鴻海精密工業のAIサーバー事業の急成長　AIサーバーとは何か？なぜAIサーバー事業に力を入れているのか？

この記事で分かること

鴻海精密工業のAIサーバー事業の急成長

　台湾の電子機器受託製造サービス（EMS）世界最大手である鴻海（ホンハイ）精密工業は、長年の主力事業であるiPhoneの受託生産への依存から脱却し、AIサーバー事業が急成長しています。

　https://jp.reuters.com/business/technology/QD7UXWR7QBPBBIQTPJQANRVE5U-2025-08-19/

　この事業の成長が、同社の業績を大きく牽引しています。

鴻海精密工業はどんな会社か

　鴻海（ホンハイ）精密工業は、台湾に本社を置く電子機器受託製造サービス（EMS）の世界最大手企業です。「フォックスコン（Foxconn）」というブランド名でも広く知られています。

主な事業内容と特徴

• EMS事業: 世界中の大手IT・電子機器メーカーから、スマートフォンの組み立て、部品の製造、サーバーの生産など、様々な電子機器の製造を請け負っています。特に、AppleのiPhoneやiPadの主要な製造元として有名です。
• 多岐にわたる製品: スマートフォンだけでなく、パソコン、ゲーム機（Nintendo Switch、PlayStation、Xboxなど）、薄型テレビ、各種電子部品（コネクタ、ケーブル、マザーボードなど）も手掛けています。
• グローバルな生産拠点: 中国をはじめ、インド、ベトナム、マレーシア、チェコ、米国など、世界各地に研究開発および製造拠点を展開しています。
• シャープの買収: 2016年には、日本の大手電子機器メーカーであるシャープを買収し、子会社化しました。これにより、液晶パネルやディスプレイ技術など、事業の多角化を進めています。
• 新規事業への進出: 近年は、従来のEMS事業に加え、以下のような新しい分野にも積極的に進出しています。
  • AIサーバー: 高性能なAIサーバーの需要増大に対応し、AI関連事業を新たな成長の柱としています。
  • 電気自動車（EV）: 自社グループで開発したEVを他の自動車メーカーに供給するビジネスモデルを推進しており、EV市場への参入も進めています。
  • 半導体: 半導体分野への投資を強化し、サプライチェーンの安定化と事業拡大を目指しています。

　鴻海は、単に安価な労働力で製造する工場というだけでなく、AIやロボットを活用した生産の自動化、そしてEVや半導体といった新技術への投資を通じて、製造業の枠を超えた企業へと進化を続けています。

鴻海（ホンハイ）精密工業は、台湾に本社を置く電子機器受託製造サービス（EMS）の世界最大手です。フォックスコン（Foxconn）のブランド名で知られ、AppleのiPhone製造を主力としてきたが、近年はAIサーバーや電気自動車（EV）事業にも注力し、多角化を進めている。日本のシャープも傘下に収めている。

AIサーバーとは何か

　AIサーバーとは、人工知能（AI）の処理に特化して設計された高性能なコンピューターのことです。

　従来の一般的なサーバーが、ウェブサイトの表示やデータベース処理など、逐次的な処理や様々なタスクをこなすことに長けているのに対し、AIサーバーは大規模な並列計算を高速で行うことに特化しています。

AIサーバーの主な特徴

• 高性能なGPUの搭載:AIの学習や推論には、膨大なデータを並行して処理する能力が求められます。この処理に最も適しているのが、もともと画像処理に特化したGPU（Graphics Processing Unit）です。AIサーバーは、複数の高性能なGPU（特にNVIDIAのものが有名）を搭載することで、従来のサーバーと比較して圧倒的な計算能力を実現しています。
• 大容量のメモリと高速なネットワーク:AIモデルは非常に大規模なデータセットを扱うため、大量のデータを一時的に保存する大容量のメモリ（RAM）が必要です。また、複数のサーバー間でデータを高速にやり取りするための、専用の高速ネットワークも重要な構成要素です。
• 強力な冷却システム:高性能なGPUは大量の熱を発生させます。そのため、AIサーバーは液体冷却や液浸冷却といった、より高度で効率的な冷却システムを備えていることが多く、これにより安定した稼働を維持しています。

