日本ガイシのNAS電池の製造・販売終了 NAS電池とは何か?製造・販売終了の理由は何か?

この記事で分かること

  • NSA電池とは:日本ガイシが世界で初めて実用化した大規模蓄電池です。ナトリウム(Na)と硫黄(S)を活物質とし、約300℃で稼働し、大容量、長寿命が特長的な電池です。
  • 硫黄が使用される理由:、資源が豊富で安価である点と、ナトリウムとの組み合わせで高いエネルギー密度が得られ、大規模な電力貯蔵に適しているからです。
  • 撤退の理由:部材価格の上昇による製造コストの増加と、リチウムイオン電池など競合製品との競争激化により、事業の収益性が継続的に悪化したためです。

日本ガイシのNAS電池の製造・販売終了

 日本ガイシはNAS(ナトリウム硫黄)電池の製造・販売活動を終了し、同事業から撤退する方針を固めたと発表しました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD316DV0R31C25A0000000/

 NAS電池は、日本ガイシが世界で初めて実用化した大型蓄電システムとして知られており、大容量で長寿命という特長から、再生可能エネルギーの安定化や電力需要の調整などに活用されてきましたが、部材価格の上昇や競争環境の激化もあり、撤退するとされています。

NAS電池とは何か

NAS電池は、「Natrium(ナトリウム)- Sulfur(硫黄)」を活物質として利用した高温作動型の二次電池(充電して繰り返し使える電池)です。

 世界で初めて日本ガイシが実用化に成功したメガワット級(大規模)の電力貯蔵システムとして知られています。(「NAS電池」は日本ガイシの登録商標です。)

仕組みと特徴

項目詳細
活物質負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)を使用
電解質ナトリウムイオンのみを通す特殊なファインセラミックス($\beta$-アルミナ)
作動温度約300℃という高温で作動する(ヒーターで加温・保温が必要)
充放電の原理300℃の高温下で、液体のナトリウムと硫黄が化学反応を起こし、ナトリウムイオンがセラミックスを通過して移動することで充放電を行います。

メリット(強み)

  • 大容量・高エネルギー密度:鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズで、大規模な電力貯蔵に適しています。
  • 長寿命:15年以上の長期耐久性があり、充放電サイクル回数も多いです。
  • 高効率:充放電効率が比較的高いです。
  • 材料の豊富さ:主要な材料であるナトリウムや硫黄は資源が豊富で安価です。

主な用途

 NAS電池の最大の特長である「大容量かつ長時間の安定した電力供給」を活かし、主に以下のような大規模な用途で導入されてきました。

  1. 再生可能エネルギーの出力安定化
    • 太陽光発電や風力発電など、天候によって出力が変動しやすい電源と組み合わせ、発電量を平準化・安定化させる。
  2. 電力負荷平準化(ピークシフト)
    • 電力需要の少ない夜間に充電し、需要の多い昼間に放電することで、電力コストの削減や電力系統の安定化に貢献する。
  3. 非常用・瞬時電圧低下対策(バックアップ電源)
    • 工場や重要施設において、停電時や落雷による瞬時電圧低下(瞬低)が発生した際のバックアップ電源として利用する。

 日本ガイシが事業から撤退する主な理由として、部材価格の上昇やリチウムイオン電池などとの競争激化が挙げられていますが、NAS電池が電力インフラの分野で果たしてきた役割は大きいと言えます。

日本ガイシが世界で初めて実用化した大規模蓄電池です。ナトリウム(Na)と硫黄(S)を活物質とし、約300℃で稼働します。大容量、長寿命が特長で、再生可能エネルギーの安定化や電力負荷平準化に用いられます。

硫黄が使用される理由は何か

 NAS電池(ナトリウム硫黄電池)に硫黄(S)が使用される主な理由は、電池の高い性能資源的な優位性にあります。

1. 高エネルギー密度の実現

 硫黄は、負極のナトリウム(Na)と組み合わされた際に、非常に高い理論的なエネルギー密度(単位質量あたりに蓄えられるエネルギー量)をもたらします。これにより、同じ容量を持つ鉛蓄電池などと比べて、大幅にコンパクトな蓄電池システムを構築できます。

2. 資源の豊富さと低コスト

 硫黄は地球上に資源が豊富に存在し、安価に入手できる物質です。大規模な電力貯蔵システムとして量産・普及させる上で、材料調達の安定性とコスト競争力は極めて重要であり、この点が採用の大きな理由となっています。

3. 正極活物質としての役割

 NAS電池では、硫黄は正極の活物質として使用されます。

  • 放電時:負極から移動してきたナトリウムイオンと、外部回路から流れてきた電子が硫黄と反応し、多硫化ナトリウムを生成します。この化学反応を通じて電気が取り出されます。
  • 作動温度:作動温度である約300℃では、硫黄もナトリウムも液体となるため、電極での反応がスムーズに進行し、高い電流を取り出すことが可能になります。

硫黄がNAS電池に使用される主な理由は、資源が豊富で安価である点と、ナトリウムとの組み合わせで高いエネルギー密度が得られ、大規模な電力貯蔵に適しているからです。

撤退の理由は何か

 日本ガイシのNAS電池事業撤退の主な理由は、以下の事業環境の悪化によるものです。

撤退の主な理由

  1. 部材価格(コスト)の上昇
    • 原材料や部品の価格が高騰したことで、製造コストが上昇し、収益性が悪化しました。
  2. 競争環境の激化
    • 世界的にリチウムイオン電池などの競合する蓄電技術が進化し、価格競争が激しくなりました。NAS電池はその高い性能にもかかわらず、競合製品に対してコスト面での優位性を保つことが難しくなりました。

これらの要因により、NAS電池事業の収益性が持続的に悪化したことが、世界初の技術を断念する決定的な背景となりました。

撤退の主な理由は、部材価格の上昇による製造コストの増加と、リチウムイオン電池など競合製品との競争激化により、事業の収益性が継続的に悪化したためです。

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