この記事で分かること
- 医薬品精製用シリカゲルとは:医薬品の有効成分を不純物から分ける「超高性能なふるい」です。筒に詰めた微細なシリカ粒子の間を液体が通る際、成分ごとの通り抜けやすさの違いを利用して、薬の純度を極限まで高めるために使用されます。
- なぜ生産能力増強するのか:需要が急増している「肥満症・糖尿病治療薬」の精製に不可欠あるためです。同社は世界シェア70%を誇っており、今後の年20%に及ぶ市場成長を確実に取り込み、供給責任を果たすべく2倍の増産に踏み切りました。
- なぜ肥満症・糖尿病治療薬で医薬品精製用シリカゲルが欠かせないのか:これらの薬(ペプチド医薬品)は、製造時に有効成分と構造が酷似した不純物が大量に発生します。性質が似すぎて通常のろ過では分画できませんが、シリカゲルの微細な穴と化学反応なら、その僅かな差を識別して超高純度に精製できるためです。
大阪ソーダの医薬品精製用シリカゲルの生産能力増強
株式会社大阪ソーダが愛媛県・松山工場および尼崎工場における医薬品精製用シリカゲルの生産能力増強計画を発表しています。

この投資は、世界的に急拡大している肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬など)の需要に応えるための戦略的な動きです。
医薬品精製用シリカゲルとは何か
「医薬品精製用シリカゲル」と聞くと、お菓子や靴の箱に入っている乾燥剤を思い浮かべるかもしれませんが、中身は別物と言っていいほどハイテクな製品で、薬の有効成分だけを100%に近い純度で取り出すための、超高性能なふるい(フィルター)」のことです。
仕組み:液体クロマトグラフィー
医薬品を作る過程では、化学反応によって「作りたい成分」以外にも多くの「不純物」が混ざります。これを取り除くために「カラムクロマトグラフィー」という手法が使われます。
- 筒(カラム)に詰める: 金属製の筒の中に、粉末状のシリカゲルをぎっしり詰めます。
- 液体を流す: 薬の材料が溶けた液体を上から流します。
- 成分が分離する: 液体がシリカゲルの粒の間を通り抜ける際、成分ごとに「通り抜けやすさ」が異なります。
- シリカゲルにくっつきやすい成分:ゆっくり進む
- シリカゲルにくっつきにくい成分:早く進む
- 取り出す: 出口でタイミングを分けることで、必要な有効成分だけを純粋な状態で回収できます。
普通のシリカゲル(乾燥剤)との違い
医薬品精製用は、大阪ソーダのような企業が持つ高度な技術の結晶です。
- 粒の大きさが均一: 粒の大きさがバラバラだと液体が綺麗に流れません。数マイクロメートル(1ミリの1000分の1)単位でサイズを揃えています。
- 「穴(細孔)」の設計: シリカゲルの表面には無数の微細な穴が開いています。この穴の大きさを、取り出したい薬の分子サイズに合わせて精密にコントロールしています。
- 表面の化学処理: シリカの表面に特殊な化学物質を結合させ、特定の成分だけを効率よくキャッチできるように加工(修飾)されています。
なぜ今、注目されているのか
特に「バイオ医薬品」や、話題の「肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)」の製造に不可欠だからです。
- 高分子であること: これらの新しい薬は分子の構造が非常に複雑で、従来のろ過技術では不純物を分けるのが困難です。
- 高い安全性: 体内に入れる薬なので、極めて高い純度が求められます。そのため、大阪ソーダが提供するような世界最高品質のシリカゲルが世界中の製薬メーカーから求められているのです。
この「精製」のプロセスは、医薬品の製造コストの大きな割合を占めるとも言われています。シリカゲルの性能が、薬の価格や供給量に直結していると言っても過言ではありません。

