Microsoftの新製品からの中国製部品排除の動き 排除の内容と理由は何か?

この記事で分かること

  • 排除の内容:Surfaceラップトップやデータセンター用サーバーの主要な部品、パーツ、および最終組み立てを含め、サプライチェーンの川上から最終段階まで幅広く中国製を排除を進める予定です。
  • 排除を行う理由:米中対立の長期化による地政学的リスクと、それに伴うサプライチェーンの供給途絶リスクを回避し、国家安全保障上の懸念(特にサーバーなど)に対応するためです。
  • 生産移管先:生産移管先として、Surfaceラップトップはベトナムなどが有力視されています。一方、データセンター向けサーバーは、主にタイやベトナムなどの東南アジア地域へ分散が進んでいます。

Microsoftの新製品からの中国製部品排除の動き

 Microsoftは、2026年にも新製品の大部分を中国以外で生産するよう、部品メーカーなどの取引先に要請したと報じられています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM158EM0V11C25A0000000/

 2026年までに、Surfaceラップトップとデータセンターサーバーの関連部品や資材の80%を中国以外から調達することを目指しているとされています。排除の背景には、米中対立の長期化による地政学的なリスクや、貿易摩擦の激化に備えたサプライチェーンの多角化・強靭化があるとされています。

どのような部品で排除を行うのか

 Microsoftがサプライチェーンから排除を検討している具体的な部品名については、詳細なリストは公開されていませんが、報道から以下の点が明らかになっています。

排除の対象となる部品の範囲

 Microsoftがサプライチェーンの見直しで目指しているのは、特定の部品だけでなく、「部品、パーツ、そして最終組み立て(コンポーネント、パーツ、ファイナルアセンブリ)」を含む幅広い範囲での中国からの脱却です。

  1. 主要な部品およびパーツ(Components, Parts)
    • 単に最終製品の組み立て場所を移すだけでなく、製品に組み込まれる主要な構成要素についても、中国以外の調達に切り替えることを目標としています。
    • あるサプライヤー幹事の発言として、「組み立ての移管は比較的容易だが、(サプライチェーンを)部品レベルまでシフトさせるのは抜本的で非常に困難」と伝えられており、Microsoftの目標が川上まで遡った調達の変更にあることが示唆されています。
  2. 製品のカテゴリー
    • 主に、Surfaceラップトップデータセンター向けサーバーといった新製品の大部分が対象となります。特に機密性の高いサーバーについては、以前から中国からの生産移管を進めていました。

目標とする非中国調達率

 Microsoftは、2026年までにこれらの製品(Surfaceおよびサーバー)のサプライチェーンにおいて、最大20%の供給源のみを中国からの調達に抑え、80%を中国以外で生産することを目標としていると報じられています。

 この動きは、中国が支配的な立場にあるPCB(プリント基板)や、電子機器に不可欠なレアアース(希土類元素)などの重要なコンポーネントについても、代替の調達先を見つけ出す必要性を示しています。

Microsoftは、特定の部品名を公表していませんが、Surfaceラップトップデータセンター用サーバー主要な部品、パーツ、および最終組み立てを含め、サプライチェーンの川上から最終段階まで幅広く中国製を排除し、2026年までに80%を中国外で調達する計画です。

排除する理由は何か

 Microsoftが新製品から中国製部品の排除を進める最大の理由は、米中間の地政学的な対立と、それに伴うサプライチェーンのリスクを回避するためです。主な要因は以下の3点に集約されます。

1. 地政学的リスクの回避とサプライチェーンの強靭化

  • 米中対立の長期化への備え: 米国と中国の間で貿易摩擦や技術覇権を巡る対立が続く中、Microsoftは将来的な追加関税の賦課や、中国政府による輸出規制・禁輸措置などのリスクが高まるとみています。
  • 供給途絶リスクの最小化: 特定の国(中国)に生産拠点が集中していると、政治的な緊張や予期せぬパンデミック(コロナ禍)などで生産が停止した場合、全製品の供給に致命的な影響が出ます。複数の国・地域(「チャイナ・プラス・ワン」戦略)に分散することで、サプライチェーンの強靭性(レジリエンス)を高める狙いがあります。

2. 国家安全保障上の懸念

  • 機密性の高い製品の保護: 特にデータセンター用サーバーは、Microsoftのクラウドサービス(Azure)や米国政府・国防総省向けのサービスを支える重要なインフラです。中国製の部品や組み立てに依存することは、「バックドア」が仕込まれるなどのサイバーセキュリティ上のリスクを招くという懸念が米国側で強まっています。
  • 政府契約への対応: 米国政府は、国家安全保障上のリスクがあると見なされる特定の中国企業製の部品・技術の使用を制限する動きを強めており、政府との取引を維持・拡大するためにも、サプライチェーンの「脱中国化」は不可欠です。

