マクセルの半導体の受託製造 どんな半導体製造を受託しているのか?半田ボールとは何か?

この記事で分かること

  • 受託している半導体製造:導体の後工程で、ウェハバンピングや再配線パッケージの試作・製造を受託しています。特に、FOWLPなどの小型・高放熱パッケージや、シリコン以外の化合物半導体のパッケージ化を得意としています。
  • 半田ボールとは:半導体チップと基板を接続するための、微小な球状のはんだです。チップの裏面に格子状に配置され、電気的な接続や固定の役割を担います。

マクセルの半導体の受託製造

 マクセルの2025年3月期第1四半期(2024年4~6月)決算によると、経常利益は減益となりました。

 https://kabutan.jp/news/marketnews/?&b=n202508010908

 これは、健康・理美容製品の好調や円安が営業利益を押し上げた一方で、為替差益の減少が経常利益に影響したためです。

マクセルはどんな企業か

 マクセルは、東京都港区に本社を置く日本の企業です。かつては日立製作所の子会社でしたが、現在は独立しています。

主要な事業は、以下の4つのセグメントに分かれています。

  1. エネルギー事業 乾電池のブランド名「MAXELL」で知られるように、電池事業はマクセルの創業以来の柱となっています。民生用リチウムイオン電池やボタン電池、全固体電池など、幅広い種類の電池を製造・販売しています。特に、自動車のタイヤ空気圧監視システム(TPMS)向け耐熱コイン形リチウム電池は、世界トップシェアを誇っています。
  2. 機能性部材料事業 粘着テープや機能性材料、塗布型セパレーターなどを製造・販売しており、建築・建材、半導体製造工程、産業工程向けなど、多岐にわたる用途で使われています。
  3. 光学・システム事業 自動車向けのレンズ事業に加え、プロジェクターや映像機器、半導体関連の組み込みシステム、RFIDシステムなどを扱っています。
  4. ライフソリューション事業 健康・理美容機器、小型電気機器、音響機器、記録メディア(光ディスクなど)を製造・販売しています。

 マクセルは、創業以来培ってきた「アナログコア技術」(「混合分散」「精密塗布」「高精度成形」)を強みとし、これらの技術を活かした製品開発・製造を行っています。

マクセルは、乾電池やリチウムイオン電池などのエネルギー事業を柱とする日本の電子部品メーカーです。独自の「アナログコア技術」(混合分散、精密塗布、高精度成形)を強みとし、粘着テープや光学部品、プロジェクター、健康・理美容機器など、幅広い製品を開発・製造しています。

半導体の受託ではどんな半導体を製造しているのか

 マクセルは、半導体の受託製造において、主に後工程と呼ばれる分野のサービスを提供しています。具体的には、以下のような半導体関連の受託サービスを手掛けています。

  • ウェハバンピングサービス: ウェハに半田ボールを搭載する加工です。信頼性の高い半田ボールを形成するための技術を提供しています。
  • 再配線パッケージの試作・製造: FOWLP (Fan Out Wafer Level Package) や WLCSP (Wafer Level Chip Scale Package) といった、小型化や放熱性に優れたパッケージの製造サービスを提供しています。シリコン以外のSiCやGaNなどの化合物半導体のパッケージ化実績もあります。
  • 組み込みシステムの開発・製造: 半導体製造装置をはじめとする産業用組み込みシステムの受託開発・製造を行っています。これは、半導体そのものではなく、半導体を用いた制御基板やユニットの製造にあたります。

マクセルの強みである「電鋳技術」や「めっき技術」を活かし、ウェハバンピング用マスクや、再配線パッケージの製造など、独自の技術を用いたサービスを展開しているのが特徴です。また、少量多品種の製造にも対応しており、半導体開発の試作段階などにも貢献しています。

マクセルは半導体の後工程で、ウェハバンピングや再配線パッケージの試作・製造を受託しています。特に、FOWLPなどの小型・高放熱パッケージや、シリコン以外の化合物半導体のパッケージ化を得意としています。

半田ボールとは何か

 はんだボール(Solder Ball)とは、半導体チップとプリント基板などを接続するために使われる、小さな球状のはんだです。

 従来の半導体パッケージでは、チップと基板を細いワイヤーでつなぐ「ワイヤーボンディング」という方法が主流でした。しかし、高性能化・小型化に伴い、より多くの端子が必要になり、ワイヤーでは対応しきれなくなってきました。

 そこで登場したのが、BGA (Ball Grid Array) と呼ばれるパッケージです。BGAでは、チップの裏面全体に格子状にたくさんの「はんだボール」を並べて接続します。このはんだボールが、電気的な信号や電力を伝え、同時にチップを基板に固定する役割も果たします。

 はんだボールには、以下のような利点があります。

  • 高密度実装: チップの裏面全体を使えるため、多くの端子を接続でき、高集積化に貢献します。
  • 電気的特性の向上: 接続部の距離が短いため、電気抵抗が低く、高速な信号伝送が可能です。
  • 放熱性の向上: 広範囲で基板と接合するため、熱を効率的に逃がすことができます。

 マクセルが行っている「ウェハバンピング」とは、このはんだボールをウェハ(半導体チップがまだバラバラになる前の状態)の電極部分に形成する技術のことです。

はんだボールとは、半導体チップと基板を接続するための、微小な球状のはんだです。チップの裏面に格子状に配置され、電気的な接続や固定の役割を担います。高密度実装や放熱性に優れ、BGA(Ball Grid Array)と呼ばれるパッケージに用いられます。

再配線パッケージとは何か

 再配線パッケージとは、半導体チップの入出力端子(パッド)の位置を、より広い領域に引き出して再配置する技術を用いた半導体パッケージのことです。英語では、再配線層を意味する「RDL (Redistribution Layer)」がキーワードとなります。

 従来の半導体チップのパッドは、チップの端の狭い領域に集中して配置されていました。しかし、チップが小型化し、入出力端子の数が増えると、この方法では配線が複雑になり、接続が難しくなります。

 再配線パッケージでは、半導体チップの製造工程(ウェハレベル)で、チップのパッドから配線を伸ばし、チップの外側まで端子を広げます。これにより、以下のようなメリットが生まれます。

  • 高密度実装の実現: 狭い領域に集中していた端子を広い領域に分散できるため、基板への接続が容易になり、より多くの端子を持つチップを実装できます。
  • 小型・低背化: パッケージを小型化し、厚さを薄くすることができます。
  • 放熱性の向上: 広範囲で基板と接合するため、熱を効率的に逃がすことができます。

 マクセルが手掛ける「FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)」や「WLCSP(Wafer Level Chip Scale Package)」は、この再配線パッケージの一種です。これらの技術は、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器や、IoT機器、自動車向け半導体など、小型化と高性能化が求められる分野で広く活用されています。

再配線パッケージは、半導体チップの端子(パッド)を再配置して、より広い領域に引き出す技術です。これにより、高密度実装が可能になり、小型化と高機能化が求められる半導体パッケージの製造に貢献します。マクセルのFOWLPなどが代表例です。

 

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