オキサイド、台湾企業と協業し、レーザ微細加工装置の事業化へ レーザ微細加工装置とは何か?なぜ微細な穴が必要なのか?

この記事で分かること

  • レーザ微細加工装置とは:レーザ光を極小スポットに集光し、材料を削る・切る・穴をあける装置です。刃物を使わない非接触加工のため、物理的ダメージを抑えつつミクロン単位の超精密加工が可能で、半導体チップの微細化に不可欠な技術です。
  • なぜ微細な穴が必要なのか:AIチップなどの高性能化には、複数のチップを積み重ねる3D実装が不可欠です。チップ間を最短距離で垂直に繋ぐ微細な穴(ビア)を大量に開けて電極を通すことで、データ転送の高速化、省電力化、小型化を実現できます。
  • なぜ協業をするのか:装置化技術と台湾の半導体網を持つBolite社と組むことで、先端後工程市場への迅速な参入と販路拡大を狙います。

オキサイド、台湾企業と協業し、レーザ微細加工装置の事業化へ

 株式会社オキサイドは、2026年2月16日、台湾のBolite Co., Ltd.と、半導体の「後工程」向けレーザ微細加工装置の事業化に向けた業務提携の基本合意を締結したと発表しました。

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000173865.html

 オキサイドはこれまで、主に半導体「前工程」(ウエハへの回路形成)における欠陥検査用レーザで高いシェアを持っていました。今回の提携は、その技術を成長著しい「後工程」へと拡張することを目的としています。

どんな装置を開発するのか

 オキサイドが台湾のBolite社と共同で開発・事業化を目指しているのは、主に半導体の「後工程(パッケージング工程)」で使用される「レーザ微細加工装置」です。

1. 次世代パッケージ用レーザビアあけ装置

 半導体チップを多層に積み重ねる「3D実装」や、複数のチップを一つの基板に配置する「2D.5実装」では、層間を接続するための微細な穴(ビア)を大量に開ける必要があります。

 オキサイドの短波長・高出力レーザ技術を用いることで、従来よりもさらに微細で、かつ材料への熱ダメージを抑えた加工を実現する装置を開発します。

2. 再配線層(RDL)の形成・加工装置

 チップと外部端子をつなぐ「再配線層」の形成において、微細なパターン形成をレーザで行う装置です。先端半導体(AIチップなど)で求められる高密度な配線に対応します。

3. レーザダイシング・グルービング装置

 ウエハからチップを切り出す(ダイシング)際に、レーザを用いて非接触で切断する装置です。物理的な刃(ブレード)を使わないため、欠け(チッピング)を抑え、歩留まりを向上させることができます。


 これまでのオキサイドは、主に「レーザ光源(部品)」を装置メーカーに販売していましたが、今回の提携により「装置そのもの」を組み上げて販売する事業へ踏み出します。

 両者が組むことで、TSMCなどの先端半導体メーカーが集中する台湾市場において、「より速く、より高精度に加工できる次世代装置」を直接投入することを目指しています。

オキサイドは台湾Bolite社と、先端パッケージング(後工程)用のレーザ微細加工装置を開発します。同社の強みである深紫外レーザ技術を活かし、AIチップ等の3D実装に不可欠な微細な穴あけ(ビア形成)や再配線層の加工を実現する装置の事業化を目指します。

なぜ微細な穴を開ける必要があるのか

 チップを積み重ねたり、高密度に配置したりする「先端パッケージング(後工程)」において、電気の通り道を作るために不可欠だからです。

1. チップの多層化(3D実装)に対応するため

 最新のAI用半導体などは、性能を上げるためにチップを縦に積み重ねます。この際、上下のチップ同士を最短距離でつなぐために、シリコンや絶縁層に垂直な穴(ビア)を開けて電極を通す必要があります。

2. データ転送の「高速化」と「省エネ」

 チップ間の距離が長いと、信号が伝わるのが遅くなり、電力も余計に消費します。微細な穴を大量に開けて、数千〜数万本の「極細の柱」で直結することで、情報のやり取りを圧倒的に速くし、発熱も抑えられます。

3. 小型化・高密度化

 スマートフォンやAIサーバーはスペースが限られています。穴が小さければ小さいほど、同じ面積により多くの配線を通せるため、装置全体の小型化と高性能化を両立できます。


 従来のドリルやエッチング(薬品加工)では、これほど細かく、かつ材料を傷めずに穴を開けるのが難しくなっています。そこで、オキサイドが得意とする「深紫外(DUV)レーザ」のような、極めて波長が短く精密な光の出番というわけです。

