この記事で分かること
- 協立電機が製造している装置:半導体基板の品質を保証するため、インサーキットテスター(部品の電気特性検査)、ファンクションテストシステム(基板全体の機能検査)、X線検査装置(内部構造の非破壊検査)、外観検査装置(傷や異物検査)など、多岐にわたる検査装置を提供しています。
- インサーキットテスターの特徴:基板上の個々の電子部品(抵抗、コンデンサ、ICなど)が正しく実装され、電気的に正常に動作しているかを検査する装置です。基板に電力を供給せずに、部品単体の特性を電気的に測定できる点が特長です。
- 基板全体に電力を供給しないメリット:部品や基板の損傷リスクを低減できる点です。不良があっても焼損を防ぎ、不良箇所の特定も容易になり、製造初期段階での安全な品質管理と手戻り削減に貢献します。
協立電機の半導体基板検査装置生産能力増強
協立電機が半導体基板検査装置の生産能力増強を進めていることが報じられています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00755454
これは、半導体産業の需要拡大に対応するための動きと考えられます。半導体基板検査装置は、半導体の動作に不具合がないかを調べるために不可欠な装置であり、半導体製造プロセスの品質維持に重要な役割を担っています。
どんな検査装置なのか
協立電機(およびそのグループ会社である協立テストシステム)が手掛ける半導体基板検査装置は、多岐にわたります。主な種類と特徴は以下の通りです。
1. インサーキットテスター (ICT: In-Circuit Tester)
- 特徴: 基板上の個々の電子部品(抵抗、コンデンサ、ICなど)が正しく実装され、電気的に正常に動作しているかを検査する装置です。基板に電力を供給せずに、部品単体の特性を電気的に測定します。
- 検査内容: 部品の誤装着、欠品、ショート(短絡)、オープン(断線)などを検出します。
- 協立電機の製品例:
- FXコントローラユニット『FX-100』: プログラム作成により複数のFX計測ユニットを制御。
- ショート・オープン テストユニット『FX-210/210L』: メカI/Fを標準装備し、操作パネル感覚で本体制御が可能。
- プレス一体型インサーキットテスター『Focus-2000Plus』: 産業用パソコンを採用し、機能性とメンテナンス性を向上。
- 小型インサーキットテスター『Focus-3000 Mini Box』: 卓上型コンパクトサイズで、最大1,024ピンまで拡張可能。
2. ファンクションテストシステム (FCT: Functional Test System)
- 特徴: 基板全体が設計通りに機能するかどうかを、実際に動作させて検査する装置です。基板の入出力の電気的動作を確認します。
- 検査内容: 基板全体の回路動作、通信機能、パフォーマンスなどを評価します。
3. X線自動検査装置
- 特徴: 目視では確認できない基板内部のはんだ付けの状態や部品の配置などを、X線を用いて非破壊で検査します。特に、BGA(ボールグリッドアレイ)などの裏面にはんだ付けされる部品の検査に有効です。
- 協立電機の製品例:
- X線自動検査装置『V810 S2EX』(ViTrox社製): 透過型X線装置では検査が困難な両面基板に対応した3次元X線自動検査装置。
4. 外観検査装置
- 特徴: 基板上の部品のズレ、傷、異物、はんだの形状不良などを画像処理技術を用いて自動で検査します。
- 協立電機の製品例:
- ワンショット画像チェッカー『Focus-6000IA』: コスト削減と効果的な外観検査を実現。
- 卓上型外観計測検査機『Focus-5500DT』
5. その他の検査装置・ユニット
- デジタルマルチメータユニット『FX-300』: 測定から判定までを単独で完結できる。
- デジタルオシロスコープユニット『FX-320』: 波形パラメーター計算やGo/NG自動判定が可能。
- 多点LED発行色検査モジュール『FX-950』: LED部品の初期不良、点灯不良、静電破壊などを正確に判定。
協立電機は、これらの検査装置の開発から製造、販売、メンテナンスまで一貫して手掛けており、高いテストテクノロジーを有しています。インドでの生産能力増強は、これらの検査装置の供給能力を強化し、拡大する半導体市場の需要に対応するためと考えられます。

