この記事で分かること
- BioNeMoとは:NVIDIAが提供する創薬特化型の生成AIプラットフォームです。タンパク質や化合物の構造予測・生成を行うAIモデルをクラウド経由で提供し、従来数年かかっていた新薬候補の探索をデジタル上で高速化・効率化します。
- エヌビディアが製薬業界に力を入れる理由:製薬は10年・数千億円を要する「ハイリスク・低効率」な業界であり、AIによる期間短縮と成功率向上のニーズが極めて高いためです。
- イーライリリーとの提携内容:NVIDIAとイーライリリーは、約10億ドルを投じて共同AIラボを設立しました。最新のGPUと創薬AI「BioNeMo」を活用し、実験の自動化やデジタルツインによる製造の効率化を推進することで、次世代の新薬開発スピードを劇的に高めることを目指しています。
エヌビディアの製薬業界への攻勢
エヌビディア(NVIDIA)は、GPU(画像処理半導体)の提供にとどまらず、創薬のプロセスそのものをAIで再定義する「プラットフォーム・プロバイダー」として、製薬業界への攻勢を強めています。
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-12/T8RCDST9NJLT00?srnd=jp-technology
創薬専用の生成AIプラットフォーム「BioNeMo」の提供やイーライリリーとの提携などを通じ、成功確率が極めて低いといわれる製薬業での変革を起こそうとしています。
BioNeMoとは何か
BioNeMo(バイオ・ニーモ)は、NVIDIAが提供する「創薬(薬の開発)に特化した生成AIプラットフォーム」です。
ChatGPTが「言葉」を扱うように、「タンパク質、化合物(薬の種)、DNA、RNA」といった生物学的データをAIで読み解き、生成するための土台です。
BioNeMoは主に以下の3つのコンポーネントで構成されており、研究者がAIを一から作る手間を省き、すぐに研究に活用できるように設計されています。
BioNeMoを構成する3つの要素
- BioNeMo Framework(学習用)
- 役割: 独自のデータを使ってAIモデルを「訓練」したり「微調整(ファインチューニング)」したりするためのツール群。
- 特徴: 数十億個のパラメータを持つ巨大なモデルでも、複数のGPUを使って高速に学習させることができます。
- BioNeMo NIM(推論用マイクロサービス)
- 役割: 学習済みのAIモデルを、実際の現場で「使う(推論)」ための最適化されたパッケージ。
- 特徴: コンテナ化(NIM)されているため、クラウドでも自社サーバーでも、インストールしてすぐにAPIとして利用可能です。従来のモデルより数倍高速に動作します。
- BioNeMo Blueprints(ワークフロー)
- 役割: 特定の目的(例:新しいタンパク質の設計、標的への結合予測)を達成するための「AIの組み合わせレシピ」。
- 特徴: 複数のAIモデルをどう繋げればよいかというベストプラクティスが提示されており、開発のショートカットが可能です。
BioNeMoができること(具体例)
BioNeMoを使うことで、従来は「数年」かかっていた実験プロセスが、コンピュータ上での「数分〜数日」のシミュレーションに置き換わります。
- タンパク質の構造予測: アミノ酸の配列から、そのタンパク質がどんな形になるかを予測します(AlphaFold2の高速版などが含まれます)。
- 新しい薬(化合物)の生成: 標的となる病気の原因物質にぴったりとはまる、新しい分子の形をAIが提案します。
- ゲノム解析: DNAやRNAの配列から、病気に関連する変異や遺伝子の働きを読み解きます。
なぜ重要なのか
製薬業界では、1つの新薬を作るのに10年以上の歳月と数千億円の費用がかかると言われています。BioNeMoはこの「博打」に近いプロセスを、デジタル上で予測可能な科学へと変え、成功確率を飛躍的に高めるための武器となっています。

