クボテックの新工場設立 クボテックはどんな製品を製造しているのか?新工場設立の理由は?

この記事で分かること

  • クボテックの製品:クボテックの主力製品は、半導体製造装置や社会インフラ用装置、一般産業用装置向けの制御盤・分電盤です。受注から設計、製造、検査、出荷まで一貫生産する高品質な電源装置や制御装置を提供しています。
  • 半導体製造装置向け制御盤とは:装置の動作を自動で制御し、モーターなどへ電力を供給するオーダーメイドのシステムです。高精度な制御とクリーンルーム対応が求められます。
  • 新工場設立の理由:半導体需要の急増と主要取引先の生産拡大に対応し、供給体制を強化するためです。また、生産拠点を分散させるBCP(事業継続計画)対策の目的もあります。

クボテックの新工場設立

 半導体製造装置向けの制御盤・分電盤の製造を手掛ける株式会社クボテック(神奈川県秦野市)が、岩手県奥州市広表工業団地に新工場を建設することを決定し、奥州市と工場立地に関する協定調印式を行いました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC069RG0W5A001C2000000/

 これは世界的な半導体需要の急増と主要取引先(東京エレクトロンなど)の生産能力拡大への対応や生産地域を分散し、BCP対策も図るものです。

半導体製造装置向けの制御盤とは何か

 半導体製造装置向けの制御盤とは、半導体製造装置(産業用ロボット)の動作全体を自動でコントロールし、装置へ電気エネルギーを供給する、いわば「頭脳」と「心臓」の役割を担うオーダーメイドの電気制御システムを収めた箱(盤)のことです。

 半導体製造装置は、ウェハーの露光、エッチング、成膜、検査など、非常に精密な工程を自動で実行しますが、その全ての動作指令と電力供給を制御盤が行っています。


制御盤の主な役割

 半導体製造装置制御盤は、複数の役割を組み合わせて装置全体の安全・安定稼働を実現しています。

  1. 制御(コントロール)
    • 内部のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などが、スイッチやセンサーからの信号(温度、圧力、位置など)を取り込み、あらかじめ設定されたプログラムに従って装置全体の動作(モーターの駆動、電磁弁の開閉など)を指令し、自動制御します。
  2. 電力供給・分配
    • 装置に必要な電力を受け取り、各機器(モーター、ヒーター、電源ユニットなど)に適切に分配・供給します。
  3. 保護・安全確保
    • 漏電、ショート、過負荷などの異常を検知し、瞬時に電源を遮断することで、装置の故障や感電、火災などの事故を防止します。
  4. 通信・伝達
    • 他の装置や上位システムとの間で、状態や動作に関する信号を確実に通信・伝達します。

半導体製造装置制御盤に求められる特別な要件

 一般的な産業機械の制御盤に比べ、半導体製造装置の制御盤には、その特性上、より高度で特殊な要求が課せられます。

要件理由・内容
高精度な制御・通信能力半導体製造には最高水準の計器類・センサーが使われるため、それらと連携し、高い信頼性で確実な通信・伝達を行う能力が必須です。
クリーンルーム対策設置場所が清浄度の高いクリーンルームであるため、盤内部品やケーブル、ラベルなどに、塵やガスを発生させない防塵・アウトガス規制への対応が求められます。
国際規格対応世界中の半導体工場に納入されるため、UL、CE、RoHS指令などの電気部品・規格の規制に準拠する必要があります。
振動対策搬送や移動が多いため、長距離の移動や移設に耐えられるよう、耐久性を考慮した振動対策や、分割・コネクタ処理が必要になります。

半導体製造装置の「頭脳」と「心臓」にあたり、装置の動作を自動で制御し、モーターなどへ電力を供給するオーダーメイドのシステムです。高精度な制御とクリーンルーム対応が求められます。

制御盤の防塵・アウトガス規制への対応方法は

 半導体製造装置の制御盤に求められる防塵・アウトガス規制への対応は、主に「発塵・持ち込み防止」「化学物質の放出抑制」の2つが柱となります。


1. アウトガス(化学物質の放出)規制への対応

 アウトガスとは、部材から揮発する微量のガス状化学物質(VOCなど)のことで、ウェハーの汚染源となるため、厳しく規制されます。

対応策詳細
低アウトガス性部材の選定接着剤、パテ、塗料、シーリング材、絶縁材などに、フッ素やシリコーンなどの低分子シロキサンをはじめとする汚染物質を極力含まない材料を使用します。
ラベル・マーカーの制限盤内の配線や部品に使用するマーカー、ケーブルタイ、ラベル、粘着テープなどは、アウトガス規制に対応した専用品(クリーンルーム対応品)を選定し、使用量を最小限に抑えます。
洗浄・ベーキング処理部材や完成した盤体に対し、残留する有機物を除去するための特殊な洗浄や、高温で揮発性物質を飛ばすベーキング(加熱脱ガス)処理を行うことがあります。

2. 防塵・発塵(塵埃の発生・侵入)対策

空気中の微細な塵が製品に付着するのを防ぐため、盤自体と製造工程の両方で対策が取られます。

対応策詳細
盤体の密閉化盤内の部品が外気に触れないよう、高い密閉構造とし、空気中の塵埃が侵入するのを防ぎます(ただし、冷却が必要な場合は、発塵しないフィルターを通したエアパージや熱交換器などを利用します)。
発塵しにくい部品・配線材の使用ケーブルやダクト、端子台などの電気部品に、摩擦や摩耗による微粒子が発生しにくい素材を選定します。
クリーンルーム内での製造制御盤の組み立て、配線、検査を、規定の清浄度(例:ISOクラス5~7)を満たしたクリーンルーム環境下で行い、外部からの塵埃の持ち込みを徹底的に排除します。
搬送時の養生納品のために盤を搬送する際にも、清浄なラップやカバーで厳重に養生し、外気中の汚染物質が付着しないようにします。

防塵対策として高い密閉構造を採用し、クリーンルーム内で製造します。アウトガス対策として、低揮発性のラベルや接着剤を選定し、部材にベーキング処理を施し、化学物質の放出を抑制します。

新工場設立の理由は何か

 新工場設立の主な理由は、半導体需要の急増と、主要な取引先である半導体製造装置メーカーの生産能力拡大に対応するためです。

  1. 市場の成長への対応: 世界的な半導体市場の拡大に対応し、供給体制を強化するため。
  2. 主要顧客への近接: 主要な取引先である半導体製造装置大手(東京エレクトロンなど)の東北での生産拡大に合わせ、生産拠点を整備し、供給体制を最適化するため。
  3. BCP(事業継続計画)対策: 生産拠点を神奈川県と岩手県奥州市に分散することで、災害などのリスク発生時にも製品供給が途絶えるのを防ぐリスク軽減のため。
  4. 生産能力の増強: 将来的には、奥州新工場を第2期まで増設することで、現在の2倍の生産能力を持つ計画があるため。

 この新工場は、同社の半導体製造装置向け制御盤・分電盤の製造拠点となります。

主な理由は、半導体需要の急増主要取引先の生産拡大に対応し、供給体制を強化するためです。また、生産拠点を分散させるBCP(事業継続計画)対策の目的もあります。

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