日立ハイテク、CD-SEMなどの生産能力拡大 CD-SEMとは何か?なぜ生産拡大するのか?

この記事で分かること

  • CD-SEMとは:半導体ウェーハ上の微細な回路寸法を、電子ビームを用いてナノ単位で測定する「電子の物差し」です。光では見えない極微細な構造を画像化し、設計通りに作られているかを判定。歩留まり向上に不可欠な装置です。
  • なぜ生産を増強するのか:生成AI向けGPUやHBM(高帯域幅メモリ)の需要が急増し、最先端半導体の増産が世界中で加速しているためです。回路の微細化・立体化により計測の難易度と箇所が増え、装置一台あたりの需要が高まっています。
  • 日立ハイテクのCD-SEMでの強み:世界シェア約7割という圧倒的な実績と信頼性です。独自の電子ビーム制御技術により、2nm世代の複雑な立体構造(GAA)でも、高い解像度で高速・高精度に測定できる技術力が他社の追随を許さない強みです。

日立ハイテク、CD-SEMなどの生産能力拡大

 日立ハイテクは、AI需要の急増に伴う最先端半導体の増産に対応するため、主力製品であるCD-SEM(長尺測定走査電子顕微鏡)などの計測・検査装置の生産能力を大幅に引き上げる計画を進めています。

 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO95210370U6A320C2TB3000/?n_cid=dsapp_share_android

 同社は、デジタル化と自動化を組み合わせたスマート工場の導入により、リードタイムの短縮と生産性向上を同時に目指しています。

半導体計測装置とは何か

 半導体計測装置は、シリコンウェーハ上に作られる目に見えないほど微細な回路が、設計通りに正しく形成されているかをナノメートル(100万分の1ミリ)単位で測定・検査する装置です。


主な役割と仕組み

 製造工程が数百ステップに及ぶ半導体づくりでは、各工程の直後に「正しく削れたか」「膜の厚さは適切か」を確認する必要があります。

  1. 寸法測定(CD-SEM)光(可視光)では見えない微細な回路を、波長の短い「電子ビーム」を使ってスキャンし、回路の幅や間隔を精密に測定します。
  2. 欠陥検査ウェーハ上のゴミ(パーティクル)や、パターンの断線・ショートなどを自動で見つけ出します。
  3. 合わせズレ測定何層にも積み重なる回路層が、上下でピッタリ重なっているかを1ナノメートル以下の精度で確認します。

なぜ今、重要なのか

 最先端の2nmプロセスやHBM4(次世代メモリ)では、構造が3次元化(立体化)し、極めて複雑になっています。わずかな誤差が製品の故障に直結するため、日立ハイテクのような高いシェアを持つ企業の計測技術が、AI半導体の量産化を支える鍵となっています。


半導体回路の寸法や形状をナノ単位で測る「定規」の役割を果たす装置です。電子ビーム等を用い、目視不能な微細構造のズレや欠陥を瞬時に検出します。歩留まり(良品率)向上に直結する、製造工程の要といえます。

どのような装置を増産するのか

 増産される主な装置は、日立ハイテクが世界シェアの約7割を握る「測長SEM(CD-SEM)」です。また、これに付随する検査装置やエッチング装置の供給体制も強化されています。


増産の対象となる主な装置

装置種別主な製品・シリーズ役割と特徴
測長SEMGT2000シリーズ電子ビームで回路寸法をナノ単位で測定。2nmプロセスや立体構造(GAA)に対応する最先端機。
欠陥検査装置DI4600 / LS9300ADウェーハ表面の異物や微細な欠陥を高速で検出。歩留まり管理の要。
エッチング装置笠戸地区の新工場製品プラズマを用いてウェーハ上の膜を精密に削り取る。AI半導体の多層化に伴い需要増。

増産体制の具体的数字

  • 生産拠点: 茨城県ひたちなか市の「那珂地区(マリンサイト)」が測長SEMの主力拠点です。
  • 目標値: 現在の月産40台体制から、2030年度までに月産60台体制へと拡大します。
  • 投資: マリンサイトには約300億円が投じられたほか、山口県下松市(笠戸地区)にも約245億円を投じた新工場が2025年3月に稼働を開始しており、エッチング装置の生産能力も従来の2倍に引き上げられています。

主力は世界シェア7割を占める「測長SEM」です。2030年度までに月産能力を現在の40台から60台へ5割引き上げます。また、ウェーハ欠陥検査装置や、山口県の新工場で製造するエッチング装置も増産対象です。

測長SEMとは何か

 測長SEM(CD-SEM)は、半導体ウェーハ上に描かれた超微細な回路の寸法を、ナノメートル(100万分の1ミリ)単位で測定する「電子の物差し」とも呼べる装置です。


測長SEM(Critical Dimension-SEM)の主な特徴

  1. 圧倒的な解像度
    • 光の代わりに波長の短い「電子ビーム」を使うため、数ナノメートル(原子数十個分)という極限の細さの線もはっきりと捉えて計測できます。
  2. 非破壊での高速計測
    • ウェーハを傷つけることなく、量産ラインの中で次々と流れてくるチップの寸法を自動で高速測定します。
  3. 三次元構造の把握
    • 最新のGAA(Gate-All-Around)やHBMのような立体構造において、表面だけでなく溝の深さや傾斜角なども高精度に算出します。

なぜ「測長」が必要なのか

 半導体露光装置(ASML製など)で回路を焼き付けた後、設計値からコンマ数ナノメートルでもズレると、電流が漏れたり動作不良を起こしたりします。

 測長SEMで全工程を厳密にチェックすることで、歩留まり(良品率)を高く維持し、コストを抑えることができるのです。


半導体ウェーハ上の微細回路を電子ビームでスキャンし、線幅や穴径をナノ精度で計測する装置です。光学顕微鏡では見えない微細構造を画像化し、設計通りか判定します。歩留まり管理に不可欠で、日立が世界シェア首位です。

なぜ生産能力を向上するのか

 日立ハイテクが生産能力を5割も引き上げる理由は、主に以下の3点に集約されます。


1. 生成AI市場の爆発的拡大

 ChatGPTなどの生成AIを支えるデータセンターでは、膨大な計算処理を行うためのGPU(画像処理半導体)や、データのやり取りを高速化するHBM(高帯域幅メモリ)が大量に必要とされています。

 これらのチップを作るには、日立ハイテクが得意とする高精度な計測装置が欠かせません。

2. 製造プロセスの高度化(2nm・GAA構造) 

 半導体は現在、2ナノメートル(2nm)という極限の微細化に加え、GAA(Gate-All-Around)と呼ばれる複雑な立体構造へと進化しています。

  • 計測箇所の増加: 構造が複雑になるほど、正しく作れているかを確認する箇所が増えます。
  • 高い精度: わずかな寸法のズレが致命的な欠陥になるため、計測装置一台あたりの稼働時間や必要台数が増大しています。

3. 次世代パッケージング技術(CoWoS等)

 複数のチップを1つのパッケージにまとめる「後工程」の高度化も理由の一つです。

  • TSV(シリコン貫通電極)などの接続部をナノ単位で測定する必要があり、前工程だけでなく後工程向けでも計測装置の出番が増えています。

生成AI向けGPUやHBM等の需要急増に伴い、最先端半導体の増産が加速しているためです。回路の微細化・3次元化により、製造難易度が上昇し、歩留まり(良品率)維持に不可欠な計測装置の需要が激増しています。

なぜ電子ビームで微細な測定ができるのか

 光(可視光)には「回折限界」という物理的な制約があり、光の波長(数百ナノメートル)より小さいものは、ぼやけてしまい正確に捉えることができません。


なぜ電子ビームが有利なのか

  1. 波長が圧倒的に短い
    • 光学顕微鏡で使用する可視光の波長が400〜700nmであるのに対し、電子ビームの波長は加速電圧にもよりますが1nm以下(数ピコメートル単位)まで短くできます。波長が短いほど、より小さな対象物を鮮明に「見る」ことができます。
  2. レンズによる収束(電子光学系)
    • 電子はマイナスの電荷を持っているため、磁石(電磁レンズ)を使って光と同じように曲げたり、一点に集中させたりできます。これにより、ビームをナノメートルサイズまで細く絞り込み、ウェーハ表面を精密に走査(スキャン)することが可能になります。
  3. 二次電子の検出
    • 電子ビームが物質に当たると、表面から「二次電子」が飛び出します。この電子の量を検出して画像化することで、パターンの凹凸や寸法のズレを高いコントラストで把握できます。

微細化の限界に挑む

 現在の半導体製造で主流の2nmプロセスでは、原子数十個分という極限の精度が求められます。日立ハイテクのCD-SEMは、この電子ビームを極限まで制御し、ナノレベルの「ものさし」として世界中の工場で活用されています。


光の波長に対し、電子ビームの波長は極めて短いため、ナノ単位の微細構造もぼやけずに捉えられます。強力な磁場レンズで電子を極細に絞り込み、スキャンすることで、高解像度な三次元情報を取得できるからです。

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