この記事で分かること
- 整流ダイオードとは:交流(AC)電流を直流(DC)電流に変換する「整流作用」を目的としたダイオードです。電流を一方向にだけ流し、逆方向は遮断する特性を利用し、ACアダプターや家電の電源部など、ほとんどの電子機器に安定した電力を供給するために不可欠です。
- 発光ダイオードとは:電流を流すと光を発する半導体素子です。電気エネルギーを直接光に変換するため、従来の電球に比べ高効率で長寿命、小型なのが特長です。照明、ディスプレイ、表示灯など、幅広い分野で省エネと多様な表現を可能にしています。
整流ダイオード、発光ダイオード
日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。
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日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。
今回は整流ダイオードや発光ダイオードについての記事となります。
整流ダイオードとは何か
整流ダイオード(Rectifier Diode)とは、交流(AC)電流を直流(DC)電流に変換する「整流作用」を主な目的としたダイオードのことです。
一般的なダイオードと同様に、P型半導体とN型半導体の接合(PN接合)で構成されており、電流を一方向にだけ流し、逆方向にはほとんど流さないという性質を利用します。
整流ダイオードの主な特徴
- 高耐圧・高電流容量: 商用電源(家庭用コンセントなど)の電圧は比較的高く、流れる電流も大きくなるため、これらを安全に処理できるよう、高い電圧に耐え、大きな電流を流せるように設計されています。
- 用途: 主に電源回路で使われ、ACアダプター、家電製品の電源部、自動車の発電機(オルタネーター)など、交流から直流への変換が必要なあらゆる場所で中心的な役割を果たします。
- 周波数特性: 一般的な整流ダイオードは、家庭用電源の周波数(50Hz/60Hz)程度の低い周波数での整流に適しています。高速なスイッチング(電流のON/OFF切り替え)には向かないため、高周波の整流には「ショットキーバリアダイオード(SBD)」などの別の種類のダイオードが使われます。
整流の仕組み
例えば、ACアダプターのようにコンセントの交流を直流に変える場合、以下のようなステップで整流ダイオードが機能します。
- 交流電圧の印加: 交流は電圧の向き(極性)が周期的にプラスとマイナスに変化します。
- ダイオードによる一方向化:
- 交流の電圧がダイオードの「順方向」(アノードがプラス、カソードがマイナス)になった時だけ、電流が流れます。
- 交流の電圧が「逆方向」(アノードがマイナス、カソードがプラス)になった時は、ダイオードは電流を遮断します。
- 脈流の生成: この結果、出力される電流は一方向になりますが、まだ波打った状態(脈流)です。
- 平滑化: この脈流を、コンデンサなどの部品でならす(平滑化する)ことで、より安定した直流電流が得られます。
このように、整流ダイオードは、交流電源から電子機器が求める直流電源を作り出すための、非常に基本的ながら不可欠な部品です。

整流ダイオードは、交流(AC)電流を直流(DC)電流に変換する「整流作用」を目的としたダイオードです。電流を一方向にだけ流し、逆方向は遮断する特性を利用し、ACアダプターや家電の電源部など、ほとんどの電子機器に安定した電力を供給するために不可欠です。
発光ダイオードとは何か
発光ダイオードは、英語の「Light Emitting Diode」の頭文字を取って「LED(エル・イー・ディー)」と呼ばれることが一般的です。これは、電流を流すと光を発する半導体素子の一種で、ダイオードの仲間です。
発光の仕組み(原理)
発光ダイオードは、一般的なダイオードと同じくP型半導体とN型半導体を接合した「PN接合」という構造を持っています。
- 順方向電圧の印加: ダイオードに順方向(P型側にプラス、N型側にマイナス)の電圧を加えると、N型半導体の自由電子(マイナスの電荷)がP型半導体側へ、P型半導体の正孔(プラスの電荷)がN型半導体側へ移動します。
- 電子と正孔の再結合: PN接合部付近で、移動してきた電子と正孔が「再結合」します。
- 光の放出: この再結合の際に、電子が持つエネルギーの一部が光のエネルギー(光子)として放出されます。この現象を「エレクトロルミネセンス」と呼びます。
発光色の決定
LEDが発する光の色は、使用する半導体材料の種類によって決まります。例えば、以下のようになります。
- 赤色、橙色、黄色: ガリウムヒ素リン(GaAsP)などの化合物
- 緑色、青色: 窒化ガリウム(GaN)、インジウムガリウム窒素(InGaN)など
- 白色: 主に青色LEDと黄色い蛍光体を組み合わせることで、青色の光が蛍光体を通ることで白色として見えるようにしています。あるいは、赤・緑・青の3色のLEDを混ぜて白色を表現する方法もあります。
発光ダイオード(LED)の主な特長と重要性
LEDは、従来の白熱電球や蛍光灯と比較して、多くの優れた特長を持っています。
- 高効率・省エネルギー: 電気エネルギーを直接光に変換するため、熱としてのエネルギー損失が少なく、非常に高い発光効率を誇ります。これにより、消費電力を大幅に削減できます。
- 長寿命: フィラメントの断線やガスの劣化がないため、非常に長持ちします(数万時間以上)。電球交換の手間やコストを削減できます。
- 小型・薄型: 小さな素子であるため、様々な形状の照明器具やディスプレイに組み込むことができます。
- 高速応答性: 瞬時に点灯・消灯が可能です。
- 耐衝撃性: フィラメントやガラス管がないため、衝撃に強く丈夫です。
- 環境負荷の低減: 水銀などの有害物質を含まず、紫外線や赤外線の放出も少ないため、環境に優しい光源です。
主な用途
これらの特長から、LEDは現在、非常に幅広い分野で活用されています。
- 一般照明: LED電球、シーリングライト、街路灯、車のヘッドライトなど。
- 表示・ディスプレイ: テレビ、スマートフォンのディスプレイ、屋外の大型ビジョン、信号機、計器のバックライト。
- 通信: 光ファイバー通信、赤外線リモコン(目に見えない赤外線LED)。
- センサー: 光センサー、測距センサーなど。
- その他: 懐中電灯、装飾照明、植物育成ライトなど。
発光ダイオードは、20世紀後半に開発が進み、特に青色LEDの実用化(日本人研究者による功績が大きく、ノーベル物理学賞も受賞)によって白色LEDが実現可能になり、社会に大きな変革をもたらしました。

