オキサイドのDUVレーザ技術 DUVレーザとは何か?なぜ単結晶が必要なのか?

この記事で分かること

  • DUVレーザとは:波長が極めて短い紫外線のレーザです。「超極細」なスポットに絞れるため微細加工に適しており、熱を出さずに原子結合を断ち切る「非加熱加工」が可能です。熱に弱い最新半導体材料を傷めず精密に削れるのが最大の特徴です。
  • なぜ単結晶が必要なのか:原子が全体にわたって規則正しく一様に並んだ単結晶はつなぎ目(粒界)がないため、光の透過性や電気特性が極めて安定しています。オキサイドはこれを自社育成し、高性能なレーザ光源の核として利用しています。
  • なぜ単結晶で波長が変化するのか:単結晶内で、光の波を2つ合体させて「1つの短い波」に作り替えるためです。向きが完璧に揃った単結晶なら、光を打ち消さずに波長を半分(エネルギーを2倍)へ効率よく変換できます。

オキサイドのDUVレーザ技術

 株式会社オキサイドは、2026年2月16日、台湾のBolite Co., Ltd.と、半導体の「後工程」向けレーザ微細加工装置の事業化に向けた業務提携の基本合意を締結したと発表しました。

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000173865.html

 オキサイドはこれまで、主に半導体「前工程」(ウエハへの回路形成)における欠陥検査用レーザで高いシェアを持っていました。今回の提携は、その技術を成長著しい「後工程」へと拡張することを目的としています。

 前回は微細加工装置の概略や協業の理由に関する記事でしたが、今回はオキサイドのDUVレーザ技術に関する記事となります。

DUVレーザとは何か

 DUV(Deep Ultraviolet:深紫外)レーザとは、目に見える光よりもずっと波長が短い、特殊な紫外線レーザのことです。

 半導体加工において「最強のメス」と言われる理由は主に2つあります。

1. 「超」微細な加工ができる

 光の性質上、波長が短いほど小さなスポットに絞り込むことができます。

  • 赤外線レーザ: 波長が長く、太いマジックで書くようなもの。
  • DUVレーザ: 波長が極めて短く、超極細のシャープペンシルで書くような精密な加工が可能です。

2. 材料を焼かない「非加熱加工(アブレーション)」

 ここが最大のメリットです。

  • 普通のレーザ: 熱で材料を「溶かして」切ります。周囲に熱が伝わり、チップが歪んだり変質したりします。
  • DUVレーザ: 光のエネルギーが非常に強いため、熱を出す前に原子の結合を直接断ち切ってバラバラにします。これを「非加熱加工」と呼び、熱に弱い最新の絶縁材料などを、焦がさずきれいに加工できます。

波長が極めて短い紫外線のレーザです。「超極細」なスポットに絞れるため微細加工に適しており、熱を出さずに原子結合を断ち切る「非加熱加工」が可能です。熱に弱い最新半導体材料を傷めず精密に削れるのが最大の特徴です。

単結晶とはどんな結晶なのか

 単結晶(たんけっしょう)とは、物質を構成する原子が、端から端まで規則正しく、一つの巨大な格子模様のように並んでいる結晶のことです。


1. 構造のイメージ

  • 多結晶(一般的な金属など): 小さな結晶の粒が集まった状態。粒の境界(粒界)で光や電気が散乱します。
  • 単結晶: 巨大な一つの塊全体が同じ向きに並んでいます。不純物や「つなぎ目」がないため、光や電気を通す能力が極限まで高まります。

2. なぜオキサイドの単結晶がすごいのか

 レーザの光を「深紫外(DUV)」に変換するには、光の波長を変える特殊な性質を持つ結晶(非線形光学結晶)が必要です。

 しかし、この結晶を大きく、かつ「濁り」なく育てるのは至難の業です。オキサイドは、独自の炉で何週間もかけてじっくりと原子を並べる「育成技術」で世界をリードしています。


3. 主な用途

  • 半導体レーザ: 光を増幅したり、色(波長)を変えたりする心臓部。
  • パワー半導体(SiCなど): 電気自動車の省エネ化に貢献。
  • 宝石: ダイヤモンドやサファイアの「完璧な一粒」も単結晶です。

原子が全体にわたって規則正しく一様に並んだ固体です。つなぎ目(粒界)がないため、光の透過性や電気特性が極めて安定しています。オキサイドはこれを自社育成し、高性能なレーザ光源の核として利用しています。

