この記事で分かること
- どんな設備なのか:ライフサイエンスに加え、半導体、エネルギー、宇宙など多様な先端研究に対応。都心近接型で、高度な設備と交流スペースも備える研究開発拠点です。
- 三井不動産が力を入れる理由:「産業デベロッパー」として、日本の半導体産業が抱える課題解決と競争力強化に貢献するため、半導体関連拠点に注力しています
三井不動産の東京都内半導体関連の拠点整備
三井不動産は、東京都内において半導体関連の拠点整備を進めています。主な動きとしては、以下の2点が挙げられます。
- 半導体分野の共創拠点「RISE GATE NIHONBASHI」の開設
- 三井不動産は、半導体分野の産業創造を目指し、一般社団法人「RISE-A(ライズ・エー)」を設立しました。
- このRISE-Aの活動拠点として、2025年10月に日本橋のスルガビル(東京都中央区日本橋室町1-7-1)に共創拠点「RISE GATE NIHONBASHI」を開設予定です。
- この施設は、半導体の設計・製造を担うサプライヤーだけでなく、活用するユーザー企業やサポーターも含めた多様な企業や研究機関が集まり、交流・連携を深める場となります。
- ノーベル物理学賞受賞者の天野浩名古屋大教授が理事長を務めるRISE-Aは、会員企業向けにイベントやネットワーキングの機会を提供し、半導体分野におけるイノベーションの創出や産業課題の解決に貢献することを目指しています。
- 「(仮称)三井リンクラボ東陽町1」の建設
- 三井不動産は、2025年4月に東京都江東区東陽町で賃貸ラボ&オフィス「(仮称)三井リンクラボ東陽町1」の建設に着工しました。
- 2026年夏の竣工予定で、この施設は、ライフサイエンス領域に加え、半導体、エネルギー、食品、化学、宇宙など多様な先端領域の研究開発ニーズに対応する拠点となります。
- 高度な研究設備が求められる分野に対応できる仕様となっており、三井不動産が展開する「三井リンクラボ」シリーズの一環として、都心近接型のラボ&オフィスとして期待されています。
このように、三井不動産は、半導体分野において、交流・共創を促すハブ機能としての拠点と、具体的な研究開発を支援するラボ施設の双方で、都内における事業展開を強化しています。
RISE-Aとは何か
RISE-A(ライズ・エー)は、三井不動産が中心となって設立した一般社団法人で、日本の半導体産業の競争力強化とイノベーション創出を目的としています。
名称は「Revolutionary Innovation by Semiconductor Ecosystem for All Industries」(あらゆる産業のための半導体エコシステムによる革新的なイノベーション)の頭文字から名付けられています。
- 設立目的:
- 半導体分野における「融合と循環」を通じて新たなイノベーションを創出すること。
- 半導体の設計・製造を担うサプライヤーだけでなく、自動車や産業機器、通信、医療機器など半導体のユーザー企業、さらに政府や自治体、大学・研究機関といった多様なプレイヤーが連携し、共創・協調するための場と機会を提供すること。
- 日本が研究段階では世界の先頭を走っているにもかかわらず、量産や市場占有で海外企業に遅れをとるという課題を克服すること。
- 理事長:
- ノーベル物理学賞受賞者である天野浩名古屋大学教授が理事長を務めています。副理事長には三井不動産常務執行役員の山下和則氏が就任しています。
- 活動拠点:
- 2025年10月に東京都中央区日本橋室町に共創拠点「RISE GATE NIHONBASHI」を開設予定です。ここがRISE-Aの主な活動拠点となります。
- 活動内容:
- 会員企業向けにイベントやネットワーキングの機会を提供し、業界の情報交換や新たなビジネスチャンスの創出を促進します。
- ベルギーのimecや台湾のITRI(工業技術研究院)など、世界最先端の半導体研究機関や、国内の産業技術総合研究所の事業会社AISTソリューションズが提供するプラットフォーム「OpenSUSI」などと連携し、最新の技術や知見を取り入れ、イノベーションを加速させます。
