富士電機と三菱ガス化学のメタノール改質型水素燃料電池システム メタノール改質型水素燃料電池システムとは何か?改質器の役割は何か?

この記事で分かること

メタノール改質型水素燃料電池システムとは:メタノールを燃料とし、改質器で水素を生成して燃料電池で発電するシステムです。メタノールは液体で貯蔵・輸送が容易なため、水素インフラが未整備な場所でもクリーンな発電が可能です。

改質器の役割:メタノールや天然ガスなどの炭化水素燃料から、燃料電池に使う水素を生成する装置です。高温の水蒸気と触媒を用いて化学反応を起こし、燃料を水素と二酸化炭素に分解しています。

富士電機と三菱ガス化学のメタノール改質型水素燃料電池システム

 富士電機と三菱ガス化学は、メタノール改質型水素燃料電池システムの共同実証に向けた検討を開始しました。

 https://www.mgc.co.jp/corporate/news/2025/250801.html

 この取り組みは、両社の強みを組み合わせることで、水素燃料電池をより広範囲な地域や施設に提供することを目指しています。

メタノール改質型水素燃料電池システムとは何か

 メタノール改質型水素燃料電池システムとは、メタノールを燃料として、発電に必要な水素をその場で生成し、燃料電池で発電するシステムです。

 通常の水素燃料電池は、高圧の水素ガスをあらかじめ用意し、それを燃料として発電します。しかし、高圧水素の貯蔵・輸送にはインフラの整備やコスト、安全性の課題があります。

 これに対して、メタノール改質型水素燃料電池システムは以下のプロセスで発電を行います。

  1. 燃料の供給: 常温常圧で液体のメタノールをタンクから供給します。メタノールは貯蔵や輸送が容易で、既存のインフラを活用できるという大きなメリットがあります。
  2. 改質(リフォーミング): メタノールを改質器(リフォーマ)という装置に通し、水蒸気と反応させて水素を取り出します。このプロセスは、比較的低温(200〜300℃程度)で進行するのが特徴です。
  3. 発電: 生成された水素ガスを燃料電池スタックに供給し、大気中の酸素と化学反応させることで電力を生み出します。

メタノール改質型水素燃料電池システムのメリット

  • 燃料の取り扱いが容易: メタノールは液体であるため、水素ガスに比べて貯蔵や輸送が簡単です。これにより、水素インフラが未整備な場所でも燃料電池システムを導入しやすくなります。
  • 高いエネルギー密度: 同じ体積あたりの水素貯蔵量が、高圧水素ガスに比べて大幅に高くなります。
  • クリーンな発電: 発電時に排出されるのは少量の二酸化炭素と水蒸気のみで、燃焼系の発電機と比べて環境負荷が小さいです。
  • 高効率: 燃料電池は熱力学的な制約が少なく、発電効率が高いです。
  • 低メンテナンス: 化学反応で発電するため、部品の摩耗が少なく、長期にわたって安定した稼働が期待できます。

課題(デメリット)

  • 発電効率: メタノールから水素を取り出す改質器を経由するため、直接水素を供給する方式に比べて、システム全体としての効率はやや劣る場合があります。
  • 触媒の劣化: 改質過程で生成される一酸化炭素(CO)が、燃料電池の電極触媒を劣化させる可能性があります。このため、COを除去するプロセスや、COに強い触媒を用いる技術が重要となります。

 これらの特性から、メタノール改質型水素燃料電池システムは、バックアップ電源や非常用発電機、さらには定置型発電システムなど、さまざまな用途での活用が期待されています。

メタノールを燃料とし、改質器で水素を生成して燃料電池で発電するシステムです。メタノールは液体で貯蔵・輸送が容易なため、水素インフラが未整備な場所でもクリーンな発電が可能です。非常用電源や定置型発電として期待されています。

改質器とは何か

 改質器(かいしつき)とは、メタノールや都市ガスなどの炭化水素系燃料から、燃料電池の燃料となる水素を取り出すための装置です。

仕組み

 改質器の主な仕組みは「水蒸気改質」と呼ばれる化学反応を利用しています。これは、炭化水素(ここではメタノールを例とします)に高温の水蒸気を反応させることで、水素と二酸化炭素を生成するプロセスです。

具体的な流れは以下の通りです。

  1. 原料の供給: メタノールと水(水蒸気)を改質器に供給します。
  2. 触媒の働き: 改質器の中には、触媒が充填されています。この触媒の働きにより、高温(一般的に200〜300℃)でメタノールと水蒸気が効率的に反応します。
  3. 化学反応: この反応によって、メタノール分子が分解され、水素(H2​)と二酸化炭素(CO2​)が生成されます。
  4. 副生成物の処理: この反応では、微量の一酸化炭素(CO)も生成されることがあります。一酸化炭素は燃料電池の触媒を劣化させるため、通常は「CO変成器」や「CO除去器」と呼ばれる後段の装置で、一酸化炭素をさらに水蒸気と反応させて二酸化炭素と水素に変換したり、選択的に酸化して除去したりします。
  5. 水素リッチガスの取り出し: このようにして、高純度の水素を多く含むガス(水素リッチガス)が生成され、燃料電池に供給されます。

 改質器は、燃料電池のシステムにおいて、燃料の柔軟性を高める上で非常に重要な役割を果たしています。燃料をその場で水素に変換することで、高圧水素の貯蔵・輸送という大きな課題を解決し、燃料電池の適用範囲を広げることができます。

改質器は、メタノールや天然ガスなどの炭化水素燃料から、燃料電池に使う水素を生成する装置です。高温の水蒸気と触媒を用いて化学反応を起こし、燃料を水素と二酸化炭素に分解する仕組みで、燃料電池の燃料供給源として重要な役割を果たします。

メタノール以外の液体が使用されることはあるのか?

 以下のように、メタノール以外にも、燃料電池の燃料として液体が使用されることがあります。

  • エタノール: メタノールと同様に、液体燃料として貯蔵や輸送が容易です。エタノールを改質して水素を生成するシステムや、直接エタノールを燃料電池に供給するシステム(直接エタノール燃料電池:DEFC)の研究開発が進められています。バイオマス由来のエタノールを利用すれば、さらに環境負荷を低減できる可能性があります。
  • アンモニア: アンモニアは水素を豊富に含み、液体として常温・常圧で貯蔵・輸送が可能です。アンモニアを分解して水素を取り出し、燃料電池に供給するシステムが研究されています。特に、既存のインフラを活用できるため、水素のサプライチェーンを構築する上で有力な選択肢の一つとされています。
  • ギ酸(フォーミックアシッド): 比較的低温で水素を効率的に取り出すことができるため、直接ギ酸を燃料電池に供給するシステム(直接ギ酸燃料電池:DFAC)の研究も行われています。

 これらの液体燃料は、それぞれメタノールと同様に、水素の貯蔵・輸送に関する課題を解決する手段として注目されています。どの燃料が最適かは、用途、コスト、インフラ、環境への影響など、さまざまな要因によって異なります。

メタノール以外では、液体であるエタノールやアンモニアが燃料電池の燃料として研究されています。特にアンモニアは、水素を多く含み、液体として貯蔵・輸送が容易なため、水素社会の実現に向けた有力な選択肢として注目されています。

 

 

 

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