この記事で分かること
- GPUとは:大量のデータを同時に処理(並列演算)することに特化した演算装置です。元は画像処理用ですが、現在ではその高い性能からAIの深層学習や科学技術計算にも不可欠です。
- AIやディープラーニングに適している理由:ディープラーニングは大量の単純な計算(行列演算)を並列で行うため、数千のコアで並列処理に特化したGPUが、計算時間を劇的に短縮できるからです。
- 生成AIでの使用例:膨大な並列演算が必要な生成AIの学習(トレーニング)を高速化し、数十億のパラメータを持つモデルによるリアルタイムな応答や画像生成(推論)を実現しています。
GPU(Graphics Processing Unit)
半導体チップは、「産業のコメ」と呼ばれるほど現代社会の基盤となっています。AIの普及やデジタル化の加速などのもあり、AIそのますます重要性が増しています。
ただ、一口に半導体チップといっても、その中には様々な種類が存在します。今回はGPUに関する記事となります。
GPUとは何か
GPU(Graphics Processing Unit)とは、グラフィックス処理に特化した演算装置のことです。
もともとはPCやゲーム機で画像や映像を描画する処理(グラフィックス処理)を専門に担うために開発されましたが、現在ではその高い並列演算能力から、グラフィックス以外の様々な分野で活用されています。
GPUの主な特徴
- 並列処理能力の高さ: GPUは、CPU(Central Processing Unit)のように少数の高性能なコアを持つのではなく、数千個の小さなコアを搭載しています。これにより、大量のデータを同時に、かつ独立して処理するタスク(並列処理)を非常に高速に行えます。
- 例: 3Dグラフィックスの各ピクセルの色や位置を同時に計算する。
- 用途の広がり:
- グラフィックス処理: 3Dゲームや高解像度動画の編集・再生など、視覚情報をリアルタイムで処理します。
- AI・ディープラーニング: 大量のデータを扱うニューラルネットワークの計算を並列に行うため、AI学習に不可欠です。
- 科学技術計算: 物理シミュレーション、気象予測、金融モデリングなど、膨大な計算が必要な分野で利用されます。
- VRAM(ビデオメモリ): GPUは、処理に必要な画像データや計算データを一時的に格納するための専用メモリ(VRAM)を持っています。これにより、CPUやメインメモリに依存せず高速に処理を実行できます。
CPUとの違い
GPUはCPUと連携して動作しますが、その設計思想が大きく異なります。
| 特徴 | GPU (Graphics Processing Unit) | CPU (Central Processing Unit) |
| 役割 | 並列処理(大量の単純な計算を同時に実行) | 直列処理(複雑な計算を順序立てて高速に実行) |
| コア数 | 非常に多い (数千個) | 少ない (数個〜数十個) |
| コア性能 | 単一のコアの処理能力は低い | 単一のコアの処理能力は高い |
| 主な用途 | 3Dグラフィックス、AI学習、マイニング | OSやアプリの実行、一般的な計算処理 |
どこで見かけるか
- 単体GPU(グラフィックボード): デスクトップPCに増設する、高性能なGPU。NVIDIAのGeForceやAMDのRadeonシリーズが有名です。
- 統合型GPU (iGPU): CPUに内蔵されているGPU。比較的シンプルなグラフィックス処理や日常的なPC作業に使われます。
- ゲーム機: PlayStation 5やXboxなどのコンソールゲーム機には、高性能なGPUが搭載されています。
- データセンター: AI開発やクラウドコンピューティングのために、高性能なGPUが多数搭載されたサーバーが使われています。
GPUは、現代のデジタル技術、特にAIや高精細な映像体験を支える最も重要なハードウェアの一つと言えます。

