この記事で分かること
- ダイボンダーとは:ウエハから切り出された半導体チップ(ダイ)を、基板やリードフレームの所定位置に精密に接着・固定する装置です。後工程の基幹技術であり、チップを積み上げる積層化に伴い、ミクロン単位の精度が求められています。
- なぜ高い精度が求められるのか:半導体の微細化や3D積層が進み、接続端子が極小化したためです。数μmのズレが断線やショート、放熱不良を引き起こし、歩留まりを低下させます。次世代の2nm世代やAIチップ製造には、極限の精度が不可欠です。
- どのように高い精度を実現したのか:新開発のプラットフォームにより振動を50%低減し、高精度な画像認識によるリアルタイム補正を導入しました。さらに、熱による微細な部品の歪みを計算して自動修正する技術により、3μmの極限精度を達成しています。
FUJIグループの次世代ダイボンダー
FUJIグループの子会社であるファスフォードテクノロジは、2026年3月、次世代フラッグシップダイボンダー「XERDIA(ゼルディア)」を発表しました。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2603/23/news032.html
ダイボンドの精度を従来の5μmから3μmへと向上させ、先端半導体パッケージの微細化に対応しており、次世代の2nmプロセスやAIサーバー向けチップなど、より高精度な実装が求められる市場でのシェア拡大を狙う戦略的な製品といえます。
ダイボンダーとは何か
ダイボンダー(Die Bonder)とは、半導体製造の「後工程」において、切断されたチップ(ダイ)を基板やリードフレームに固定する装置のことです。
主な役割と仕組み
- ピックアップ: ウエハから切り出された個別のチップを、吸着ノズルで拾い上げます。
- 位置決め: カメラで基板側の接着位置を正確に認識し、ミクロン単位の精度で合わせます。
- マウント(接着): 接着剤(ダイアタッチフィルムやエポキシ樹脂など)を介して、チップを基板に押し付け、固定します。
業界のトレンド
従来のダイボンダーは「速さ(UPH)」が重視されてきましたが、現在はFUJI(ファスフォード)が「XERDIA」で打ち出したように、「圧倒的なスピード」と「極限の精度(3μm)」の両立が市場の最前線となっています。

ダイボンダーとは、ウエハから切り出された半導体チップ(ダイ)を、基板やリードフレーム上の所定の位置に精密に接着・固定する装置です。後工程の重要技術で、近年は積層化に伴うミクロン単位の精度が求められています。
なぜ、ダイボンダーに細かい精度が必要なのか
ダイボンダーにミクロン単位の極めて高い精度(3μmなど)が求められる理由は、主に半導体の「高密度化」と「積層化(3D実装)」が進んでいるためです。
1. 接続端子(パッド)の微細化
チップと基板を電気的に繋ぐための「接点」は年々小さくなっており、その間隔(ピッチ)も狭まっています。
- 断線・ショートの防止: わずか数μmのズレでも、隣の端子と接触してショートしたり、逆に接続不良(オープン)を起こしたりします。
- 信号伝送の安定: AIチップなどの高速通信を行う半導体では、正確な位置への配置が信号の遅延やノイズを防ぐ鍵となります。
2. チップの多段積層(3Dパッケージング)
HBM(高帯域幅メモリ)に代表されるように、最近の半導体はチップを何層も垂直に積み上げます。
- 累積誤差の回避: 1枚目のチップが1μmズレると、上に重ねるほどその誤差が拡大し、最終的な製品の歩留まり(良品率)を大きく下げてしまいます。
- 貫通電極(TSV)の整合: 上下のチップを貫通する細い電極同士をピタリと合わせるには、ナノレベルに近い制御が必要です。
3. 放熱性能の最適化
チップが発する熱を効率よく基板へ逃がすには、接着面を均一かつ正確な位置に固定しなければなりません。
- 熱設計の維持: 接着位置がズレると熱の伝わり方にムラができ、チップの寿命や動作クロックに悪影響を及ぼします。

半導体の高密度化や3D積層が進み、チップの接続端子が微細化したためです。数μmのズレが断線やショート、放熱不良を招き、製品の歩留まりを下げます。次世代の2nm世代やAIチップ製造には極限の精度が不可欠です。
どうやって高い精度を実現したのか
FUJIグループ(ファスフォードテクノロジ)が次世代機「XERDIA」などで3μmという高いボンド精度を実現した背景には、主に「振動制御」「画像認識」「熱歪みの抑制」の3つの技術革新があります。
1. 剛性の向上と振動の徹底排除
高速で動くノズルがピタッと止まるためには、装置自体の揺れを抑える必要があります。
- 新プラットフォームの採用: 筐体(フレーム)の設計をゼロから見直し、従来比で振動を50%低減しました。
- アクティブ制振制御: モーターの急停止時に発生する微細な振れを、逆位相の動きで打ち消す高度な制御アルゴリズムを導入しています。
2. 高解像度カメラとAI画像認識
チップと基板の位置を読み取る「目」の進化も不可欠です。
- サブピクセル処理: 1画素(ピクセル)よりも細かい単位で位置を割り出す演算技術により、画像上のわずかなズレを検知します。
- リアルタイム補正: 接着の直前までカメラで位置を監視し、コンマ数ミリ秒単位でノズルの位置を微調整し続けます。
3. 熱変位のキャンセル技術
装置は動かすほど熱を持ち、金属がわずかに膨張して数μmの狂いが生じます。
- 熱対称設計: 部品が熱を持っても、左右均等に膨張するように設計することで、中心軸がズレない工夫がなされています。
- 温度補正センサ: 装置内の各所に配置されたセンサが温度変化を捉え、ソフト側で膨張分を計算して位置を自動補正します。

新開発のプラットフォームにより振動を50%低減し、高解像度カメラと高度な画像処理で微細なズレをリアルタイムに補正します。さらに、熱による部品の歪みを計算して自動修正する技術により、3μmの極限精度を達成しました。
どうやって振動を減らしたのか
FUJIグループ(ファスフォードテクノロジ)が「XERDIA」で実現した振動低減の核心は、「構造の低重心化」と「アクティブ制御」の組み合わせにあります。
1. 物理的な安定性の向上
装置全体の重心を低く設計し、高速移動するヘッドの反力を受け止める「高剛性フレーム」を新開発しました。
- 低重心構造: 振動の起点となる駆動部を理想的な位置に配置し、揺れを最小限に抑えています。
- 素材の最適化: フレームの材質や形状を工夫し、従来比で振動を50%低減させることに成功しました。
2. 制御による打ち消し(アクティブ制振)
ノズルが急停止する際に発生する微細な「しなり」や「揺れ」を、高度なアルゴリズムで制御します。
- 逆位相制御: 揺れが発生する瞬間に、モーターを反対方向へ微細に動かすことで、振動を物理的に打ち消します。
- ハイブリッド制御: センサーが振動をリアルタイムで検知し、瞬時に位置を補正することで、ピタッと止まる「静止精度」を高めています。

新開発の低重心・高剛性フレームにより、物理的な揺れを従来比で50%抑制しました。さらに、高速移動後の微細な振れをモーターの逆位相駆動で瞬時に打ち消す高度なアクティブ制振制御により、高い安定性を実現しています。

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