この記事で分かること
- レーザテックとは:導体製造に必要なEUVマスクブランクス検査装置などで世界的に高いシェアを誇る、日本の検査・計測装置メーカーです。最先端の技術力で半導体微細化を支え、高収益を上げています。
- EUVマスクブランクス欠陥検査装置とは:最先端半導体製造で使うEUVリソグラフィ用マスクの元となるブランクスに存在する、肉眼では見えない超微細な欠陥を検出する装置です。
レーザーテックの株価急落
2025年7月29日午前の東京株式市場では、日経平均株価が前日終値比374円95銭安の4万0623円32銭で午前の取引を終えました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL290WS0Z20C25A7000000/
この下落の背景には、高値警戒感に加え、主要企業の4~6月期決算発表が本格化する中で、いったん利益確定や持ち高整理の売りが出やすくなっている状況があるようです。特に半導体関連株に売りが出ており、その中でもレーザーテックが急落しています。
レーザーテックとはどんな企業か
レーザーテックは、神奈川県横浜市に本社を置く、半導体関連装置、FPD(フラットパネルディスプレイ)関連装置、およびレーザー顕微鏡の開発・製造・販売を行う企業です。特に、半導体製造プロセスの最先端を支える検査・計測装置において、世界的に高いシェアと技術力を持つことで知られています。
主な事業内容と製品
レーザーテックの主要な事業は以下の3つに分けられます。
- 半導体関連装置:
- EUV(極端紫外線)リソグラフィ関連装置: 半導体の微細化に不可欠なEUVリソグラフィに対応した検査装置が主力です。特に、EUVマスクブランクス欠陥検査装置では世界市場で高いシェア(一部では独占的なシェア)を誇っています。この装置は、EUVリソグラフィで回路パターンを転写する際に使用される「マスク」の元となる「マスクブランクス」に欠陥がないかを検査するもので、半導体の歩留まり向上に大きく貢献しています。
- フォトマスク(回路が描かれたマスク)の欠陥検査装置、ウェハ(半導体の基板)のエッジ検査装置、膜厚全面検査装置、SiC(シリコンカーバイド)ウェハ欠陥検査装置など、多岐にわたる検査・計測ソリューションを提供しています。
- FPD関連装置:
- 高精細FPDフォトマスクの欠陥検査装置を提供しており、この分野でも業界標準の地位を確立しています。
- レーザー顕微鏡:
- 高機能・多機能性を備えたハイブリッドレーザーマイクロスコープは、半導体材料、透明膜、コーティング材料、各種バイオ系試料、金属部品、プラスチック加工部品など、幅広い産業分野の研究開発や品質管理に活用されています。
強みと特徴
レーザーテックの最大の強みは、その圧倒的な技術力とニッチ市場での高いシェアにあります。
- 「世界初」を生み出す開発力: 1976年に世界で初めてLSIフォトマスク自動欠陥検査装置を開発するなど、「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」という経営理念のもと、常に最先端の技術と製品を開発しています。特にEUV関連の検査装置では、競合に先駆けて開発・市場投入し、デファクトスタンダード(事実上の業界標準)の地位を確立しています。
- グローバルニッチトップ戦略: 技術的に差別化が可能な特定の市場(ニッチ市場)に特化し、そこで圧倒的なシェアを獲得する戦略をとっています。これにより、高い競争優位性を保ち、高収益を実現しています。
- ファブライト戦略: 生産の一部を外部委託する「ファブライト」戦略を採用することで、自社のリソースを研究開発と顧客とのコミュニケーションに集中させ、迅速な意思決定とスピード開発を可能にしています。
- 高い収益性: 少数精鋭の組織であり、高付加価値な製品を提供しているため、営業利益率が非常に高く(近年は40%前後)、収益性の高い企業として知られています。
- 優秀なエンジニアと高い給与水準: 研究開発に特化した企業であるため、優秀なエンジニアが多く在籍しており、給与水準も高いことで知られています。
半導体産業の微細化、高性能化が進む中で、レーザーテックの検査・計測技術はますます重要性を増しており、今後の成長も期待されています。

レーザーテックは、半導体製造に必要なEUVマスクブランクス検査装置などで世界的に高いシェアを誇る、日本の検査・計測装置メーカーです。最先端の技術力で半導体微細化を支え、高収益を上げています。
EUVマスクブランクス欠陥検査装置とは何か
EUVマスクブランクス欠陥検査装置とは、半導体製造の最先端技術であるEUV(極端紫外線)リソグラフィで使用される「EUVマスクブランクス」の内部や表面にある極めて微細な欠陥を検出する装置です。
EUVリソグラフィとは?