　これらの特徴により、AIサーバーは、画像認識、自然言語処理、大規模言語モデルの学習、自動運転など、AIのコアとなるタスクを効率的に実行することができます。鴻海がAIサーバー事業に注力しているのは、このようなAI市場の拡大と、それに伴うサーバー需要の急増を背景としています。

AIサーバーは、人工知能（AI）の処理に特化した高性能コンピューターです。大量の並列計算を効率よく実行するため、GPU（Graphics Processing Unit）を多数搭載しているのが特徴で、従来のサーバーより高速なデータ処理が可能です。

なぜiPhoneの組み立ての比率を減らしているのか

　鴻海がiPhoneの組み立ての比率を減らしているのは、主に以下の理由が挙げられます。

1. 利益率の低さ: iPhoneの組み立ては大量生産が求められる一方で、メーカーであるAppleからの価格交渉が厳しく、利益率が非常に低い事業です。鴻海は、より付加価値が高く、高い利益率が見込める事業へとシフトすることで、収益性を改善しようとしています。
2. 特定の顧客への依存リスク: 長年にわたり、鴻海はAppleのiPhoneに強く依存してきました。しかし、これは特定の顧客に業績が左右されるリスクを常に抱えることになります。Appleはサプライヤーを分散させる動きも見せており、鴻海は依存度を減らすことで、経営リスクを軽減しようとしています。
3. 新たな成長分野への投資: スマートフォンの市場が成熟期に入り、爆発的な成長が見込みにくくなっているのに対し、AIやEV（電気自動車）といった分野は、今後さらなる成長が期待されています。鴻海は、将来の成長を見据え、これらの新興分野に経営資源を集中させることで、次の収益の柱を確立しようとしています。特に、AIサーバー事業は需要が急増しており、鴻海の新たな主力事業として急成長を遂げています。

　これらの理由から、鴻海はiPhoneの組み立てを全くやめるわけではありませんが、事業のポートフォリオを多様化し、iPhoneへの依存度を低減させる戦略をとっています。

鴻海がiPhone組み立ての比率を減らしているのは、利益率の低さと特定顧客への依存リスクを避けるためです。より高い収益性が見込めるAIサーバーやEV（電気自動車）などの事業を新たな収益の柱として育成し、事業の多角化を進めています。

　鴻海がAIサーバーに力を入れる主な理由は、高い利益率と将来的な市場の成長性にあります。

高い収益性

　AIサーバーは、従来のPCやスマートフォンに比べて高い技術力と部品を必要とするため、製品あたりの単価が非常に高いです。特に、高性能なGPU（Graphics Processing Unit）や冷却システムなど、高価な部品が使われるため、製造を受託する鴻海にとって、iPhoneの組み立てよりも高い利益率を確保できます。

成長する需要

　AI技術の進化に伴い、ChatGPTのような大規模言語モデル（LLM）や、自動運転、画像生成AIなどの開発・運用には、膨大な計算能力を持つAIサーバーが不可欠です。これらの技術が社会に浸透するにつれて、AIサーバーの需要は今後も急速に拡大すると予測されています。

　鴻海は、この大きな市場を捉えることで、新たな事業の柱を確立し、持続的な成長を目指しています。

脱iPhone依存

　長年にわたり、鴻海はAppleのiPhone製造に大きく依存してきました。しかし、これは単一顧客への依存リスクや、価格交渉の厳しさによる収益性の制約という課題を抱えていました。

　AIサーバー事業を強化することで、鴻海はiPhoneへの依存度を減らし、より安定した経営基盤を構築しようとしています。

鴻海がAIサーバーに力を入れるのは、利益率の高さと市場の成長性が理由です。iPhone製造より高い収益が見込めるうえ、AI技術の発展で需要が急増しており、新たな収益の柱として事業を多角化しています。