GPU(Graphics Processing Unit)は、大量のデータを同時に処理(並列演算)することに特化した演算装置です。元は画像処理用ですが、現在ではその高い性能からAIの深層学習や科学技術計算にも不可欠です。
AI、ディープラーニングに適している理由は
AI、特にディープラーニングにおいてGPUが適している理由は、その計算特性がディープラーニングの構造と完全に一致しているからです。
その核心は「並列処理能力」と「行列演算の高速化」の2点にあります。
1. 並列処理能力の高さ (構造の一致)
ディープラーニングは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)を模した「ニューラルネットワーク」と呼ばれる構造を利用します。
- ディープラーニングの計算特性:
- ニューラルネットワークの学習(トレーニング)では、数百万〜数十億個のパラメータ(重み)を調整するために、大量のデータを何度も通し、同じような単純な計算(乗算や加算)を何度も繰り返します。
- これらの計算の多くは、互いに依存せず、同時に独立して実行できます。
- GPUの特性:
- GPUは、CPUのように少数の高性能なコアを持つのではなく、数千個の単純なコアを持ち、大量の計算を同時に処理(並列処理)することに特化して設計されています。
- この「大量の同じ計算を並行して行う」という特性が、ディープラーニングの学習計算と完璧にマッチし、CPUで数週間かかるような計算を数日、あるいは数時間に劇的に短縮することを可能にします。
2. 行列演算の高速化 (計算内容の一致)
ディープラーニングの計算は、突き詰めると「行列演算(行列の掛け算や足し算)」が中心となります。
- ディープラーニングにおける行列演算:
- ニューラルネットワークを構成する各層でのデータ伝達や重みの更新は、大規模な行列(テンソル)を用いた演算として表現されます。
- GPUの得意分野:
- GPUは、元々3Dグラフィックスで、画面上の何百万ものピクセルの色や位置を計算するために行列演算を高速化するように作られました。
- この行列演算の高速化能力が、ディープラーニングの根幹をなす計算を非常に効率的に行える理由です。
- 専用コア(Tensor Coreなど):
- 近年、NVIDIAなどの主要なGPUメーカーは、ディープラーニングで多用される特定の行列演算をさらに高速化するためのAI専用コア(Tensor Core)をGPUに搭載しており、これがAI分野での活用をさらに加速させています。
AI・ディープラーニングにおいてGPUが適しているのは、「ニューラルネットワークの計算構造が、GPUの得意とする大規模な並列行列演算と完全に一致する」からです。これにより、大規模なAIモデルの学習時間を劇的に短縮し、より複雑で高性能なモデルの開発・実用化を可能にしています。

ディープラーニングは大量の単純な計算(行列演算)を並列で行うため、数千のコアで並列処理に特化したGPUが、計算時間を劇的に短縮できるからです。
生成AIでのGPUの使用例は
生成AIにおけるGPUの使用は、主に次の2つのフェーズで必須のインフラとなっています。
1. モデルの「学習(トレーニング)」の高速化
生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)や画像生成モデルは、数十億から数兆に及ぶパラメータ(重み)を持つ巨大なニューラルネットワークです。
- 膨大な計算量の処理: モデルの学習では、大量のデータセット(テキストや画像)を基に、この膨大なパラメータを最適化するために、大規模な行列演算を繰り返し実行します。
- GPUの役割: GPUの並列処理能力は、この行列演算をCPUより数十倍〜数百倍高速化します。
- これにより、CPU単独では数ヶ月から年単位かかる学習時間を、数週間や数日という現実的な期間に短縮できます。
- 特にNVIDIAのTensor Coreなど、AI計算に特化した専用コアを持つGPUは、高速化に不可欠です。
2. リアルタイムな「推論(実行)」の実現
ユーザーが実際にチャットボットに質問したり、画像を生成したりする際に、AIモデルが応答を生成するプロセスを「推論」と呼びます。
- リアルタイム応答: ユーザーエクスペリエンスを確保するためには、質問に対して瞬時(低遅延)に回答を返す必要があります。
- GPUの役割: GPUは、推論時にもモデルの巨大なパラメータを高速に処理し、リアルタイムでのテキスト生成や画像生成を可能にします。
- 大規模言語モデル(LLM)での使用例:
- ChatGPTのような対話型AIが、プロンプト(指示文)から次の単語を予測し、文章を生成する処理を瞬時に行います。
- 画像生成AI(Stable Diffusionなど)での使用例:
- テキストの指示から数秒で高品質な画像を生成するプロセス(拡散モデルのノイズ除去など)を、GPUの並列演算能力で高速に実行します。
- 大容量VRAM: 巨大なモデルのパラメータや推論の中間データを高速に読み書きするために、GPUに搭載された大容量のVRAM(ビデオメモリ)も不可欠です。
- 大規模言語モデル(LLM)での使用例:
このように、GPUは生成AIの開発を可能にする学習インフラであると同時に、サービスとしてのリアルタイムな利用を支える中核技術です。

GPUは、膨大な並列演算が必要な生成AIの学習(トレーニング)を高速化し、数十億のパラメータを持つモデルによるリアルタイムな応答や画像生成(推論)を実現するために不可欠です。

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