この記事で分かること
・膵β細胞とは何か:膵臓のランゲルハンス島に存在し、インスリンを分泌する細胞であり、血糖コントロールの中核を担う重要な細胞です。
・インスリンの役割は何か:血糖値を調節する重要な役割をもっています。糖尿病では、インスリンの分泌量が不足したり、細胞がインスリンに対して反応しにくくなることで、血糖値が高くなります。
・ニューレグリン1とは何か:ErbB4受容体(チロシンキナーゼ型受容体)が存在し、ErbB4が活性化されることで膵β細胞の数が増え、インスリン分泌能力が向上します。
ニューレグリン1による膵β細胞の増殖促進
早稲田大学の研究チームが、肝臓から分泌されるタンパク質「ニューレグリン1」が、インスリンを分泌する膵β細胞の増殖を促進することを明らかにしました。
https://www.waseda.jp/inst/research/news/80084?utm_source=chatgpt.com
ニューレグリン1を投与することで、糖尿病モデルマウスの膵β細胞量とインスリン分泌量が増加し、血糖値の低下が確認されました。
この発見は、糖尿病治療の新たなアプローチとして期待されています。
インスリンの役割は何か
インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を調節する重要な役割を持っています。主な働きは以下の通りです。
1. 血糖値の低下
食事によって血液中のブドウ糖(グルコース)が増えると、インスリンが分泌され、細胞に糖を取り込ませることで血糖値を下げます。
2. 細胞へのグルコース取り込み促進
特に筋肉細胞や脂肪細胞は、インスリンの働きによってグルコースを効率的に取り込み、エネルギー源として利用します。
3. グリコーゲンの合成促進
肝臓や筋肉で余ったグルコースをグリコーゲンとして蓄えるよう促します。これにより、血糖値の急激な上昇を防ぎます。
4. 脂肪の合成と蓄積
余分な糖を脂肪に変え、エネルギー源として貯蔵します。そのため、インスリンは脂肪の増加にも関与します。
5. タンパク質合成の促進
筋肉や他の組織でタンパク質を合成するのを助け、成長や修復に関与します。
6. 肝臓での糖新生の抑制
肝臓は血糖値が下がると、新たに糖を作る(糖新生)機能を持っていますが、インスリンはこの働きを抑えることで血糖値の過度な上昇を防ぎます。

インスリンは、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を調節する重要な役割をもっています。
糖尿病では、このインスリンの分泌量が不足したり、細胞がインスリンに対して反応しにくくなることで、血糖値が高くなります。これが続くと、血管障害や神経障害などの合併症を引き起こします。
膵β細胞とは何か
膵β細胞(すいベータさいぼう)は、膵臓のランゲルハンス島に存在し、インスリンを分泌する細胞です。血糖値の調節に重要な役割を果たしており、糖尿病の発症とも深く関係しています。
膵β細胞の特徴と役割
インスリン分泌
血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度を感知し、血糖値が上昇するとインスリンを分泌します。
インスリンは、筋肉や肝臓、脂肪細胞に作用し、血糖を取り込ませてエネルギーとして利用させます。
血糖センサーの働き
膵β細胞は、細胞内に入ったグルコースを分解し、ATP(エネルギー分子)を作ります。
ATPの増加によって、細胞膜のカリウムチャネルが閉じ、カルシウムイオンが流入。
その結果、インスリンを含む顆粒が放出され、血液中に分泌されます。
糖尿病との関連
1型糖尿病では、免疫系の異常により膵β細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなります。
2型糖尿病では、膵β細胞の機能が低下し、十分なインスリンを分泌できなくなったり、インスリン抵抗性が進行して血糖値の調節が困難になります。
再生医療への期待
膵β細胞は加齢やストレス、高脂肪食などの影響で減少することが知られています。
最近の研究では、膵β細胞の増殖を促進する因子(例:ニューレグリン1)が発見され、糖尿病治療の新たな可能性が示唆されています。iPS細胞を用いた膵β細胞の再生や移植療法も研究が進められています。

