この記事で分かること
- セラミックコンデンサーとは:セラミックの誘電体と金属電極を交互に何層も積み重ねて作られているため、非常に小型で、スペースが限られる電子機器に最適なコンデンサーです。
- セラミックコンデンサーの役割:電子機器の中で「電気のクッション」や「ノイズ除去フィルター」、「信号の整流器」として働き、回路の安定・安全・高性能化を支えています。
- ニッケル粉の利用法:MLCCの「内部電極」を構成する中核材料として利用されています。
東邦チタニウムのニッケル粉販売増
東邦チタニウムは、積層セラミックコンデンサー(MLCC)向けのニッケル粉の販売を倍増する計画であることを発表しています。
https://chemicaldaily.com/archives/646161
MLCCは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器の電源供給の補助・安定化、ノイズの抑制などの機能を持つ重要な部品であり、電動自動車(EV)や第6世代移動通信システム(6G)の実用化に伴い、今後の需要拡大が見込まれています。
MLCCとはなにか
MLCC(積層セラミックコンデンサー:Multilayer Ceramic Capacitor)は、電子回路において広く使用されている小型のコンデンサー(電気を蓄える部品)です。
特徴と構造
- 構造:セラミックの誘電体と金属電極を交互に何層も積み重ねて作られます(“積層”の名前の由来)。
- サイズ:非常に小型で、スマートフォンや自動車の制御基板など、スペースが限られる電子機器に最適。
- 特性:
- 高周波特性に優れる
- 寿命が長い
- 安価で大量生産が可能
主な用途
- スマートフォン、パソコン、テレビなどの家電製品
- 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)
- 5G/6G通信機器
- 医療機器や産業用機器
なぜ重要か?
現代の電子機器には1台あたり数百~数千個のMLCCが使用されており、特にEVや高性能スマホの普及により需要が急増しています。
つまり、MLCCは「電子機器の血管のような存在」と言ってもよく、その材料であるニッケル粉(内部電極用)の供給体制強化は、電子産業の成長を支えるカギとなっています。

MLCCはコンデンサーであり、セラミックの誘電体と金属電極を交互に何層も積み重ねて作られているため、非常に小型で、スペースが限られる電子機器に最適なコンデンサーです。
どのような働きをするのか
MLCC(積層セラミックコンデンサー)は、電子回路の中で以下のような重要な働きをします。
1. 電気を一時的に蓄える(平滑化)
- 電源からの電流には波(リップル)があるため、MLCCがそれを吸収・放出して電圧を安定化させます。
- 例:CPUやメモリの動作に必要なきれいな電力供給を実現。
2. ノイズを除去する(デカップリング)
- 他の部品が発生させる高周波ノイズを吸収し、回路が誤動作しないようにします。
- 例:通信機器での信号の品質維持や、車載ECUでの誤作動防止。
3. フィルターとして働く
- 特定の周波数の信号だけを通す/遮る役割(フィルタリング)。
- 例:音響機器や無線機器などで信号処理を支援。
4. タイミング調整(RC回路)
- 抵抗と組み合わせることで、時間制御回路(RCタイマー)に使用されます。
- 例:テレビやエアコンのリモコン受信回路など。

MLCCは電子機器の中で「電気のクッション」や「ノイズ除去フィルター」、「信号の整流器」として働き、回路の安定・安全・高性能化を支えています。
ニッケル粉はどのように使われるのか
ニッケル粉は、以下のように、MLCCの内部電極材料として使用されます。
■ 使われ方:MLCC内部電極の素材
MLCCは、「セラミック層」と「電極層」が交互に積層された構造です。
- このうち「電極層」に使用されるのがニッケル粉です。
- ニッケル粉をペースト状に加工し、セラミックとの間に塗布→焼成(焼き固め)することで、微細で導電性の高い電極が形成されます。
■ なぜニッケルなのか?
- 安価で安定供給可能:
- 以前は高価なパラジウムが使われていましたが、コスト削減のためにニッケルが主流になりました。
- 還元雰囲気での焼成に適応:
- ニッケルは酸化しやすいため、「酸素を含まない(還元)雰囲気」での焼成が必要。
- これにより、セラミックとニッケル電極が高密度かつ微細に一体化されます。
- 高い導電性と微粒子性:
- 特にMLCC向けにはサブミクロンサイズ(1μm未満)の超微細なニッケル粉が求められます。
- 東邦チタニウムのような企業は、粒径分布や結晶性を高度に制御して製品化しています。
■ ニッケル粉の品質がMLCCの性能を左右する
- 均一な粒径・高い純度・優れた焼結性が求められる。
- 微細な電極が正確に形成されないと、MLCCが短絡(ショート)したり、寿命が縮む原因になります。

ニッケル粉は、MLCCの「内部電極」を構成する中核材料であり、その微細制御技術は、スマホ・EV・5Gなど先端分野の信頼性を支えるカギとなっています。
内部電極とはなにか
内部電極とは、MLCC(積層セラミックコンデンサー)の中に埋め込まれている電気を流す層のことです。
コンデンサーの基本機能である「電気を蓄えたり放出したりする」働きを担う、非常に重要な構成要素です。
■ 内部電極の役割
- 電気を蓄えるための「板極(はんきょく)」の役割:
- コンデンサーは「絶縁体(セラミック)」をはさんで2枚の電極で電気を蓄えます。
- MLCCではこれを何十〜何百層にも積層して小型化・大容量化を実現。
- 外部端子に接続されて、電気の出入り口となる:
- 積層された内部電極は交互に外部電極(端子)につながる構造になっており、電流が効率よく流れるようになっています。
■ 図で表すと(イメージ):
[ +外部電極 ]
| Ni電極 | ← 内部電極(ニッケル粉で構成)
| セラミック |
| Ni電極 |
| セラミック |
…(これを多数繰り返し)…
[ -外部電極 ]
■ 材料と性能への影響
- 材料には導電性の高い金属(ニッケルやパラジウムなど)が使われます。
- 内部電極が均一で微細であるほど、MLCCは小型でも高性能・高信頼性になります。

内部電極は、MLCCの中で電気をやり取りする“導線の層”であり、性能を左右する部品であり、その材料であるニッケル粉の品質も非常に重要です。
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