この記事で分かること
・画像認識技術に力を入れる理由:社会インフラ・サービスの高度化、法人向けAIソリューションの提供、IoB・スマートシティ戦略、そして通信+AIの融合による新ビジネス創出という多面的な理由から、AI画像認識に非常に積極的です。
・NTTの画像認識の取り組み:ユーザーが独自の画像データを用いてAIモデルを作成できる画像認識ツールであるDeeptectorや車体に複数のセンサーを搭載し、走行しながら周囲の三次元空間情報を高精度かつ効率的に取得するシステムであるモービルマッピングシステムに取り組んでいます。
NTTの新しいAIによる画像認識技術
NTTが粗い画像に写った被写体を人工知能(AI)が正しく認識できるようにする技術を開発したことを発表しています。

従来技術に比べて追加のデータを必要としない利点があり、画像のほか、音声やセンシングのデータにも対応しており、AIの使用範囲の拡大が見込めるとのことです。
NTTがAIによる画像認識技術に積極的に取り組んでいる理由
NTTがAIによる画像認識技術に積極的に取り組んでいる理由は、大きく分けて以下のような背景や戦略的な目的があります
1. 社会インフラの維持管理の効率化
NTTは全国に通信インフラ(電話線、基地局、地中ケーブルなど)を保有しており、これらの設備を維持・管理するために膨大な作業とコストが発生しています。そこで、AI画像認識を活用することで:
- 設備の劣化や損傷を自動検出(例:ひび割れ、腐食、断線)
- 点検の省人化・効率化
- 作業員の安全性向上(高所・狭所での作業が減る)
を実現しようとしています。
2. 製造業や点検業務へのソリューション提供(Deeptector® など)
NTTグループは通信業だけでなく、法人向けのICTソリューション提供も展開しており、AI画像認識技術は以下のような顧客ニーズに応えるために活用されています:
- 外観検査(製品の傷・異常の検出)
- 建設・土木現場での異常検出
- 医療や農業への応用(病変部位、病気の葉の検出など)
Deeptector®のようなツールを提供することで、NTTは“AI画像認識の民主化”を目指しています。
3. 人流・行動データの可視化(IoBやスマートシティ)
画像認識技術を使えば、人の動きや密集状況、物体の配置などをリアルタイムに解析できます。これは以下のような用途に直結します:
- スマートシティ:混雑予測、防犯対策、交通最適化
- 行動分析:オフィスや商業施設の人流解析
- 防災・監視:災害時の人の流れや異常行動の把握
NTTは「行動データを資産に変える」ことを長期ビジョンのひとつに掲げています。
4. 5G・IoTとの連携で“リアルタイムな現場AI”を実現
通信会社としての強みを活かし、AIと5GやIoTデバイス(カメラ、センサー)を組み合わせて:
- 現場ですぐに異常を検知
- ネットワークを介してクラウドや現場に結果を通知
- 自律的な判断・アクションにつなげる(DXの本丸)
といった、リアルタイム&低遅延なAI活用を実現しようとしています。
5. 技術立国としてのリーダーシップ維持
NTTは日本の研究開発をリードする企業のひとつであり、AI分野においても国際競争力を維持・強化す る必要があります。
画像認識は、音声・言語・データ処理と並ぶ重要なAI領域であり、その強化は研究開発戦略上の柱でもあります。

