この記事で分かること
・レッドリストとは何か:国際自然保護連合(IUCN)が作成する、生物種の絶滅リスクを評価したリストのこと。
・絶滅危惧種はどれくらい増えているのか:1970年代後半から生物の絶滅速度が加速しており、現在では年間約4万種が絶滅し、生物多様性が危機的な状況にあります。
・絶滅増加の要因は何か:絶滅危惧種が増えている最大の原因は人間の活動による環境変化です。特に、生息地の破壊・気候変動・乱獲が大きな要因となっています。
ムツゴロウが新たに絶滅危惧種として評価
国際自然保護連合(IUCN)は2025年3月27日、世界の絶滅危惧種をまとめたレッドリストの最新版を公表し、ムツゴロウが新たに絶滅危惧種として評価されました。

かつて国内最大級の生息地だった佐賀県と長崎県が面する諫早湾では、干拓で干潟が消失し、ムツゴロウは絶滅したと考えられています。 また、15年前と比べて数が少なくとも30%減少したとみられています。
レッドリストとは何か
レッドリスト(Red List)は、国際自然保護連合(IUCN)が作成する、生物種の絶滅リスクを評価したリストです。正式名称は「IUCNレッドリスト(IUCN Red List of Threatened Species)」で、世界中の動植物を対象に、絶滅の危険度を科学的に分類しています。
レッドリストのカテゴリー(絶滅リスクの分類)
IUCNのレッドリストでは、以下の9つのカテゴリーに分類されます。
- 絶滅(EX, Extinct) – すでに野生でも飼育下でも絶滅した
- 野生絶滅(EW, Extinct in the Wild) – 野生では絶滅し、飼育下などでのみ生存
- 絶滅危惧種(Threatened)
- 深刻な危機(CR, Critically Endangered) – 近い将来、極めて高い確率で絶滅する恐れがある
- 危機(EN, Endangered) – 絶滅の危険が高い
- 危急(VU, Vulnerable) – 絶滅のリスクが増加している(ムツゴロウはここ)
- 準絶滅危惧(NT, Near Threatened) – 近い将来、絶滅危惧種になる可能性がある
- 軽度懸念(LC, Least Concern) – 絶滅の危険が少ない
- データ不足(DD, Data Deficient) – 情報不足で評価できない
- 未評価(NE, Not Evaluated) – まだ評価されていない
レッドリストの目的
- 生物多様性の保全: 絶滅の危機にある種を特定し、保護政策の優先順位を決める
- 研究と啓発: 生態系の変化を示す指標として活用される
- 政策決定の指針: 国際条約や各国の保護活動の基準となる
各国も独自の「国内レッドリスト」を作成しており、日本では環境省が「日本のレッドリスト」を発表しています。

レッドリストとは国際自然保護連合(IUCN)が作成する、生物種の絶滅リスクを評価したリストです。
ムツゴロウはどんな生物か
ムツゴロウは、ハゼ科(Gobiidae)に属する魚で、主に干潟に生息する水陸両生の魚です。特に、日本では有明海や八代海の干潟に多く見られます。
特徴
- 体長:10〜20cm程度
- 体色:茶褐色の体に青い斑点
- 生息地:日本(有明海・八代海)、朝鮮半島、中国、台湾などの沿岸部
- 生態:
- 泥の上を這うように移動し、ジャンプすることもできる
- えら呼吸だけでなく、皮膚と口の中で酸素を吸収できる(陸上でも生存可能)
- 泥に穴を掘って巣を作り、繁殖期にはオスがメスを誘い込む
- 動物プランクトンや藻類を食べる
ムツゴロウの文化的・経済的な価値
- 食用:一部地域では食用とされ、蒲焼きや唐揚げにする
- 観光資源:有明海沿岸では、「ムツゴロウすくい」や「ムツゴロウ焼き」が名物
- 生態系の指標:干潟の環境が良好であるかどうかを示す指標生物
ムツゴロウの絶滅危機
近年、ムツゴロウの絶滅リスクが高まっている主な原因は以下のとおりです。
- 干潟の減少(埋め立て・開発・護岸工事)
- 水質汚染(生活排水や工業排水による影響)
- 気候変動(海面上昇や水温変化による影響)
- 漁業の影響(過剰な採取や生息地の破壊)
日本では、有明海の干拓事業による影響が大きく、かつてムツゴロウが大量に生息していた諫早湾(長崎県)では絶滅したとされています。
保全活動
- 干潟の保全・再生事業
- 水質改善(生活排水の処理強化)
- 漁獲規制と管理

