この記事で分かること
- ぺロブスカイト太陽電池とは:次世代の太陽電池で、ペロブスカイト構造の結晶を発電層に用います。薄くて軽量、柔軟で、低コストで製造できるという特徴があります。
- 水に弱い理由:発電層の結晶材料自体が水分を吸収しやすく、水と反応して分解してしまうためです。これにより、結晶構造が崩れ、発電効率が急激に低下します。
- 保護膜の概要:有機EL技術を応用した超高水蒸気バリア性能を持つ樹脂製のフィルムです。ペロブスカイト層を覆い、水分を遮断することで耐久性を向上させます。
コニカミノルタのペロブスカイト太陽電池向け保護膜
コニカミノルタは、ペロブスカイト太陽電池の弱点である湿気による急速な劣化を防ぐための保護膜(バリアフィルム)を開発し、耐用年数を大幅に向上させることに成功しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1778B0X11C25A1000000/
耐用年数が延びることで、太陽電池のトータルでの導入コストが減少し、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池の普及を加速させると期待されています。
ペロブスカイト太陽電池とは何か
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造という特定の結晶構造を持つ材料を、光を吸収して電気に変換する発電層(光吸収層)に用いた次世代型の太陽電池です。
🔬 ペロブスカイト構造とは
- ペロブスカイトとは、元々ロシアの鉱物学者L.A.ペロフスキーにちなんで名付けられた鉱物(灰チタン石:CaTiO3)と同じ結晶構造のことです。
- 太陽電池で用いられるペロブスカイト材料は、一般にABX3の組成式を持ち、有機イオン(A)、鉛やスズなどの金属イオン(B)、ハロゲン化物イオン(X)から構成されることが多く、有機無機ハイブリッド型と呼ばれることもあります。
- この構造が、薄膜でも高い光吸収力と、発生した電子・正孔(ホール)を効率よく分離・輸送できる特性を持っています。
ペロブスカイト太陽電池の主な特徴(メリット)
従来のシリコン系太陽電池と比較して、多くの点で優位性があり、次世代太陽電池として世界中で注目されています。
- ① 軽量・柔軟性
- パネルの厚さは従来の約100分の1、重さは約10分の1程度と薄く軽量です。柔軟な基板(フィルム)にも作製できるため、曲面や耐荷重の低い場所(ビルの壁面、非補強屋根など)にも設置可能です。
- ② 高い変換効率
- 開発当初は数%程度でしたが、研究が進み、現在では従来のシリコン系太陽電池に匹敵する高いエネルギー変換効率が実現されています。
- ③ 低コストな製造
- 製造工程がシンプルで、結晶材料を溶液状にして基板に塗布したり印刷したりといった方法で低温で作成できるため、製造コストを大幅に抑えられると期待されています。
- ④ 弱い光でも発電
- 光の吸収力が非常に強く、曇りの日や室内などの弱い光でも効率的に発電が可能です。
実用化に向けた課題(デメリット)
- 耐久性の低さ
- 発電層が水(湿気)、酸素、紫外線などに弱く、従来の太陽電池(約20年の耐用年数)と比べて寿命が短い点が最大の課題でした。しかし、これは現在、コニカミノルタの保護膜技術のように、バリア技術などで改善が進められています。
- 大面積化の難しさ
- 小さなセルでは高効率が出ますが、面積を大きくすると性能にばらつきが出やすく、安定した発電効率を保つための技術開発が進められています。
- 鉛の使用
- 高効率を実現する材料に鉛が用いられることがあり、環境への負荷や安全性の懸念から、鉛を使わない材料(スズなど)の研究も進められています。