まず、EUVリソグラフィについて簡単に説明します。半導体の回路は、フォトマスクと呼ばれる原版のパターンを光でウェハ(半導体の基板)に転写することで作られます。回路をより微細化するためには、より短い波長の光を使う必要があります。EUVリソグラフィは、従来の光(DUV:深紫外線)よりもはるかに短い波長(13.5nm)の極端紫外線を用いることで、現在の技術で可能な最先端の微細化を実現する技術です。
EUVマスクブランクスとは?
EUVリソグラフィで使われるフォトマスクの元となるのが「EUVマスクブランクス」です。
従来のフォトマスクは光を透過するガラス基板に回路パターンを描きますが、EUV光はガラスを透過しないため、EUVマスクブランクスは光を反射する特殊な構造をしています。具体的には、石英ガラスの基板上に、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)を交互に何十層も積層した多層膜(反射膜)が形成されており、その上に吸収膜(回路パターンが描かれる部分)が乗っています。この多層膜によってEUV光が効率よく反射されます。
EUVマスクブランクス欠陥検査装置の役割
半導体の回路線幅が数ナノメートル(nm)レベルにまで微細化される現在、フォトマスク上のごくわずかな欠陥でも、最終的な半導体チップの性能や歩留まりに致命的な影響を与えます。
EUVマスクブランクス欠陥検査装置の役割は以下の通りです。
- 超微細欠陥の検出:
- EUVマスクブランクスの基板や、シリコンとモリブデンの多層膜の内部に存在する、数ナノメートルレベルの微細な粒子や凹凸(位相欠陥)を検出します。これらの欠陥は、目に見えないほど小さくても、EUV光の反射特性に影響を与え、ウェハに転写される回路パターンに歪みや欠けを引き起こす可能性があります。
- 特に多層膜内部の欠陥(位相欠陥)は、通常の光では見つけにくいため、EUV光を実際に当てて検査する「Actinic(アクティニック)検査」が重要になります。
- 品質管理と歩留まり向上への貢献:
- フォトマスクが作られる前のブランクスの段階で欠陥を早期に発見することで、欠陥のあるブランクスを排除したり、欠陥を修正したりすることが可能になります。これにより、高品質なフォトマスクを製造し、結果として半導体製造全体の歩留まり(良品率)を向上させることができます。
- 欠陥の位置をナノメートル精度で特定することも重要な機能です。
レーザーテックの優位性
レーザーテックは、このEUVマスクブランクス欠陥検査装置において世界的に高いシェア(事実上の独占状態とも言われる)を持っています。その強みは、EUV光を用いた検査技術(Actinic検査)の開発に世界でいち早く成功し、実用化にこぎ着けた点にあります。この技術的なリードが、同社の高い競争優位性の源泉となっています。

EUVマスクブランクス欠陥検査装置は、最先端半導体製造で使うEUVリソグラフィ用マスクの元となるブランクスに存在する、肉眼では見えない超微細な欠陥を検出する装置です。これにより、半導体の歩留まり向上に不可欠な役割を担い、レーザーテックが世界で高いシェアを持ちます。
EUVマスクブランクス欠陥検査装置の仕組みは
EUVマスクブランクス欠陥検査装置の仕組みは、主にEUV光を使った「Actinic(アクティニック)検査」と呼ばれる方式が中心となります。これは、実際に回路転写に使われるEUV光と同じ波長(13.5nm)の光を使って検査することで、多層膜内部の欠陥(位相欠陥)など、他の光では検出が難しい欠陥を正確に見つけ出すことを可能にします。
具体的な仕組みを構成する主要な要素は以下の通りです。
- EUV光源:
- 検査装置の心臓部となるのが、EUV光を発生させる光源です。現在は、レーザー生成プラズマ(LPP)光源や放電プラズマ(DPP)光源などが用いられます。これらの光源は、極めて高出力で安定したEUV光を生成する必要があります。
- 照明光学系:
- 生成されたEUV光を、検査対象であるEUVマスクブランクスに均一に照射するための光学系です。EUV光は通常のレンズでは曲げられないため、特殊な反射ミラー(シュワルツシルト光学系など)を組み合わせて光の経路を制御します。
- 検査方式(主に暗視野法):
- EUVマスクブランクスの検査では、主に暗視野法が用いられます。
- 正常な部分: 正常なマスクブランクス表面はEUV光をきれいに反射します。この反射光は検出器には直接入らないように設計されます。
- 欠陥のある部分: 欠陥(例えば、微細な粒子、ピット、多層膜の歪みなど)が存在すると、その部分でEUV光が散乱されます。
- 散乱光の検出: 検査装置は、この散乱されたEUV光だけを特殊な光学系で捕らえて、高感度な検出器(CCDカメラなど)で捉えます。欠陥がない部分からは散乱光がほとんどないため暗く見え、欠陥がある部分からは散乱光が出て明るく見えることで、欠陥の位置や大きさを特定できます。
- 特に、EUVマスクブランクスの表面粗さに起因するバックグラウンド信号(ノイズ)を抑えつつ、検査したいサイズの欠陥からの散乱信号だけを効率的に捕らえるように、散乱光の捕集角度などが最適化されています。
- EUVマスクブランクスの検査では、主に暗視野法が用いられます。
- 画像検出器と画像処理:
- 検出器で得られた欠陥の画像データは、高速な画像処理システムによって解析されます。
- 欠陥の自動検出: 事前に設定された閾値やアルゴリズムに基づいて、欠陥の有無を自動的に判別します。
- 欠陥の分類と位置特定: 検出された欠陥の形状、大きさ、種類などを分類し、マスクブランクス上の正確な座標を特定します。
- 欠陥レビュー機能: 検出された欠陥を、より高倍率の顕微鏡で詳細に観察するレビュー機能も搭載されており、欠陥の性質を詳しく評価できます。
EUVマスクブランクス欠陥検査の難しさ
- 極端な微細さ: 検出対象となる欠陥が、EUV光の波長(13.5nm)に近い、あるいはそれ以下のナノメートルオーダーであるため、非常に高い精度が求められます。
- 多層膜内部の欠陥(位相欠陥): EUVマスクブランクスの反射膜はシリコンとモリブデンの何十層もの積層でできており、その内部に発生する微細な凹凸や歪み(位相欠陥)は、通常の光では見えません。EUV光はこれらの欠陥に敏感に反応するため、Actinic検査が不可欠となります。
- クリーンな環境: 微細な欠陥を検出するためには、検査環境自体も極めてクリーンである必要があります。
これらの高度な技術を統合することで、EUVマスクブランクス欠陥検査装置は、次世代半導体製造の品質と歩留まりを支える上で不可欠な存在となっています。

EUVマスクブランクス欠陥検査装置は、EUV光をマスクブランクスに照射し、欠陥による散乱光を高感度検出器で捉えることで、ナノレベルの微細な欠陥を検出します。これにより、半導体製造の歩留まり向上に貢献します。
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