東ソーの機能性アミン 機能性アミンとは何か?なぜ揮発性を低くできるのか?

この記事で分かること

  • 機能性アミンとは:単純なアミノ基を持つ化合物ではなく、他の機能基や特別な性質を併せ持ち、特定の化学反応や用途において付加的な機能や効果を発揮するアミン化合物のことです。
  • 揮発性が小さい理由:揮発しにくい分子構造を持つ化合物を使用、材料に固定化し蒸発しないようにしているなどの理由から揮発性が小さくなります。
  • ポリウレタンの耐久性が優れる理由:アミン触媒が固定化され、材料内部にとどまり続ける構造であることで、化学的な安定性が増し、副生物の生成を抑制することで、耐久性が向上しています。

東ソーの機能性アミン

 東ソーが、一般社団法人日本化学工業協会が主催する「第57回日化協技術賞」において「環境技術賞」を受賞したことを発表しています。

 https://www.tosoh.co.jp/news/release/2025/20250521.html

 受賞したのは東ソー株式会社が開発した環境対応型の三級アミン触媒で、主にポリウレタンフォーム(PUF)の製造に使用される「機能性3級アミン『RZETA®』の開発」に関してです。 

 従来のアミン触媒と比較し、低VOCである、生成後のウレタンの耐久性の低下が起きにくいという特徴をもっています。

機能性アミンとは何か

 機能性アミン(functional amines)とは、単なるアミン基(–NH₂、–NHR、–NR₂)を持つだけでなく、他の機能基特別な性質を併せ持ち、特定の化学反応や用途において付加的な機能や効果を発揮するアミン化合物のことです。


◆ 一般的な定義と特徴

項目内容
基本構造アミン基(一次~三級)に加え、他の官能基(OH、COOH、エポキシ、長鎖アルキルなど)を持つ
主な機能反応性制御、分子間相互作用、界面活性、金属捕捉、固定化など
応用分野樹脂触媒、界面活性剤、医薬品、ポリマー修飾剤、金属抽出剤など

◆ 機能性アミンの具体例

名称用途特徴
RZETA®(東ソー)ポリウレタン触媒水酸基を導入した三級アミンで、反応後に固定化され低臭気・低VOC
ジエチルアミノエタノール(DEAE)樹脂改質、緩衝剤アミンとアルコールの両機能
ポリエチレンイミン(PEI)金属イオン捕捉、ガス吸着多数のアミン基を持つ高分子

◆ 機能性アミンが求められる理由

  • 反応選択性の制御(例:ウレタン生成時の硬化速度調整)
  • 環境対応(例:低臭気・低VOC)
  • 機能材料化(例:アミン基で界面固定化、金属捕捉、バイオ応答性)

機能性アミンとは単純なアミノ基を持つ化合物ではなく、、他の機能基特別な性質を併せ持ち、特定の化学反応や用途において付加的な機能や効果を発揮するアミン化合物のことです。

VOCとは何か

 VOC(揮発性有機化合物, Volatile Organic Compounds)とは、常温常圧で空気中に容易に揮発する有機化合物の総称です。塗料、接着剤、インク、洗浄剤、プラスチック加工など多くの製品に含まれており、大気汚染・健康影響・悪臭の原因となるため、規制対象になることが多いです。


◆ VOCの主な特徴

項目内容
物理特性沸点が高くても、常温で蒸発しやすい
主な成分トルエン、キシレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸エチルなど
発生源塗料・接着剤・合成樹脂・車の排気・たばこ・建材・芳香剤など

◆ VOCの問題点

  1. 健康被害
    • 短期的:目・鼻・喉の刺激、頭痛、吐き気など
    • 長期的:シックハウス症候群、喘息、発がん性の可能性
  2. 環境影響
    • 光化学スモッグの原因(NOxと反応してオゾンを生成)
  3. 臭気
    • 不快な臭いの原因になることが多い

◆ 規制と対応

  • 日本では厚生労働省・環境省などがVOCに対する指針値や規制を設けています。
  • 建築材料や自動車部品では低VOC製品の採用が進められています。

◆ 低VOC化の工夫例

  • アミン触媒の固定化(例:RZETA®)で揮発を抑える
  • 水性塗料や無溶剤型接着剤の使用
  • 揮発性の低い原料の選定

VOCは空気中に容易に揮発する有機化合物の総称で、大気汚染・健康影響・悪臭の原因となるため、規制対象になることも多い化合物です。

低vocにするにはどのような方法があるのか

 低VOC(揮発性有機化合物)化が可能になる理由は、「VOCの揮発を抑制するしくみ」が製品や素材に設計段階から組み込まれているからです。


低VOCにする方法

方法内容
1. 揮発しにくい分子構造分子量を増やす、極性を高めることで蒸気圧を下げ、揮発を抑える水酸基を持つ反応型アミン(例:RZETA®)
2. 材料に固定化する反応によりポリマー骨格などに結合させ、蒸発しないようにするウレタンのイソシアネートと反応して架橋するアミン
3. VOCを使わない処方VOCを含む溶剤そのものを使わずに製造する水性塗料、無溶剤型接着剤、UV硬化型樹脂など

◆ 例:RZETA®でなぜ低VOCになるのか?

RZETA®は三級アミンの触媒で、以下の理由で低VOCです:

  1. 水酸基(–OH)を持つ → イソシアネートと反応し、ポリウレタン骨格に化学的に固定化される
  2. 固定化されることで蒸発しない → 空気中に放出されず、臭気や健康被害を抑える
  3. 同等の反応活性を保つ → 性能を落とさず環境負荷を減らせる

◆ VOC低減が求められる背景

  • シックハウス症候群や工場作業者の健康対策
  • 自動車や建材などでの国際的な環境規制(例:REACH, RoHS)
  • 製品価値の向上(”低臭” や “安全” の訴求)

VOCを低くするには、揮発しにくい分子構造を持つ化合物を使用する、材料に固定化し蒸発しないようにするなどの方法があます。

なぜ耐久性が向上するのか

 機能性アミン(例:RZETA®)を使うことで耐久性が向上する理由は、主に以下のような化学的・物理的なメカニズムに基づいています。


◆ 耐久性が向上する理由

1. アミン触媒の「固定化」による劣化防止

 従来のアミン触媒(例:TEDA)は、ポリウレタンに混ざっているだけで時間とともに揮発し、
材料の中から失われていきます。これが以下の劣化を引き起こします。

  • ウレタンの分解促進(残留アミンによる加水分解など)
  • 長期的な機械的強度の低下
  • 変色やにおいの発生

→ 機能性アミン(例:RZETA®)は反応性官能基(–OHなど)を持ち、イソシアネートと反応してポリウレタン骨格に固定化されるため、長期間にわたって安定します。


2. 化学的安定性の向上

 固定化されたアミンは、

  • 移動性が低く、加水分解などの副反応を起こしにくい
  • 揮発して環境に拡散することもない
  • 熱や紫外線などの外的要因への耐性が向上

これにより、加水分解・加熱・紫外線・酸化などの環境劣化因子に対する耐性が改善されます。


3. 副生成物の抑制

 従来の揮発性アミンでは、以下のような副反応生成物(例:ホルムアルデヒド、ニトロソアミンなど)を生成する場合があり、これが樹脂の品質や寿命に悪影響を与えます。

→ 機能性アミンではこれらが抑えられることで素材の信頼性が向上します。


アミン触媒が固定化され、材料内部にとどまり続ける構造であることで、化学的な安定性が増し、副生物の生成を抑制することで、耐久性が向上しています。

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