発光ダイオード(LED)は、電流を流すと光を発する半導体素子です。電気エネルギーを直接光に変換するため、従来の電球に比べ高効率で長寿命、小型なのが特長です。照明、ディスプレイ、表示灯など、幅広い分野で省エネと多様な表現を可能にしています。
整流ダイオードではなぜ、発光しないのか
整流ダイオードが発光しないのは、半導体の材料と構造が発光に適していないためです。
発光ダイオード(LED)が発光するのは、PN接合で電子と正孔が再結合する際に、そのエネルギー差(バンドギャップエネルギー)が直接「光」として放出されるように、半導体材料が設計されているからです。例えば、窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体が使われます。
一方、一般的な整流ダイオード(主にシリコン製)の場合、電子と正孔が再結合する際に放出されるエネルギーは、主に「熱」として消費されるように設計されています。これは、シリコンのバンド構造が「間接遷移型」であるため、電子と正孔が再結合する際に、光ではなくフォノン(格子振動の量子)としてエネルギーが放出されやすい性質を持つからです。
また、整流ダイオードは光を出す必要がないため、外部の光の影響を受けないように黒い樹脂パッケージで覆われていることがほとんどです。これも発光が見えない理由の一つです。
まとめると、整流ダイオードが発光しないのは、発光に適した半導体材料ではないことと、放出されるエネルギーが光ではなく熱に変換される構造であるためです。
使用する半導体材料で発光する色が違うのはなぜか
半導体材料によって発光する色が変わるのは、その材料が持つ「バンドギャップエネルギー(禁制帯幅)」の大きさが異なるためです。
LED(発光ダイオード)が光る基本的な仕組みは、半導体内の電子と正孔(電子の抜け穴)が再結合する際に、電子が持つエネルギーの一部が光のエネルギーとして放出されることにあります。
- 電子のエネルギー準位: 半導体には、電子が自由に動き回れる「伝導帯」と、電子が結合している「価電子帯」という2つのエネルギーバンドがあります。この2つのバンドの間には、電子が存在できない「バンドギャップ(禁制帯)」と呼ばれるエネルギーの隙間が存在します。
- 再結合時のエネルギー放出: LEDに電流を流すと、N型半導体から来た電子がP型半導体の正孔と出会い、再結合します。このとき、電子は伝導帯から価電子帯に落ちて、エネルギー状態が低くなります。このエネルギーの差(=バンドギャップエネルギー)が、光のエネルギーとして放出されるのです。
- 光のエネルギーと波長の関係:光のエネルギーは、その光の波長と密接に関係しています。
- エネルギーが大きい光 = 波長が短い光(例:青色、紫外線)
- エネルギーが小さい光 = 波長が長い光(例:赤色、赤外線)
- 半導体材料によるバンドギャップの違い:
- 半導体材料の種類(例えば、ガリウムヒ素リン、窒化ガリウム、インジウムガリウム窒素など)によって、このバンドギャップエネルギーの大きさが固有に決まっています。
- バンドギャップが大きい材料を使うと、再結合時に放出されるエネルギーも大きくなるため、波長の短い(高エネルギーの)青色や緑色の光を発します。
- バンドギャップが小さい材料を使うと、放出されるエネルギーも小さくなるため、波長の長い(低エネルギーの)赤色やオレンジ色の光を発します。
このように、使用する半導体材料によってバンドギャップエネルギーの大きさが決まり、それが直接、発光する光のエネルギー(ひいては波長と色)を決定する、という仕組みです。

使用する半導体材料によって、電子と正孔が再結合する際に放出されるエネルギーの大きさが異なります。このエネルギー差(バンドギャップエネルギー)が大きい材料ほど波長の短い(高エネルギーの)青色や緑色の光を、小さい材料ほど波長の長い(低エネルギーの)赤色光を発するため、発光色が変わるのです。
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