自動運転のレベルとは何か?レべル3に必要なものは?レべル3のリスクは?

この記事で分かること

  • 自動運転のレベルとは:SAEが定めた0~5の6段階で、運転の主体が「人」か「システム」か、またシステムの作動条件で分けられます。レベル0は手動、レベル5は完全自動運転を指し、数字が上がるほど自動化の度合いが高まります。
  • レベル3に必要なものは:高精度な認識技術(センサーフュージョン、高精度マップ)、AIによる高度な判断・予測、高信頼性の車両制御、ドライバー監視システムが必要です。さらに、法整備や社会受容性も欠かせません。
  • レベル3のリスク:ドライバーが運転監視から解放されることで油断し、システムからの緊急時引き継ぎ要求に迅速に対応できないリスクにあります。

自動運転のレベル

 ソニーセミコンダクタソリューションズは、車載LiDAR向け積層型SPAD距離センサー「IMX479」を2025年秋に量産開始する予定です。

 https://www.sony-semicon.com/ja/news/2025/2025061001.html

 これは、高解像度と高速性を同時に実現する独自のデバイス構造が特徴で、自動運転レベル3以上(L3以上)のモビリティ社会の実現に貢献するとされています。

 前回の記事はセンサーについての記事でしたが、今回は、自動運転のレベルに関する解説となります。

自動運転のレベルとは何か

 自動運転のレベルとは、自動車の運転自動化の度合いを示す国際的な指標です。主にSAE International(米国自動車技術者協会)が定めた6段階の分類(レベル0からレベル5)が世界的に広く採用されており、日本でもこの基準に基づいて定義されています。

 このレベル分けの最も重要なポイントは、「運転操作の主体が人間かシステムか」という点と、「システムが作動する条件や領域」です。

それぞれのレベルは以下の通りです。

レベル0:運転自動化なし(No Automation)

  • 主体: ドライバー
  • 概要: 運転支援システムが一切存在しない、あるいは警告のみで運転操作に介入しない状態。従来の自動車。

レベル1:運転支援(Driver Assistance)

  • 主体: ドライバー
  • 概要: システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のいずれか一方を部分的に支援。例:アダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシスト(LKA)。ドライバーは常に運転状況を監視し、必要に応じて操作する。

レベル2:部分運転自動化(Partial Automation)

  • 主体: ドライバー
  • 概要: システムがアクセル・ブレーキ操作とハンドル操作の両方を同時に部分的に支援。特定の条件下で車線を維持しながら前走車に追従するなど。ドライバーは常に運転状況を監視し、いつでも介入できる状態(ハンズオン:手はハンドルに)を維持する必要がある。

レベル3:条件付き運転自動化(Conditional Automation)

  • 主体: システム(特定の条件下において)
  • 概要: 高速道路の渋滞時など、特定の走行環境条件(ODD: 運行設計領域)下では、システムが全ての運転操作を実行。ドライバーは運転状況の監視から解放され、運転以外の「セカンドタスク」が可能(アイズオフ:目は前方から離してもよい)。ただし、システムが自動運転継続困難と判断した場合は、ドライバーに運転の引き継ぎを要求し、ドライバーは速やかに介入する必要がある。

レベル4:高度運転自動化(High Automation)

  • 主体: システム
  • 概要: 特定の走行環境条件(ODD)下であれば、システムが全ての運転操作を完全に実行。システムが運転継続困難な状況に陥った場合でも、ドライバーの介入なしにシステムが安全に車両を停止させる(ブレインオフ:脳も運転から解放される)。限定地域での無人タクシーサービスなどがこれに該当。

レベル5:完全運転自動化(Full Automation)

  • 主体: システム
  • 概要: 全ての走行環境条件(ODDの制限なし)において、システムが全ての運転操作を完全に実行。ドライバーの存在は不要。完全な無人運転が可能なレベル。

 このレベル分けは、技術開発の段階を示すだけでなく、事故発生時の責任の所在や、法整備の方向性を議論する上でも重要な基準となっています。

自動運転のレベルは、SAEが定めた0~5の6段階で、運転の主体が「人」か「システム」か、またシステムの作動条件で分けられます。レベル0は手動、レベル5は完全自動運転を指し、数字が上がるほど自動化の度合いが高まります。

自動運転レベル3とはどのようなものか

 自動運転の「レベル3」とは、SAE(Society of Automotive Engineers:米国自動車技術者協会)が定めた自動運転の6段階のレベル分類(レベル0から5)の一つで、「条件付き運転自動化」と定義されます。