膵β細胞(すいベータさいぼう)は、膵臓のランゲルハンス島に存在し、インスリンを分泌する細胞であり、血糖コントロールの中核を担う重要な細胞です。
血糖値が上がるとなぜ糖尿病になるのか
血糖値と糖尿病の関係は、インスリンの働きと深く関わっています。血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)は、エネルギー供給のために一定の範囲に維持される必要がありますが、この調節がうまくいかなくなると糖尿病を発症します。
1. 血糖値の正常範囲
- 空腹時血糖値:70〜99 mg/dL(正常)
- 食後2時間後の血糖値:140 mg/dL 未満(正常)
- 糖尿病の診断基準
- 空腹時血糖値が 126 mg/dL 以上
- 食後2時間後の血糖値が 200 mg/dL 以上
2. 糖尿病とは?
糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。原因は主に以下の2つです。
- インスリンの分泌不足(1型糖尿病・2型糖尿病の一部)
- インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる)(主に2型糖尿病)
3. 糖尿病の種類と血糖値への影響
種類 | 原因 | 血糖値への影響 |
---|---|---|
1型糖尿病 | 膵β細胞が自己免疫によって破壊され、インスリンがほぼ分泌されない | 常に高血糖(インスリン治療が必須) |
2型糖尿病 | インスリン抵抗性+インスリン分泌の低下(生活習慣の影響が大きい) | 食後の血糖値が異常に高くなり、次第に慢性的な高血糖状態へ |
妊娠糖尿病 | 妊娠中のホルモン変化によるインスリン抵抗性 | 妊娠後期に血糖値が高くなりやすい |
4. 高血糖(血糖値が高すぎる)の影響
- 短期的な影響
- 口渇・多尿・疲労感(血糖値が高いと腎臓が余分な糖を排出しようとするため)
- ケトアシドーシス(1型糖尿病)(体がエネルギー不足になり、脂肪を過剰に分解して酸性物質(ケトン体)が増加)
- 長期的な影響(合併症)
- 細小血管障害(網膜症 → 失明、腎症 → 腎不全、神経障害 → しびれ・壊疽)
- 大血管障害(動脈硬化 → 心筋梗塞・脳卒中のリスク増加)
5. 低血糖(血糖値が低すぎる)の影響
- 空腹感、冷や汗、動悸、めまい(軽度)
- 意識障害や昏睡(重度:特にインスリン治療中の患者で注意)
6. 予防と管理
・薬物療法(インスリン注射や経口血糖降下薬)
・食事療法(糖質のコントロール、バランスの取れた食事)
・運動療法(筋肉を動かすことでインスリン感受性を改善)

糖値(血液中のブドウ糖の濃度)は、エネルギー供給のために一定の範囲に維持される必要がありますが、この調節がうまくいかなくなると糖尿病を発症します。
どれくらいの人が糖尿病になっているのか
糖尿病は世界的に増加傾向にあり、2022年のデータでは、世界全体で約8億3,000万人が糖尿病を患っていると報告されています。
日本国内の状況
日本では、2020年の「国民健康・栄養調査」によれば、糖尿病が強く疑われる成人は約1,200万人と推定されています。
世界の状況
国際糖尿病連合(IDF)の報告によると、2022年時点で20歳から79歳の成人の約9.3%にあたる4億6,300万人が糖尿病を患っているとされています。 さらに、WHOの報告では、糖尿病患者数は1990年の2億人から2022年には8億3,000万人に増加したとされています。
これらのデータから、糖尿病は日本国内外で深刻な健康問題となっており、今後も増加が予測されています。

糖尿病は世界的に増加傾向にあり、2022年のデータでは、世界全体で約8億3,000万人が糖尿病を患っているとされ、深刻な健康問題になっています。
ニューレグリンはどうやつて膵β細胞を増やしているのか
1. ニューレグリン(NRG1)とは?
- ニューレグリン1(NRG1)は、成長因子の一種で、細胞の増殖・分化・生存を促す働きを持ちます。
- 主に肝臓から分泌され、さまざまな細胞に作用します。
- もともと神経細胞や心筋細胞の発達・再生に関与することが知られていましたが、膵β細胞にも増殖効果があることが最近の研究で明らかになりました。
2. どのように膵β細胞を増やすのか?
NRG1が膵β細胞を増殖させる仕組みは、主に受容体「ErbB4(エルビー・フォー)」を介した細胞内シグナル伝達によって起こります。
(1) NRG1がErbB4受容体に結合
- 膵β細胞の表面にはErbB4受容体(チロシンキナーゼ型受容体)が存在します。
- NRG1がErbB4に結合すると、ErbB4が活性化されます。
(2) シグナル伝達経路の活性化
ErbB4が活性化すると、以下の細胞増殖シグナルが誘導されます:
- PI3K/Akt経路 → 細胞生存の促進(アポトーシスの抑制)
- MAPK経路(ERK1/2の活性化) → 細胞の増殖・分裂を促進
これにより、膵β細胞の数が増え、インスリン分泌能力が向上します。
(3) 膵β細胞の再生促進と機能向上
- 既存の膵β細胞の増殖が促進される
- 膵β細胞の機能低下を防ぐ(ストレス耐性の向上)
- 新たなβ細胞の形成が促される可能性(幹細胞からの分化)
3. 糖尿病治療への応用
- 2型糖尿病では、膵β細胞の数が減少し、インスリン分泌量が低下します。
- NRG1を投与することで、膵β細胞を増やし、血糖コントロールを改善できる可能性が示唆されています。
- 早稲田大学の研究では、NRG1を糖尿病モデルマウスに投与すると膵β細胞が増え、血糖値が改善しました。
- 2型糖尿病患者の血中NRG1濃度が低いこともわかっており、NRG1の補充が治療につながる可能性があります。
4. 今後の課題
- ヒトでの臨床試験が必要(安全性・有効性の確認)
- NRG1の持続的な作用や最適な投与方法の検討
- インスリン分泌過剰による低血糖リスクの管理
NRG1の研究はまだ初期段階ですが、糖尿病の根本治療につながる可能性があり、今後の発展が期待されています。

膵β細胞の表面存在するErbB4受容体ニューレグリン1が結合し、ErbB4を活性化します。ErbB4が活性化されることで膵β細胞の数が増え、インスリン分泌能力が向上します。
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