この記事で分かること
- レーザーテックとは:半導体製造に不可欠なEUVマスク欠陥検査装置で世界独占的な地位を誇る日本の先端技術企業です。
- フォトマスクの欠陥検査装置とは:フォトマスク欠陥検査装置は、半導体製造の原版であるフォトマスク上の微細な欠陥(異物、パターン不良など)を高精度に検出する装置です。
レーザーテックの株価高騰
2025年6月24日、レーザーテックの株価が急反発しています
https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/886643。
レーザーテックは、先端半導体向けマスク欠陥検査装置が主力であり、半導体の微細化・複雑化が進む中で同社製品への需要は高いとされています。生成AI関連の需要も堅調と見られており、今後の受注動向や決算発表に注目が集まります。
レーザーテックはどんな会社なのか
レーザーテック株式会社は、半導体およびFPD(フラットパネルディスプレイ)関連の検査・計測装置を開発、製造、販売している日本のメーカーです。特に、光応用技術を用いた検査装置に強みを持っています。
主な事業内容と製品
- 半導体関連検査・計測装置:
- EUV(極端紫外線)リソグラフィ向け検査装置: レーザーテックの最大の強みであり、注目されている製品群です。最先端の半導体製造に使われるEUV露光技術において、その設計図となるフォトマスクやその原板となるマスクブランクスの欠陥検査装置で世界トップシェア、特にEUVマスクブランクス欠陥検査装置では業界標準の検査装置として採用されており、実質的に独占状態です。半導体の微細化が進むにつれて、これらの検査装置の重要性はますます高まっています。
- ウェハ関連の検査・計測装置(ウェハエッジ検査、膜厚全面検査、Si厚さ測定、SiCウェハ欠陥検査など)も手掛けています。
- FPD関連装置:
- FPDフォトマスクの欠陥検査装置も製造しており、高精細FPDフォトマスクの検査装置として業界標準の地位を確立しています。
- レーザー顕微鏡:
- 高機能・多機能なハイブリッドレーザーマイクロスコープを提供しており、半導体材料、透明膜、コーティング材料、無機/有機材料、各種バイオ系試料、金属部品、プラスチック加工部品など、幅広い産業分野で研究開発や品質管理に活用されています。
企業の特色と強み
- ニッチトップ戦略: 「世の中にないものをつくり、世の中のためになるものをつくる」という経営理念のもと、ニッチな市場で高いシェアを誇るユニークな製品に強みを持っています。
- 光応用技術の最先端: 光を応用した検査・計測技術に特化しており、常に最先端の技術開発に力を入れています。
- 高収益な事業モデル: 「ファブライト(工場を持たない、あるいは最小限に抑える)企業」であり、研究開発に特化することで高い利益率を実現しています。少数精鋭の組織体制も特徴で、一人ひとりのエンジニアが高い付加価値を生み出しています。
- 高い将来性: 半導体、特に最先端半導体の需要はAI、IoT、5G、データセンターなどの分野で拡大しており、レーザーテックの製品はこれらの進化に不可欠であるため、今後も成長が期待されています。半導体メーカーが最先端分野への投資を止めない限り、同社のビジネスは安定していると言えます。
沿革
- 1960年:有限会社東京ITV研究所として創業(前身)
- 1962年:日本自動制御株式会社を設立
- 1970年代:LSIフォトマスク・ピンホール検査装置、LSIフォトマスク欠陥検査装置を世界で初めて開発・販売し、半導体産業に参入。
- 1986年:現在の社名「レーザーテック株式会社」に変更。
- 2013年:東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)に上場。
- 2010年代以降:EUV露光技術関連の検査装置開発に注力し、現在の強固な地位を確立。
競合他社
主な競合他社としては、KLA、Applied Materials、アドバンテスト、Onto Innovationなどが挙げられますが、EUV光を用いたマスク関連検査装置においては、レーザーテックが圧倒的なシェア(特にEUVマスクブランクス検査装置では事実上の独占)を持っています。
このように、レーザーテックは、半導体の進化に欠かせない最先端の検査技術で世界をリードする、非常にユニークで将来性の高い企業と言えます。