NTTは自社の社会インフラ・サービスの高度化、法人向けAIソリューションの提供、IoB・スマートシティ戦略、そして通信+AIの融合による新ビジネス創出という多面的な理由から、AI画像認識に非常に積極的です。
NTTはAIによる画像認識分野でどんな研究を行っているのか
NTTは、AIによる画像認識技術の精度向上に向けて、さまざまな新手法を開発・導入しています。これらの取り組みは、社会インフラの点検や製造業の検品作業など、幅広い分野で活用されています。
主な取り組みと技術
1. Deeptector®:現場主導の画像認識AIツール
NTTコムウェアが提供する「Deeptector®」は、ユーザーが独自の画像データを用いてAIモデルを作成できる画像認識ツールです。
専門的な知識がなくても、直感的なGUI操作で学習や判定が可能で、製造業の検品や医療現場などでの活用が進んでいます。また、API連携や電気信号出力にも対応しており、既存システムとの統合も容易です。
2. 社会インフラ点検へのAI活用
NTTは、ドローンやMMS(モービルマッピングシステム)で取得した画像をAIで解析し、道路やトンネル、ガードレールなどのインフラ設備の劣化や損傷を自動検出する技術を開発しています。
これにより、点検作業の効率化や精度向上が期待されています。
3. IoB(Internet of Behavior)との連携
NTTは、IoB(Internet of Behavior)と画像認識AI技術を組み合わせることで、個人の行動データを解析し、より詳細な情報や洞察を得る取り組みも進めています。
これにより、健康管理やマーケティング、都市のスマート化など、さまざまな分野での応用が期待されています。
deeptecterとは何か
NTTコムウェアが開発した画像認識AI「Deeptector®(ディープテクター)」は、人間の目による判定作業をAIで代替・補完することで、業務の効率化と品質の安定化を実現するソリューションです。
主な特徴
- 直感的な操作性:専門知識がなくても、画像データを用いて簡単に学習モデルを作成できます。
- 柔軟な導入形態:クラウド版とインストール版があり、利用環境に応じて選択可能です。
- API連携:外部システムとの連携が容易で、既存の業務フローに組み込みやすい設計です。
- 少量データでの学習:良品画像のみを用いた学習で、不良品の検出が可能です。
活用事例
- 製造業:製品の外観検査において、検査基準のばらつきを抑え、品質の均一化を図ります。
- インフラ点検:ドローンやMMSで取得した画像を解析し、道路やトンネルなどの劣化や損傷を自動検出します。
- 監視業務:不審者や不適切な画像の検出など、監視・検閲業務の効率化に貢献します。

deeptecterは人間の目による判定作業をAIで代替・補完するシステムで、外観検査、インフラ点検などでの活用が期待される業務の効率化と品質の安定化を実現するソリューションです。
MMS(モービルマッピングシステム)とは何か
MMS(モービルマッピングシステム、Mobile Mapping System)は、車両などの移動体に複数のセンサー(GPS、LiDAR、カメラなど)を搭載し、走行しながら周囲の三次元空間情報を高精度かつ効率的に取得するシステムです。
【主な構成要素】
- GPS(GNSS):位置情報を取得
- IMU(慣性計測装置):移動体の姿勢・加速度を計測
- LiDAR(レーザー測距装置):周囲の立体構造を3D点群データとして取得
- カメラ:映像・写真でビジュアル情報を取得
【主な用途】
- 社会インフラ点検:道路、橋梁、トンネルなどの劣化を可視化し、点検を効率化
- 都市計測・地図作成:3Dマップ、スマートシティの基盤データ生成
- 建設・土木:施工前後の状況記録や設計データとの比較
- 自動運転:高精度3D地図の作成に利用
【NTTの活用例】
NTTではMMSで取得したデータにAI(たとえばDeeptector)を組み合わせて、道路のひび割れやガードレールの損傷などを自動的に検出・評価する技術を開発中です。

モービルマッピングシステムとは、車体に複数のセンサーを搭載し、走行しながら周囲の三次元空間情報を高精度かつ効率的に取得するシステムです。
首魁インフラの点検や都市計測、建設、土木、自動運転などの分野での応用が検討されています。
IOB(インターネット・オブ・ビヘイビア)とは何か
IOBとは Internet of Behavior(インターネット・オブ・ビヘイビア) の略で、人間の行動データを収集・分析し、その行動や意思決定に影響を与える技術や概念を指します。IoT(モノのインターネット)の次の段階とされ、近年企業や行政の間でも注目されています。
【IOBの仕組み】
IOBでは、以下のような行動データを取得・分析します:
- ウェアラブル端末(スマートウォッチ等)の生体情報
- スマホのGPSやアプリの利用履歴
- SNS投稿や検索履歴
- 監視カメラ・画像認識から得た動作パターン
- 購買履歴やWeb閲覧履歴
これらをAIで解析し、行動傾向や心理状態を推定することで、マーケティング、健康管理、安全管理などに活用します。
【活用例】
- マーケティング:購買パターンに基づくパーソナライズ広告の表示
- 健康管理:スマートウォッチのデータからストレス状態を検知
- 業務最適化:社員の動線や作業ログを分析し生産性向上
- 防犯・安全対策:監視カメラ映像+AIで不審行動を検出
【NTTの取り組み】
NTTは、IOBを画像認識AI(Deeptectorなど)やセンサー技術と組み合わせることで、人やモノの動きをリアルタイムで可視化・解析し、「行動に基づく未来予測」やスマートシティ構築などを目指しています。

IOB(インターネット・オブ・ビヘイビア)とは、人間の行動データを収集・分析し、行動傾向や心理状態を推定することで、マーケティング、健康管理、安全管理などに活用するものです。
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