機器分析 機器分析とは何か?どのような種類があるのか?

この記事で分かること

  • 機器分析とは:化学反応を用いる古典的な化学分析に対し、物質が持つ物理的・化学的性質を精密な機器で測定し、その物質の成分や構造を分析する方法です。
  • 重要な理由:機器分析が重要なのは、高感度・高精度で微量な物質も測定できるためです。また、迅速で客観的なデータを得られるため現代社会の様々な分野で不可欠な技術となっています。
  • 機器分析の種類:機器分析の種類は、測定原理によって分類されます。主に、分光分析(光と物質の相互作用を利用)、分離分析(混合物を分離)、質量分析(分子の質量を測定)、電気化学分析(電気的性質を測定)などがあります。

機器分析

 機器分析とは、化学反応を用いる古典的な化学分析に対し、物質が持つ物理的・化学的性質を精密な機器で測定し、その物質の成分や構造を分析する方法の総称です。

 高感度で迅速な分析が可能であり、微量な成分や複雑な混合物も精度高く分析できるため、現代の科学技術分野で広く利用されています。

分析方法はどのように分類されるのか

 分析の種類は、目的や手法によってさまざまな分け方ができます。

1. 定性分析と定量分析

  • 定性分析: 物質に何が含まれているかを調べる分析です。
    • 例: 試料に鉄が含まれているか、食塩が含まれているかなどを特定します。
  • 定量分析: 物質にどのくらいの量が含まれているかを調べる分析です。
    • 例: 飲料水中の鉛の濃度が1 ppmである、血液中の糖分が100 mg/dLであるなど、量を数値で示します。

2. 破壊分析と非破壊分析

  • 破壊分析: 試料を化学的に分解したり、物理的に変化させたりして分析する方法です。
    • 例: 試料を酸に溶かして成分を分析する、燃焼させて生じたガスを分析するなど。
  • 非破壊分析: 試料に手を加えることなく、そのままの状態で分析する方法です。
    • 例: X線CTスキャン、蛍光X線分析など。文化財や美術品の調査、製品の品質検査などで重要です。

3. マクロ分析とミクロ分析

  • マクロ分析: 比較的大きな試料(グラム単位)を用いて分析する方法です。
  • ミクロ分析: ごく微量な試料(ミリグラム、マイクログラム単位)を用いて分析する方法です。現代の機器分析では、このミクロ分析が主流となっています。

4. 機器分析と古典的な化学分析

  • 機器分析: 物理的な性質(光の吸収、電気伝導度、質量など)を精密な機器で測定して分析する方法です。感度が高く、迅速に分析できる点が特徴です。
    • 例: ガスクロマトグラフィー、原子吸光分析、質量分析など。
  • 古典的な化学分析: 化学反応を利用して分析する方法です。
    • 例: 滴定(濃度がわかっている試薬を加えて反応させ、その量から濃度を求める方法)や沈殿法(特定の成分を沈殿させ、その質量を測る方法)などがあります。

 これらの分類は相互に排他的なものではなく、例えば「機器分析による定量分析」や「非破壊的な定性分析」のように、組み合わせて用いられることが多いです。

機器分析にはどのようなものがあるのか

 機器分析は、物質の物理的・化学的性質を測定する原理によって、主に以下の種類に分類されます。

1. 分光分析

 物質と光(電磁波)の相互作用を利用した分析法です。物質が特定の波長の光を吸収、発光、散乱する性質を測定します。

  • 紫外可視分光光度法(UV-Vis): 物質が紫外光や可視光を吸収する度合いを測定し、濃度を決定します。
  • 赤外分光法(IR): 物質が赤外線を吸収するパターンから分子の構造を推定します。
  • 原子吸光分析法(AAS): 原子が特定の光を吸収する性質を利用し、微量の金属元素を定量します。

2. 分離分析

 混合物から個々の成分を分離し、その量を測定する方法です。

  • ガスクロマトグラフィー(GC): 気体として揮発する成分を分離・分析します。
  • 高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 液体として溶ける成分を分離・分析します。
  • 質量分析法(MS): 試料をイオン化し、質量と電荷の比(m/z)を測定して成分の分子量を決定します。クロマトグラフィーと組み合わせて、GC-MSLC-MSとして利用されることが多いです。

3. 電気化学分析

物質の電気的な性質(電位、電流など)を利用して分析します。

  • pH測定: 水溶液中の水素イオン濃度を測定します。
  • ボルタンメトリー: 電極に加える電圧を変えながら流れる電流を測定し、酸化還元反応を分析します。

これらの分析法は、食品、環境、医療、材料科学など幅広い分野で利用されています。

機器分析の種類は、測定原理によって分類されます。主に、分光分析(光と物質の相互作用を利用)、分離分析(混合物を分離)、質量分析(分子の質量を測定)、電気化学分析(電気的性質を測定)などがあります。

