日本電気硝子のTGV向けガラス基板 TGVとは何か?ガラス基板の特徴は?

この記事で分かること

  • TGVとは:ガラス貫通ビアのことで、ガラス基板に垂直方向の貫通穴を開けて、電気的接続を可能にする技術です。
  • ガラス基板の特徴:高い寸法安定性、絶縁特性、平滑性などから特に高周波・高密度・高精度を要求される分野に適しています。
  • ガラス基板の課題:熱衝撃への耐性や金属との接合性などの「高性能化」とサイズの大型化やコストなど「生産性」のバランスが課題となります。

日本電気硝子のTGV向けガラス基板

 日本電気硝子株式会社(NEG)は、次世代半導体パッケージ向けに大型TGV(Through Glass Via)ガラスコア基板を開発したことを発表しています。

 https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2505/23/news091.html

 ガラスコア基板は平坦で高精度なガラス製の板のことで、回路や素子の支持体として使われ、高性能・高密度な電子部品の基礎となります。

TGVとは何か

 TGV(Through Glass Via)とは、「ガラス貫通ビア」のことを指し、ガラス基板に垂直方向の貫通穴を開けて、電気的接続を可能にする技術です。


【TGVの特徴と意義】

項目内容
素材石英やアルミノシリケートなどのガラス
目的上下層の電子回路の電気接続、熱拡散
加工方法主にレーザー(CO₂レーザーやUVレーザー)、エッチングなど
応用分野半導体パッケージ(SiP、2.5D/3D IC)、センサー、光通信、ディスプレイ等
利点優れた電気特性(低誘電率、低損失)
高い寸法安定性
熱膨張が小さい(シリコンに近い)
薄型化・高密度化が可能

【TGVと従来技術(PCB・樹脂系ビア)との違い】

  • 従来:有機樹脂基板にドリルで穴を開けメッキでビア形成 → 高周波での信号劣化や熱安定性に課題
  • TGV:ガラスの高絶縁性・低誘電損失を活かし、特に高速通信・高周波対応に優れる

TGVとは、ガラス貫通ビアのことで、ガラス基板に垂直方向の貫通穴を開けて、電気的接続を可能にする技術です。高速通信・高周波対応に優れることから、次世代の高性能半導体パッケージ基盤技術として注目されています。

ガラス基板とは何か

 ガラス基板とは、電子機器やディスプレイなどの製造に使われる平坦で高精度なガラス製の板のことです。回路や素子の支持体として使われ、高性能・高密度な電子部品の基礎となります。


【ガラス基板の主な用途】

分野用途の例
半導体パッケージ基板(SiP, TGV基板など)、インターポーザー
ディスプレイ液晶パネル(LCD)、有機EL(OLED)
MEMSセンサー圧力センサー、加速度センサーなど
光通信光導波路、レンズ、基板

【ガラス基板の特徴】

特性内容
高い寸法安定性熱や湿度による変形が少ない
高絶縁性電気を通さないため、信号干渉が少ない
低誘電率・低誘電正接高周波信号の損失が少ない
表面の平滑性微細加工や薄膜形成に適している
光学的透明性光学用途にも適用可能(特にディスプレイ)

【素材例】

  • アルミノシリケートガラス
  • ホウケイ酸ガラス(例:Corning社の「EAGLE XG」など)
  • 石英ガラス(高純度用途)
  • NEG(日本電気硝子)のGCコア™のようなセラミック混合系

【ガラス基板 vs 樹脂基板】

比較項目ガラス基板樹脂基板(FR-4など)
精度・安定性高い樹脂のため熱変形がありうる
高周波特性優れる劣る(損失が大きい)
コスト高め安価

ガラス基板は、高い寸法安定性、絶縁特性、平滑性などから特に高周波・高密度・高精度を要求される分野(AI、5G/6G、光通信など)で重要性が高まっています。

ガラス基板の課題は

 ガラス基板は優れた特性を多く持ちますが、以下のような技術的・製造的な課題があります。


【主な課題】

課題項目内容
加工の難しさガラスは硬くて脆いため、
・穴あけ(ビア形成)
・切断(ダイシング)
・薄型化 が難しく、割れやすい。特に微細なTGV加工は高難度。
コストが高い材料費+加工費が高く、
樹脂基板(FR-4など)に比べて高価。大量生産への適応にコスト課題。
熱衝撃に弱い急激な温度変化で割れが発生するリスクがある。
金属との接合性銅などとの密着性が低く、めっきや接合プロセスの最適化が必要。
サイズ・厚みの制約特に大型サイズや薄型化では、
歩留まりや反りが問題になる。
量産実績が少ない特に半導体パッケージ向けでは、
ガラス基板の量産事例がまだ限定的で、
信頼性やプロセスの標準化が進行中。

【課題に対する対応例】

課題対応技術・動向
加工性CO₂レーザーや超音波・化学エッチングの活用、ガラス材料の改良(例:NEGのGCコア™)
コスト量産プロセスの効率化、低コスト材の開発
接合性表面処理(プラズマ処理など)、中間層導入
歩留まり精密搬送装置の導入、自動検査技術の強化

ガラス基板は、熱衝撃への耐性や金属との接合性などの「高性能化」とサイズの大型化やコストなど「生産性」のバランスをどう取るかが導入拡大の鍵となっています。

なぜ、ガラス基板は高周波に向いているのか

 ガラスが高周波に適している理由は、以下のように、主にその電気的特性と物理的安定性にあります。


【理由1】低誘電率(Low Dielectric Constant, εr)

  • 誘電率が低いほど、信号伝搬速度が速くなる
  • 高周波では配線が伝送線路として働くため、低誘電率材料を使うと信号遅延が少ない
  • 一般的なガラスの誘電率:約4~5(石英ガラスは約3.8)、一部特殊ガラスでは2台も可能

【理由2】低誘電正接(Low Dielectric Loss, tanδ)

  • 高周波では信号損失(エネルギー損失)が問題になる
  • ガラスはtanδ(誘電損失)が非常に低く、高周波信号を長距離でも損失少なく伝送できる

【理由3】優れた寸法安定性・熱膨張特性

  • 熱による膨張が少なく(CTEが低い)、信号配線の長さや形が安定
  • シリコンチップのCTE(線膨張係数)に近いガラス素材もあり、熱ストレスが小さい
  • 高精度な微細加工が可能で、高密度回路に適している

【理由4】高絶縁性

  • ガラスは非常に絶縁性が高く、隣接配線間でのクロストーク(干渉)を抑えられる
  • 高周波回路で重要な「信号の忠実性」を確保できる

【まとめ】

特性ガラスの利点高周波への影響
誘電率(εr)低い信号が速く伝わる
誘電正接(tanδ)非常に低い損失が少ない
熱膨張小さい構造が安定、ノイズ少
絶縁性高いクロストークが少ない

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