この記事で分かること
- メタのメタバースの特徴:自社開発のVRヘッドセット「Meta Quest」を基盤とし、「Horizon Worlds」などのソーシャルVRプラットフォームを通じて、仕事や遊び、交流ができる包括的なメタバース経済圏の構築を目指しています。
- 予算を削減する理由:巨額な赤字(数兆円規模の損失)が続き、投資家からの懸念が高まっているためです。また、当初予想したほどメタバース市場の競争が加速していないことも理由の一つです。
- 今後力を入れる分野:AI(人工知能)の開発と、それを活用したスマートグラスやウェアラブル端末です。収益の柱であるSNS(Facebook/Instagram)にAIを統合し、次世代のコンピュートプラットフォームへの転換を目指しています。
メタのメタバース事業の予算削減
メタ(Meta)が、インターネット上の仮想空間「メタバース」事業関連の来年の予算を最大30%削減することを検討していると報じられています。
https://jp.reuters.com/world/us/IAZRCLMC2RNWVGWAKN44YZPXWI-2025-12-04/
メタバース事業を行う「Reality Labs」部門は、2021年初頭から700億ドル(約10兆円超)以上の損失を計上しており、収益に貢献していないことに対して投資家からの懸念が高まっていました。
メタのメタバース事業の特徴は
メタ(Meta)のメタバース事業は、主にReality Labs(リアリティ・ラボ)部門が担っており、その特徴はハードウェアとソフトウェアの両面からメタバース(仮想空間)の実現を目指すという、大規模かつ包括的なアプローチにあります。
1. ハードウェアへの圧倒的な注力と先行投資
Metaのメタバース事業の最大の特徴であり強みは、ハードウェアを自社で開発し、エコシステムの基盤を握ろうとしている点です。
- VRヘッドセット「Meta Quest」シリーズ:
- 高性能でありながら、他社製品と比較して比較的安価な価格帯で提供し、VR体験の普及に大きく貢献しています。
- スタンドアロン型(PC不要)のVRヘッドセットとして、ユーザーの手軽な参入障壁を下げています。
- AR/AIグラス「Ray-Ban Meta スマートグラス」:
- VRだけでなく、現実世界にデジタル情報を重ね合わせるAR(拡張現実)分野にも注力しています。
- 直近の予算削減報道でも、メタバース(VR)からAIを搭載したスマートグラスやウェアラブル端末への投資シフトが明確になっており、ハードウェア戦略は継続しています。
2. ソーシャルVRプラットフォーム「Horizon Worlds」
Metaは、かつてのSNSの強みを活かし、メタバースを「ソーシャルなつながり」の場と位置づけています。
- アバターを通じた交流: ユーザーはアバターを作成し、Horizon WorldsというソーシャルVRプラットフォームで、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、ゲームやイベントを楽しんだりできます。
- コンテンツ共創(UGC): ユーザーが独自のワールドやゲーム、アイテムを作成・共有できるツールを提供しており、プラットフォームの拡張性を高めています。
- 多岐にわたる適用分野: エンターテインメント、ゲームだけでなく、仕事(仮想オフィス)、フィットネス、教育、コマースなど、幅広い領域での展開を目指しています。
3. 事業上の特徴と課題
大規模な先行投資は、現状では大きな課題となっています。
| 分野 | 特徴(強み) | 課題(弱み) |
| 資金力 | Facebook/Instagramという巨大な収益源(広告事業)を持ち、巨額な資金をメタバースに投じることが可能。 | Reality Labs部門の巨額の損失が継続しており、短期的な収益化の見通しが立っていない。 |
| エコシステム | VRヘッドセットとプラットフォームを自社で垂直統合して提供できる。 | デバイスの普及率や操作の複雑さが一般ユーザーの参入障壁となっている。 |
| ビジョン | ザッカーバーグCEOが全社を挙げて「メタバース企業」への変革という長期的なビジョンを掲げている。 | 投資家からのROI(投資対効果)に対する懸念が強く、予算見直しを迫られている。 |
Metaのメタバース事業は、自社開発の高性能VR/ARデバイスを基盤に、ソーシャルなつながりを重視した仮想空間を構築し、Web3時代のプラットフォームを自ら創り出そうとする「トップダウン型」の巨大な挑戦と言えます。

