日ペHDの研究開発拠点 どのような研究開発を行うのか?ターゲットラインペイントとは何か?

この記事で分かること

  • 研究開発内容:環境負荷低減、高機能化、デジタル技術融合を柱に、次世代の塗料・コーティング技術を開発します。具体的には、自動運転向け特殊塗料、抗菌・抗ウイルス塗料、カーボンニュートラルに貢献する技術などを、オープンイノベーションで推進します。
  • ターゲットラインペイントとは:日本ペイントが開発した自動運転車両向け特殊塗料です。LiDARなどのセンサーが認識するよう設計され、トンネルやGNSSが届かない場所でも車両が安定走行できるよう支援するものです。
  • 抗菌、抗ウイルス塗料とは:「抗菌塗料」は細菌の増殖を抑制し、「抗ウイルス塗料」はウイルスの数を減少させる機能を持つ塗料です。

日ペHDの研究開発拠点

 日本ペイントホールディングス(日ペHD)は2025年7月から国内の研究開発活動の中核拠点となる「東京イノベーションセンター」を本格稼働させることが発表されました。

 同社はこの新しい技術拠点を、今後の成長と革新を牽引する中心的な施設と位置づけています。

一般的な塗料に仕組についてはこちらの記事を。

どんな開発を行うのか

 日ペHDの「東京イノベーションセンター」では、塗料・コーティング技術を核としつつ、社会のニーズや技術の進歩に対応した幅広い分野の研究開発が行われる予定です。具体的な開発テーマとしては、以下のようなものが挙げられます。

1. 環境負荷低減と持続可能性に貢献する技術

  • 海洋環境に配慮した塗料: 防汚剤を含まずに船体の摩擦抵抗を低減し、海洋生物の付着を防ぐ塗料など、環境規制強化に対応した製品開発が挙げられます。
  • カーボンニュートラルに寄与する技術: 自動車塗装工程におけるCO2排出量削減に貢献する技術や、省エネルギー型の塗料・塗装システムに関する研究開発が進められる可能性があります。
  • リサイクルや資源循環に関する技術: 塗料のライフサイクル全体での環境負荷低減を目指し、リサイクル可能な塗料や、再生素材を活用した塗料の開発も考えられます。

2. 高機能・高付加価値な塗料の開発

  • 自動車関連技術:
    • 自動運転向け特殊塗料: LiDARなどのセンサー認識を可能にする「ターゲットラインペイント」のような、自動運転社会に不可欠な技術の開発が継続されます。
    • 次世代の自動車塗装技術: 型内塗装など、より効率的で環境負荷の低い塗装プロセスの開発が進められています。
    • 加飾フィルム: 高い機能性を持つ自動車向け加飾フィルムの開発も行われています。
  • 抗菌・抗ウイルス技術: 感染症対策として需要が高まっている、ウイルスの活性を抑制する光触媒機能を備えた塗料など、衛生的な生活環境に貢献する技術の開発。
  • 高分子材料の強度と構造に関する研究: 塗料の基盤となる高分子材料の特性を詳細に解明し、より高機能な塗料を開発するための基礎研究。
  • 防塵床用塗料など、建材用途の機能性向上: 建築物や構造物の機能性や耐久性を高めるための塗料開発。

3. デジタル技術との融合

  • AI(人工知能)の活用: 塗料の研究開発プロセスにAIを応用し、より効率的な材料探索や性能予測を行うなど、開発スピードの向上を目指します。
  • シミュレーション技術の活用: 分子動力学シミュレーションなどの数理科学的手法を駆使し、塗料の性能や構造を予測・最適化する研究。

4. オープンイノベーションによる新たな価値創造

  • 多様なパートナーとの連携: 大学、研究機関、顧客企業、異業種など、幅広い外部パートナーとの連携を強化し、単独では難しい画期的な技術開発を目指します。

 このように、東京イノベーションセンターでは、従来の塗料技術を深化させるだけでなく、環境、デジタル、新素材といった様々な分野との融合を通じて、社会課題の解決や新たな市場の創出に貢献する開発が行われていく見込みです。

