マイクロンの増収増益 増収増益の理由は?HBM(高帯域幅メモリ)とは何か?

この記事で分かること

  • 増収増益の理由:AI向けHBMの需要爆発と、データセンター向けDRAMの好調な販売です。高単価のHBMが収益を牽引し、DRAMとNANDの出荷量増加、業界全体の価格改善も寄与しました。
  • HBM(高帯域幅メモリ)とは:複数のDRAMチップを垂直に積み重ね、TSV(シリコン貫通電極)で接続する次世代メモリです。非常に広いデータバス幅により、従来のDRAMより圧倒的に高いデータ転送速度を実現します。
  • HBMの有力なメーカー:マイクロン以外に、SKハイニックス、サムスン電子の3社が有力メーカーになっています。

マイクロンの増収増益

 Micron Technology (マイクロン・テクノロジー) は、2025年5月29日に終了した2025会計年度第3四半期(3Q)の決算を発表し、増収増益を達成しています。

[MU] マイクロン 3Q増収増益 売上高37%増93.0億ドル、営業益3.0倍21.6億ドル、EPS1.68ドル | 個別株 - 株探ニュース
 マイクロン・テクノロジー<MU>の2025年度第3四半期(2月28日-5月29日)の業績は増収、営業増益だった。 米現地6月25日の通常取引終了後に公開された8-K(重要事項報告書)によると、第3四半期は売上高は前年同期比36.6%増の93億100万ドルとなった・・・。

 マイクロンは2025年度第4四半期の売上高も大幅な増加を見込んでおり、今後もAI関連の需要が引き続き業績を牽引すると予想されています。

マイクロンはどんな企業なのか

 マイクロン・テクノロジー(Micron Technology Inc.)は、アメリカ合衆国アイダホ州ボイシに本社を置く、世界有数の半導体製造多国籍企業です。主にメモリおよびストレージソリューションの開発、製造、販売を行っています。

主要な製品と技術

 マイクロンが提供する主な製品は以下の通りです。

  • DRAM (Dynamic Random-Access Memory): コンピュータやスマートフォンなどのデバイスで、データを一時的に保存するために使用される揮発性メモリです。高速で大容量のデータ処理を可能にします。
  • NAND Flash (NAND型フラッシュメモリ): スマートフォン、SSD(ソリッドステートドライブ)、USBメモリなどのストレージデバイスで、データを永続的に保存するために使用される不揮発性メモリです。
  • HBM (High Bandwidth Memory): 特にAIや高性能コンピューティング(HPC)向けに設計された、非常に高速なDRAMの一種です。複数のDRAMチップを積層することで、高い帯域幅を実現します。
  • NOR Flash: 組み込みシステムや車載用途などで、プログラムコードを保存するために使用される不揮発性メモリです。
  • 3D XPointメモリ: インテルと共同開発した、DRAMとNANDフラッシュの中間に位置する新しい種類の不揮発性メモリです。高速性と高耐久性を兼ね備えています。

マイクロンの特徴と強み

  • メモリ分野のリーダー: 世界でも数少ない、DRAMとNANDフラッシュの両方を自社で開発・製造できる大手企業の一つです。特にDRAM分野ではSKハイニックス、サムスン電子と並び、世界トップクラスのシェアを誇ります。
  • 幅広い用途への貢献: マイクロンのメモリ製品は、パソコン、スマートフォン、サーバー(特にデータセンター向け)、自動車(自動運転など)、産業機器、ネットワーク機器、コンシューマー向け製品など、幅広い分野で利用されています。特に近年は、AI、5G、IoTといった最先端技術の進化を支える重要な役割を担っています。
  • 研究開発への注力: 研究開発に多額の投資を行い、常に最先端のメモリ技術を追求しています。最新のDRAM技術であるHBMの開発・量産もその一例です。
  • 日本との繋がり: 日本国内にも技術開発拠点(広島、神奈川)や製造拠点(広島)を持ち、最先端メモリの開発・生産を行っています。特に広島工場はDRAMの主要製造拠点の一つです。

ブランド

 エンドユーザー向けのSSDやメモリ製品は、「Crucial (クルーシャル)」や「Ballistix (バリスティックス)」といったブランドで展開されています。

 マイクロンは、私たちが日常的に使用する様々なデジタルデバイスの「記憶」を司る、非常に重要な半導体メモリの開発・製造を専門とする企業であると言えます。

マイクロンは、米国の世界的な半導体企業で、DRAMやNANDフラッシュなどのメモリ・ストレージ製品を開発・製造しています。AIやデータセンター向けHBMで業界を牽引し、増収増益を達成。日本にも開発・製造拠点を持ち、デジタル社会の記憶を支える重要な役割を担っています。

増収増益の理由は

 マイクロンが増収増益を達成した主な理由は、以下の要素が組み合わさった結果です。

AI向けHBM(高帯域幅メモリ)の爆発的な需要増とシェア拡大

  • AIデータセンター向けHBMの需要が非常に強く、MicronのHBM売上高は前期比で約50%増と大きく伸長しました。
  • MicronはHBM3Eにおいて優れた電力効率を提供しており、NVIDIAなどの主要なAIチップメーカーからの採用が拡大しています。
  • HBMは通常のDRAMに比べて高単価であり、粗利益率も20〜30%高いとされています。この高利益率製品の販売増が、収益性の向上に大きく貢献しました。Micronは2025年中にHBM市場シェアを全体のDRAM市場シェアに見合ったレベルまで引き上げる計画です。

データセンター向けDRAMの売上記録と需要の堅調さ

  • AI関連の需要がデータセンター向けDRAM全体の売上を牽引し、過去最高の売上を記録しました。これはAIサーバーの増加に伴い、高性能DRAMの需要が伸びているためです。

DRAMおよびNANDフラッシュのビット出荷量の増加

  • DRAMのビット出荷量が前期比で20%以上、NANDのビット出荷量も20%台半ばで増加しました。需要の回復と、AI PCやAIスマートフォンなど新たな分野での需要創出も寄与しています。

業界全体の需給改善と価格上昇

  • メモリ業界全体で供給と需要のバランスが改善し、製品価格の上昇が見られました。特にデータセンター向け製品において価格決定力が高まっています。Micronは、DRAMとNANDの両方で前期比でのビット出荷量が増加した一方で、価格の低下は低シングル桁または高シングル桁にとどまっており、HBMなど高価格帯製品の構成比が高まったことで全体のASP(平均販売価格)が押し上げられたと考えられます。

効率的な操業とコスト削減

  • GAAPベースでの粗利益率が39.0%に向上し、アナリスト予想を上回りました。これは、製品ミックスの改善(HBMの比率増加)に加えて、効率的な製造プロセスとコスト管理が進んだ結果と見られます。

 マイクロンが最先端のAI向けHBMで優位性を確立し、その需要が爆発的に増加したことが最大の要因です。これに加えて、データセンター市場全体の拡大と、DRAMおよびNANDフラッシュの出荷量増加、さらに業界全体の価格改善が相まって、増収増益という好決算につながりました。

増収増益の主な理由は、AI向けHBMの需要爆発と、データセンター向けDRAMの好調な販売です。高単価のHBMが収益を牽引し、DRAMとNANDの出荷量増加、業界全体の価格改善も寄与しました。

HBM(高帯域幅メモリ)とはなにか

 HBM(High Bandwidth Memory)は、その名の通り、非常に高いデータ転送速度(帯域幅)を実現する次世代のDRAM(Dynamic Random-Access Memory)技術・規格です。

 従来のDRAMとは異なる革新的な構造と技術が採用されており、特に大量のデータを高速で処理する必要があるAI(人工知能)や高性能コンピューティング(HPC)の分野で重要な役割を担っています。

