ノリタケの175℃耐熱の導電性接着剤 導電性接着剤とは何か?なぜ耐熱性が必要なのか?

この記事で分かること

  • 導電性接着剤とは:樹脂に銀などの金属粒子を分散させ、「接着」と「通電」を同時に行う材料です。はんだより低温で接合できるため熱ダメージを抑えられ、樹脂の柔軟性により振動や熱膨張の歪みを吸収できるのが大きな特徴です。
  • なぜ耐熱性が必要なのか:EVの普及に伴い、SiC(炭化ケイ素)などの次世代パワー半導体は200℃近い高温下で動作します。また、周辺部品との一体化により熱がこもりやすいため、過酷な環境でも剥離や断線が起きない耐熱性が不可欠です。
  • 耐熱性を向上させた方法:ノリタケは独自の「高耐熱エポキシ樹脂」を開発し、高温下での分解や酸化を抑制しました。また、フィラーの形状や密度を精密に制御することで、樹脂の熱膨張による導電パスの分断を防ぎ、175℃での安定動作を実現しました。

ノリタケの175℃耐熱の導電性接着剤

 ノリタケが車載電子部品向けに175℃耐熱の導電性接着剤を開発しています。

 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00775702

 独自の樹脂技術で高温下でも導電性と強度を維持し、熱応力を緩和。SiCパワー半導体等の次世代デバイスの小型化・高信頼性化に貢献できるとしています。

導電性接着剤とは何か

 導電性接着剤(Conductive Adhesive)は、「電気を通す機能」「物をくっつける機能」を併せ持った機能性材料です。

 主に樹脂(エポキシなど)の中に、電気を通すための微細な金属粒子(フィラー)を混ぜ込んで作られます。


1. 仕組みと構成

 接着剤のベースとなる樹脂が接着強度を保ち、内部に分散された導電性フィラー同士が接触することで、電気が流れる経路(導電ネットワーク)を形成します。

  • 樹脂成分(バインダー): 主にエポキシ樹脂などが使われ、接着性や耐熱性、機械的強度を担います。
  • 導電フィラー: 銀(Ag)が最も一般的ですが、コストや用途に応じて銅(Cu)、ニッケル(Ni)、カーボンなども使用されます。

2. 主な用途とメリット

 従来の「はんだ付け」に代わる、あるいは補完する技術として注目されています。

  • 熱に弱い部品の接合: はんだ(約220℃〜)よりも低い温度(常温〜150℃程度)で硬化させることができるため、耐熱性の低いプラスチック基板や部品に使用可能です。
  • 微細な配線: はんだよりも微細な塗布が可能で、スマートフォンのカメラモジュールやディスプレイの配線など、省スペース化に貢献します。
  • 衝撃吸収: 金属であるはんだに比べて樹脂は弾力があるため、振動や熱膨張によるひずみを吸収しやすい特性があります。

導電性接着剤は、樹脂に銀などの金属粒子を混合し、接着と通電を同時に実現する材料です。はんだより低温で接合でき、部材への熱ダメージを抑制。樹脂の柔軟性で振動や熱膨張の歪みを吸収し、電子部品の信頼性を高めます。

なぜ耐熱性を上げるのが難しいのか

 導電性接着剤の耐熱性を向上させるのが難しい理由は、主に「ベース樹脂の熱分解」「熱膨張による導電経路の分断」という2つの相反する課題を同時に解決する必要があるためです。


難しさの主な要因

  1. 樹脂(バインダー)の限界: 接着剤の主成分であるエポキシなどの有機樹脂は、150℃〜200℃を超えると酸化や熱分解が始まり、強度が急激に低下します。
  2. 熱膨張の差(CTEギャップ): 樹脂は金属(フィラー)よりも熱で膨らみやすいため、高温になると樹脂が膨張してフィラー同士の接触が離れ、電気抵抗が急増してしまいます。
  3. トレードオフの関係: 耐熱性を高めるために樹脂を硬く(架橋密度を高く)すると、今度は「もろく」なり、冷熱サイクル時の振動や衝撃で割れやすくなります。

主な要因は、ベースとなる有機樹脂が高温で酸化・分解しやすく、接着強度が低下することです。また、樹脂の熱膨張により導電性フィラーの接触が断たれ抵抗が増大するため、耐熱性と柔軟性の両立が極めて困難です。

