ファーウェイの成長減速 前年の成長が大きかった理由と減速した理由は何か?

この記事で分かること

  • 前年の成長が大きかった理由:独自チップ搭載スマホ「Mate 60」の爆発的ヒットで端末事業が急伸したことが要因です。車載事業の倍増、クラウドの堅調な推移に加え、前年までの制裁による業績低迷からの反動(ベース効果)も重なり急成長を遂げました。
  • なぜ減速したのか:スマホ需要の一巡や内製チップ微細化の限界、国内クラウド市場での激しい価格競争、そして米国の輸出規制強化に伴う一部部品調達の停止やコスト増が重なったことで成長は急減速しました。
  • ファーウェイの対応策:AIチップ「昇騰」増産で中国のAI需要を独占を狙います。車載同盟「鴻蒙智行」の車種拡大、完全独自OS「HarmonyOS NEXT」への移行による独自経済圏の構築を通じ、スマホに頼らない制裁下での再成長を狙います。

ファーウェイの成長減速

 2026年3月31日に発表されたファーウェイ(華為技術)の2025年決算は、売上高が前年比2.2%増の8,809億人民元(約20兆円)に留まり、前年の急成長(22.4%増)から大幅に減速しました。

中国ファーウェイ、25年は2%増収 前年から急減速
中国の華為技術(ファーウェイ)が31日発表​した2025年決算は、売上高が前‌年比2.2%増の8809億元(1275億ドル)、純利益が8.6%増の680億元となった。中核事業である情報通信インフ​ラと消費者向け機器が​好調だった一方、クラウ...

 米国による輸出規制の影響が長期化する中、内製技術の限界と国内市場の飽和という「二重苦」が鮮明になった形です。今後はAIチップ(昇騰/Ascend)やスマートカー事業がどれだけ全体を牽引できるかが焦点となります。

前年の急成長の理由は何か

 2024年に20%を超える急成長を遂げた主な理由は、以下のようなスマートフォン事業の劇的な復活と、新エネルギー車(NEV)関連事業の立ち上がりにあります。

前年までの反動(ベース効果)

 2022年〜2023年は制裁の影響が最も深刻で業績が低迷していた時期だったため、そこからの回復が数字上の高い伸び率として表れました。

独自チップ搭載スマホの復活

 2023年後半に発売された「Mate 60 Pro」以降、制裁を回避して内製化した高性能チップ(Kirin 9000s等)を搭載した端末が、中国国内で爆発的なヒットを記録しました。これにより、アップルなどの競合からシェアを奪い返し、消費者向け事業が前年比約38%増と全体を牽引しました。

スマートカー関連事業の急拡大

 車載ソフトウェアや部品を提供する「インテリジェント・オートモーティブ・ソリューション」事業が黒字化し、売上も前年比で約128%増と倍増しました。提携先ブランド(問界/AITOなど)の販売好調が大きく寄与しました。

ICTインフラとクラウドの堅調な推移

5G基地局などの基幹事業に加え、政府や企業向けのクラウド、デジタルエネルギー事業が制裁下でも安定して成長したことが、全体の底上げにつながりました。

独自開発チップを搭載した「Mate 60」シリーズ等のスマホが中国国内で爆発的にヒットし、端末事業が約38%増と猛追。さらに車載関連事業の倍増、クラウドの伸長、前年の低迷からの反動が重なり急成長しました。

Kirin 9000sの特徴は何か

 Kirin 9000sは、米国の制裁下でファーウェイが中国国内の技術を結集して開発した、執念の「国産フラッグシップチップ」です。主な特徴は以下の通りです。

1. 中国国内での完全製造(SMIC 7nm)

 最大の特徴は、米国の技術に頼らず、中国のファウンドリSMICの「N+2」プロセス(実質7nm相当)で製造された点です。EUV露光装置が使えない制約の中で、既存のDUV装置を駆使して製造されました。

