日本製紙による針葉樹チップの生産・輸出企業の買収 針葉樹チップ事業とは何か?なぜ日本製紙が買収するのか?

この記事で分かること

  • 針葉樹チップ事業とは:針葉樹を細かく砕いた木片を生産・販売する事業です。繊維が長く丈夫なため、段ボールや封筒など「強度の必要な紙」の原料として不可欠です。近年はバイオマス発電の燃料としても需要が高まっています。
  • マルスミ・ワンガレイの特長:ニュージーランド北島を拠点に、高品質なラジアータパイン(針葉樹)のチップを年間約22万トン生産・輸出しています。原木調達から加工、港への積み出しまで一貫した物流網を持ち、FSC認証も取得した信頼性の高い輸出拠点です。
  • なぜ日本製紙が買収するのか:段ボール等の原料となる針葉樹チップの安定確保が主目的です。世界的な包装材需要の高まりを受け、自社グループで生産・輸出拠点を押さえることで、市況に左右されない供給体制を構築し、アジア市場への外貨獲得も狙います。

日本製紙による針葉樹チップの生産・輸出企業の買収

 日本製紙は2026年2月6日、NZで針葉樹チップの生産・輸出を行う「マルスミ・ワンガレイ(MWC)」を、オーストラリアの木材関連企業と共同で買収することを発表しました。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152R30V10C26A2000000/

 今回の買収により、日本製紙はオセアニア地域での森林・木材チェーンをさらに強固にする構えです。

針葉樹チップ事業とは何か

 「針葉樹チップ事業」とは、「針葉樹(マツ、スギ、ヒノキなど)を細かく砕いた木片(チップ)を生産し、それを紙の原料やエネルギー源として販売するビジネス」のことです。


1. チップにする理由

 大きな丸太のままだと、紙を作るための化学処理がしにくく、輸送効率も良くありません。そのため、工場で専用の機械(チッパー)を使って、数センチ程度の薄い破片(チップ)に加工します。

2. 針葉樹チップの主な用途

 針葉樹の繊維には「太くて長い」という特徴があります。これが製品に独自の強度を与えます。

  • 紙の原料(パルプ用):
    • 梱包材・段ボール: 繊維が長いため、破れにくい丈夫な紙になります。
    • 封筒・紙袋: 重いものを入れても耐えられる強度が求められる製品に使われます。
  • バイオマス発電:
    • 石炭などの化石燃料の代わりに、木材チップを燃やして電気を作ります。カーボンニュートラルなエネルギー源として注目されています。
  • 建材(パーティクルボード):
    • チップを接着剤で固めて、家具や住宅の床・壁に使われる板を作ります。

3. 広葉樹チップとの違い

 製紙業界では、用途に合わせて「針葉樹」と「広葉樹」を使い分けます。

特徴針葉樹チップ(マツ、モミなど)広葉樹チップ(ユーカリ、アカシアなど)
繊維の長さ長い(約3〜5mm)短い(約1mm)
紙の仕上がり丈夫で破れにくい表面がなめらかで印刷しやすい
主な製品段ボール、包装紙、封筒コピー用紙、ノート、ティッシュ

4. 事業としての流れ(サプライチェーン)

  1. 集荷: 森林から伐採された丸太(主に建築用に向かない低質材や間伐材)を集める。
  2. 加工: 自社工場で樹皮を剥き、一定のサイズに砕いて「チップ」にする。
  3. 品質管理: 水分量やサイズを均一に整える(これが紙の品質に直結します)。
  4. 輸出・販売: 専用の船(チップ船)で日本やアジアの製紙工場へ運ぶ。

針葉樹(マツ等)を細かく砕いた木片を生産・販売する事業です。繊維が長く丈夫なため、段ボールや封筒など「強度の必要な紙」の原料として不可欠です。近年はバイオマス発電の燃料としても需要が高まっています。

なぜ針葉樹チップが壊れにくのか

 針葉樹チップが「壊れにくい(=強度の高い紙が作れる)」最大の理由は、その繊維(トラキード)の長さと柔軟性にあります。長い糸で編んだ布の方が、短い糸で編んだ布よりも破れにくいことと同じ理屈です。

1. 繊維が長い(絡まりやすい)