どのように耐熱性を上げたのか

 ノリタケが導電性接着剤の耐熱性を175℃まで引き上げた手法は、主に「特殊エポキシ樹脂の開発」「フィラー(金属粒子)の充填構造の最適化」の2点に集約されます。

耐熱性向上の主要技術

  1. 高耐熱エポキシ樹脂の設計:分子構造の中に熱分解しにくい強固な結合(架橋密度)を取り入れつつ、高温下での酸化劣化を抑制する配合を新開発しました。これにより、175℃という過酷な環境でも樹脂が軟化・分解せず、接着強度を維持できます。
  2. 熱膨張の抑制(低CTE化):樹脂自体の熱膨張を抑えるとともに、銀フィラーの形状や粒径分布を精密に制御しました。高温になっても樹脂とフィラーが「離れにくい」構造を作ることで、導電パス(電気の通り道)が途切れるのを防いでいます。
  3. 応力緩和特性の両立:通常、耐熱性を上げると樹脂は硬く脆くなりますが、ノリタケは独自の樹脂配合技術により「硬さ」と「しなやかさ」を両立。ヒートサイクル時の熱膨張差による剥離を抑制しています。

独自の高耐熱エポキシ樹脂を開発し、高温下での熱分解と酸化を抑制。フィラーの充填構造を精密に制御することで、樹脂の熱膨張による導電経路の分断を防ぎ、175℃でも安定した接着強度と導電性を実現しました。

耐熱性の向上はなぜ必要か

 車載電子部品、特にパワー半導体の進化に伴い、動作環境が劇的に過酷化していることが最大の理由です。

耐熱性向上が求められる背景

  1. 次世代半導体(SiC/GaN)の普及:従来のシリコン(Si)半導体に比べ、SiC(炭化ケイ素)などは200℃近い高温でも効率よく動作できます。デバイス側が高温に耐えられるようになったため、それをつなぐ接着剤(接合材)にも同等以上の耐熱性が必須となりました。
  2. 機電一体化(e-Axleなど)による熱負荷:電気自動車(EV)では、モーター、インバーター、ギアを一体化して小型化する傾向があります。冷却装置から離れた位置や発熱源の直近に電子部品が配置されるため、周囲温度が150℃〜175℃に達するケースが増えています。
  3. はんだ代替による信頼性確保:鉛フリーはんだは硬くて脆いため、激しい温度変化(熱サイクル)でクラック(ひび)が入りやすい欠点があります。耐熱性の高い導電性接着剤は、樹脂の弾力で熱応力を逃がしつつ、高温下での接続維持を可能にします。

EVのインバーター等に採用されるSiCパワー半導体は、200℃近い高温下で動作可能です。これに伴い、接合材にも高耐熱性が求められます。耐熱向上により、過酷な熱環境下でも故障を防ぎ、電子部品の小型化と長寿命化を両立できます。

どのように微細な塗布を行うのか

 導電性接着剤の微細な塗布は、主に「ジェットディスペンス」「スクリーン印刷」といった精密制御技術によって実現されています。

微細塗布の主な手法

  1. ジェットディスペンサー(非接触式):ノズルから微細な液滴を高速で飛ばして塗布します。ノズルを上下させる時間が不要で、複雑な形状や凹凸のある基板上にも、0.1mm以下の極小ドットを正確に配置できます。
  2. スクリーン印刷 / 版転写:微細な穴が開いたメッシュ(版)を使い、ヘラ(スキージ)で押し出すことで一括塗布します。ノリタケのようなセラミックス基板に強いメーカーは、この高精細な印刷技術を応用し、狭い電極間にも正確に塗布します。
  3. ニードルディスペンス(接触式):非常に細い針の先から、空気圧などで接着剤を押し出します。接着剤の粘度(ドロドロ具合)を一定に保つ温度管理が重要で、糸引きを防ぐ特殊なノズルが使われます。

微細化を支える材料技術

 塗布装置だけでなく、材料側の工夫も不可欠です。

  • フィラーの小径化: 詰まりを防ぐため、金属粒子のサイズを数ミクロン(μm)単位で均一に制御しています。
  • チクソ性の制御: 「力を加えるとさらさらに、止めるとピタッと固まる」性質(チクソ性)を持たせることで、塗布後の形状崩れ(ダレ)を防ぎます。

高速で液滴を飛ばすジェットディスペンスや高精細スクリーン印刷を用い、ミクロン単位の制御で塗布します。材料側でも金属粒子の小径化や、塗布後の形状を保つ粘性設計(チクソ性)により、微細配線を可能にしています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました