この記事で分かること
- 300mmファブ装置とは:直径300mmの大型シリコンウェハーで半導体を製造する拠点(ファブ)用装置の総称です。主流の200mmより面積が広く、1枚から取れるチップ数が2倍以上に増えるため、生産効率とコスト競争力に優れています。
- 投資額大幅増加の理由:生成AI市場の急拡大に伴う高性能チップ需要が最大の要因です。また、経済安全保障を背景とした各国政府の補助金による工場新設(ローカライズ)や、2nm世代の最先端プロセスへの移行が巨額投資を牽引しています。
- 特に増加する装置:2nm以下の先端ロジック向けのEUV露光装置やGAA構造対応の成膜・エッチング装置が顕著です。さらに、AIメモリ(HBM)増産に不可欠なTSV(シリコン貫通電極)形成や、高度な積層・接合を行う後工程装置も急増しています。
300mmファブ装置投資額の大幅増加
世界の300mmファブ装置投資額は、AI需要の爆発的な増加と供給網のローカライズを背景に、2026年と2027年の2年連続で2桁成長を記録し、過去最高を更新する見通しです。
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2604/03/news050.html
300mmファブ装置とは何か
300mmファブ装置とは、直径300mm(12インチ)のシリコンウェハーを使用して半導体チップを製造する工場(Fab:ファブ)に設置される、一連の製造装置の総称です。
現在、世界の主要な半導体製造(ロジック、メモリなど)の主流となっている規格です。
1. なぜ「300mm」なのか
かつては200mm(8インチ)が主流でしたが、ウェハーを大きくすることで、1枚のウェハーから取れるチップの数(収穫量)が劇的に増え、生産効率が向上しました。
- 200mmから300mmへの大型化により、面積は約2.25倍に拡大。
- 取れるチップの数は2倍以上になり、1個あたりの製造コストを下げることが可能になりました。
2. 主な装置の種類
ファブ内には、数百から数千もの装置が並びますが、主な工程と装置は以下の通りです。
- 露光装置(リソグラフィ): ウェハーに回路パターンを焼き付ける。最先端ではEUV(極端紫外線)装置が使われます。
- 成膜装置: ウェハー上に絶縁膜や金属膜などの薄膜を形成する。
- エッチング装置: 不要な部分を削り取り、回路を立体的に形成する。
- 洗浄装置: 微細なゴミや化学薬品を除去する。
- 検査・測定装置: 回路の欠陥や寸法の精度をチェックする。
3. 自動化の徹底
300mmウェハーは1枚あたりの価値が非常に高く、容器(FOUP)を含めるとかなりの重量になるため、人の手ではなくAMHS(自動搬送システム)と呼ばれる天井走行式のロボットなどで装置間を移動させるのが一般的です。
現在のAI向けチップ、スマートフォン用プロセッサ、最新のメモリなどは、ほぼすべてこの300mmファブ装置によって作られています。

300mmウェハーを使用する半導体製造装置の総称です。大口径化により1枚から取れるチップ数が増え、生産効率が劇的に向上しました。現在はAIチップやメモリ等の最先端品を量産する世界の主力規格となっています。
なぜ投資額が増えているのか
世界的な300mmファブ装置への投資額が、2026年・2027年と連続して過去最高を更新し、2桁成長を遂げている背景には、主に3つの構造的な要因があります。
1. 生成AIの爆発的普及と技術革新
最大の牽引役は生成AI(人工知能)市場の急拡大です。AIの学習・推論に不可欠なGPUなどの高性能プロセッサには、2nmや3nmといった最先端のロジック工程が必要であり、これらを実現するための次世代露光装置や成膜装置への需要が急増しています。
また、AIサーバーに搭載されるHBM(高帯域メモリ)の需要も投資を押し上げています。HBMは通常のメモリよりも製造工程が複雑で、TSV(シリコン貫通電極)などの高度なパッケージング技術を要するため、既存のファブの増強だけでなく、専用ラインの新設に向けた巨額投資が行われています。
2. サプライチェーンの「ローカライズ」と政府支援
経済安全保障の観点から、各国が半導体のサプライチェーンを自国内に取り込もうとする動きが加速しています。
米国のCHIPS法、欧州半導体法、さらには日本国内でのラピダスやTSMC(JASM)の工場建設に見られるように、多額の政府補助金を背景とした地域別のファブ新設プロジェクトが同時並行で進んでいます。
これにより、これまでの効率重視の集中生産から、世界各地に生産拠点を分散させる「重複投資」に近い形となり、結果として装置市場全体の規模が大きく底上げされています。
3. 車載・産業機器のデジタル化(DX)
最先端分野だけでなく、電気自動車(EV)や産業用ロボット、スマートシティなどで使われる「レガシー・パワー半導体」の需要も堅調です。
これらの分野でも生産効率を高めるために、従来の200mmラインから300mmラインへの移行が進んでおり、成熟プロセス向けの装置需要も投資額の増加に寄与しています。

AI需要の急増と、各国の半導体自給率向上に向けた動きが主な要因です。最先端の2nmプロセスや高帯域メモリ(HBM)への投資加速に加え、サプライチェーンを自国内で完結させるための工場新設が投資を押し上げています。
特にどんな装置が増えているのか
SEMIの最新レポート(2026年4月発表)によると、特に投資額が伸びているのは「先端ロジック」と「次世代メモリ(HBM)」に関連する装置です。具体的にどのような装置の需要が高まっているのか、3つのカテゴリーに分けて解説します。
1. 先端ロジック(2nm未満)向け装置
最先端の演算用チップ(GPUなど)を作るための装置が投資を牽引しています。
- EUV(極端紫外線)露光装置: 回路の微細化に不可欠なASML製の装置。さらに高精度な「High-NA EUV」への移行も始まっています。
- GAA(Gate-All-Around)構造対応装置: 従来の構造から次世代のGAA構造(2nm以下のノードで採用)へ転換するため、新しい成膜(ALD)やエッチング装置の導入が進んでいます。
2. AIメモリ(HBM)関連装置
AI学習に欠かせない「高帯域メモリ(HBM)」の増産投資が非常に活発です。
- TSV(シリコン貫通電極)形成装置: チップを垂直に積層して高速通信を行うための穴を開ける装置。
- ボンディング装置: 積層したチップを精密に接合する装置。
- CMP(化学機械研磨)装置: 積層工程でウェハー表面を極限まで平坦にするための装置。
3. 後工程(アドバンスド・パッケージング)装置
チップの性能を「詰め込み」ではなく「繋ぎ合わせ」で高める技術への投資が増えています。
- ハイブリッド・ボンディング装置: 異種のチップを直接接合する「チップレット」技術に用いられます。
- 高性能テスター(検査装置): 構造が複雑化したチップが正しく動作するかを確認するため、テスト工程への投資も前年比で大幅に増える見通しです。
単純な「枚数」を増やす投資よりも、「より細かく(先端ノード)」「より高く積み上げる(HBM・3D積層)」ための高付加価値な装置に、巨額の資金が投じられています。

2nm以下の先端ロジック向けのEUV露光装置や、GAA構造に対応した成膜・エッチング装置の投資が顕著です。また、AI用の高帯域メモリ(HBM)増産に伴い、TSV形成や積層・接合を行う後工程装置も急増しています。

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