この記事で分かること
- JEITAとは:業界の政策提言やロードマップの策定などを通じて、日本のエレクトロニクス産業とIT産業の発展を目的とした業界団体です。
- 35年技術工程表とは:日本の電子・IT産業が持続可能な未来に向けてどう進んでいくべきかを示した、長期ビジョンの技術戦略ロードマップで5つの重点分野から構成されています。
- 重点分野は何か:グリーン×デジタルの社会実装、サイバー・フィジカルの高度融合、半導体・電子部品の進化、モビリティ・ロボティクス、人間中心の社会と生活支援技術が挙げられています。
JEITAの35年技術工程表
電子情報技術産業協会(JEITA)は「第11版 電子部品技術ロードマップ」を3月末に発刊しました。
このロードマップは、日本のエレクトロニクス産業が2050年を見据えてどのような技術的進展や社会的課題に対応していくかを示したものになっています。
JEITAとはどんな組織なのか
JEITAは一般社団法人電子情報技術産業協会のことで、日本のエレクトロニクス産業とIT産業の発展を目的とした業界団体です。
企業や研究機関が集まり、以下のような活動をしています。
1. 業界の政策提言
- 経済産業省など政府と連携し、産業政策に意見を出す
- 脱炭素やデジタル社会への移行を促す
2. 技術標準化・ロードマップ策定
- 業界共通の技術基準・国際標準の策定をリード
- 「技術戦略ロードマップ(Technology Roadmap 35)」などを発行
3. 統計・調査の実施
- 電子部品・半導体・IoTなどの市場データや生産統計を提供
- 会員企業に役立つ情報提供を行う
4. 展示会・国際イベントの開催
- 「CEATEC」など国内外の技術展示会やフォーラムを主催
- スタートアップ・大企業・自治体との交流促進
5. 産学官の連携推進
- 大学・研究機関・政府と共同研究や人材育成を行う
- オープンイノベーションの支援も実施

JEITAは一般社団法人電子情報技術産業協会のことで、業界の政策提言やロードマップの策定などを通じて、日本のエレクトロニクス産業とIT産業の発展を目的とした業界団体です。
35年技術工程表とは何か
JEITAの「35年技術工程表(Technology Roadmap 35)」は、日本の電子・IT産業が持続可能な未来に向けてどう進んでいくべきかを示した、長期ビジョンの技術戦略ロードマップです。
■ 概要
- 正式名称:「技術戦略ロードマップ“Technology Roadmap 35”」
- 発表時期:2023年7月(JEITA創立75周年記念)
- 目的:
- 2050年までを見据えた産業界全体の方向性を示す
- 官民連携、標準化、研究開発への指針を提供
- グリーン・デジタルの融合による持続可能な社会の実現を支援
■ 主なテーマ(柱)
JEITAの35年工程表は、次の5つの主要領域で構成されています。
- グリーン×デジタルの社会実装
- 脱炭素化(カーボンニュートラル)
- サーキュラーエコノミー(循環型社会)
- エネルギーマネジメント技術
- サイバー・フィジカルの高度融合
- センサー、エッジAI、IoT、5G/6G
- サイバーフィジカルシステムによる予測と最適化
- 半導体・電子部品の進化
- 次世代半導体(GaN、SiCなど)
- パッケージング技術の高度化
- 小型化・高性能化の限界突破
- モビリティ・ロボティクス
- 自動運転・EV
- スマートロボットによる労働支援・介護支援
- 人間中心の社会と生活支援技術
- ウェルビーイング(健康、福祉)
- 教育・スキル開発のDX
- UX設計とインターフェース技術
■ 特徴的な視点
- 2050年までの35年間を「3つのフェーズ」に区切って構想
- 2020〜2030年:基盤技術の整備と社会課題の認識
- 2030〜2040年:革新的技術の実用化・標準化
- 2040〜2050年:社会全体への本格実装と定着
- 横断的な連携:産業・大学・研究機関・政府の連携が不可欠と強調
- 国際標準化:世界市場での競争力維持・向上を目指した標準化戦略

35年技術工程表とは、日本の電子・IT産業が持続可能な未来に向けてどう進んでいくべきかを示した、長期ビジョンの技術戦略ロードマップで5つの重点分野から構成されています。
グリーン×デジタルの社会実装とは何か
「グリーン×デジタル」の項目は、これまでの技術開発と社会貢献の枠組みを大きく変える新しい視点として位置づけられています。
ここでは、「グリーン×デジタル」が意味することと、これまでとの違いをわかりやすく整理して説明します。
グリーン×デジタルとは?
「グリーン×デジタル」とは、脱炭素社会(グリーン)とデジタル技術(デジタル)の融合を意味します。
- 環境負荷を減らす(グリーン)
- デジタル技術を使ってその実現を加速させる(デジタル)
という双方向の相乗効果を目指すアプローチです。
これまでとの違い(従来型との比較)
観点 | 従来の技術戦略 | 「グリーン×デジタル」 |
---|---|---|
目的 | 生産性向上、経済成長 | 持続可能性、カーボンニュートラルとの両立 |
デジタルの役割 | 単体でのIT化、業務効率化 | グリーンを加速するための戦略的手段 |
環境対策 | 各企業のCSR的取り組みが中心 | 業界横断で技術開発・標準化して環境目標を達成 |
視点 | 製品・プロセス単位での改善 | ライフサイクル全体で最適化(材料→製造→物流→使用→廃棄) |
目標年次 | 中期(5〜10年) | 長期(2050年のカーボンニュートラル)までを見据える |
具体的な取り組み例(JEITAの工程表より)
- カーボンフットプリントの見える化(デジタル)
- 製品ごとのCO₂排出量をデジタルでトレーサビリティ管理
- ブロックチェーンやIoTを活用
- スマートファクトリー
- エネルギー使用量をリアルタイムで管理
- AIによるプロセス最適化と排出削減
- グリーン半導体・電子部品
- 低消費電力材料(GaN、SiCなど)の推進
- 高効率な製造プロセス
- 再エネとITの統合
- 電力の需給予測にAIを活用
- 分散型エネルギー管理(VPP)と連動
■ なぜ「グリーン×デジタル」が必要なのか?
- カーボンニュートラル2050の国際公約
- 日本の産業構造そのものの転換(再エネ、電動化、資源循環)
- ESGや国際基準への対応(サプライチェーン全体での責任)
JEITAはこれらに対して、単なる技術開発だけでなく、標準化・業界連携・官民一体の社会実装を含めたビジョンを掲げています。

「グリーン×デジタル」とは、脱炭素社会(グリーン)とデジタル技術(デジタル)の融合を意味します。デジタルによってグリーン化を加速させる試みです。技術開発だけでなく、社会実装を含めたビジョンを掲げている点が特徴です。
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