3. 米国政府の政策と連携

  • デカップリングの動き: アメリカ政府は半導体や重要鉱物など特定分野において、中国への依存を脱却し、サプライチェーンを米国や同盟国・友好国で構築する政策(フレンドショアリングなど)を推進しています。Microsoftの動きは、こうした米国の通商・経済安全保障政策と方向性を一にするものと言えます。

主要な理由は、米中対立の長期化による地政学的リスクと、それに伴うサプライチェーンの供給途絶リスクを回避し、国家安全保障上の懸念(特にサーバーなど)に対応するためです。

データセンター向けサーバーはどこで生産されているのか

 Microsoftのデータセンター向けサーバーは、主にODM(Original Design Manufacturer:設計・製造受託業者)と呼ばれる企業によって製造されています。これまで、その生産拠点やサプライチェーンの大部分は中国に集中していました。主要な製造企業とこれまでの状況は以下の通りです。

1. 主要な製造受託企業(ODM)

 Microsoftのサーバー製造を請け負ってきたのは、主に台湾系の大手ODM企業です。これらの企業は、Microsoftだけでなく、Google、Amazon Web Services(AWS)、Metaといった他の巨大クラウドサービスプロバイダー(CSPs)のサーバーも製造しています。

  • Quanta Computer (クアンタ・コンピュータ)
  • Inventec (英業達)
  • Foxconn (鴻海/フォックスコン)
  • Wistron (緯創)(子会社であるWiwynnを含む)

 ODMは、全世界のサーバー生産の約9割を占めており、特にMicrosoftなどの北米CSPs向けのサーバーについても、これらの企業が設計・製造を担っています。

2. これまでの主な生産拠点

 米中貿易摩擦が激化するまで、サーバーの最終組み立て(L6サーバーアセンブリ)およびマザーボードの製造の大部分は中国本土で行われていました。

  • 中国本土: コスト効率や既存の巨大なサプライチェーン集積地として、長年にわたり主要な生産拠点でした。

3. 米中対立後の変化

 米中貿易摩擦が始まった2018年以降、地政学的なリスクや関税を避けるため、サーバーODMは北米顧客の要請に基づき、生産ラインの移管を段階的に進めてきました。

  • 初期の移管先: 台湾(ODMの本拠地)への生産回帰。
  • 最近の移管先とMicrosoftの目標: 現在、Microsoftや他のCSPsの要請により、ODMはタイベトナムなどの東南アジア諸国に新たな生産拠点を設け、中国依存のさらなる解消を進めています。今回の報道は、この動きを加速させ、部品レベルでの中国依存度を大幅に下げることを目指すものです。

以前は主に台湾系ODM(Quanta、Inventecなど)が、コストとサプライチェーンの集積地である中国本土で、Microsoftを含む大手顧客向けサーバーの設計と製造を受託していました。

Surfaceはどこで生産されているのか

 Microsoftの「Surface」シリーズ(ラップトップ、タブレットなど)は、データセンター用サーバーと同様に、主にODM(Original Design Manufacturer:設計・製造受託業者)に製造を委託してきました。

1. 主要な製造拠点

  • 中国本土: ほとんどのSurface製品の主要な生産拠点として機能してきました。これは、ノートPCやタブレットのサプライチェーンが中国に高度に集積しているためです。
  • その他: 初期の一部製品(Surface Hubなど)は米国で製造されたことがありましたが、後に中国へ移管されました。

2. 製造受託企業(ODM)

 Microsoftは具体的なODM名を公式には公表していませんが、業界情報や報道では、他の大手PCブランドと同様に、主に台湾系の大手ODMが製造を請け負ってきたと広く見られています。

  • Foxconn(鴻海/フォックスコン): Apple製品の製造で有名ですが、ハイエンドなデバイスの製造を多く手掛けており、Surfaceの製造にも関与している可能性が高いとされています。
  • Quanta Computer(クアンタ・コンピュータ): ノートPCのODMとして世界最大級であり、Surfaceシリーズの一部も担当していると推測されます。

3. 最近の製造移管の動き

 Microsoftは、米中対立やサプライチェーン多角化のため、数年前からSurface製品の生産の一部を中国外へ移し始めています。

  • ベトナム: Microsoftは、2020年頃からSurface製品の一部の製造を中国からベトナムへ移管する動きを見せており、今回の「中国製部品排除」の計画でも、主要な移管先の一つとされています。

 これまでのSurfaceの製造は、台湾系ODM中国本土の工場で受託製造するという形態が中心でした。

以前は、主に台湾系ODM(Foxconn、Quantaなど)が中国本土の工場で受託製造していました。近年、一部の生産はサプライチェーンの多角化のためベトナムなどへ移管されています。

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