ムツゴロウは干潟の生態系を支える重要な魚であり、その保全は干潟全体の環境保護にもつながります。
世界の絶滅危惧種はどれくらいいるのか
国際自然保護連合(IUCN)が2023年12月に発表した最新版のレッドリストによれば、評価対象となった157,190種のうち、44,016種が「絶滅の危機が高い」と分類されています。 これは、全評価種の28%以上に相当します。
絶滅危惧種の内訳は以下のとおりです:
- 近絶滅種(CR, Critically Endangered):9,760種
- 絶滅危惧種(EN, Endangered):17,344種
- 危急種(VU, Vulnerable):16,912種
これらの数値は、前回の発表時と比較して約2,000種の増加を示しており、生物多様性の損失が進行していることを示唆しています。
IUCNレッドリストは、世界中の動植物の保全状況を評価し、絶滅リスクを分類する重要な指標となっています。
絶滅危惧種はどれくらいのペースで増えているのか
絶滅危惧種の増加ペースは、評価方法や対象範囲によって異なりますが、以下のデータが参考になります。
日本の環境省レッドリストの推移
- 2017年:絶滅危惧種が38種増加し、合計3,634種となりました。
- 2018年:絶滅危惧種が41種増加し、合計3,675種となりました。
これらのデータから、2017年から2018年にかけて、絶滅危惧種は41種増加していることがわかります。
世界的な状況
世界全体では、1970年代後半から生物の絶滅速度が加速しており、現在では年間約4万種、つまり1日あたり100種以上が絶滅していると報告されています。
また、1970年から2016年の間に、脊椎動物の個体群は平均68%減少したとの指標もあります。

1970年代後半から生物の絶滅速度が加速しており、現在では年間約4万種、つまり1日あたり100種以上が絶滅していると報告されています。 生物多様性の喪失が深刻化していることがわかります。
絶滅危惧種が増えている理由は何か
絶滅危惧種が増えている主な理由は、人間の活動による環境の変化と気候変動です。以下の要因が特に大きな影響を及ぼしています。
1. 生息地の破壊・減少
森林伐採、都市開発、農地拡大、河川の改修、干潟の埋め立てなどにより、多くの生物が生息地を失っています。
- 例:アマゾンの熱帯雨林が農業開発で急速に消失 → ジャガーやオウムの仲間が危機に
- 日本の例:干拓事業による干潟の減少 → ムツゴロウやシギ・チドリの減少
2. 気候変動(地球温暖化)
温暖化による気温・海水温の上昇、異常気象の増加が、生態系に深刻な影響を与えています。
- 例:
- サンゴの白化現象 → サンゴ礁に依存する魚類やウミガメの生息環境が悪化
- 北極の氷が減少 → ホッキョクグマの狩猟環境が悪化
3. 過剰な捕獲・乱獲
食用・毛皮・ペット・薬用などの目的で、生物が大量に捕獲されています。
- 例:
- マグロ(クロマグロ)は過剰漁獲により個体数が激減
- アフリカゾウやサイ → 牙や角を狙った密猟で減少
4. 外来種の影響
人間の移動や貿易により外来種が侵入し、在来の生物を圧迫するケースが増えています。
- 例:
- 日本のアマミノクロウサギ(奄美大島) → マングースの侵入で捕食され絶滅危機
- オーストラリアのカエル(オオヒキガエル) → 在来動物を捕食し、生態系を破壊
5. 環境汚染
農薬、工業排水、プラスチックごみ、大気汚染などが生物に悪影響を与えています。
- 例:
- 海のプラスチックごみ → ウミガメや海鳥が誤食して死亡
- 水銀や農薬による汚染 → 淡水魚やカエルの減少
6. 病気の蔓延
新たな感染症が広がり、生物の個体数が急減するケースもあります。
- 例:
- 両生類のカエルツボカビ症 → 世界中のカエルが大量死
- コウモリの白鼻症 → 北米でコウモリの個体数が激減
7. 生態系の崩壊(食物連鎖の変化)
絶滅する種が増えると、それを食べていた動物や共生関係にある生物も影響を受け、連鎖的に絶滅リスクが高まる。
大型肉食動物(オオカミなど)が減る → 草食動物が増えすぎて植生が破壊
例:
ミツバチの減少 → 花の受粉が減り、果物や農作物の生産にも影響

絶滅危惧種が増えている最大の原因は人間の活動による環境変化です。特に、生息地の破壊・気候変動・乱獲が大きな要因となっています。
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