この記事で分かること
- レゾナックの役割:幹事企業として、活動を主導しています。自社の試作ラインを提供し、パネルレベル有機インターポーザーの開発を加速させる中心的な役割を担います。
- 開発する材料:感光性感光性フィルムやポリマーなどの開発を行うとされています。
- 感光性フィルムへの要求事項:超高解像度で微細な配線パターンを形成できることが必須です。また、従来のウェハよりも大型のパネルに適合し、高い信頼性を保ちながら均一に転写できる性能が求められます。
JOINT3でのレゾナックの役割
レゾナックや東京エレクトロンなど国内外の27社が、AI半導体向け新基板開発を目的としたコンソーシアム「JOINT3」を設立しました。この取り組みは、AIや自動運転といった次世代半導体の性能向上に不可欠な、後工程の技術開発を加速させることを目指しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC215BA0R20C25A8000000/
AI半導体は、膨大なデータを高速で処理するため、複数のチップを一つのパッケージにまとめて実装する2.5Dパッケージやチップレットと呼ばれる技術が主流になりつつあります。この技術において、チップ同士をつなぐ役割を果たすのがインターポーザーです。
前回の記事は、JOINT3の概略に関する記事でしたが、今回はJOINT3の設立を主導する幹事企業として、中心的な役割を担っているレゾナックに関する記事です。
レゾナックとは
レゾナックは、2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が経営統合して誕生した会社です。レゾナックグループのルーツは、昭和電工と日立化成のそれぞれの創業にさかのぼります。
- 昭和電工: 1939年に昭和肥料と日本電気工業が合併して設立されました。このルーツは、豊富な水力を利用した電気化学工業にあります。
- 昭和電工マテリアルズ(旧日立化成): 1912年に日立製作所の油性ワニスの研究から始まり、1962年に日立化成工業として設立されました。
レゾナックは、これらの歴史ある企業が持つ幅広い先端材料技術を統合し、「第2の創業」と位置づけています。
レゾナックが目指す姿
レゾナックは、「個性派化学」を掲げ、特に半導体材料や自動車部品などの高付加価値な機能性化学製品に注力しています。また、社名「Resonac」は、「Resonate(共鳴・響き合う)」と「Chemistry(化学)」を組み合わせた造語であり、社内外のパートナーと「共創」することで社会を変える大きな動きを生み出していくという強い意志が込められています。

レゾナックは、2023年に昭和電工と昭和電工マテリアルズが統合して誕生した会社です。半導体や自動車関連などの高付加価値な素材・材料を開発・製造する化学メーカーで、「共創」を掲げ、社会課題の解決を目指しています。
JOINT3での役割は
レゾナックは、次世代半導体パッケージング技術の開発を目的としたコンソーシアム 「JOINT3」の設立を主導する幹事企業として、中心的な役割を担っています。
具体的には、以下の役割を果たしています。
- コンソーシアムの運営: 技術開発テーマの取りまとめや、茨城県結城市にあるレゾナックの下館事業所内に設置された試作ラインの運営を担います。
- 技術開発の推進: JOINT3のプラットフォームを活用し、参画する27社と共創しながら、パネルレベル有機インターポーザーに適した材料や装置の開発を加速させます。
JOINT3とは
JOINT3は、日本、米国、シンガポールなどの半導体材料・装置・設計分野の企業27社が参画する、次世代半導体パッケージング技術の共創型評価プラットフォームです。JOINT、JOINT2と続いてきた技術開発コンソーシアムの最新版にあたります。
JOINT3が目指すこと
JOINT3は、AIや自動運転などで需要が拡大する「2.xDパッケージ」技術の発展に不可欠な有機インターポーザーの開発に注力しています。
特に、従来の円形ウェハーではなく、より大型で効率的なパネル形状での生産技術を確立することを目指しており、レゾナックは自社の試作ラインをその「練習場」として提供し、各社の技術を融合させることで、次世代半導体パッケージング技術の革新を牽引する役割を担います。