自社開発のVRヘッドセット「Meta Quest」を基盤とし、「Horizon Worlds」などのソーシャルVRプラットフォームを通じて、仕事や遊び、交流ができる包括的なメタバース経済圏の構築を目指しています。
予算削減の理由は何か
メタ(Meta)がメタバース事業(Reality Labs部門)の予算削減を検討している主な理由は、以下の二重のプレッシャーにあります。
1. 巨額の赤字と収益化の遅れ
- 継続的な巨額損失: Reality Labs部門は社名変更以降、数百億ドル規模の損失を計上し続けています。投資家は、この莫大な先行投資に対して、いつ、どのような形でリターン(ROI:投資対効果)が得られるのかという点で強い懸念を抱いています。
- 「聖域」の終焉: メタバースへの投資はマーク・ザッカーバーグCEO肝いりの長期戦略でしたが、広告事業という本業の収益が盤石であっても、際限のない赤字は許容できなくなり、コスト削減の対象となりました。
2. メタバース技術競争の想定外の遅れ
- 市場のペース: 当初メタが予想していたほど、業界全体でメタバース技術やプラットフォームの競争が加速していません。つまり、焦って巨額の資金を投じなくても、プラットフォームの主導権を確保できると判断した可能性があります。
- ユーザー普及の遅延: 高価なVRヘッドセットや、複雑な操作性などから、一般消費者へのVRデバイスの普及率がまだ十分ではありません。ユーザー層が限定的であるため、プラットフォーム(Horizon Worldsなど)での収益化や広告展開が難しい状況が続いています。

巨額な赤字(数兆円規模の損失)が続き、投資家からの懸念が高まっているためです。また、当初予想したほどメタバース市場の競争が加速していないため、AIグラスなど収益性の高いAI分野へリソースをシフトさせる戦略的な転換でもあります。
メタが今後重視する事業は
メタ(Meta)が今後最も重視する事業は、AI(人工知能)と、それを活用した新しいデバイスであるスマートグラスの開発です。
既存の広告事業やソーシャルメディア(Facebook, Instagram, WhatsApp)は引き続き収益の柱ですが、将来の成長を牽引する投資先は明確にシフトしています。
1. AI(人工知能)への集中投資
マーク・ザッカーバーグCEOは、AIをメタの次世代プラットフォームとして位置づけ、巨額の資金とリソースを投じています。
- 大規模言語モデル「Llama」: オープンソース戦略を取り、独自の高性能AIモデルを開発・公開することで、AIエコシステムにおける主導権を握ろうとしています。
- AIアシスタント「Meta AI」: Facebook、Instagram、WhatsAppといった主要なプラットフォームに組み込まれ、ユーザーの体験をパーソナライズし、広告やチャットなどの機能向上に活用されています。
- インフラへの投資: AI開発に必要な高性能なチップ(GPU)や、独自のAIチップ(MTIA)の開発、データセンターの整備に大規模な投資を行っています。
2. スマートグラス(AIグラス)
AIの力を活用した、スマートフォンに代わる次世代のコンピュートプラットフォームとして、スマートグラスを重視しています。
- Ray-Ban Meta スマートグラス: 既存のVRヘッドセット(Quest)とは異なり、日常的に着用できる眼鏡型デバイスにAIアシスタント機能(音声対話、環境認識)を搭載し、「AIを身につける体験」を推進しています。
- AR(拡張現実)への注力: 仮想空間(VR)だけでなく、現実世界にデジタル情報を重ね合わせるAR技術を、スマートグラスを通じて実現しようとしています。
- 「パーソナルAI」の実行環境: スマートグラスを、ユーザーの行動や文脈を理解し、リアルタイムで支援してくれる「パーソナルAI」を動かすための主端末にしたいというビジョンを掲げています。
メタバース(VR)の位置づけ
メタバース事業(Reality Labs)への投資は戦略的に見直され、短期的な収益が見込みにくいプロジェクトの予算が削減されています。しかし、VRヘッドセットの「Meta Quest」シリーズやVRゲーム開発など、メタバースのハードウェア基盤と、AIとの連携による進化は継続して進められています。

メタが今後最も重視するのは、AI(人工知能)の開発と、それを活用したスマートグラスやウェアラブル端末です。収益の柱であるSNS(Facebook/Instagram)にAIを統合し、次世代のコンピュートプラットフォームへの転換を目指しています。

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