機器分析が重要である理由は何か

 機器分析が重要である理由は、主に「高感度・高精度」「迅速性」「客観性」「情報量の多さ」の4つに集約されます。


高感度・高精度

 古典的な化学分析では検出が難しかった微量な物質でも、機器分析ならば高感度に検出できます。また、測定の精度が高いため、非常に小さな組成の違いも正確に把握できます。

 これは、環境汚染物質のモニタリング、食品中の微量な添加物の検出、医薬品の品質管理など、厳密な分析が求められる分野で不可欠です。


迅速性と自動化

 多くの機器分析は、数分から数十分といった短い時間で結果を得ることができます。また、自動化されたシステムも多く、大量のサンプルを連続して分析することが可能です。

 これにより、製造ラインにおける品質管理や、医療現場での診断など、迅速な判断が求められる場面で大きな役割を果たします。


客観性と信頼性

 機器分析は、人間の経験や勘に頼ることなく、物質の物理的・化学的性質を数値データとして客観的に測定します。

 これにより、誰が分析しても同じ結果が得られる再現性信頼性の高いデータを提供できます。これは、科学研究の進歩や、法的証拠として分析結果が求められる分野で特に重要です。


多様な情報の獲得

 機器分析を用いることで、単なる「何が含まれているか(定性)」や「どのくらい含まれているか(定量)」だけでなく、分子の構造立体配置結合状態など、より詳細な情報を得ることができます。

 これにより、未知の物質の特定や、新しい材料の開発など、科学技術のブレークスルーに不可欠な役割を担っています。

機器分析が重要なのは、高感度・高精度で微量な物質も測定できるためです。また、迅速客観的なデータを得られるため、品質管理、環境モニタリング、医療診断など、現代社会の様々な分野で不可欠な技術となっています。

分光分析にはどのようなものがあるのか

 分光分析とは、物質に電磁波(光)を照射し、その相互作用(吸収、発光、散乱など)を測定することで、物質の成分や構造を調べる分析手法です。使用する電磁波の波長域によって、さまざまな種類に分けられます。


1. 紫外可視分光光度法 (UV-Vis)

 物質が紫外線や可視光線を吸収する性質を利用します。溶液中の物質濃度を定量する際に最も広く使われる手法で、ランベルト・ベールの法則に基づいています。

  • 原理: 物質の電子が、紫外・可視光のエネルギーを吸収して励起状態へ遷移します。
  • 用途: 水質分析、食品の色素や添加物の定量、生化学分野でのDNA・タンパク質の濃度測定など。

2. 赤外分光法 (IR)

 物質が赤外線を吸収する性質を利用します。特に有機化合物の構造解析に非常に有効です。

  • 原理: 分子を構成する原子間の結合が、赤外線のエネルギーを吸収して振動運動(伸縮や屈曲)します。特定の結合(例: O-H、C=O)は固有の波長で吸収するため、そのパターンから官能基を特定できます。
  • 用途: 有機化合物の同定、高分子材料の組成分析、異物分析など。

3. 原子吸光分析法 (AAS)

 試料を高温で原子化し、その原子が特定の波長の光を吸収する現象を利用して、微量な金属元素を定量します。

  • 原理: 原子化した試料に目的の元素が発する光を当てると、基底状態の原子が光を吸収し、吸光度から濃度を求めます。
  • 用途: 環境水中の重金属分析、土壌や食品中のミネラル分析など。

4. 蛍光X線分析法 (XRF)

 試料にX線を照射し、発生する蛍光X線のエネルギーや強度を測定して、元素の種類と量を調べます。

  • 原理: 物質にX線を照射すると、内殻電子が弾き出され、外殻電子が空孔を埋める際に元素固有のエネルギーを持つ蛍光X線が発生します。
  • 用途: 合金やセラミックスの組成分析、土壌の元素分析、文化財の非破壊分析など。

5. 核磁気共鳴分光法 (NMR)

 原子核が強い磁場中にあるとき、特定の周波数の電磁波を吸収・放出する現象(核磁気共鳴)を利用し、分子の三次元構造を詳細に解析します。

用途: 有機化合物の構造決定、医薬品の品質管理、MRI(磁気共鳴画像法)にも応用されています。

原理: 特定の原子核(主に水素原子のプロトンや炭素13)は、化学的な環境によって共鳴周波数がわずかに異なるため、その違いから分子内の原子のつながりや立体構造を推定できます。

分光分析は、光と物質の相互作用を測定する手法です。紫外可視分光光度法で濃度、赤外分光法で構造、原子吸光分析法で金属元素の定量、蛍光X線分析法で元素組成、核磁気共鳴分光法で分子構造の解析など、使用する光の種類や原理によって多岐にわたります。

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