堀場製作所の決算好調 好調の理由は?排ガス測定装置とは何か?

この記事で分かること

  • 堀場製作所とは:「はかる」技術を核に、自動車、環境、医療、半導体、科学の各分野で分析・計測機器を製造する総合メーカーです。
  • 好調の理由:EV化のペースが緩やかになったことで、ハイブリッド車開発向けの排ガス測定システムが好調でした。また、生成AI向けの需要拡大により、半導体関連事業の売上も大きく伸びました。
  • 排ガス測定装置とは:自動車の排ガス測定装置は、エンジンから出るガス中のCO、HC、NOxといった有害物質の濃度を測定する装置です。堀場製作所が世界トップシェアを誇ります。

堀場製作所の決算好調

 堀場製作所の2025年1-6月期の決算は、売上高、営業利益、経常利益が上半期として過去最高を記録しました。

 https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO90540200X00C25A8LKB000&scode=6856&ba=1

堀場製作所はどんな会社か?

 堀場製作所は、分析・計測機器の総合メーカーとして、幅広い分野で事業を展開している企業です。同社の事業は、大きく以下の3つの分野に再編されています。

  • エネルギー・環境:自動車の排ガス測定装置をはじめ、水質・大気・土壌の分析・計測機器を提供しており、カーボンニュートラルや環境保全に貢献しています。特に、自動車のエンジン排ガス測定・分析装置の分野では、世界トップクラスのシェアを誇ります。
  • バイオ・ヘルスケア:血液検査機器や試薬などを提供し、医療分野を支えています。
  • 先端材料・半導体:半導体製造プロセスにおける計測機器や、最先端材料の研究開発に貢献する分析機器を提供しています。生成AIなどの需要拡大に伴い、この分野も好調に推移しています。

 堀場製作所の社是は「おもしろおかしく」です。これは、社員が仕事にやりがいを感じ、前向きに取り組むことで、企業価値を高めていくという考え方を表しています。

 同社は、創業以来培ってきた独自の「はかる」技術を核に、これらの分野で社会の様々な課題解決に貢献しています。

堀場製作所は「はかる」技術を核に、自動車、環境、医療、半導体、科学の各分野で分析・計測機器を製造する総合メーカーです。社是は「おもしろおかしく」。

どんな分析機器を販売しているのか

 堀場製作所は、多岐にわたる分野で、さまざまな分析・計測機器を販売しています。主要な製品は、以下の分野で活躍しています。

モビリティ(自動車)分野

  • 自動車の排ガス測定装置(MEXAシリーズなど)は、ガソリン車やディーゼル車の排ガス中のCO、HC、NOxなどを高精度に測定し、環境規制への対応やエンジン開発に不可欠な役割を果たしています。
  • ハイブリッド車や電気自動車(EV)向けの電池や燃料電池の評価・試験装置も手掛けています。

エネルギー・環境分野

  • 水質分析計(pH計、溶存酸素計など)や大気汚染監視装置など、環境保全に関わる様々な計測機器を開発・販売しています。

医療(ヘルスケア)分野

  • 血液検査装置(自動血球計数CRP測定装置など)や試薬を提供しており、医療現場での迅速かつ正確な診断に貢献しています。

先端材料・半導体分野:

  • 半導体製造プロセスにおける、膜厚・膜質、応力、深さ方向の元素組成などを分析する装置を販売しています。
  • 微細化が進む半導体製造において、ウェハーの欠陥や異物検出、CMPスラリーの分析など、品質管理に欠かせないソリューションを提供しています。

 これらの他にも、粒子計測装置や蛍光X線分析装置、ラマン分光分析装置など、基礎研究から品質管理まで幅広い用途に対応する機器を数多く取り扱っています。

堀場製作所は、自動車の排ガス測定装置、医療現場の血液検査装置、半導体製造プロセスのガス流量制御装置など、幅広い分野で「はかる」技術を活かした分析・計測機器を販売しています。

自動車の排ガス測定装置とは何か

 自動車の排ガス測定装置は、自動車のエンジンから排出されるガスに含まれる有害物質の濃度を測定する装置です。これらの装置は、自動車メーカーが新しい車両を開発する際の排ガス規制への適合確認や、自動車整備工場での点検・修理などに用いられます。

主な役割

  • 環境規制への対応: 各国の厳しい排ガス規制(CO₂、NOx、PMなど)をクリアするために、エンジンや排気システムが正しく機能しているかを確認します。
  • エンジン開発: 燃焼効率の向上や有害物質の排出量削減を目指すエンジン開発において、正確なデータを取得するために不可欠な装置です。
  • 品質管理・点検: 自動車の製造ラインや、車検・点検の際に、排ガスが基準値内であるかを確認します。

測定する物質の例

  • 一酸化炭素(CO)
  • 炭化水素(HC)
  • 窒素酸化物(NOx)
  • 粒子状物質(PM)

測定の仕組み

 測定方式はいくつかありますが、代表的なものとして「非分散型赤外線吸収法(NDIR)」があります。これは、ガスが特定の波長の赤外線を吸収する性質を利用して、その濃度を測定するものです。

 堀場製作所は、この自動車排ガス測定装置の分野で、世界トップクラスのシェアを誇っており、自動車業界のカーボンニュートラルへの移行を「はかる」技術で支えています。

自動車の排ガス測定装置は、エンジンから出るガス中のCO、HC、NOxといった有害物質の濃度を測定する装置です。環境規制への適合確認や、エンジン開発に不可欠で、堀場製作所が世界トップシェアを誇ります。

非分散型赤外線吸収法とは何か

 非分散型赤外線吸収法(NDIR:Non-Dispersive Infrared)は、特定のガス分子が、それぞれ固有の波長の赤外線を吸収するという性質を利用してガスの濃度を測定する技術です。

仕組み

  1. 赤外線光源とセンサー: 装置には、赤外線を放出する光源と、それを受光するセンサーがあります。
  2. ガスによる吸収: 光源から放出された赤外線は、測定対象のガスが通る「セル」と呼ばれる空間を通過します。このとき、測定対象のガス分子が存在すると、その分子が特定の波長の赤外線を吸収するため、センサーに届く赤外線の量が減少します。
  3. 光量の変化と濃度: この減少した赤外線の光量をセンサーが検出し、その減衰量からガスの濃度を算出します。ガス濃度が高いほど、吸収される赤外線の量も多くなるため、より光量が減少します。

特徴

  • 高いガス選択性: 測定したいガスが吸収する特定の波長だけを透過させるフィルターを用いるため、他のガスによる影響を受けにくく、高精度な測定が可能です。
  • 安定性: 光源やセンサーの経年劣化、汚れによる影響を補正する仕組みを備えているため、長期にわたり安定した測定ができます。
  • 非接触測定: 装置内部にガスを流して測定するため、ガスに直接触れることなく分析できます。

 この技術は、自動車の排ガス測定をはじめ、CO₂センサー、空気清浄機、医療機器など、幅広い分野で活用されています。

非分散型赤外線吸収法(NDIR)は、特定のガス分子が固有の波長の赤外線を吸収する性質を利用し、その吸収量を測定してガスの濃度を求める技術です。高い精度と安定性が特徴で、排ガス測定やCO₂センサーなどに使われます。

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