 針葉樹の繊維は、広葉樹に比べて約3倍〜5倍の長さがあります。

  • 針葉樹: 約3〜5mm
  • 広葉樹: 約1mm

 繊維が長いと、紙を漉(す)く工程で繊維同士が複雑に、かつ深く絡み合います。この「絡まりの多さ」が、引っ張る力に対する強さ(引張強度)を生み出します。

2. 繊維が太く、柔軟性がある

 針葉樹の繊維はただ長いだけでなく、細胞壁の構造上、適度な厚みと柔軟性を持っています。

  • 乾燥して紙になる際、繊維がリボンのように平らにつぶれやすく、繊維同士の接触面積が大きくなります。
  • 接する面積が増えることで、繊維を接着させる「水素結合」がより強力に働き、破れにくい構造になります。

3. 実生活での例

 この「壊れにくさ」を活かして、針葉樹チップは以下のような「負荷がかかる紙」に優先的に使われます。

  • 段ボール: 重い荷物を運ぶための圧縮強度と衝撃への耐性。
  • セメント袋・米袋: 中身が重く、放り投げても破れないタフさ。
  • 封筒: 書類を入れても端から裂けない粘り強さ。

針葉樹は繊維が約3〜5mmと長く、紙を漉く際に繊維同士が複雑に深く絡み合うため、引っ張る力に強い構造になります。また、繊維が平たく潰れやすく、接着面積が増えることで強力に結合し、破れにくい紙が作れます。

マルスミ・ワンガレイの特徴は何か

 マルスミ・ワンガレイ(MWC社)の主な特徴は、以下の3点に集約されます。

1. ニュージーランド屈指の「針葉樹チップ」拠点

 ニュージーランド北島のワンガレイ地区に拠点を置き、高品質なラジアータパイン(針葉樹)のチップ生産に特化しています。同国は計画的な植林が盛んで、安定した資源背景を持っています。

2. 輸出に最適化した一貫体制

 山林からの原木調達、自社工場でのチップ加工、そして近隣の港からの積み出しまで、輸出に向けた効率的なサプライチェーンが確立されています。2025年実績で年間約22万トンという安定した供給能力を誇ります。

3. 日本企業による長年の運営基盤

 もともとは日本の丸住製紙と丸紅が出資して設立された会社であり、日本向けの品質基準や納期管理のノウハウが蓄積されています。この信頼性の高い基盤があったからこそ、今回、日本製紙が買収の対象としたと言えます。


 日本品質の針葉樹チップを安定して海外へ送り出せる、ニュージーランド北島の戦略的輸出拠点といえます。

ニュージーランド北島を拠点に、高品質なラジアータパイン(針葉樹)のチップを年間約22万トン生産・輸出しています。原木調達から加工、港への積み出しまで一貫した物流網を持ち、FSC認証も取得した信頼性の高い輸出拠点です。

なぜ日本製紙が買収するのか

 日本製紙がニュージーランドのマルスミ・ワンガレイ(MWC)を買収する主な理由は、以下の3点に集約されます。

1. 針葉樹資源の安定確保

 世界的に包装資材(段ボールなど)の需要が高まる中、強度の高い紙を作るのに欠かせない「針葉樹チップ」の奪い合いが起きています。

 自社グループで生産拠点を持つことで、外部市況に左右されず、良質な原料を安定的に日本へ供給する体制を固める狙いがあります。

2. アジア市場への販売拡大

 共同買収相手であるオーストラリアのペンターク社は、木材の物流や販売網に強みを持っています。

 日本製紙のチップ生産ノウハウとペンターク社のネットワークを組み合わせ、日本国内だけでなく、成長著しい中国や東南アジアなどのアジア圏へ販路を広げる「外貨獲得」の成長戦略の一環です。

3. 森林資源チェーンの強化

 日本製紙はすでにオーストラリアやブラジルで広葉樹の植林・チップ事業を展開していますが、今回の買収により「針葉樹」の拠点も自社ポートフォリオに加わることになります。

 これにより、広葉樹と針葉樹の両方で、植林から加工・輸出まで一貫して管理できる世界規模のサプライチェーンがさらに強固になります。


世界的な段ボール需要増を受け、強度の高い紙の原料となる「針葉樹チップ」を安定確保するのが主目的です。共同買収相手の物流網を活用し、日本だけでなくアジア全域への外貨獲得を目指す成長戦略の一環でもあります。

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