- 三井不動産がこれまでライフサイエンス分野や宇宙産業分野で培ってきた「産業デベロッパー」としての知見を活かし、土地・工場などの不動産の提供、サプライチェーン構築のサポートなども含めた包括的な産業支援を行うことで、多様なプレイヤーの半導体産業への参入を促進します。
RISE-Aは、日本の半導体産業が抱える課題を解決し、国際競争力を高めるための中核的な役割を果たすことが期待されています。

RISE-Aは、三井不動産が設立した一般社団法人で、ノーベル賞受賞者の天野浩教授が理事長を務めます。半導体分野の企業や研究機関などが連携・共創し、日本の半導体産業のイノベーションと競争力強化を目指します。2025年10月に日本橋に共創拠点を開設予定です。
三井リンクラボ東陽町について
三井リンクラボ東陽町は、三井不動産が展開する賃貸ラボ&オフィス事業「三井のラボ&オフィス」シリーズの一つで、現在、東京都江東区新砂にて建設が進められています。
主要な特徴と概要は以下の通りです。
- 名称: (仮称)三井リンクラボ東陽町1
- 所在地: 東京都江東区新砂一丁目(地番)
- アクセス: 東京メトロ東西線「東陽町」駅から徒歩10分と、都心に近接した立地が特徴です。
- 着工: 2025年4月に着工されました。
- 竣工予定: 2026年夏に竣工が予定されています。
- 規模:
- 敷地面積:約9,800㎡
- 延床面積:約20,000㎡
- 建物構造:地上4階建て
- コンセプトと対応分野:
- この施設は、従来の「三井リンクラボ」シリーズが注力してきたライフサイエンス(バイオテクノロジー、医薬品、再生医療など)の領域に加え、半導体、エネルギー、食品、化学、宇宙といった、多岐にわたる先端領域の研究開発ニーズに対応することを目指しています。
- シリーズとしては初めて「工業専用地域」に立地しており、この特性を活かして、高度な研究設備やインフラを必要とする分野の研究開発に対応できる設計となっています。
- 設備と機能:
- 1階は天井高5.5m、床荷重1,500kg/㎡を確保するなど、大型機器の設置や搬入に対応できる仕様となっています。
- 大容量の電源や効率的なダクトルートなど、先端研究を支える設備が計画されています。
- 入居者間の交流や連携を促進するため、共用のラウンジや会議室、カフェ・コンビニなどの利便施設も整備される予定です。
- 役割:
- 三井不動産がこれまでに培ってきた「産業デベロッパー」としてのノウハウを活かし、多様な研究開発活動を包括的に支援する拠点となることが期待されています。
- 都心近接型であるため、都心部との連携や人材確保にも有利な点があります。
三井リンクラボ東陽町は、日本のイノベーション創出を加速させるための重要なインフラとして、今後の動向が注目されます。

三井リンクラボ東陽町は、三井不動産が江東区新砂で建設中の賃貸ラボ&オフィスです。2026年夏の竣工予定で、ライフサイエンスに加え、半導体、エネルギー、宇宙など多様な先端研究に対応。都心近接型で、高度な設備と交流スペースも備える研究開発拠点です。
具体的にどんな研究がおこなわれるのか
三井リンクラボ東陽町では、非常に幅広い分野の研究開発が行われる予定です。まだ竣工前なので具体的な入居企業や研究テーマは公表されていませんが、三井不動産が掲げているコンセプトから、以下の研究領域が想定されます。
1. ライフサイエンス領域
- 医薬品・バイオテクノロジー: 新薬の研究開発、遺伝子治療、再生医療、診断薬の開発など。これは既存の三井リンクラボシリーズでも主要な分野です。
- ヘルスケア・食品: 機能性食品、健康食品の研究、細胞培養肉などの新素材開発など。
2. 半導体領域
- 次世代半導体材料・デバイス開発: SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などのパワー半導体、超高速・低消費電力デバイスの研究。
- 半導体製造プロセス技術: 微細化技術、新しい製造装置・材料の開発。