レゾナックは、次世代半導体パッケージング技術の開発コンソーシアム「JOINT3」の幹事企業として、活動を主導しています。自社の試作ラインを提供し、パネルレベル有機インターポーザーの開発を加速させる中心的な役割を担います。
JOINT3で開発する材料は何か
レゾナックは、パネルレベル有機インターポーザーの開発において、主に以下のような材料を開発します。
- 感光性フィルム: パネルレベル有機インターポーザーに微細な配線を形成するための重要な材料です。レゾナックはすでに、有機インターポーザー上で線幅と線間が1.5μm以下の超微細銅配線を形成できる新しい感光性フィルムを開発しています。
- ポリマー樹脂: 感光性フィルムの主要成分であり、高い解像度を実現するための鍵となる新ポリマー樹脂を開発します。
- その他、有機インターポーザーに適した材料: 具体的な材料名は明記されていませんが、JOINT3の目的は、パネルレベル有機インターポーザーの製造プロセスに適した、さまざまな材料を参加企業と共同で開発することです。これには、基板材料や絶縁材料、めっき薬品などが含まれる可能性があります。
感光性フィルムとは何か
感光性フィルムは、光に反応して化学的な変化を起こすように設計されたフィルムです。これは、光が当たるとその性質(硬化、溶解など)が変化する感光性樹脂が塗布されたものです。この性質を利用して、微細なパターンを形成するために使われます。
仕組みと特徴
感光性フィルムは、一般的に3層構造になっています。
- 感光性樹脂層: 実際に光に反応する主成分で、光の照射によって化学反応が起こります。
- ベースフィルム: 感光性樹脂層を支持するフィルムです。
- 保護フィルム: 感光性樹脂層を保護するためのフィルムで、使用前に剥がします。
感光性フィルムには「ネガ型」と「ポジ型」の2種類があります。
- ネガ型: 光が当たった部分が硬化し、現像液に溶けにくくなります。
- ポジ型: 光が当たった部分が溶解し、現像液に溶けやすくなります。
この仕組みを利用して、特定のパターンが描かれたマスク(フォトマスク)を通して光を照射し、その後現像処理を行うことで、光が当たった部分と当たらなかった部分に違いを生み出し、目的の回路パターンなどを形成します。
主な用途
感光性フィルムは、高い精度が求められるさまざまな分野で不可欠な材料です。
- プリント基板(PCB)の製造: 電子機器の心臓部であるプリント基板の配線を形成するために使用されます。
- 半導体パッケージング: チップと外部を接続する回路を形成するのに使われ、レゾナックが開発を進める有機インターポーザーもその一つです。
- ディスプレイの製造: 液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL(OLED)などの製造工程で、微細な画素パターンを形成するために利用されます。

感光性フィルムは、光を当てると化学変化を起こす特殊な樹脂が塗られたフィルムです。この性質を利用し、光で特定のパターンを転写することで、プリント基板や半導体、ディスプレイなどの微細な回路やパターンを形成するために使われます。
パネルレベル有機インターポーザーでの感光性フィルムに必要なものは
パネルレベル有機インターポーザー向けの感光性フィルムには、高解像度とパネルプロセスへの適合性が特に求められます。これは、従来の半導体ウェハ製造とは異なる、大型のパネルで微細な配線を形成する必要があるためです。
求められる性能
- 超高解像度: チップレット技術の進展に伴い、インターポーザーの配線もより微細化する必要があります。レゾナックが開発したフィルムは、線幅と線間がそれぞれ1.5マイクロメートル(μm)という超微細な銅配線を形成できる性能を実現しています。この微細なパターンを正確に転写できる能力が不可欠です。
- パネルプロセスへの適合性: パネルレベル有機インターポーザーは、直径300mmの円形ウェハよりもはるかに大きな、一辺が500~600mmの四角いパネルを使用します。そのため、フィルム自体が大型のパネルに均一に貼り付けられ、その後のプロセス(露光、現像など)に耐えられる必要があります。
- 高い信頼性: 最終製品の信頼性を確保するため、フィルムで形成した配線が、熱サイクルや外部からの応力に耐え、剥がれたりクラックが入ったりしない高い信頼性が求められます。

パネルレベル有機インターポーザー用の感光性フィルムは、超高解像度で微細な配線パターンを形成できることが必須です。また、従来のウェハよりも大型のパネルに適合し、高い信頼性を保ちながら均一に転写できる性能が求められます。
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