BioNeMoは、NVIDIAが提供する創薬特化型の生成AIプラットフォームです。タンパク質や化合物の構造予測・生成を行うAIモデルをクラウド経由で提供し、従来数年かかっていた新薬候補の探索をデジタル上で高速化・効率化します。
なぜ製薬業に力を入れるのか
NVIDIAが製薬(ヘルスケア)分野に注力する理由は、主に「市場の巨大さ」、「計算資源の圧倒的な必要性」、そして「創薬プロセスの抜本的な改革」という3つのポイントに集約されます。
1. 10兆ドル規模の巨大市場
ヘルスケア全体は世界で約10兆ドル(約1,500兆円)という、テクノロジー企業にとって最大級のフロンティアです。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、将来的にAIによるヘルスケアビジネスは「NVIDIAがもう1社できるほどの規模」になると期待を寄せています。
2. 「博打」を「データ科学」に変える
従来の創薬は、1つの薬を作るのに10年以上の歳月と3,000億円以上の費用がかかり、成功率は0.01%以下という、極めて効率の悪いビジネスでした。
- NVIDIAの狙い: 物理的な実験(試験管)の前に、デジタル空間(AI)で数億通りのシミュレーションを事前に行うことで、**「期間の短縮」「コスト削減」「成功率の向上」**を同時に狙っています。
- 具体例: 実際にInsilico Medicine社は、NVIDIAの技術を活用し、従来の3分の1の期間と10分の1のコストで新薬の治験段階まで到達しました。
3. 「生物学の言語」がAIと相性が良い
NVIDIAは、DNAの配列(A, T, C, G)やタンパク質のアミノ酸配列を「生命の言語」と捉えています。
- ChatGPTが「言葉」の次に来る単語を予測するように、AIは「次にくるアミノ酸」を予測して新しいタンパク質を設計できます。
- この解析には膨大なGPUの計算能力が必要であり、NVIDIAにとって「自社製品が最も必要とされる分野」なのです。
4. 収益源の多角化
現在、NVIDIAの収益はビッグテック企業(Microsoft, Google等)のデータセンター需要に大きく依存しています。製薬大手(イーライリリーやロシュなど)との直接的なパートナーシップを強化することで、特定の顧客層に依存しない安定した収益基盤を構築しようとしています。

製薬は10年・数千億円を要する「ハイリスク・低効率」な業界であり、AIによる期間短縮と成功率向上のニーズが極めて高いからです。NVIDIAは「生命の言語」を読み解く巨大な計算需要を、自社のGPUと創薬AIで独占し、10兆ドル規模の巨大市場を狙っています。
イーライリリーとの投資内容は何か
エヌビディア(NVIDIA)とイーライリリー(Eli Lilly)の提携は、2025年から2026年にかけて急加速しており、主に「10億ドル規模の共同AIラボの設立」と「製薬業界最大級のAIスーパーコンピューターの構築」が柱となっています。
1. 10億ドル規模の「共同イノベーションAIラボ」
2026年1月、両社は10億ドル(約1,500億円以上)を投じて、AI時代の創薬を再構築するための共同ラボを発表しました。
- 目的: ロボティクスとAIを融合させ、現在人間が手作業で行っている実験やデータ解析を自動化・高速化します。
- 基盤技術: NVIDIAの創薬プラットフォーム「BioNeMo」と、最新のGPUアーキテクチャ(Vera Rubin等)が採用されます。
2. 世界最大級の「AIファクトリー」の構築
イ ーライリリーは、NVIDIAの最新GPU「Blackwell」を搭載したDGX SuperPODを導入し、製薬業界で最も強力なAIスパコン(AIファクトリー)を運用しています。
- 規模: 1,000個以上のGPUを搭載。
- 効果: 分子構造の解析を数週間単位に短縮し、新薬の設計・構築・開発の方法を根本から変えることを目指しています。
3. イーライリリーの巨大投資計画との連動
この提携は、イーライリリーが進めている500億ドル規模の製造・研究開発投資計画の一部に組み込まれています。
- インディアナ州に建設予定の「Lilly Medicine Foundry」(45億ドル規模の研究施設)などで、NVIDIAの「デジタルツイン(仮想空間でのシミュレーション)」技術が活用される見込みです。
イーライリリーは「AI対応の製薬企業」として世界トップクラスの評価を得ており、NVIDIAの計算力を借りることで、「新薬開発のスピードを上げ、製造コストを下げる」という、デジタル時代の製薬プラットフォームの構築を急いでいます。

NVIDIAとイーライリリーは、約10億ドルを投じて共同AIラボを設立しました。最新のGPUと創薬AI「BioNeMo」を活用し、実験の自動化やデジタルツインによる製造の効率化を推進することで、次世代の新薬開発スピードを劇的に高めることを目指しています。

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