次世代の太陽電池で、ペロブスカイト構造の結晶を発電層に用います。薄くて軽量、柔軟で、低コストで製造できるため、従来のシリコン系では設置できなかったビルの壁面などへの応用が期待されています。
なぜ水に弱いのか
ペロブスカイト太陽電池が水に弱い主な理由は、その発電層であるペロブスカイト材料自体に吸湿性があるためです。
水分による劣化のメカニズム
ペロブスカイト層に湿気(水蒸気)や水分が侵入すると、以下のような化学反応や結晶構造の変化が起こり、太陽電池としての機能が失われていきます。
- 水分子の吸着・反応:
- ペロブスカイト材料(特に一般的な有機無機ハイブリッド型)は親水性(水と馴染みやすい性質)が高く、大気中の水蒸気を吸収しやすいです。
- 吸収された水分子がペロブスカイトの結晶構造と反応し、結晶が分解したり、非活性な物質(例:ヨウ化鉛など)に変化したりします。
- 結晶構造の破壊:
- この分解によって、ペロブスカイトの均一な結晶構造が崩壊し、光を効率よく吸収したり、生成した電子や正孔を輸送したりする能力が低下します。
- 変換効率の低下と寿命の短縮:
- 結果として、発電能力が急激に低下し、太陽電池のエネルギー変換効率が下がり、製品としての寿命が短くなってしまいます。
コニカミノルタの技術の意義
コニカミノルタが開発したような保護膜(バリアフィルム)は、この最大の弱点である「水分の侵入」を物理的に遮断することで、ペロブスカイト層を外部環境(特に湿気)から守り、耐久性を飛躍的に高めるために不可欠な技術となります。

ペロブスカイト太陽電池は、発電層の結晶材料自体が水分を吸収しやすく、水と反応して分解してしまうためです。これにより、結晶構造が崩れ、発電効率が急激に低下します。
どのような保護膜なのか
コニカミノルタが開発した保護膜は、「バリアフィルム」または「水蒸気バリア技術」と呼ばれる、樹脂製の極めて高性能なフィルムです。主な特徴は以下の通りです。
- 有機EL技術の応用:
- このフィルムは、同社が有機EL(OLED)照明の製造で培った超高水蒸気バリア技術を応用して開発されました。有機ELも水や酸素に弱いため、そこで培われた湿気遮断技術が活かされています。
- 水分を「ほぼ完全に」遮断:
- ペロブスカイト太陽電池の最大の弱点である湿気や水蒸気の侵入を物理的にほぼ完全に防ぐことで、デリケートなペロブスカイト結晶層の分解を防ぎます。
- 柔軟性:
- フィルム状であるため、ペロブスカイト太陽電池の特長である軽量性や柔軟性(フレキシブル性)を損なうことなく、耐久性を向上させることが可能です。
この保護膜により、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数を従来の約10年から約20年まで大幅に延ばす見込みです。

コニカミノルタの保護膜は、有機EL技術を応用した超高水蒸気バリア性能を持つ樹脂製のフィルムです。ペロブスカイト層を覆い、水分を遮断することで耐久性を向上させます。
発電効率には影響しないのか
コニカミノルタの保護膜は、ペロブスカイト太陽電池の発電効率に悪影響を与えないように設計されています。また、劣化を防ぐことで、長期的に高い発電効率を維持することに貢献します。
1. 光透過性(影響の最小化)
バリアフィルムは、太陽光を遮ることなく、発電層に光を届けなければなりません。そのため、コニカミノルタのバリアフィルムには、光を妨げない**高い光透過性(無色透明性)**が求められ、それを実現しています。
- 太陽電池の光吸収: 太陽電池の受光面は、入ってきた光を最大限に発電層に到達させる必要があります。バリアフィルムは、この光の透過率を極力維持できるように設計・製造されています。
2. 変換効率の維持(長期的な貢献)
保護膜の最大の目的は、湿気による初期の発電効率の急激な低下を防ぐことです。
- ペロブスカイト太陽電池は水に弱いため、バリアフィルムがないと、設置後すぐに発電層が分解し、効率が急激に低下します。
- コニカミノルタの保護膜は、この劣化を防ぐことで、屋外耐久20年相当の加速試験において、変換効率維持率95%を達成するなど、高い効率を長期間保つことに成功しています。
3. 柔軟性との両立
柔軟なフィルム型ペロブスカイト太陽電池の特性を活かすため、バリアフィルム自体も柔軟性を持ち、太陽電池の性能(発電効率)を確保しつつ、水分の浸透を許さない高いバリア性能を両立させています。
保護膜は「耐久性を上げるために発電効率を犠牲にする」のではなく、「耐久性を向上させることで、本来の高い発電効率を長く維持する」役割を果たします。

この保護膜は高い光透過性を持つため、発電効率自体には悪影響を与えません。むしろ湿気による劣化を防ぐことで、高い発電効率を長期間維持することに貢献します。

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