重要なポイントは以下の通りです。

  • システムが運転操作の主体となる(限定領域):レベル3では、特定の走行環境条件(例:高速道路での渋滞時、時速60km以下など)を満たす限定された領域(ODD: Operational Design Domain / 運行設計領域)において、自動運転システムがアクセル、ブレーキ、ハンドル操作を含む全ての動的運転タスクを実行します。
  • ドライバーは運転から解放される(アイズオフ):この限定された条件下では、ドライバーは運転状況の監視から解放され、前方注視義務もなくなります。これにより、スマートフォン操作やカーナビの操作、車内モニターでの映像鑑賞など、運転以外の「セカンドタスク」を行うことが可能になります。
  • 緊急時にはドライバーの介入が必要:ただし、システムが自動運転の継続が困難と判断した場合(例:ODDを外れる、システム異常が発生したなど)は、システムがドライバーに運転の引き継ぎを要求します。 ドライバーは、この要求に速やかに応じて運転を再開する必要があります。そのため、飲酒運転や居眠り、車内の座席移動など、すぐに運転を引き継げないような行為は禁止されています。
  • 世界初の市販車:日本では、2021年3月にホンダが「レジェンド」に搭載した「Honda SENSING Elite」が、世界で初めて国土交通省から自動運転レベル3の型式指定を受け、高速道路の渋滞時(時速50km以下)にレベル3走行が可能となりました。

 このように、レベル3は、システムが主体となる真の自動運転の第一歩とされ、ドライバーの負担を大きく軽減する一方で、緊急時のドライバーの適切な介入が求められる点が特徴です。

自動運転レベル3は、システムが限定された条件下(高速道路の渋滞時など)で全ての運転操作を行う「条件付き運転自動化」です。ドライバーは運転監視から解放されますが、システムが継続困難と判断した場合は、速やかに運転を引き継ぐ義務があります。

レベル3実現に必要なものは何か

 自動運転レベル3を実現するためには、多岐にわたる技術要素と社会的なインフラが不可欠です。


1. 高度な認識技術

 車両が周囲の状況を正確に把握するための「目」となる技術です。

  • センサーフュージョン: カメラ(画像認識)、ミリ波レーダー(距離・速度・方向)、LiDAR(3D空間認識、高精度距離)、超音波センサー(近距離検知)など、複数のセンサーを組み合わせ、それぞれの弱点を補いながら高精度なデータを生成します。特に、LiDARは3次元空間を詳細に把握できるため、レベル3以上の自動運転で重要な役割を担います。
  • 高精度マップ: センチメートル単位の精度を持つ3次元デジタル地図。車両の現在位置を正確に特定し、走行環境を予測するために不可欠です。道路形状、車線情報、標識、信号などの詳細な情報が含まれます。
  • V2X(Vehicle-to-Everything)通信: 車両と車両(V2V)、車両とインフラ(V2I)、車両と歩行者(V2P)、車両とネットワーク(V2N)などが情報をやり取りする技術。見通しの悪い場所や死角にある情報、信号情報などをリアルタイムで共有し、安全性を高めます。

2. 高度な判断・予測技術

 認識した情報を基に、次に何をすべきかを判断する「脳」となる技術です。

  • AI(人工知能): 大量のセンサーデータからパターンを学習し、複雑な交通状況を理解、予測します。物体の分類、行動予測、危険回避判断などに利用されます。
  • リスク予測・回避: 他の車両や歩行者の動きを予測し、衝突の危険性を評価します。予測される危険に対して、最適な回避行動(減速、車線変更など)を計画・実行します。
  • 運行設計領域(ODD)管理: レベル3は限定された条件下での自動運転であるため、システムは常にODDを監視し、逸脱しそうになった場合やシステムが継続困難と判断した場合に、ドライバーへの運転引継ぎを適切に要求する機能が必要です。

3. 高信頼性・冗長性を持つ制御技術

 判断結果を基に、車両を実際に動かす「手足」となる技術です。

  • 車両制御システム: アクセル、ブレーキ、ステアリングを緻密に制御し、計画された経路を正確に走行します。
  • 冗長性: センサー、ECU(電子制御ユニット)、ステアリング、ブレーキなど、主要なシステムに万一の故障が発生しても、代替システムが機能を引き継ぎ、安全を確保できる「冗長性」が必須です。
  • 機能安全(ISO 26262): 車載システムに特化した機能安全規格に対応し、ハザード(危険源)の特定、リスク評価、故障時の安全確保策などを徹底する必要があります。