環境負荷低減、高機能化、デジタル技術融合を柱に、次世代の塗料・コーティング技術を開発します。具体的には、自動運転向け特殊塗料、抗菌・抗ウイルス塗料、カーボンニュートラルに貢献する技術などを、オープンイノベーションで推進します。

ターゲットラインペイントとは何か

 ターゲットラインペイントは、日本ペイントグループが開発した、自動運転車両向け特殊塗料です。

主な特徴

  • センサー認識: 自動運転車両に搭載されたLiDAR(ライダー)などのセンサーが、路面に塗装されたこの塗料を認識・追従することで、車両が安定した自動走行を行います。
  • インフラ整備の容易さ: 道路に塗装するだけで自動運転用のインフラを整備できるため、比較的安価な費用で導入やメンテナンスが可能であり、走行ルートの変更も容易です。
  • GNSS(GPSなど)が届きにくい場所での活用: GNSSの信号が届きにくいトンネル内や山間部、ビル街などでも、塗装されたラインを認識して走行を支援できます。
  • 視認性と安全性: 人間の目には路面と同化して見えにくいため、従来の路面標示と誤認する心配がなく、安全面や景観にも配慮されています。しかし、LiDARセンサーは暗色であってもレーザー光を高反射させることができ、認識が可能です。

 この塗料は、大阪・関西万博での自動運転バスの輸送など、様々な場所での実証実験に活用され、自動運転の普及に貢献することが期待されています。

ターゲットラインペイントは、日本ペイントが開発した自動運転車両向け特殊塗料です。LiDARなどのセンサーが認識するよう設計され、トンネルやGNSSが届かない場所でも車両が安定走行できるよう支援します。人間の目には見えにくく、安全と景観に配慮しつつ、低コストでの自動運転インフラ整備に貢献します。

抗菌・抗ウイルス塗料とは何か

 抗菌・抗ウイルス塗料とは、塗膜の表面に付着した細菌やウイルスの増殖を抑制したり、数を減少させたりする機能を持つ塗料のことです。

「抗菌」と「抗ウイルス」の違い

  • 抗菌塗料: 製品の表面に付着した細菌の増殖を抑制する効果を持つ塗料です。菌が住みにくい環境を作ることで、長時間にわたり菌が増えないようにします。
  • 抗ウイルス塗料: 製品の表面に付着したウイルスの数を減少させる効果を持つ塗料です。ウイルス自体は細胞内でしか増殖できませんが、塗膜表面のウイルスを不活化(活動を停止)させます。

主な機能のメカニズム

 これらの塗料には、主に以下のようなメカニズムで機能が発揮されます。

  • 光触媒: 酸化チタンなどの光触媒物質が、光(蛍光灯やLED光を含む)に反応して活性酸素を生成し、菌やウイルスを分解・不活化します。
  • 金属イオン: 銀イオンなど、特定の金属イオンが菌やウイルスの増殖を抑制したり、ウイルスを不活化させたりします。
  • 強アルカリ性: 漆喰(しっくい)塗料のように、主成分が強アルカリ性であることで、菌やウイルスの働きを弱め、増殖しにくい状態にします。

用途

 病院、介護施設、学校、商業施設、ホテル、住宅などの内装壁面、ドアノブ、手すりなど、不特定多数の人が触れる機会の多い場所に広く使用され、接触感染のリスク低減や衛生的な空間づくりに貢献します。また、消臭効果やシックハウス対策としても有効な製品もあります。

「抗菌塗料」は細菌の増殖を抑制し、「抗ウイルス塗料」はウイルスの数を減少させる機能を持つ塗料です。光触媒や金属イオンなどの働きで、病院や学校、住宅などの壁や手すりに使用され、衛生的な環境維持や接触感染リスク低減に貢献します。

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