天然洗浄剤 天然洗浄剤にはどんな化合物が入っているのか?従来の洗剤のリン酸塩の役割は何か?

この記事で分かること

  • 天然洗浄剤の成分:天然のキレート剤や酵素などで、環境に影響を大きい物質を添加せずに洗浄力を得ることができる。
  • リン酸塩の役割:水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を封じ込めて、洗浄成分(界面活性剤)が本来の力を発揮できるようにする働きがありますが、環境への影響が多いという懸念があります。
  • 硬度成分が洗浄性に影響する原因:硬度成分は主に界面活性剤との反応し、洗浄力や泡立ちを悪くさせてしまいます。

天然洗浄剤

 清掃機器の世界最大手メーカー、ドイツ・ケルヒャーが、洗浄成分の99%以上を小麦ふすまやトウモロコシなどの天然由来成分で構成し、環境にも作業者にもやさしいカーペットPro天然洗浄剤「RM 764N」を発売することを発表しています。

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000186.000068349.html

 ケルヒャーの天然由来成分99%以上の天然洗浄剤では、​マイクロプラスチック、シリコン、ナノ素材、染料、リン酸塩を含まず、環境や素材に配慮した設計となっていることが特徴的です。

リン酸塩の役割は何か

 リン酸塩(phosphates)は洗浄剤の世界で非常に古くから使われている成分で、主に以下のような役割があります。


■ リン酸塩の主な役割

  1. 水の軟化(キレート剤)
     水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を封じ込めて、洗浄成分(界面活性剤)が本来の力を発揮できるようにする働きがあります。
  2. 汚れの再付着防止
     洗い落とした汚れや油分が再び繊維や表面に戻らないようにする働きもあります。
  3. 洗浄力の向上
     界面活性剤と相互作用して、洗浄力全体を底上げします。特にたんぱく質汚れや油汚れに対して有効です。

■ なぜリン酸塩を使わない製品があるの?

 環境への影響が大きいためです。

  • 富栄養化の原因になる(河川や湖に流れ込むと藻類が異常繁殖 → 生態系に悪影響)
  • 排水処理の負担増になる
  • 一部の国・地域では家庭用洗剤への使用を制限・禁止している場合もある

 そのため、ケルヒャーのような環境配慮型製品ではリン酸塩を避けて、天然のキレート剤(例:クエン酸ナトリウムなど)や酵素などを使うことが多いです。

リン酸塩には水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を封じ込めて、洗浄成分(界面活性剤)が本来の力を発揮できるようにする働きがありますが、環境への影響が多いという懸念があります。

天然のキレート剤と酵素とはどんなものか 

 キレート剤とは、金属イオン(カルシウム・マグネシウムなど)と結びついて、水の硬度を下げたり、金属イオンによる汚れ再付着や変色を防いだりする成分です。

よく使われる天然のキレート剤:

  1. クエン酸(クエン酸ナトリウム)
    • レモンや梅干しなどにも含まれる酸。
    • カルシウムや鉄イオンなどを包み込んで不活性化。
    • 弱酸性なので、石鹸カスや水垢にも効果あり。
  2. グルコン酸ナトリウム
    • 発酵法で得られるブドウ糖由来の成分。
    • 強いキレート力があり、食品にも使用されるほど安全性が高い。
    • 洗剤では金属イオンによる洗浄妨害の防止に使われる。
  3. フィチン酸(イノシトールヘキサリン酸)
    • 米ぬかや穀物に含まれる天然成分。
    • 鉄やカルシウムとの結合力が強く、抗酸化・変色防止にも利用。

■ 酵素とは?

 酵素はタンパク質の一種で、「特定の汚れを分解する働きを持つ生物由来の触媒」です。

洗剤に使われる主な酵素の種類:

  1. プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)
    • 血液・皮脂・食品汚れなどのたんぱく質を分解。
    • シャツの襟汚れやカーペットの食べこぼしなどに有効。
  2. アミラーゼ(デンプン分解酵素)
    • ごはんやソースなどのデンプン汚れに強い。
  3. リパーゼ(脂肪分解酵素)
    • 皮脂や調理油などの油汚れに効果的。
  4. セルラーゼ(セルロース分解酵素)
    • 衣類の毛羽立ちを抑えたり、繊維にこびりついた汚れを落とすのに使われる。

天然のキレート剤は水道水のカルシウムやマグネシウムを封じ込めながらも、環境と人体への負荷が低く、特に「子供・ペット・敏感肌」の家庭に向けた洗剤ではよく使われています。

酵素は汚れそのものの分解のために添加されています。

カルシウムはなぜ洗浄成分を邪魔をするのか

 カルシウム(やマグネシウム)といった硬度成分が洗浄成分の働きを邪魔するのは、主に界面活性剤との反応によって以下のような問題が起こるからです。


■ 原因:カルシウムと界面活性剤の相互作用

 界面活性剤は、水と油を混ぜたり、汚れを浮かせて落とすための基本成分です。ところが、水の中にカルシウムイオン(Ca²⁺)が多い場合には以下のような不具合が起きてしまいます。

1. 石鹸カスの発生
  • 界面活性剤(とくに石けん系)は、カルシウムと結合して「金属石けん(不溶性石けん)」という水に溶けない白いカスになります。
  • これが洗浄力を著しく低下させる。
  • カスが再付着して、逆にくすみや汚れの元にもなる。
2. 泡立ちの妨げ
  • カルシウムが多いと界面活性剤がうまく機能せず、泡立ちが悪くなる。
  • 特に泡で汚れを包み込むタイプの洗剤では致命的。
3. 洗剤の無駄遣い
  • 界面活性剤がカルシウムと結びついて本来の仕事をする前に失活するため、余分に使わないと汚れが落ちない。

硬度成分は主に界面活性剤との反応し、洗浄力や泡立ちを悪くさせてしまいます。

キレート剤がカルシウムやマグネシウムを先回りして包み込む(封じ込める)ことで、界面活性剤が汚れに集中できるようになります。

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