医薬品の有効成分を不純物から分ける「超高性能なふるい」です。筒に詰めた微細なシリカ粒子の間を液体が通る際、成分ごとの通り抜けやすさの違いを利用して、薬の純度を極限まで高めるために使用されます。
増産の理由は何か
大阪ソーダがシリカゲルの生産能力を2倍にする最大の理由は、「肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)」の世界的な爆発的需要に応えるためです。
1. 肥満症・糖尿病治療薬の市場急拡大
ウゴービやマンジャロといった「GLP-1受容体作動薬」が世界中で大ヒットしています。これらの薬はペプチド医薬品と呼ばれ、製造工程で不純物を取り除くために大量の高品質シリカゲルを必要とします。
2. 圧倒的な世界シェアの維持
大阪ソーダは、この分野で世界シェア約70%を握るトップメーカーです。需要が供給を上回る「供給不足」を防ぎ、競合他社に付け入る隙を与えないよう、先んじて巨額投資(100億円超)を行いました。
3. 需要成長率の上方修正
同社は当初の予測を大きく上回るペースで市場が成長すると判断し、2025〜2030年度の需要成長率を年平均20%へと引き上げました。2028年頃には今の設備では足りなくなると予測したためです。
世界的に需要が急増している「肥満症・糖尿病治療薬」の精製に不可欠だからです。同社は世界シェア70%を誇るため、今後の年20%に及ぶ市場成長を確実に取り込み、供給責任を果たすべく2倍の増産に踏み切りました。
この増産が大阪ソーダの業績にどう影響するか、株価や利益面についても気になりますか?

世界的に需要が急増している「肥満症・糖尿病治療薬」の精製に不可欠あるためです。同社は世界シェア70%を誇るため、今後の年20%に及ぶ市場成長を確実に取り込み、供給責任を果たすべく2倍の増産に踏み切りました。
ペプチド医薬品とはなにか
ペプチド医薬品とは、アミノ酸が数個から数十個つながった「ペプチド」を主成分とする薬のことです。
糖尿病治療に使われるインスリンや、今話題の肥満症治療薬(GLP-1受容体作動薬)などがこれに当たります。
1. 「低分子」と「抗体」のいいとこ取り
従来の「低分子医薬品(飲み薬など)」と、巨大な「抗体医薬品(バイオ医薬品)」の中間くらいのサイズです。
- 低分子の良さ: 化学合成がしやすく、狙った場所に届きやすい。
- 抗体の良さ: 特有の標的にだけ結合するため、副作用が少なく効果が高い。ペプチドはこの両方のメリットを兼ね備えた「中分子医薬品」と呼ばれます。
2. 体内にある成分がベース
もともと人間の体内でホルモンや情報伝達物質として働いているアミノ酸配列を模倣して作られます。そのため、異物として拒絶されにくく、安全性が高いのが特徴です。
3. 製造(精製)が非常に難しい
ペプチドは構造が繊細で、合成する際に「非常によく似た形の不純物」が大量に発生します。
ここで大阪ソーダのシリカゲルは形がそっくりな不純物の中から、本物のペプチドだけを「シリカゲルの小さな穴」で見分けて取り出すプロセスで不可欠となっています。

アミノ酸が連なった「中分子」の薬です。体内成分に近いので副作用が少なく効果が高いのが利点です。製造時に形が似た不純物が混じりやすいため、精製には大阪ソーダのシリカゲルによる高度な分離技術が欠かせません。
なぜ非常によく似た形の不純物が発生しやすいのか
ペプチド医薬品の製造で「そっくりな不純物」ができる理由は、その「作り方(合成方法)」にあります。
ペプチドは、レゴブロックのようにアミノ酸を一つずつ順番につなげて作ります。この過程でどうしても避けられないミスが起こるからです。
不純物が発生する3つの主な原因
- 結合の失敗(欠落)例えば「A-B-C-D」という順番でつなげたいのに、Bがうまくくっつかず「A-C-D」という1個だけ足りない鎖ができてしまうことがあります。
- 余分な結合(挿入)逆に、同じアミノ酸が2回くっついて「A-B-B-C-D」のように1個だけ多い鎖ができることもあります。
- 鏡写しの分子(光学異性体)アミノ酸には、右手と左手のように「形は同じだけど向きが逆」の分子が存在します。製造中に一部のアミノ酸がひっくり返ってしまうと、見た目は同じなのに薬として機能しない不純物になります。
なぜシリカゲルが必要か
これらの不純物は、目的の薬と「長さが1個違うだけ」「重さがほぼ同じ」「化学的な性質もそっくり」です。
- 普通のフィルター:大きさで分けようとしても、ほぼ同じなので無理。
- 大阪ソーダのシリカゲル:表面の特殊な加工により、わずかな「形のゆがみ」や「電気的な性質の差」を感知して、本物だけを足止めして分離できます。

アミノ酸を1つずつ繋ぐ際、結合し損ねたり余分に付いたりするミスが起きるからです。これらは目的の薬と長さや重さが極めて近いため、シリカゲルの精密な識別能力がなければ取り除くことができません。

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