- 半導体の応用研究: AIチップ、IoTデバイス、量子コンピューティング関連など、半導体を用いた新しいアプリケーションの研究。
3. エネルギー領域
- 再生可能エネルギー技術: 太陽電池、風力発電、地熱発電などの効率化、蓄電池技術、水素エネルギー関連の研究。
- カーボンニュートラル技術: CO2分離・回収・利用(CCUS)、次世代燃料開発など。
4. 化学・新素材領域
- 高機能素材開発: 自動車、航空宇宙、エレクトロニクス、医療など多様な産業で使われる新素材の研究。
- 環境配慮型素材: バイオプラスチック、リサイクル技術など。
5. 宇宙領域
- 人工衛星関連技術: 小型衛星、衛星通信技術、地球観測技術など。
- 宇宙資源探査・利用技術: 宇宙デブリ対策など。
三井リンクラボ東陽町が特にこれらの分野に対応できる理由
- 工業専用地域への立地: これまでのリンクラボでは難しかった、大容量の電力供給、大型装置の搬入・設置、特殊な排気設備など、より高度なインフラを必要とする研究に対応可能です。
- 多様な研究ニーズへの対応: 上記の通り、幅広い分野の研究に対応できるよう、柔軟な区画設計や設備仕様が想定されています。
- 交通利便性: 都心に近く、国内外の研究者や企業との連携がしやすい立地も、多様な研究を促進する要素となります。
最終的にどのような企業や研究機関が入居し、どのような具体的な研究が行われるかは、竣工後の発表を待つことになりますが、上記の分野における最先端の研究が展開されることが期待されます。
三井不動産が半導体関連拠点に力を入れる理由はなにか
三井不動産が半導体関連拠点に力を入れる理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
「産業デベロッパー」としての事業拡大と社会貢献
- 三井不動産は、これまでもライフサイエンス分野(LINK-J)や宇宙産業分野で、単なる不動産の賃貸にとどまらず、産業全体の成長を支援する「産業デベロッパー」としての役割を担ってきました。
- 半導体は、デジタル社会の基盤となる極めて重要な技術であり、その産業の活性化は日本全体の競争力強化に直結します。この大きな社会貢献性のある分野に参画することで、企業としてのプレゼンスを高め、新たな事業機会を創出することを目指しています。
日本の半導体産業が抱える課題の解決への貢献
- 日本の半導体産業は、かつて世界をリードしていましたが、近年は国際的なシェアが低下し、設計・製造・利用といった各段階での連携不足や、研究成果が事業化につながりにくいといった課題を抱えています。
- 三井不動産は、中立的な立場から、半導体を作る側(サプライヤー)と使う側(ユーザー)、そして大学や研究機関、政府などの支援者が一堂に会し、情報交換や共同研究、新たな事業創出を促す「場」と「機会」を提供することで、これらの課題解決に貢献しようとしています。特に、業界・分野を超えた「共創・協調」を促すことを重視しています。
新たな不動産需要の創出と多様な収益源の確保
- 半導体産業は、研究開発や製造において、高度な設備やクリーンルーム、大容量の電力供給など、一般的なオフィスビルとは異なる特殊な不動産ニーズを持っています。
- 三井リンクラボ東陽町のような施設は、こうした専門性の高いニーズに応えることで、新たな不動産需要を掘り起こし、賃貸収益の多様化・安定化を図ることができます。また、半導体産業の活性化に伴い、関連企業が集積することで、周辺のオフィスや住宅、商業施設など、既存事業への波及効果も期待できます。
これらの理由から、三井不動産は、単なる不動産会社としてではなく、日本の産業構造変革の一翼を担う「産業デベロッパー」として、半導体関連拠点への投資を積極的に進めていると言えるでしょう。

三井不動産は、「産業デベロッパー」として、日本の半導体産業が抱える課題解決と競争力強化に貢献するため、半導体関連拠点に注力しています。多様な企業や研究機関の共創を促し、新たな不動産需要と事業機会を創出する狙いがあります。
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