レーザーテックは、半導体製造に不可欠なEUVマスク欠陥検査装置で世界独占的な地位を誇る日本の先端技術企業です。光応用技術で高精度な検査・計測装置を開発し、半導体の微細化・進化を支え、高収益を実現するニッチトップ企業として将来性が高いです。
フォトマスクの欠陥検査装置とはなにか
フォトマスクの欠陥検査装置とは、半導体製造の最も重要な工程の一つである「露光工程」で使用される「フォトマスク」に、微細な欠陥や不良がないかを高精度に検査する装置のことです。
フォトマスクとは?
半導体は、複雑な電子回路をウェーハと呼ばれるシリコン基板上に何層も形成することで作られます。その際、回路パターンをウェーハに転写するために使われる「原版」がフォトマスクです。
フォトマスクは、ガラスや石英の透明な基板上に、光を遮断する不透明な膜(通常はクロム)で微細な回路パターンが描かれたものです。ちょうど写真のネガフィルムのような役割をします。
なぜ欠陥検査が必要なのか?
半導体回路は、非常に微細なパターンで構成されています。例えば、最先端の半導体では、線の幅が数ナノメートル(nm)といったレベルです。
このような微細なパターンを持つフォトマスクに、以下のようなわずかな欠陥でも存在すると、それがウェーハに転写されてしまい、半導体の性能不良や不良品の発生(歩留まりの低下)に直結します。
- 異物の付着: ホコリやゴミなど
- パターンの欠け、断線: 回路が途切れてしまう
- パターンのショート: 回路が意図せず繋がってしまう
- 寸法のずれ: パターンの幅や位置が設計と異なる
- 透明基板内部の欠陥: ガラスや石英自体の微細な傷や不純物
これらの欠陥は肉眼では全く見えないため、専用の検査装置が不可欠となります。
欠陥検査装置の仕組み(一般的なもの)
フォトマスクの欠陥検査装置は、主に以下の方法で欠陥を検出します。
- 光の照射と検出:
- 高精度のレーザー光やEUV光(極端紫外線)などの光をフォトマスクに照射します。
- 透過したり、反射したりした光をセンサーで受け取ります。
- 画像取得とデジタル化:
- 検出された光の情報から、フォトマスクの表面やパターンを高解像度で画像化し、デジタルデータとして取り込みます。
- パターン比較による検出:
- 隣接するパターンとの比較: 半導体の回路は同じパターンが繰り返し配置されていることが多いため、隣接するチップ(ダイ)のパターン画像同士を比較し、異なる部分(差分)があれば欠陥として検出します。
- 設計データとの比較: フォトマスクの設計データ(CADデータなど)を基準画像として、実際にスキャンした画像と比較し、ずれや異物を検出します。
- 欠陥の特定と分類:
- 検出された欠陥の位置座標(X,Y)を特定し、その形状や種類(異物、欠け、ショートなど)を自動で分類します。
- その後、オペレーターが詳細に確認したり、修正が必要な場合はその情報が修正装置に送られたりします。
レーザーテックとフォトマスク欠陥検査装置
レーザーテックは、このフォトマスク欠陥検査装置、特にEUV(極端紫外線)リソグラフィと呼ばれる次世代の半導体製造技術向けのフォトマスク(およびその原版であるマスクブランクス)の欠陥検査装置で世界で圧倒的なシェアを持っています。
EUV露光では、光の波長が非常に短いため、従来の光(深紫外線など)では検出できなかった微細な欠陥も、ウェーハ上に転写されてしまう可能性があります。そのため、EUVマスクの欠陥検査はさらに高度な技術が求められ、レーザーテックは長年の研究開発と国家プロジェクトへの参加を通じて、この分野で独自の技術を確立しました。
レーザーテックの装置がなければ、最先端の半導体を効率的かつ高歩留まりで製造することが非常に困難であるため、半導体産業にとって不可欠な存在となっています。

フォトマスク欠陥検査装置は、半導体製造の原版であるフォトマスク上の微細な欠陥(異物、パターン不良など)を高精度に検出する装置です。レーザーやEUV光でマスクをスキャンし、画像比較などで欠陥を特定。これにより、半導体の歩留まり向上と品質確保に不可欠な役割を果たします。
株価高騰の理由は何か
レーザーテックの株価高騰の主な理由は、以下の複合的な要因が考えられます。
国内証券による格上げと目標株価の大幅引き上げ
- みずほ証券がレーザーテックの投資判断を「中立」から「買い」へ引き上げ、同時に目標株価も16,000円から22,000円へと大幅に引き上げたことが、買い材料として強く意識されました。
- この格上げの背景には、2026年6月期以降の受注回復への強い期待が織り込まれているとみられます。特に、2026年6月期の受注高は前期比68%増、2027年6月期も38%増と、大幅な成長を見込んでいるようです。
半導体関連株全体の好調
- 中東情勢に関するニュース(イスラエルとイランの停戦合意の可能性を示唆する報道)を受けて、投資家のリスク選好姿勢が強まり、半導体関連株全体に買いが入ったことも追い風となりました。レーザーテックは半導体製造装置業界の主要企業であるため、この流れに乗って株価が上昇しました。
短期的な売られすぎ感からの反発
- 株価は前日まで数日間下落しており、短期的には売られすぎとの見方も出ていました。そのため、上記のようなポジティブなニュースをきっかけに、押し目買いや買い戻しの動きが活発化した可能性があります。
これらの要因が重なり、レーザーテックの株価は大きく上昇しました。特に、今後の受注回復への期待が強く、アナリストの目標株価も高い水準に設定されていることが、投資家の買いを誘っています。

レーザーテック株価高騰の理由は、みずほ証券による「買い」への格上げと目標株価の大幅引き上げ(2.2万円へ)が主要因です。2026年6月期以降の受注回復期待に加え、半導体関連株全体の好調や短期的な売られすぎ感からの反発も後押ししています。
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