AIチップなどの高性能化には、複数のチップを積み重ねる3D実装が不可欠です。チップ間を最短距離で垂直に繋ぐ微細な穴(ビア)を大量に開けて電極を通すことで、データ転送の高速化、省電力化、小型化を実現できます。

オキサイドの強みと協業する理由は

 オキサイドが台湾のBolite社と手を組む理由は、「世界最高レベルの光技術」「世界最大の半導体市場への切符」を掛け合わせるためです。


オキサイドの強み:唯一無二の「光」を作る力

 オキサイドは、単なるレーザメーカーではなく、その核となる「単結晶(たんけっしょう)」を自社で育成できる世界でも稀有な企業です。

  • 波長変換技術: レーザの光を、より細かな加工に適した「深紫外(DUV)」という短い波長に変換する技術に長けています。
  • 高品質な結晶: 自社製の高品質な結晶を使うことで、出力が安定し、寿命が長いレーザを実現できます。
  • 前工程の実績: すでに半導体の「前工程」の検査装置で世界シェアを誇っており、その信頼性は折り紙付きです。

協業する理由:開発スピードと「出口」の確保

 優れた「光(レーザ)」を持っていても、それを実際に半導体を加工する「装置」としてまとめ上げ、顧客に売るには別のノウハウが必要です。

項目オキサイド(日本)Bolite(台湾)
役割レーザ光源・主要光学部品の開発加工装置(マシン)の設計・製造
強み光の物理的な精度・結晶技術自動化技術・システム統合能力
市場日本国内・グローバル研究機関台湾の巨大半導体サプライチェーン

なぜ台湾企業なのか

 現在、半導体の先端パッケージング技術(後工程)をリードしているのは、TSMCをはじめとする台湾企業です。

  • スピード感: 現場に近いBolite社と組むことで、顧客の要望を即座に装置設計に反映できます。
  • 販路の活用: 台湾の強力なネットワークを持つBolite社を通じることで、オキサイド単独では入り込みにくい大手半導体メーカーの製造ラインへの導入を狙えます。

 「オキサイドの究極のレーザ」を、「Bolite社の装置化技術と台湾のネットワーク」に乗せて、急成長する後工程市場へ一気に流し込む。これが今回の戦略の核心です。

オキサイドは世界屈指の単結晶・深紫外レーザ技術を持ち、精密な「光」を作るのが強みです。装置化技術と台湾の半導体網を持つBolite社と組むことで、先端後工程市場への迅速な参入と販路拡大を狙います。

レーザ微細加工装置の競合はどこか

 オキサイドが参入する「後工程向けレーザ微細加工装置」の分野には、すでに強力な競合他社が存在します。主な競合は以下の通りです。

主な競合企業と特徴

企業名主な強み・特徴
ディスコ (DISCO)世界トップのダイシング(切断)装置メーカー。レーザによるステルスダイシング技術で圧倒的なシェア。
浜松ホトニクスレーザ光源から装置まで幅広く手掛ける光技術の巨人。特にステルスダイシング用エンジン等で強み。
三菱電機基板向けのレーザ穴あけ装置(ビア開け)で世界シェアが高く、産業用レーザ装置のノウハウが豊富。
Coherent (米国)世界最大級のレーザメーカー。産業用レーザ微細加工のシステムをグローバルに展開。
3D-Micromac (ドイツ)半導体や太陽電池向けの超精密レーザ微細加工装置に特化したスペシャリスト。

オキサイドの差別化方法

 競合他社は強力ですが、オキサイドには以下の独自性があります。

  • 深紫外(DUV)レーザの専門性: 多くの競合が赤外線(IR)やグリーンレーザを使用する中、オキサイドはより波長が短く、熱影響を極限まで抑えた「冷たい加工」ができるDUVレーザに特化しています。これにより、次世代の極薄・多層チップの加工で優位に立ちます。
  • 台湾・Bolite社との連携: 装置の心臓部(レーザ)をオキサイドが作り、それを台湾の製造現場に最も近いBolite社が装置化・サポートする体制は、「最新ニーズへの即応性」という点で大きな強みになります。

 オキサイドは、ディスコのような「汎用的な切断装置」の市場を奪いに行くのではなく、「従来技術では困難な、超微細・高難度の穴あけや加工」という、最先端のニッチ市場から攻め込もうとしています。

主な競合は、切断装置で世界首位のディスコや、光技術に強い浜松ホトニクス、基板穴あけで実績のある三菱電機です。海外では米Coherentや独TRUMPFが強敵ですが、オキサイドは独自の深紫外レーザ技術で差別化を図ります。

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