2. 独自アーキテクチャの採用

  • CPU: ARMの標準コアではなく、独自のTaishan(泰山)コアを採用しています。
  • GPU: 自社開発のMaleoon 910を搭載し、グラフィック処理の自社完結を図っています。
  • マルチスレッド: 8コアながらハイパースレッディングに似た技術により、OS上では12スレッドとして認識される特殊な構造を持っています。

3. 高度な通信機能

  • 5G復帰: 公式には明言されていませんが、実質的に5G通信に対応しており、米国の制裁を回避して高速通信を実現しました。
  • 衛星通信: Mate 60 Pro等において、地上波が届かない場所でも通信可能な双方向衛星通話をサポートしています。

SMICの7nm相当プロセスで製造された完全中国産チップです。独自CPU「Taishan」や自社GPUを搭載し、米制裁下で5G通信や双方向衛星通話を実現。技術的自立を象徴する、ファーウェイ復活の立役者です。

急減速したのはなぜか

 2025年の業績が急減速した背景には、主に3つの構造的な要因があります。

  1. スマートフォン市場の飽和と内製チップの限界
    • 前年の躍進を支えた「Mate 60」シリーズの買い替え需要が一巡したことに加え、SMICによる7nmプロセス(Kirin 9000s)での増産が歩留まりやコスト面で限界に達し、アップルなどの競合に対抗し続けるための次の一手(さらなる微細化)が制裁で阻まれたことが響きました。
  2. クラウド・デジタルエネルギー事業の激化
    • 成長分野として期待されたクラウド事業が、中国国内でのアリババやテンセントとの猛烈な価格競争に巻き込まれ、減収に転じました。また、不動産不況によるスマートホーム需要の低迷も影響しました。
  3. 米国の制裁強化による供給網の寸断
    • 2024年以降、米国による輸出許可のさらなる取り消し(インテルやクアルコム製チップの供給停止など)が段階的に実行され、PC事業や一部の端末製造において部品調達コストが上昇、利益と売上の両面を圧迫しました。

内製チップの技術・量産の限界によりスマホの爆発的ヒットが一段落したこと、クラウド事業での激しい価格競争による減収、さらに米国の輸出規制強化に伴う部品調達の制限とコスト増が重なり、成長が急鈍化しました。

ファーウェイはどう対応するのか

 成長が鈍化したファーウェイは、単なる「スマホメーカー」からの脱却を加速させ、以下の3つの柱を中心とした「AI・車・OS」への構造転換で再成長を図っています。

1. AI半導体での「脱NVIDIA」需要の総取り

 米国の規制でNVIDIAの高性能チップ(H20等)が制限される中、自社AIチップ「昇騰(Ascend)910C」の生産量を2026年に前年比2倍の60万個へ引き上げる計画です。

 SMICとの連携により、7nmプロセスの歩留まり改善と、次世代機「910D」の投入で、中国国内のAIインフラ需要を独占する戦略です。

2. スマートカー事業の「巨大エコシステム」化

 自動車メーカーと提携するアライアンス「鴻蒙智行(HIMA)」を拡大し、2026年には新型MPVを含む17車種以上を展開予定です。技術提供だけでなく、販売網まで垂直統合することで、年間販売100万台規模を目指す「第2の成長エンジン」として確立させています。

3. 「純国産OS」への完全移行

 Androidとの互換性を完全に断った「HarmonyOS NEXT」への移行を強行しています。これにより、アプリ開発者を含めた独自の経済圏を構築し、米国のソフトウェア・プラットフォームへの依存をゼロにする「技術的鎖国と自立」を完結させる狙いです。

4. 通信インフラの高度化(5.5G)

 既存の5Gの10倍の通信速度を持つ「5.5G(5G-Advanced)」の商用化をリードし、産業用AIや自動運転向けの超低遅延ネットワーク需要を取り込むことで、停滞するICTインフラ事業の再活性化を狙っています。


スマホ依存から脱却し、AIチップ「昇騰」の増産で中国国内のAI需要を独占。車載連合「鴻蒙智行」の多モデル展開と、完全独自OS「HarmonyOS NEXT」による経済圏確立を通じ、制裁下での再成長を図ります。

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