HBMの主な特徴と仕組み

  1. 3D積層技術:
    • HBMの最大の特徴は、複数のDRAMチップを垂直に積み重ねる(3Dスタック)構造を採用していることです。従来のDRAMが基板に平面に配置されていたのに対し、HBMは高層ビルのようにメモリチップが積層されています。
    • これにより、メモリチップ間のデータ転送距離が極めて短くなり、電気信号の遅延が大幅に削減されます。
  2. TSV(Through Silicon Via:シリコン貫通電極)技術:
    • 積層されたDRAMチップは、TSVと呼ばれるシリコンを垂直に貫通する微細な配線によって直接電気的に接続されます。
    • TSVによって、従来のワイヤーボンディングに比べてはるかに多くの接続が可能になり、データ転送の「バス幅」(一度に送れるデータの量)を劇的に広げることができます。
  3. 広帯域幅の実現:
    • 従来のDRAMがデータ転送速度を向上させるためにクロック周波数を上げていたのに対し、HBMはバス幅を広げることで、膨大なデータを並列に高速転送することを可能にしています。
    • 例えば、一般的なDRAMのバス幅が数十ビットであるのに対し、HBMは数百ビット(HBM3Eでは1024ビットなど)と非常に広いです。
  4. インターポーザー:
    • HBMは、通常、GPU(Graphics Processing Unit)などのホストプロセッサと同じ「インターポーザー」と呼ばれる中間基板上に配置されます。
    • これにより、HBMとプロセッサ間の物理的な距離が極めて短くなり、高速かつ低遅延なデータ転送が実現されます。
  5. 省電力性:
    • データ転送距離が短いことや、低電圧で動作できる設計により、従来のDRAMに比べて高い電力効率を実現しています。

HBMの主な用途

HBMの高速・広帯域な特性は、以下のような分野で特に真価を発揮します。

  • AI(人工知能):
    • 生成AIや大規模言語モデル(LLM)の学習・推論には、膨大な量のデータを高速に処理するGPUが不可欠です。HBMは、このGPUの性能を最大限に引き出すためのメモリとして、ボトルネックを解消する役割を果たします。
  • 高性能コンピューティング(HPC):
    • スーパーコンピュータや科学技術計算など、大量のデータを並列処理するシステムで利用されます。
  • データセンター:
    • サーバーやネットワーク機器において、データ処理能力の向上と消費電力の削減に貢献します。
  • グラフィックスカード(ハイエンド向け):
    • 高解像度や高フレームレートのゲーム、プロフェッショナルなグラフィックス編集などで、GPUの処理能力をサポートします。
  • 自動運転:
    • 車載AIがリアルタイムで大量のセンサーデータを処理する際に、HBMの高速性が求められます。

このように、HBMはAI時代のデータ処理を支える、非常に重要なキーテクノロジーとなっています。

HBMは、複数のDRAMチップを垂直に積み重ね、TSV(シリコン貫通電極)で接続する次世代メモリです。非常に広いデータバス幅により、従来のDRAMより圧倒的に高いデータ転送速度を実現します。AIや高性能コンピューティング、データセンター向けGPUなどで、データ処理のボトルネック解消に不可欠です。

HBMの有力メーカーはどこか

 HBM(高帯域幅メモリ)の有力メーカーは、以下の3社が圧倒的なシェアを占めています。

  1. SKハイニックス (SK hynix):
    • 現在のHBM市場において、圧倒的なトップシェアを誇ります。特にAIチップ大手のNVIDIAへの供給において優位に立っており、HBM3や最新のHBM3Eの量産で先行しています。
    • 2024年のHBM市場シェアでは、55%を占めるとの予測もあります。
  2. サムスン電子 (Samsung Electronics):
    • SKハイニックスに次ぐHBM市場の主要プレイヤーです。HBM3Eの開発・量産にも注力しており、追撃を図っています。
    • 総合半導体メーカーとしての強みを活かし、HBMだけでなく、ベースダイの製造からパッケージングまで一貫して提供できる「ワンストップサービス」が強みとされています。
    • 2024年のHBM市場シェアでは、39%を占めるとの予測もあります。
  3. マイクロン・テクノロジー (Micron Technology):
    • これまでHBM市場では後れを取っていましたが、最新のHBM3Eの量産に成功し、NVIDIAのH200向けに認証を受けるなど、急速に存在感を高めています。
    • 今後の市場シェア拡大が期待されています。2024年のHBM市場シェアでは、6%を占めるとの予測もあります。

 これらの3社がHBMの主要サプライヤーであり、特にAI需要の拡大を背景に、各社とも技術開発と生産能力の増強に力を入れています。

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