協立電機は、半導体基板の品質を保証するため、インサーキットテスター(部品の電気特性検査)、ファンクションテストシステム(基板全体の機能検査)、X線検査装置(内部構造の非破壊検査)、外観検査装置(傷や異物検査)など、多岐にわたる検査装置を提供しています。
インサーキットテスターが部品単体の特性を電気的に測定する方法は
インサーキットテスター (ICT) が基板に電力を供給せずに部品単体の特性を測定できるのは、主に以下の原理に基づいています。
- 微小なテスト信号の印加:ICTは、検査対象の部品に対して、非常に微弱な直流(DC)または交流(AC)の電圧や電流を印加します。この信号は、基板全体を動作させるのに必要な電力とは異なり、部品単体の電気的な特性を測定するのに十分なレベルです。
- オーミック測定:
- 抵抗: 既知の電圧を印加し、流れる電流を測定することで、オームの法則 (R=V/I) に基づいて抵抗値を算出します。
- コンデンサ: 交流信号を印加し、印加信号と計測信号の位相差や電流応答から容量値を算出します。
- コイル: 交流信号を印加し、同様に位相差や電圧応答からインダクタンス値を算出します。
- ダイオード: 順方向に微小な定電流を印加し、その時の順方向電圧 (Vf) を測定することで、ダイオードの正常性を確認します。
- ガーディング機能:ICTの重要な技術の一つに「ガーディング機能」があります。これは、検査対象の部品に並列に接続されている他の部品の影響を排除するための技術です。具体的には、測定したい部品以外の回路パスを、一時的に仮想的に「短絡」させることで、測定対象の部品だけにテスト信号が流れるようにします。これにより、周辺回路の影響を受けずに、目的の部品単体の正確な測定が可能になります。
- オープン/ショート検査:部品が実装されていない状態の配線パターンや、部品のピン間のショート(短絡)やオープン(断線)を検出します。これは、微小な電流を流して抵抗値を測定したり、導通をチェックしたりすることで行われます。
これらの技術を組み合わせることで、ICTは基板に電源を投入することなく、個々の部品が正しく実装され、電気的に正常であるかを高精度に検査することができます。これは、初期段階での不良を発見し、手戻りを減らす上で非常に有効な手段となります。

インサーキットテスターは、基板に電源を供給せず、微弱なテスト信号を個々の部品に印加し、その応答(電圧、電流、インピーダンスなど)を測定します。周辺回路の影響はガーディング機能で排除し、部品単体の抵抗値や容量値、ダイオードの順方向電圧などを正確に測定することで、実装不良や部品不良を検出します。
基板全体に電気を供給しないメリットは何か
基板全体に電気を供給しないメリットは、主に以下の点が挙げられます。
部品・基板への損傷リスクの低減
基板に電力を供給して動作させると、設計ミスや部品の誤実装、ショート(短絡)などがあった場合に、過電流が流れて部品が焼損したり、基板の配線が損傷したりするリスクがあります。ICTでは微弱な信号で検査するため、このような損傷のリスクを最小限に抑えられます。
不良原因の特定が容易
個々の部品単体の特性を測定するため、どの部品に問題があるのか、どこでショートしているのかなど、不良の原因をピンポイントで特定しやすいです。基板全体が動作しない場合でも、原因が回路のどこにあるかを効率的に突き止めることができます。
安全性の向上
高電圧や大電流を扱う必要がないため、検査作業における感電などの安全上のリスクが低減されます。
消費電力の削減
検査時に基板全体に電力を供給する必要がないため、運用時の消費電力を抑えることができます。
未完成な基板の検査が可能
一部の部品がまだ実装されていない状態や、ファームウェアが書き込まれていない状態の基板でも、それぞれの部品の電気的特性を個別に検査できます。これにより、製造工程の早い段階で不良を発見し、手戻りを減らすことができます。
これらのメリットにより、インサーキットテスターは、基板製造における初期段階での不良検出と品質管理において非常に重要な役割を果たしています。

基板全体に電気を供給しない最大のメリットは、部品や基板の損傷リスクを低減できる点です。不良があっても焼損を防ぎ、不良箇所の特定も容易になり、製造初期段階での安全な品質管理と手戻り削減に貢献します。
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