出光興産株式会社の水素エンジンの開発・販売への出資 水素エンジンとは何か?

この記事で分かること

水素エンジンとは:燃料として水素(H₂)を使う内燃機関のことで、モビリティ分野の脱炭素化に向けた重要な一歩となります。

水素エンジンの魅力:今あるエンジン文化を生かしながら、CO₂ゼロに近い世界を目指せる点が水素エンジンの最大の魅力です。

出光興産株式会社の水素エンジンの開発・販売への出資

 2025年4月15日、出光興産株式会社は、水素エンジンの開発・販売を手掛けるスタートアップ企業「i Labo株式会社」への出資と協業の開始を発表しました。​

https://www.idemitsu.com/jp/news/2025/250415_1.pdf?utm_source=chatgpt.com

 この協業は、水素エンジンの実用化を加速させることを目的としています。

 i Laboは、出光興産を含む4社から総額約8億円の資金を調達しました。​他の出資企業には、ピストンリング大手のTPR、港湾物流の上組、物流企業の三芳エキスプレスが含まれます。

​ これらの企業との連携により、水素エンジンの量産技術開発や実用化が進められます。

水素エンジンとは何か

 水素エンジンとは、燃料として水素(H₂)を使う内燃機関のことです。

 基本的な仕組みは普通のガソリンエンジンと似ています。違いは「ガソリンの代わりに水素を燃やして動力を得る」という点です。

 水素と空気中の酸素をエンジン内部で燃焼させ、その爆発力を使ってピストンを動かし、機械を動かします。

特徴

  • 排出ガスにCO₂(二酸化炭素)がほぼ出ない(理論上、水蒸気だけ)
  • エンジンの音や振動はガソリン車に近い(電気自動車とは違うドライビングフィール)
  • エネルギー密度が高く、素早い燃料補給ができる(水素を充填すればすぐ走れる)

課題

  • 水素は漏れやすく、爆発しやすいので「安全対策」が超重要
  • インフラ(水素ステーションなど)がまだまだ少ない
  • 燃焼時にNOₓ(窒素酸化物)が多少発生するので、それをどう抑えるかが技術課題

水素エンジンとは、燃料として水素(H₂)を使う内燃機関のことで、モビリティ分野の脱炭素化に向けた重要な一歩となります。

水素エンジンのメリット

 水素エンジンには以下のようなメリットがあります。


CO₂をほぼ排出しない

→ 燃やしても水蒸気になるだけ。ガソリンエンジンみたいに二酸化炭素はほぼ出ない。

エンジン技術をそのまま活かせる

→ いまあるエンジンの製造・整備・部品のノウハウがほぼ使える。自動車産業の雇用も守りやすい。

エンジンならではの走りが楽しめる

→ モーター車(EV)と違って、エンジン音やレスポンスがガソリン車に近く、「走る楽しさ」がある。

素早い燃料補給ができる

 → ガソリン給油と同じ感覚で水素も充填できる(数分で満タン)。長距離ドライブ向き。

重い車両・大型機械にも向いている

 → 大型トラック、バス、建設機械、船舶など、バッテリーEVでは厳しい分野にも適用できる。

エネルギー密度が高い

  → 同じ重さ・体積なら、バッテリーよりずっと多くのエネルギーを貯められる。


今あるエンジン文化を生かしながら、CO₂ゼロに近い世界を目指せる点が水素エンジンの最大の魅力です。

なぜ窒化酸化物が発生するのか

 窒素酸化物(NOₓ)が発生する理由は、「空気中の窒素(N₂)と酸素(O₂)が高温で反応してしまう」からです。

  • エンジンの中では、水素と酸素を燃やして高温・高圧を作ります。
  • この時、燃焼温度が1700℃以上になると、普段は安定している空気中の窒素(N₂)がバラバラに壊れて、酸素と結合してしまいます。
  • その結果、一酸化窒素(NO)二酸化窒素(NO₂)などの「窒素酸化物(NOₓ)」ができてしまいます。

 つまり、燃料が何であっても「高温燃焼」するとNOₓが発生してしまいます。また、水素は特に燃焼温度が高いので、NOₓが出やすい傾向にあります。

対策と

  • 燃焼温度を下げる(たとえば「EGR」という技術で排ガスを一部再循環させる)
  • 水素と空気の混合比を工夫して、温度をコントロールする

などが研究されています。

空気中の窒素(N₂)と酸素(O₂)が高温で反応してしまうことで、窒素酸化物が発生します。この反応は高温ほど起きやすいため、焼温度が高い水素を燃料とすると、NOₓが出やすい傾向にあります。

素早い燃料補給とは

 水素エンジン車で「素早い燃料補給ができる」理由は、次のような点にあります:

🔹 高圧水素ガスを短時間で注入できるから

  • 水素燃料は主に「高圧ガス(たとえば700気圧)」として貯蔵されています。
  • 水素ステーションでは、圧縮済みの水素をタンクにそのまま押し込むだけなので、給油と似た感覚で「数分で満タン」にできます(一般的に3〜5分ほど)。

🔹 バッテリーEVと違って「充電時間」がいらないから

 電気自動車(EV)は数十分〜数時間の充電が必要なのに対し、水素エンジン車はガソリン車のように短時間の「補給」で再出発できます。

電気を貯めるより、気体を「圧縮して詰め込む」ほうが速いため、燃料補給を素早く行うことができます。

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