この記事で分かること
好調の要因:ヨウ素や天然ガスの主力事業が好調であること、前期赤字となっていた金属化合物事業の黒字化、財務体質の強化によって、好調となっています。
ヨウ素の利用法:ヨウ素は、色々な分野で利用されており、伊勢化学工業は特に療用造影剤や工業用液晶分野向けの需要が高くなっています。
伊勢化学工業株式会社の好調
伊勢化学工業株式会社は、2025年4月30日に2025年12月期第1四半期(1月~3月)の決算を発表しました。
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売り上げ高、営業利益ともに、前年同期比を上回る内容となっており、好調な業績を受け、株価も上昇し、2025年4月30日時点で前日比8.17%高の22,230円となりました。
好調の要因は何か
主力のヨウ素および天然ガス事業の好調
- ヨウ素製品の販売数量増加:主力製品であるヨウ素の販売数量が前年同期比で増加しました。
- 国際市況の堅調な推移:ヨウ素の国際価格が高水準で推移し、収益性を押し上げました。
- 為替の円安傾向:円安が進行し、海外売上の円換算額が増加しました。
これらの要因により、売上高は前年同期比20.1%増の82億3,500万円、営業利益は同51.5%増の20億円と、大幅な増収増益を達成しました。
金属化合物事業の黒字化
- コスト管理の徹底:生産効率の向上や経費削減により、収益性が改善しました。
- 製品ミックスの最適化:高付加価値製品へのシフトにより、利益率が向上しました。
これにより、前年同期は赤字であった金属化合物事業が黒字化を達成しました。
財務体質の強化
- 自己資本比率の向上:前期末の78.6%から82.5%へと上昇し、財務の健全性が高まりました。
- 純資産の増加:利益剰余金の増加により、純資産が前期末比0.7%増の358億1,400万円となりました。

ヨウ素や天然ガスの主力事業が好調であること、前期赤字となっていた金属化合物事業の黒字化、財務体質の強化によって、好調となっています。
ヨウ素は何に使われるのか
ヨウ素は、以下のように、さまざまな分野で重要な用途を持つ元素です。
医療分野
- 消毒薬(ヨウ素チンキ、ポビドンヨードなど)
- X線造影剤(ヨード造影剤)
- 甲状腺治療・診断(放射性ヨウ素を使用)
工業用途
- 液晶ディスプレイ(LCD)の偏光フィルムの製造
- 触媒(酢酸や一部の化学品の合成に使われる)
- 写真フィルム(かつてはハロゲン化銀フィルムの成分として)
農業用途
- 動物用飼料添加物(甲状腺機能維持のため)
- 土壌改良材(一部地域で不足するヨウ素を補う)
食品分野
- ヨウ素強化塩(ヨウ素欠乏症防止のために食塩に添加)
伊勢化学工業の主力製品であるヨウ素は、特に医療用造影剤や工業用液晶分野向けの需要が高く、近年の医療技術やディスプレイ需要の拡大が収益に寄与しています。

ヨウ素は、さまざまな分野で利用されています。伊勢化学工業は特に療用造影剤や工業用液晶分野向けの需要が高くなっています。
造影剤とは何か
造影剤とは、X線やCT、MRIなどの医用画像検査で体内の特定の部位を見やすくするために使用される薬剤です。
体内に造影剤を入れることで、血管や臓器、病変などが画像上で他の組織と区別しやすくなります。
X線・CT用造影剤
- 主成分:ヨウ素(ヨード)
- ヨウ素はX線をよく吸収するため、血管や腫瘍などが白くはっきり写る
- 静脈や動脈に注射したり、消化管に飲んだりする
MRI用造影剤
- 主成分:ガドリニウム
- 磁場や電波信号に反応し、MRI画像のコントラストを高める
用途の例
- 血管の狭窄や閉塞の診断(脳血管、冠動脈など)
- がんや腫瘍の位置・大きさ・性質の確認
- 消化管や泌尿器の形態異常の検出

造影剤とは、X線やCT、MRIなどの医用画像検査で体内の特定の部位を見やすくするために使用される薬剤です。
偏光フィルムに使われる理由
ヨウ素が偏光フィルムに使われる理由は、ヨウ素分子が光を選択的に吸収する性質(偏光吸収性)を持つためです。
偏光フィルムとは
偏光フィルムは、特定の方向の光だけを通し、他の方向の光は遮るフィルムです。
液晶ディスプレイ(LCD)では、バックライトの光を偏光させることで、液晶の開閉状態に応じて光の透過・遮断を制御し、映像を映し出しています。
ヨウ素の役割
偏光フィルムの製造では、ポリビニルアルコール(PVA)という透明な高分子フィルムにヨウ素を吸着させます。そして:
- PVAを機械的に引き延ばして分子を一定方向に整列
- その分子鎖に沿ってヨウ素が結合・配列
この結果、ヨウ素が一方向に整列した「導電性の鎖」を形成し、光の電場方向に応じて横方向の光(特定の偏光)を吸収します。一方で、縦方向の光は通過できるため、偏光子として機能します。
つまり、 ヨウ素の吸収特性と分子の整列によって光を偏光させる性能が発現するのです。
ヨウ素を使うのはこの吸収特性が非常に優れているからで、コントラストや明るさの高いディスプレイの実現に貢献しています。
他にも異なる偏光フィルム材料はありますが、ヨウ素系偏光フィルムはコストや性能のバランスが取れているため広く使われています。

ヨウ素は一方向に整列した「導電性の鎖」を形成し、光の電場方向に応じて横方向の光を吸収するため、特定の方向の光だけを通す偏光フィルムとして利用されています。
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