通(改善中)
寿命普通非常に長い
フォードの車種高性能F-150など普及版Mach-Eなど

 フォードにとってCATLは、「世界で最も安く、信頼性の高い電池を作るための唯一の近道」でした。米中対立という政治的リスクを承知の上で、ビジネスとしての生存を優先した決断といえます。

CATLが持つ安価で耐久性の高いLFP電池の技術を導入することで、製造コストを大幅に削減し、テスラや中国メーカーに対抗する狙いがあります。また、フォードが工場を所有し技術だけを借りる形式にすることで、米国の税制優遇(補助金)を受けつつ、自社での開発時間を短縮する実利も取っています。

中国企業以外の検討はしなかったのか

 フォードは当然、韓国勢(LGエナジーソリューション、SK On)やパナソニックなど、中国企業以外の選択肢も検討し、実際に大規模な提携を進めてきました。

 しかし、それでもあえてCATLと手を組んだのは、「特定分野(LFP電池)における中国企業の圧倒的な独走状態」があったからです。


1. 中国企業以外のメーカーとの「役割分担」

 フォードはCATLだけに頼っているわけではなく、用途に合わせてメーカーを使い分けています。

  • 韓国勢(LG・SK): 主に「NCM(三元系)電池」を担当。パワーがあり航続距離も長いが、価格が高いのが難点です。
  • CATL: 「LFP(リン酸鉄リチウム)電池」を担当。航続距離はやや短いが、圧倒的に安くて長持ちします。

 普及価格帯のEVを作るために必要な「安くて高品質なLFP電池」の技術と生産規模については、現在でもCATLをはじめとする中国勢が世界のシェアの大半を握っています。

2. 他社では代替できなかった理由

 フォードが他社ではなくCATLを選ばざるを得なかった主な理由は以下の通りです。

  • LFP技術の「空白地帯」: 韓国や日本のメーカーは長年、高性能なNCM電池に注力してきました。そのため、LFP電池の量産技術やコスト競争力では、中国企業に数年の遅れをとっていました。
  • 圧倒的なコスト差: 韓国メーカーもLFPの開発を急いでいますが、CATLはすでに巨大なサプライチェーンを構築しており、価格面で他社が太刀打ちできないレベルに達していました。
  • 特許とノウハウ: LFP電池に関する主要な特許や、効率的に安く作るノウハウ(Cell-to-Pack技術など)をCATLが多数保有しており、自社開発するよりもライセンスを受ける方が早いと判断されました。

3. 最近の動向:韓国勢との関係変化

 2025年末の最新状況では、フォードと韓国メーカーとの関係に大きな変化が出ています。

  • SK Onとの合弁解消: ケンタッキー州などで進めていたSK Onとの合弁事業を一部解消し、フォードが工場の所有権を買い取る動きを見せています。
  • LGとの契約終了: 2025年12月には、EV需要の減速に伴い、LGエナジーソリューションとの巨額の供給契約(約1兆円規模)を解消したと報じられました。

 中国以外の選択肢も検討し実行したが、低価格化を実現するにはCATLの技術を外すことが物理的に不可能だったというのが実情です。

フォードは韓国勢(LG、SK On)やパナソニックなどとも提携していますが、「低価格EV向けのLFP電池」に関しては、他社に代替案がありませんでした。

なぜCATLの電池はコスパに優れるのか

 CATLの電池が圧倒的なコストパフォーマンスを誇る理由は、単に「人件費が安い」からではありません。2025年現在、CATLは材料調達から製造工程、設計思想まで、電池の原価を下げるための仕組みを全方位で支配しています。


1. 原材料の「垂直統合」と圧倒的な規模

 CATLは電池を作るだけでなく、その「上流」である鉱山開発から関わっています。

  • 自社で鉱山を保有: リチウム、コバルト、グラファイトといった重要資源の採掘から精錬までを自社グループ内で行い、中間マージンを徹底的に排除しています。
  • 世界シェア約37%の規模: 世界最大の生産規模を持つため、材料を大量一括購入することで、他社が太刀打ちできないレベルの仕入れ価格を実現しています。

2. 「安価な材料」の極限活用(LFP電池)

 前述の通り、CATLは高価な希少金属を使わないLFP(リン酸鉄リチウム)電池の世界リーダーです。

  • 脱・希少金属: 1kWhあたりの製造コストは、韓国勢が得意とする三元系(NCM)電池に比べ、2025年時点で約15〜25%も安いとされています。

3. 「CTP(セル・トゥ・パック)」技術による設計革新

 従来の電池は「セル → モジュール → パック」という3段階で組み立てていましたが、CATLは中間の「モジュール」を省く技術を開発しました。

  • 部品点数の削減: モジュールを固定するためのフレームや配線を排除することで、部品点数を約30〜40%削減しました。
  • 空間効率の向上: 余計な部品が減った分、同じスペースに多くの電池を詰め込めるようになり、「安い電池でも長く走れる」という矛盾を解消しました。

4. 驚異的な工場の自動化と歩留まり

 CATLの「ライトアウト工場(無人工場)」は、世界で最も進んだ製造ラインの一つです。

  • 製造スピード: 1つの電池セルをわずか1〜2秒で生産できる超高速ラインを構築しています。
  • 高い歩留まり(良品率): 高度なAI検品により不良品を極限まで減らし、材料のムダを最小限に抑えています。

コストの比較イメージ(2025年予測ベース)

項目韓国・日本メーカー(NCM)CATL(LFP / CTP技術)
推定コスト (/kWh)110 〜 13090〜 100
主な材料ニッケル、コバルト(高価)鉄、リン(安価)
部品点数多い(モジュール構造)少ない(モジュールレス)

 フォードが政治的リスクを負ってでもCATLを選んだのは、この「価格差」を埋める手段が他に存在しなかったからだと言えます。この圧倒的なコスト差が、消費者の買うEVの価格にそのまま数千ドル(数十万円)の差として現れてくるわけです。

 CATLを始めとしたEC電池の中国メーカーの躍進についてはこちら

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