4. ドライバー監視技術とHMI

レベル3ではドライバーの運転からの解放と、緊急時の介入が求められるため、ドライバーの状態を正確に把握し、適切なコミュニケーションを取る必要があります。

  • ドライバーモニタリングシステム(DMS): ドライバーの視線、顔の向き、姿勢、覚醒状態などを監視し、運転に介入できる状態にあるかを確認します。これにより、システムが運転引き継ぎ要求を出した際に、ドライバーが適切に対応できるか判断します。
  • HMI(Human-Machine Interface): システムとドライバー間の直感的で分かりやすい情報伝達手段。運転引継ぎ要求の通知方法や、システムの状況表示など、ドライバーが迷わずスムーズに判断・操作できる設計が必要です。

5. 法整備と社会受容性

技術面だけでなく、法制度の整備や社会の理解も重要です。

  • 事故責任の所在: 自動運転中の事故において、誰に責任があるのか(システム、メーカー、ドライバーなど)を明確にする法整備が必要です。
  • サイバーセキュリティ: 外部からの不正アクセスやサイバー攻撃からシステムを守るための強固なセキュリティ対策が不可欠です。
  • 社会の理解と信頼: 自動運転技術に対する社会全体の理解と信頼を醸成することも、普及には欠かせません。

 これらの要素が複合的に機能し、高い安全性と信頼性を確保することで、自動運転レベル3の社会実装が進んでいきます。

レベル3実現には、高精度な認識技術(センサーフュージョン、高精度マップ)AIによる高度な判断・予測高信頼性の車両制御ドライバー監視システムが必要です。さらに、法整備や社会受容性も欠かせません。

レベル3の危険性は何か

 自動運転レベル3に対しては、実際に「危険だ」とする意見や懸念が多数存在します。その主な理由は、レベル3が持つ「システムとドライバーの責任移行」という特性に起因しています。

 具体的には、以下のような点が危険視されています。

ドライバーの「油断」と「引き継ぎ問題」

 レベル3の最大の課題は、システムが運転主体となるためドライバーが運転監視から解放され、「セカンドタスク」に集中できるようになる点です。しかし、システムが運転継続困難と判断した場合、ドライバーは運転に介入する準備が常に必要です。

人間心理のギャップ

 運転をシステムに任せきりにすると、ドライバーは注意力が散漫になり、すぐに運転を引き継げなくなる可能性があります。急な引き継ぎ要求に対して、ドライバーが状況を認識し、適切な判断・操作を行うまでの「反応時間」が遅れると、事故につながる危険性があります。

過信

 自動運転システムへの過信から、本来禁止されている居眠りや飲酒運転など、危険な行為につながる可能性も懸念されます。

責任の所在の複雑さ

 レベル3では、運転の主体がシステムからドライバーへ、またはその逆へと移行する可能性があるため、事故が発生した場合の責任の所在が複雑になります。

曖昧な責任

 事故がシステムのエラーによるものか、それともドライバーの引き継ぎ遅れや不適切な操作によるものか、その判断が難しくなることがあります。これにより、法的な争いや保険の問題が複雑化する懸念があります。

 日本では、レベル3走行中の事故は原則としてシステムの責任とされていますが、ドライバーの整備不良やシステムからの警告に対する不適切な対応など、ドライバー側に過失が認められるケースも想定されています。

システムのエッジケース(例外的な状況)への対応

 自動運転システムは、想定外の状況(エッジケース)に直面した際に、人間のように柔軟な判断ができない場合があります。

  • 認識の限界:大雨や濃霧などの悪天候、予期せぬ道路状況、人間の予測不能な行動など、システムが認識できない、あるいは誤認識する状況が発生する可能性があります。
  • 適切な判断・行動の困難さ: 例えば、複数の選択肢の中で、人間なら瞬時に最も安全な行動を選べる状況でも、システムが判断に迷い、危険な状況に陥るリスクもゼロではありません。

 これらの懸念から、一部の自動車メーカーは、レベル3の開発に慎重な姿勢を見せたり、レベル3を飛び越えてレベル4(特定の条件下で完全にシステムが運転し、ドライバーの介入が不要なレベル)の開発に注力する動きも見られます。

 これは、レベル3における「システムと人間の協調」の難しさ、特に人間の認知・反応の限界が、かえって安全上のリスクになりうると考えているためです。

 しかし、一方で、レベル3の実現はドライバーの負担軽減に大きく貢献し、将来的には事故件数の削減にもつながると期待されています。

 そのため、ドライバーモニタリングシステムの高度化や、引き継ぎ要求の最適なタイミングの研究など、これらの危険性をクリアするための技術開発や法整備が進められています。

レベル3の危険性は、ドライバーが運転監視から解放されることで油断し、システムからの緊急時引き継ぎ要求に迅速に対応できないリスクにあります。これが事故につながる可能性や、責任の所在が曖昧になる懸念があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました