この記事で分かること
- ストレージ事業とは:金融機関や官公庁などの重要システム向けに、圧倒的な信頼性を誇るハイエンドストレージ(VSPシリーズ等)や管理ソフトを提供する事業です。
- ハイエンドストレージとは:銀行や官公庁などの基幹システムを支える最高級のデータ保存装置です。数万人の同時アクセスに耐える超高速処理と、部品が故障してもシステムを止めない「鉄壁の信頼性」が最大の特徴です。
- なぜ撤退するのか:高利益なソフトウェア事業への集中を進めるためです。ハードウェア中心のストレージ事業はクラウド普及で競争が激化しており、資産効率を高めるため売却を検討しています。
日立製作所ストレージ事業から撤退する方針
日立製作所は企業のデータ管理を支援するストレージ事業から撤退する方針を固め、売却に向けた入札の準備を開始したと報じられています。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-30/T9NIXIKIUPT500
日立は「Lumada(ルマダ)」を中心としたITサービスやDX支援へ経営資源を集中させています。一方で、ハードウェア中心のストレージ事業は、クラウド移行の加速や競争激化により、かつてのような高い収益性を維持することが課題となっていました。
日立のデータストレージ事業の内容は
日立製作所のデータストレージ事業は、長年同社のITセグメントを支えてきた基幹事業の一つです。主に、企業や官公庁などの膨大なデータを保存・管理するための「ハードウェア(ストレージ筐体)」と、それを効率的に運用するための「ソフトウェア・サービス」を提供しています。
1. ハイエンド・ストレージ製品の開発・製造
日立は特に、高い信頼性と処理能力が求められる「ハイエンド(大型)ストレージ」の分野で世界的に高いシェアを持っていました。
- 代表製品: 「Virtual Storage Platform (VSP)」シリーズ。
- 特徴: 銀行の基幹システムや政府系システムなど、24時間365日絶対に止めてはいけない環境で使用される、非常に堅牢なハードウェアです。
2. Hitachi Vantara(日立ヴァンタラ)によるグローバル展開
現在、ストレージ事業は米国のグループ会社であるHitachi Vantaraを中心に展開されています。
- 製造と販売の統合: 2024年に、日本の開発・製造部門(旧ITプロダクツ統括本部)と、海外販売を担うHitachi Vantaraを一体化させ、市場の変化に素早く対応する体制を構築しました。
- データ管理ソフトウェア: 単なる「箱(ハード)」の提供だけでなく、データを効率的に圧縮・重複排除したり、異なる種類のストレージを統合管理したりする高度なソフトウェアを提供しています。
3. ハイブリッドクラウド・データソリューション
近年のトレンドに合わせ、自社設置型(オンプレミス)のストレージだけでなく、クラウドと連携したサービスも提供しています。
- EverFlex from Hitachi: ストレージの機能を「所有」するのではなく、利用量に応じて料金を支払う「サブスクリプション型(アズ・ア・サービス)」での提供も行っています。
- Lumadaとの連携: 日立のDX(デジタルトランスフォーメーション)ブランド「Lumada」において、AI解析などの基盤となるデータを安全に貯める「器」としての役割を担っています。
事業の現状と課題
- 強み: 独自の仮想化技術や、国内金融・公共部門での圧倒的な実績と信頼性。
- 課題: 市場がハードウェア(物理的な装置)からクラウド(AWSやAzureなど)へ急速に移行していること。ハードウェア単体での利益確保が難しくなっており、これが今回の「売却検討」の背景にあると見られています。
日立のデータストレージ事業は「世界トップクラスの信頼性を誇るデータの保管庫(ハード・ソフト両面)を作る事業」ですが、現在は製造・販売中心のモデルから、より付加価値の高いサービスへと転換を図っている最中といえます。

日立のデータストレージ事業は、金融機関や官公庁などの重要システム向けに、圧倒的な信頼性を誇るハイエンド記憶装置(VSPシリーズ等)や管理ソフトを提供する事業です。現在はクラウド連携やデータ保護などのサービス領域にも注力しています。
ハイエンド(大型)ストレージとは何か
「ハイエンド(大型)ストレージ」とは、銀行のオンラインシステムや官公庁、大企業の基幹システムなど、「1秒でも止まると社会に大混乱を招く」ような重要データを扱うための最高級のデータ保存装置のことです。
一般的なハードディスク(HDD)やSSDをただ大きくしたものではなく、以下のような特別な特徴を備えています。
1. 圧倒的な信頼性(壊れない・止まらない)
- 二重・三重のバックアップ: 部品が一つ壊れても、予備の部品が即座に動いてシステムを止めません。
- 無停止保守: 装置を動かしたまま、壊れた部品を交換したり、容量を増やしたりできます。
2. 超高速な処理能力
- 数千人、数万人が同時にアクセスしても遅延が起きないよう、強力な専用プロセッサと膨大なキャッシュメモリ(一時保存領域)を搭載しています。
3. 高度なデータ管理機能
- データの仮想化: 複数のストレージを一つの大きな箱のように見せかけ、効率よく使います。
- 遠隔コピー: 地震などの災害に備え、別の場所にあるストレージへリアルタイムでデータを同期します。
身近な例え
- 一般的なストレージ(PC等): 家庭用の物置。壊れたら困るけれど、社会は止まりません。
- ハイエンドストレージ: 「銀行の巨大な金庫」。鉄壁の守りがあり、24時間365日、誰がいつ来ても正確にお金(データ)を出し入れできる仕組みです。
日立はこの「金庫(ハードウェア)」を作る技術で世界トップクラスですが、今は物理的な金庫を売るよりも、その中身を管理する「警備システム(ソフトウェア)」に商売の軸を移そうとしている、というのが今回の売却検討の背景です。

ハイエンドストレージとは、銀行や官公庁などの基幹システムを支える最高級のデータ保存装置です。数万人の同時アクセスに耐える超高速処理と、部品が故障してもシステムを止めない「鉄壁の信頼性」が最大の特徴です。
売却を検討するのはなぜか
日立がデータストレージ事業の売却を検討している主な理由は、「ハードウェア中心のビジネスからの脱却」と「主力ITサービス(Lumada)への経営資源の集中」にあります。
1. 収益構造の転換(モノからサービスへ)
日立は現在、独自のITプラットフォーム「Lumada」を軸に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するソフトウェア・サービス事業を成長戦略の核に据えています。
ストレージのようなハードウェア事業は、工場や在庫を抱える必要があり、利益率もサービス業に比べると低くなる傾向があるため、より稼げる分野へ人や資金を移したいという狙いがあります。
2. 市場環境の変化(クラウドへの移行)
かつては自社で巨大なストレージを持つことが主流でしたが、今は多くの企業がクラウド(AWSやAzureなど)へ移行しています。
- 物理的なストレージ装置を販売するビジネスモデルは、世界的に競争が激化しています。
- 原材料費の高騰や、競合他社との価格競争により、かつてのような高い利益を維持することが難しくなっています。
3. 事業ポートフォリオの「最終仕上げ」
日立はここ数年、日立金属や日立物流など「モノづくり」に関連する主要子会社を次々と売却してきました。
- 今回のストレージ事業の検討は、創業以来の「総合電機メーカー」から、デジタル技術を武器にする**「IT・サービス企業」へと完全に生まれ変わるための、構造改革の最終段階**と言えます。
「自前で巨大な装置を作る商売」を卒業し、「データを活用する知恵(ソフト・サービス)を売る商売」に全力投球するため、といえます。

日立は現在、ITサービス「Lumada」を核とした高利益なソフトウェア事業への集中を進めています。一方、ハードウェア中心のストレージ事業はクラウド普及で競争が激化しており、資産効率を高めるため売却を検討しています。

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