なぜ単結晶でレーザーの波長が変換できるのか

 単結晶でレーザーの波長(色)を変えられるのは、結晶内部の原子が「非対称」かつ「完璧に規則正しく」並んでいることで、強い光に対して特殊な反応を示すからです。

この現象を「非線形光学効果」と呼びます。


波長変換の仕組み

  1. 光の合成: 特定の単結晶にレーザー光を通すと、結晶内の原子が光の振動に合わせて揺れ動きます。このとき、原子の並びが特殊だと、入ってきた光の波(山と谷)を2つ分まとめて、「1つの強力な波」に作り替えることができます。
  2. 波長が半分(エネルギーが2倍)に: 波を2つ合体させると、波の長さ(波長)は半分になり、エネルギーは2倍になります。
    • 例: 赤外線を結晶に通すと、波長が半分になり「緑色」の光に変わります。これを繰り返すと、さらに短い「深紫外(DUV)」になります。

なぜ単結晶でなければならないのか

  • 向きを揃える(位相整合): 波長を変えるには、光の波と結晶の中の原子の向きを「1ミリの狂いもなく」合わせる必要があります。多結晶(つなぎ目がある結晶)だと、途中で向きがバラバラになり、変換された光が打ち消し合って消えてしまいます。
  • 透明度と耐久性: 高出力のレーザーを通すため、不純物や濁りがあると熱を持って結晶が割れてしまいます。端から端まで均一な単結晶こそが、この過酷な環境に耐えうる唯一の素材なのです。

 オキサイドはこの「波長変換用結晶」で世界トップクラスの品質を誇ります。この技術が、どのように半導体の「後工程」の進化を支えるのか、より具体的な活用シーンを見ますか?

原子が規則正しく並んだ単結晶内で、光の波を2つ合体させて「1つの短い波」に作り替えるからです。向きが完璧に揃った単結晶なら、光を打ち消さずに波長を半分(エネルギーを2倍)へ効率よく変換できます。

単結晶はどのように作られるのか

 単結晶を作るには、原料を一度バラバラの液体(融液)にしてから、「一つの核」をもとに、原子を1列ずつ完璧に整列させながらゆっくりと固める特殊な工程が必要です。

 オキサイドが主に採用しているのは、「チョクラルスキー法(引き上げ法)」と呼ばれる代表的な製造方法です。


単結晶ができるまでのステップ

  1. 原料を溶かす(融解): 高純度の原料をるつぼに入れ、数千度もの高温で完全に溶かします。
  2. 種結晶(たねけっしょう)を浸す: 完璧な原子配列を持つ小さな「種」となる結晶を、液面にそっと触れさせます。
  3. ゆっくり引き上げる: 種結晶をゆっくりと回転させながら、数ミリ/時間という非常に遅いスピードで引き上げます。
  4. 原子が整列して固まる: 液面と結晶の境界で、バラバラだった液体中の原子が、種結晶の配列にならって規則正しく結合していきます。

なぜ難しいのか

  • 温度管理: わずか1度の温度変化で、原子の並びが乱れたり、結晶が割れたりします。
  • 不純物の排除: 10億分の1レベルの不純物も許されません。
  • 時間の壁: 1本の大きな結晶(インゴット)を作るのに、数週間から1ヶ月以上かかることもあります。

原料を高温で溶かし、種結晶を液面に触れさせ、回転させながら数週間かけて極低速で引き上げます。液体の原子が種結晶の規則正しい配列に合わせて1つずつ結合することで、巨大で純粋な単結晶が形成されます。

オキサイドの単結晶製造の強みは何か

 オキサイドの単結晶製造における最大の強みは、「世界トップクラスの結晶品質」「研究から量産まで一貫して行う自社体制」にあります。

1. 独自の製造法(二重るつぼ法)

 オキサイドは「二重るつぼ法(Double-Crucible Czochralski法)」という独自の育成技術を持っています。

  • 強み: 結晶を育てる際、原料を連続的に供給できるため、結晶内の成分が最初から最後まで均一になります。
  • メリット: 非常に大きく、かつ「濁り」や「歪み」が極限まで少ない高品質な結晶を作ることができます。

2. 「装置」まで自社で作る開発力

 単結晶を作るための「育成装置(炉)」そのものを自社で設計・開発しています。

  • 強み: 結晶の性質に合わせて、温度管理や引き上げ速度を1度・1ミリ単位でカスタマイズ可能です。
  • メリット: 他社が真似できない、難易度の高い新材料の結晶化を可能にしています。

3. 多彩なラインナップと圧倒的シェア

 波長変換用、医療検査(PET)用、パワー半導体用など、幅広い用途の単結晶を扱っています。

  • 強み: 特に半導体ウエハ検査装置向けの単結晶では世界シェア約95%(推定)を誇ります。
  • メリット: 圧倒的な実績から得られるデータが、さらなる品質向上と新材料開発に活かされています。

独自の「二重るつぼ法」により、成分が均一で歪みのない高品質な結晶を大型で製造できます。育成装置自体を自社開発する技術力を持ち、半導体検査用などの特定分野で世界シェアの大半を占める圧倒的実績が強みです。

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