この記事で分かること
- 塗料にはどんなものが含まれるのか:塗料には、塗膜の主成分である樹脂、色を付けるための成分である顔料、 塗料を液状に保ち、塗りやすくするための成分である溶剤や様々な機能を付与する添加剤が含まれています。
- 樹脂の役割:その塗料の骨格となり、塗膜の耐久性、耐候性、密着性、硬度、柔軟性など、ほとんどの重要な性能を決定する材料です。
塗料メーカーの増収増益
日本の主要塗料メーカー3社は、国内外での需要を取り込みつつ、価格戦略やコスト管理、高付加価値製品の提供によって増収増益を達成したと発表しています。
日系自動車メーカーの生産台数減少の影響はしばらく続く想定ですが、全体としては底堅く推移すると予測されています。
塗料とは何か
塗料とは、物体(塗られるもの)の表面に塗り広げられ、薄い膜(塗膜)となって乾燥・固化・密着し、その物体の保護、美化、およびその他の特別な機能を付与するための流動性の物質の総称です。
塗料の主要な成分
塗料は主に以下の4つの成分から構成されています。
- 樹脂(結合材): 塗膜の主成分であり、乾燥して硬化し、塗膜を形成します。塗料の耐久性、耐候性、接着性など、基本的な性能を左右する最も重要な成分です。アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、エポキシなど、様々な種類の樹脂があり、用途や目的に応じて使い分けられます。
- 顔料: 色を付けるための成分です。光を反射・吸収することで物体に色彩を与え、また隠ぺい力(下地を覆い隠す力)を高めます。耐候性や耐薬品性にも寄与します。無機顔料(鉱物由来)と有機顔料(石油由来)に大別されます。
- 溶剤(希釈材): 塗料を液状に保ち、塗りやすくするための成分です。塗料が乾燥する際に蒸発し、塗膜からは抜け出します。水性の場合は水が、油性(溶剤系)の場合はシンナーなどの有機溶剤が用いられます。
- 添加剤: 塗料の性能を向上させたり、特定の機能を持たせたりするために少量添加される成分です。例として、泡の発生を防ぐ消泡剤、表面をなめらかにするレベリング剤、防カビ剤、紫外線吸収剤などがあります。
塗料の主な機能と目的
塗料には大きく分けて3つの機能があります。
- 保護: 塗られるものを外部の環境(紫外線、雨水、風、化学物質、錆など)から守り、劣化を防ぎ、長持ちさせます。例えば、建物の外壁を風雨から守ったり、金属の腐食を防いだりします。
- 美化(美観付与): 物体に色彩、光沢、質感を与え、外観を美しく整えます。これにより、製品の価値を高めたり、景観を向上させたり、デザイン性を付与したりします。
- 特別な機能の付与: 特定の性能を物体に与えることができます。
- 遮熱・断熱: 熱の吸収や放出を抑制し、室内の温度上昇を抑える。
- 防汚・防カビ・防藻: 汚れやカビ、藻の付着を防ぐ。
- 耐火: 火災の際に延焼を防ぐ。
- 導電性: 電気を通す。
- 抗菌・消臭: 菌の繁殖を抑えたり、臭いを分解したりする。
- 防音・制振: 音や振動を吸収する。
塗料が使われる分野
塗料は私たちの生活のあらゆる場面で活用されています。
- 建築: 住宅やビルの外壁、屋根、内装など。
- 自動車: ボディの塗装、内装部品、シャーシなど。
- 船舶: 船体、甲板、船底など。
- 家電製品: 冷蔵庫、洗濯機、テレビなど。
- 家具: テーブル、椅子、棚など。
- 道路・インフラ: 道路標識、橋梁、電柱など。
- 工業製品: 機械部品、鋼材、パイプなど。
- 特殊用途: 宇宙・航空機、医療機器、アート作品など。
塗料は単に色を付けるだけでなく、様々な素材を保護し、機能性を付与することで、私たちの生活の安全性、快適性、そして美しさを支える重要な役割を担っています。

塗料とは、物体の表面に塗り広げられ、薄い膜(塗膜)となって乾燥・固化・密着し、その物体の保護、美化、およびその他の特別な機能を付与するための物質です。
どのような樹脂が利用されるのか
塗料に使われる樹脂は、その塗料の骨格となり、塗膜の耐久性、耐候性、密着性、硬度、柔軟性など、ほとんどの重要な性能を決定します。用途や目的に応じて様々な種類の樹脂が使い分けられています。
1. アクリル樹脂 (Acrylic Resin)
- 特徴:
- 優れた耐候性: 紫外線による劣化に強く、色あせしにくい。
- 透明性・光沢: 美しい仕上がりになる。
- 経済性: 比較的安価で、バランスの取れた性能を持つ。
- 速乾性: 乾燥が早い。
- 用途:
- 建築用: 外壁、内装、屋根など幅広い用途で使われる。特に近年は耐候性を向上させた「アクリルシリコン」など、他の樹脂とのハイブリッド型も多い。
- 自動車用: 上塗り塗料(特にメタリック塗料)やクリアコートに多用される。
- 家電製品: 美しい外観を保つために使用される。
- DIY: 手軽に扱えるため、家庭用塗料にも多い。
- 短所: 耐久性(特に旧来のアクリル塗料)は他の高耐久性樹脂(フッ素、シリコン)に劣る場合がある。
2. ウレタン樹脂 (Urethane Resin / Polyurethane Resin)
- 特徴:
- 高い密着性: さまざまな素材にしっかりと接着する。
- 弾力性・柔軟性: 塗膜が硬すぎず、ひび割れや剥がれに強い。
- 耐摩耗性・耐衝撃性: 擦れや衝撃に強い。
- 耐候性: アクリルよりも耐久性が高く、バランスの取れた性能を持つ。
- 用途:
- 建築用: 外壁、屋根、床、木部、雨樋など、多様な部位で使用される。特に木部や金属部への密着性の高さが評価される。
- 木工製品: 家具やフローリングの保護。
- 皮革製品: 表面の保護。
- 防水材: 屋上やベランダの防水層。
3. シリコン樹脂 (Silicone Resin)
- 特徴:
- 非常に高い耐候性: 紫外線や熱に強く、長期間にわたって性能を維持する。
- 親水性: 塗膜表面が親水性を持つことで、汚れが雨水で流れ落ちやすい(低汚染性)。
- 耐熱性・耐寒性: 広範囲の温度で安定した性能を発揮する。
- 透湿性: 塗膜が水蒸気を通し、塗膜の膨れを抑制する。
- 用途:
- 建築用: 外壁や屋根の塗り替えで最も普及している塗料の一つ。耐久性とコストパフォーマンスのバランスが優れている。
- 高温環境: 耐熱性が求められる箇所。
- 電気絶縁: 電気機器の絶縁コーティング。
- 短所: 塗膜が硬めになる傾向がある。
4. フッ素樹脂 (Fluorine Resin)
- 特徴:
- 最高レベルの耐候性・耐久性: 非常に安定した化学構造を持ち、紫外線、酸性雨、塩害などに極めて強い。
- 低汚染性: 塗膜表面が滑らかで汚れが付着しにくい。
- 非粘着性: 物が付着しにくい性質を持つ。
- 用途:
- 建築用: 超高層ビルや橋梁など、長期的なメンテナンスコストを抑えたい建物や構造物。非常に高い耐久性が求められる箇所。
- 高級自動車: 長期間美しい光沢を保つ必要がある場合。
- 工業用途: 高い耐薬品性や非粘着性が必要な箇所。
- 短所: 他の樹脂に比べて価格が非常に高価。
5. エポキシ樹脂 (Epoxy Resin)
- 特徴:
- 非常に優れた密着性: 特に金属やコンクリートなどへの接着力が強い。
- 耐水性・耐薬品性: 水や多くの化学物質に強い。
- 硬度・耐摩耗性: 非常に硬い塗膜を形成し、傷つきにくい。
- 防錆性: 金属の錆を防ぐのに優れている。
- 用途:
- 下塗り(プライマー・サビ止め): 金属やコンクリートへの強力な密着と防錆・防食目的。
- 床用: 工場や倉庫の床、駐車場の床など、高い耐久性と耐摩耗性が求められる場所。
- 重防食: 橋梁、船舶(特に船底)、プラントなどの鋼構造物の防食塗装。
- 短所: 紫外線に弱く、屋外で上塗りとして単独で使用するとチョーキング(白亜化)が発生しやすい。そのため、屋外では上塗りに耐候性の高い塗料を重ねることが多い。
6. アルキド樹脂 (Alkyd Resin)
- 特徴:
- 経済性: 比較的安価。
- 光沢: 美しい光沢が得られる。
- 作業性: 塗りやすい。
- 用途:
- DIY: ホームセンターで手軽に購入できる鉄部・木部用塗料(いわゆる「ペンキ」)に多い。
- 工業用: 比較的重要度の低い金属製品など。
- 短所: 耐久性、耐候性、耐薬品性などが他の合成樹脂に劣るため、近年では屋外の主要な塗装面にはあまり使われなくなりつつある。
7. メラミン樹脂 (Melamine Resin)
- 特徴:
- 高い硬度・耐熱性: 焼付け塗装によって非常に硬く、耐熱性のある塗膜を形成する。
- 耐水性・耐摩耗性: 比較的優れている。
- 用途:
- 焼付け塗装: 自動車、家電製品、金属家具など、工場で高温で焼き付けて硬化させる工業製品の塗装。
- 単体で使われることは少なく、アルキド樹脂と併用されることが多い(アミノアルキド樹脂塗料)。
その他の樹脂
- ポリエステル樹脂: 光沢のある厚膜が得られ、楽器や仏壇、家具などに使用される。
- 変性シリコン樹脂(ラジカル制御型など): シリコン樹脂の耐候性をさらに向上させ、塗膜の劣化因子であるラジカルの発生を抑制する技術が導入されたもの。建築用塗料で主流。
- 無機系樹脂: シリカなどを主成分とし、非常に高い耐候性、不燃性を持つ。
- ハイブリッド系樹脂: 複数の樹脂の長所を組み合わせたもの。例えば、アクリルとシリコンを組み合わせた「アクリルシリコン」塗料は、アクリルの汎用性とシリコンの耐候性を併せ持つため、建築用塗料で非常に広く使われている。
塗料を選ぶ際には、塗装対象の素材、使用環境(屋内・屋外)、求められる耐久年数、予算などを考慮して、最適な樹脂の塗料を選択することが重要です。

塗料に使われる樹脂は、その塗料の骨格となり、塗膜の耐久性、耐候性、密着性、硬度、柔軟性など、ほとんどの重要な性能を決定する材料です。
樹脂は塗料の中でどのような形で存在しているのか
塗料における樹脂(結合材)は、基本的に溶剤に「溶けている」か、あるいは「分散している」状態で存在しています。「溶けている」か「分散している」かは、塗料の種類によって異なります。
1. 溶剤系塗料(油性塗料)の場合:完全に溶けている
溶剤系塗料の場合、樹脂は有機溶剤(シンナーなど)の中に完全に溶解しています。
- 溶解とは、砂糖が水に溶けるように、樹脂の分子が溶剤の分子と均一に混じり合い、肉眼では見えないレベルで一体となる状態です。
- 塗料を塗布すると、溶剤が蒸発し、溶けていた樹脂が残って固まり、塗膜を形成します。
- このタイプの塗料は、一般的に乾燥が早く、塗膜の光沢や密着性が良いとされます。
2. 水系塗料(水性塗料)の場合:多くは分散している(エマルション)
水系塗料の場合、樹脂は水には溶けないため、水の中に微粒子として均一に分散している状態です。これを「エマルション」または「ラテックス」と呼びます。
- エマルションは、牛乳のように、溶け合わない液体同士が互いに微粒子となって均一に混ざり合っている状態です。塗料の場合は、樹脂の微粒子が水中に分散しています。
- 塗料を塗布すると、水が蒸発し、分散していた樹脂の微粒子同士がくっつき合って融合し、塗膜を形成します。
- 水系塗料は、臭いが少なく、引火の危険性も低いなど、環境面や安全面での利点があります。
3. 無溶剤塗料の場合:溶剤を使わない
ごく一部には、溶剤を全く使わない「無溶剤塗料」もあります。
- この場合は、液体の樹脂そのものに顔料などを混ぜ、硬化剤との化学反応によって塗膜を形成します。
- 例としては、厚膜のエポキシ床材などが挙げられます。

塗料を構成する「樹脂」は、塗料が液状である間は、その種類に応じた溶剤(有機溶剤または水)の中に溶けているか、あるいは微粒子として分散している状態であり、塗布後に溶剤が揮発することで固化し、塗膜を形成するという仕組みになっています。
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