三菱重工業、過去最高益 最高益の背景は何か?、なぜガスタービンの製造に強みを持っているのか?

この記事で分かること

  • 最高益の背景は:防衛・航空宇宙セグメントやエネルギーシステム分野での大幅な利益の増加が背景にあります。
  • エネルギーシステム分野にはどんな製品があるのか:ガス、蒸気、風力のタービン、原子力発電の原子炉、ボイラーなどを製造しています。
  • ガスタービンの製造に強みがある理由:「超高温・超高速回転」の極限条件を扱うため、多岐にわたる分野で高い技術力と実績が求められます。この点が三菱重工の強みといえます。

三菱重工業、過去最高益

 三菱重工業が、2025年3月期の通期業績見通しを発表し、売上高と当期純利益が過去最高を更新する見込みです。

 https://newswitch.jp/p/45656

 防衛・航空宇宙セグメントは、事業利益が前期比40%増を見込むなど、防衛関連の需要増が顕著です。また、エネルギーシステム分野でも、発電設備やタービンなどの需要が堅調で、事業利益は前期比17%増を予想しています。

防衛分野の内容と好調の理由は

三菱重工の防衛分野が好調な理由は、次のような背景があります。


■ 防衛分野の内容

三菱重工の防衛・宇宙セグメントは、主に以下を担当しています。

  • 戦闘機・ヘリコプター・無人機の開発・製造・整備
  • イージス艦用ミサイル防衛システム(Aegis BMD)
  • 地対空ミサイル・誘導弾関連システム
  • 宇宙関連(H3ロケットなど)
  • 防衛装備品の維持・補修

 特に、日本の防衛省向けの納入が大きな割合を占めています。


■ 好調の理由

  1. 防衛予算の増加
     日本政府が防衛力強化を掲げ、近年は防衛予算が大幅に増額されています。2023年以降、5年間で防衛費をGDP比2%に引き上げる計画が進んでおり、それに伴う大型契約が増加。
  2. 地政学リスクの高まり
     東アジア(中国・北朝鮮・ロシア)情勢の緊張が高まり、防衛装備の増強ニーズが急拡大。
  3. イージス・システム搭載艦の受注
     新型イージス艦の建造など高額案件が動き、業績を押し上げ。
  4. 装備品のアップグレード需要
     既存装備(戦闘機・ミサイル・艦艇)の性能向上・近代化改修需要が増大。
  5. 海外案件の拡大
     国内だけでなく、アジアや中東向け輸出、共同開発案件も視野に。

地政学リスクの高まりによる防衛予算の増加で防衛関係の売り上げが好調となっています。

発電設備にはどんな物があるのか

 三菱重工の発電設備分野では、主に以下のような製品・システムを扱っています。


■ 発電設備の主な種類

  1. ガスタービン発電設備
    • ガスタービン単体またはコンバインドサイクル(ガスタービン+蒸気タービンの組み合わせ)
    • 高効率でCO₂排出量が少なく、主に火力発電所に使われる
  2. 蒸気タービン・ボイラー
    • 石炭・石油・天然ガス・バイオマスを燃料にする従来型火力発電
    • 特に石炭火力は高効率化(超々臨界圧:USC技術)で温室効果ガス低減を図る
  3. 原子力発電設備
    • 原子炉(PWR=加圧水型炉)や原子力発電所向けの機器・メンテナンスサービス
    • 安全性向上のための最新技術(例:小型モジュール炉=SMR)の開発も進行中
  4. 再生可能エネルギー関連
    • 洋上風力タービン(子会社の三菱パワーや日立造船との共同事業)
    • 地熱発電設備(日本国内は世界有数の技術力)
  5. 分散型電源・マイクログリッド
    • 小型ガスタービン・燃料電池・蓄電池を組み合わせた分散電源システム

■ 好調の背景

  • 世界的な脱炭素(カーボンニュートラル)潮流に合わせ、ガスタービンや水素混焼タービンの需要が増加
  • 老朽化した火力・原子力発電所の更新需要
  • 新興国の電力需要拡大による新設案件

三菱重工は発電所で利用されるガス、蒸気、風力のタービン、原子力発電の原子炉、ボイラーなどが発電設備を製造しています。

ガスタービンはどのように製造されるのか

 ガスタービン製造は「超高温・超高速回転」の極限条件を扱うため、

・材料工学
・流体力学
・機械加工技術
・制御技術
 

 が総動員される、非常に高度な産業です。多岐にわたる分野で高い技術力と実績を持っている点が三菱重工の強みといえます。

ガスタービンの作り方

  1. 設計
    • 高効率・高耐熱・低排出ガスを実現するため、空力設計、材料設計、熱力学設計を行います。
    • 計算流体力学(CFD)、有限要素解析(FEA)などのシミュレーションが駆使されます。
  2. 素材の選定
    • 高温に耐える耐熱合金(ニッケル基超合金)やセラミックコーティング材を選びます。
    • タービンブレード(羽根)は数千度の熱にさらされるので、特殊な単結晶材料が使われます。
  3. 部品の製造
    • タービンブレード:精密鋳造(方向性凝固・単結晶鋳造)
    • コンプレッサー・燃焼器:高精度の機械加工や溶接
    • シャフト(回転軸):超高精度の加工と熱処理
    • ケーシング(外殻):大型の鍛造・溶接構造
  4. 組立
    • 数千点の部品を精密に組み合わせ、回転部分(ローター)と固定部分(ステーター)を組み立てます。
    • 数ミクロン単位の精度調整が必要。
  5. コーティング・表面処理
    • 高温部品には遮熱コーティング(TBC:熱障壁コーティング)を施します。
    • 表面処理で耐摩耗性・耐腐食性を強化。
  6. バランステスト・検査
    • 回転部品の動的バランス調整
    • 非破壊検査(超音波・X線・渦流検査)
    • 性能試験(燃焼試験、振動試験)
  7. 現場据付・調整
    • 発電所現場に輸送し、据付・配管・配線・制御系統の接続を行います。
    • 現地試運転を実施し、効率・出力・安全性を確認。

ガスタービン製造は「超高温・超高速回転」の極限条件を扱うため、多岐にわたる分野で高い技術力と実績が求められます。この点が三菱重工の強みといえます。

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